日本の防衛産業は韓国の防衛産業にもう勝てない。

昭和の時代までは我が国の軍事産業の技術は確実に韓国よりも上でした。ところがその後は我が国の軍事産業が停滞凋落し続けたのに対して、韓国の軍事産業は成長を続けています。

これは韓国が本格的に兵器輸出に舵を切ったことが原因です。

我が国では未だに韓国の軍事産業を下にみる傾向がありますが、それは夜郎自大というものです。過去四半世紀以上海外取材で韓国の軍事産業の発展を見てきた身としてそれは断言できます。
だからこそ。下記のK9のような成功例があるわけです。たった一国に輸出しただけならば、まぐれということもあるでしょうが、これだけ実績があればまぐれといはいえないでしょう。

ところが暗愚でテクノナショナリズムに囚われた人たちは現実が見えません。


世界で売れる韓国製「K9自走砲」何がイイのか? 武器が売れない日本との違い
https://trafficnews.jp/post/113665

>韓国のK9自走砲を新たにオーストラリアが導入することが決定しました。欧州やインド、エジプトなどでも導入しているK9自走砲、なぜ世界で売れているのでしょうか。武器輸出が振るわない日本とは、何が違うのでしょうか。

>2021年12月13日、オーストラリアのスコット・モリソン首相と韓国の文在寅大統領がキャンベラで首脳会談を行い、韓国が開発した「K9」155mm自走砲とK9に弾薬を補給する「K10」弾薬供給車をオーストラリアへ輸出することで合意

>K9は2021年12月の時点で、フィンランド、ノルウェー、インド、エストニアの4か国に採用されており、エジプトとも輸出に向けた話し合いが進められています。トルコでは技術移転により国産化されているほか、K9そのものではありませんが、ポーランドが導入した装軌式自走砲「クラブ」にはK9の車体が使用されています。


>K9は配備後に能力向上改修を受けていますが、この際、火器管制装置のコンピュータとOSの更新も行われています。

>K9を国産化していたインドと、K9の提案が行われていたオーストラリアの両国が維持コストの上昇に懸念を示したことから、韓国で防衛装備品の開発や調達、輸出を統括するDAPA(防衛事業庁)が、コンピュータとOSの更新を強行したのです。
>韓国政府が民間企業の反対を押し切って、導入にあたっての不安要素を打ち消したことも、今回K9とK10の輸出に成功した一つの要因であると見られています。

>オマーン向けの提案では、韓国やヨーロッパに比べて高温な中東での運用を想定して、最大摂氏55度まで対応できる冷却システムを追加し、かつアラビア語にも対応した車両間で情報を共有するシステムを搭載するなどの改良を加えています。


韓国も輸出を本格化したことは米国やロシアの兵器などの模倣したものばかりでした。価格的には中国などに敵わず、性能的には先進国に敵わないもの感が全体的にありました。
ところがその後急速に力を付けてきました。

それはなぜか。
理由はいくつかあります。
●そもそも韓国は隣に北朝鮮があり、軍事的にシリアスな脅威に晒されてきた。
●政府にきちんと外貨を稼げる産業として育成する明確な意図と計画があった。
●メディアや議会がきちんと問題点を報道したり、追求してきた。

特に大きいのは政府も産業も軍事産業を、外貨を稼げる産業に育成しようという強い意思があって、政府に明確な目的があり、それを現実化するプランが存在していたことです。

蕎麦屋に例えれば、喰うために必死で品質の向上と多店舗展開をおこなってきたわけです。対して、我が国は定年退職したおっさんの趣味のそば打ちです。
つまり商売と道楽の違いです。

韓国人の気質としては「ケンチャナヨ」という言葉に代表されるような適当があります。確かにそのような傾向があるでしょう。だから駄目なのだという人が多いわけですが。であれば、車や家電、スマホ、半導体に至るまであれだけ世界のシェアをとれるわけがありません。
市場に置いて、カタログ通りの品質がでない、故障が多い、保証内容と違うなどのことがあれば次から顧客は買ってくれないか、盛大に文句を言ってきます。そしてその手のクレームはアイディアや改善の宝庫です。
そもそも魅力の乏しい商品は売れません。

日本の場合はそもそも、市場経済にアクセスしておらず、防衛省と企業はなあなあの関係であり、天下りさえ受け入れれば、企業は普通文句を言われません。出来レースで外国製が候補にあがっても選ばれるのは国産です。
ですから能力が低かろうが、品質が悪かろうか、コストが高かろうがメーカーはまともに改善などしません。そして官民ともに海外の先端情報には無関心です。調達自体が目的なのですから。


K9にしても輸出当時は欠陥もあり、トルコで採用したときには装弾システムの不具合などがあり、現地では大変問題になりました。その問題を解決して、製品の品質や能力の向上を行ったからあれだけ売れたというわけです。

無論政府もサポートや指導を真摯に行ってきたわけです。輸出に関してはオフセットやファイナンスにも対応し、挙国体制で売り込みをおこなってきた。

またオフセットで外国企業の仕事も受注し、それによって技術力の向上を行ってきた。アパッチの生産などはその好例です。
外国企業との協力も積極的でヘリはエアバスと共同したり、砲塔ではベルギーのCMIディフェンスと提携するなどアライアンスの強化に力を入れています。

日本はといえば、陸のUH-Xで本命のエアバスとKHIのジョイントベンチャーを自ら潰して、基本設計は大変古いB412を採用、その改良も殆ど外国任せで技術の向上も、世界市場での販売でも魅力がない道を選びました。そしてSUBARUを選んだことで弱小の「子供おじさん3兄弟」体制を維持して、自ら産業基盤を脆弱にしました。
そして政策の制限もあって、外国との原則合弁もできません。

しかも輸出はメーカーにはさらさらやる気はなく、政府のポリシーは、ウチのメリットになるなら売ってやるというスタンスです。武士の商法もいいところです。そして官の側の連携もなく、経験もないのに潜水艦やら飛行艇など、難度の高い高額製品を売り込もうとしてきました。

防衛装備移転三原則について
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/bouei.html

1 防衛装備の海外移転を認め得る案件
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/bouei3.pdf

前世紀末までは兵器のコンポーネントは軍用専用で、門外に出さないものが多数ありました。ところが今世紀に入ってからは、汎用技術の軍民両用のコンポーネントが増えて、軍用のコンポーネントもコモディティ化しました。
つまりパソコンと同じす。CPU、記憶装置、モニター、キーボードに至るまで市場でどこでも手にはいります。ですからCPUの開発能力がない企業でもPCを作ることができるようになりした。コンポーネントは全て市場で確保できるので新規参入メーカーでPCが開発できるようなりました。

兵器もそれと同じです。装甲車であればエンジン、トランスミッション、駆動系、サスペンション、タイアに至るまで市場で調達できます。

更に申せば、工作ロボットが普及して、熟練工がいなくても相当レベルの加工が可能になりました。しかも人材も流動化して外国の優秀な人材を「お雇い外国人」として雇うこともできます。UAEの重機メーカー、カラカルではオーストリア人の設計者を雇い、最新の工作機械を、ラインに導入することで、短期間に相応の性能の火器の生産に成功しました。

つまり、中進国、途上国が先進国のレベル、それに準じる製品を開発、生産することが大変容易になりました。このため先進国のメーカーは今や、南ア、シンガポール、韓国、中国、トルコなどといった国々のメーカーとの競合を強いられています。そして先進国でこれらの国々の製品が採用されることも増えています。

先進国のメーカーもこのため生き残りのために開発や販売に大変な労力や資金をつぎ込んでいます。
ですが、我が国は世界動向をみようともせず、かつてのGDP2位、技術立国である我が国の実力を持ってすればと昼寝しながら寝言をいってきたわけです。

それでも高度成長期であれば、米国も優しく、技術供与をしてくれました。しかし今ではそんなことはありません。国内メーカーは防衛省から仕事が来るのを待っているだけで、世界に打って出て、リスクを負っても生き残りを賭けた挑戦をする気がありません。
また高度成長期であれば毎年GDPの伸びに比例して売上が増えましたが、今は横ばいかそれ以下です。装備の高度化に伴って、調達単価が高騰し、また整備費が増えて、新規装備の売上は減っています。
例えば売上が半分になれば、単純に考えれば研究開発費も半分になります。市場に打って出る気がないので、将来への投資も滞り、新しい技術や生産設備が導入できず、老朽化した設備で生産することになります。そうなると熟練工頼みになって「工芸品」化します。それも昭和の時代の熟練工はどんどん退職していきます。

そして取材機会を独占している記者クラブは装備品や予算に興味はありません。専門知識がありません。ですから防衛省や自衛隊に多くの問題があっても忖度することで利益を得ている記者クラブの新聞や通信社、テレビは報道しません。
対して日本の真似をして記者クラブ制度をもっていたが、それを廃止した韓国の新聞やテレビは軍の装備の問題を報道します。
また議会でも問題にします。そうなれば国防省や軍も納税者に監視されて、襟を正すことになります。

対して日本で殆ど問題になりません。装備のコストが外国の5倍10倍でもメディアは報じず、装備の欠陥が暴かれることも少ないわけです。ですから耐用年数が1桁少ない拳銃や性能を偽装した機銃が何十年にも渡って調達され続けてきました。


それが現在の日本の軍事産業の現実です。政府や防衛省にまともな産業振興策もなく、輸出戦略もなく、メーカーはリスクをとって輸出する気もなく、当然投資もしないので技術力は下がる一方です。
これで力をつけてきた中進国にかなうはずがありません。
日のいずる国ではなく、日の沈む国ですが、政府も防衛省も、納税者もその現実に目を向けることなく、「世界に冠たる日本すごい」と自慰行為に励んでいるわけです。
メーカーもゆでガエル状態です。そうしているうちに、横浜ゴムや住友電工、などのメーカーもどんどん防衛産業から足抜きしています。
現状にしがみついているものの、やがては事業として成立しなくなる。そうなるバックレざるを得ない。
となれば、それまで他国よりも何倍も高い費用を払って調達して支えてきた、技術や生産基盤は失われていきます。
やる気がないのであれば、はじめから安価な外国製品を買えばよかった。そうすれば数十年単位で、その装備にかける予算を数分の一に抑えられたはずです。


週刊東洋経済12/25、1/1合併号に寄稿しました。
増額で自衛隊は強くならない(P.166)
週刊東洋経済 2021/12/25-2022/1/1新春合併特大号 - 週刊東洋経済編集部
週刊東洋経済 2021/12/25-2022/1/1新春合併特大号 - 週刊東洋経済編集部
Japan In Depth に以下の記事を寄稿しました。
新聞が誤報する史上最大の防衛補正予算
https://japan-indepth.jp/?p=63181






"日本の防衛産業は韓国の防衛産業にもう勝てない。" へのコメントを書く

お名前
ホームページアドレス
コメント

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。