防衛省、振興政策なき惰性の火器調達

昨日陸幕の報道向けの新小銃、新拳銃のお披露目にいっていました。
以下はその記事です。
以前からの兵器としての問題点、調達製は改善されていように思います。ですがどのように将来につなげた振興策持っているかというと何もない。今が良ければという戦略なき国産調達が続いています。またシステムとして火器の調達をするという意識もない。つまりは用兵、調達者としての当事者意識&能力が欠けているということです。
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防衛省、陸上自衛隊の新小銃と新拳銃を報道公開
http://www.tokyo-dar.com/news/7708/

>5 月18日、防衛省で陸上自衛隊の新小銃「20式 5.56mm小銃」と新拳銃の「9mm拳銃SFP9」の報道公開が行なわれた。
現用の89式5.56mm小銃を後継する20式5.56mm小銃は、89式5.56mm小銃のメーカーでもある豊和工業が自社資金で開発した自動小銃・89式5.56mm小銃に比べてコンパクトで、排水性や防錆機能が向上している。

>重量は3.5kg、銃身長は330mm、伸縮式でチークパットも可変式のポリマー製銃床の採用により、全長は783~854mmと、89式5.56mm自動小銃(固定銃床タイプで916mm)に比べて短くなっている。弾倉はポリマー樹脂製で装弾数は30発。89式5.56mm小銃の弾倉も使用できる。



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銃床は89式から比べると大幅に良くなっています。銃床の長さの可変は射手の体格にあわせるだけではなく、ボディ‐アーマーを装着したときなども必要です。これは89式でも途中からでも改良が可能でした。レールマウントの装備です。

記事には書いていませんが、セレクターレバーが左右に装備されました。イラク派遣時に89式はそのように改良されたのですが、また戻されたというはなしがあります。これでやっと当たり前になったというところです。
また弾倉も89式との互換性も確保されていることは評価すべきです。
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>作動方式はガス圧式で、89式で採用された3点バースト(3点制限点射)は実用上の必要性が低いことに加えて、構造が複雑でコストが高くなり、故障頻度の増加するリスクがあることから採用されていない。

JSF君や自称事情通の軍オタさんたちの大絶賛していた3点バーストは廃止です。これまたぼくが不要としていた機能で、陸幕の見解もそれと同じでした。

朝日新書「反戦軍事学」を読む~銃剣突撃編~
http://obiekt.seesaa.net/article/35371262.html

>フォアグリップは2脚を兼ねており、先端には銃剣を装着できる。銃剣は89式多用途銃剣を使用するが、バヨネットシースは新たに設計されている。レールマウントには光学照準装置などの装着が可能で、公開された20式5.56mm小銃には、ディオン光学技研の「MARCH」ブランドの8倍光学照準装置が装着されていた。

フォアグリップは、陸幕は明言していませんでしたが、他の取材先で確認したらスイスのB&Tの製品のようです。下手に国産にこだわらずに既存の外国性を導入したのは正解だと思います。まあ有事に国産ではないと駄目だ、という人たちが何と言うか気になります(笑

ディオン光学技研は2004年創業の新しい会社です。ですが、清水文雄社長は高級スコープなどを世界の有名メーカーにOEM供給しているライト光機製作所からスピンアウトした方で、ぼくは2018年のドイツの見本市IWAでお話を伺ったことがあります。
http://www.deon.co.jp/About-us.html
http://www.light-op.co.jp/about.html

まだ新しい会社の製品でも採用したことは評価に値します。ただ現段階では調達計画がまだないので土壇場でひっくり返る可能性がないとは言えません。傾注したいところです。
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>報道公開では新たに導入する、ベレッタ「GLX 160 A1」グレネードランチャーも展示された。GLX 160 A1はNATO標準の40 ×46mm弾を使用するグレネードランチャーで、グリップと銃床を装着すれば単体でも使用できるが、陸上自衛隊は20式5.56mm小銃に装着して使用する予定となっている。光学照準装置とグレネードランチャーの調達計画、グレネードランチャーが使用する弾薬の種類などは、現時点では明らかにされていない。

ぼくは06式小銃擲弾を批判して40ミリのグレネードランチャーを導入すべきだと主張してきました。ところが自衛隊大好き、自衛隊は間違わないというカルトな軍オタさんたちは小銃擲弾を大絶賛し、グレネードランチャーなんぞ不要だと主張しておりました。


陸自の兵器開発は半世紀遅れ その1
http://japan-indepth.jp/?p=27107
陸自の兵器開発は半世紀遅れ その2
https://japan-indepth.jp/?p=27114

朝日新書「反戦軍事学」を読む~銃剣突撃編~
http://obiekt.seesaa.net/article/35371262.html

>現用の9mm拳銃を後継する9mm拳銃SFP9は、ヘッケラー・アンド・コッホのSFP9を輸入の形で導入する。SFP9はNATO標準の9×19mm弾を使用する、ストライカー式の自動拳銃で、装弾数は9mm拳銃の9発から15発に増加している。

>全長は186mm、重量は710gで、グリップ後方はモジュラー式になっており、射手の掌の大きさに合わせて3種類の中のグリップが選択できる。令和2年度予算には323挺の調達2,000万円が計上されている。

新拳銃はグロックが価格、性能ともに本命でしたが何か大人の事情があったように思えます。グリップのサイズを変えられることは西欧人より体格が小さい日本人、特に女性には有用です。本年度分は輸入ですが、現場ではライセンス国産するか否かは未定といっていましたが、恐らくは全部輸入になるはずです。これはコストと品質の問題です。オリジナルより一桁少ない信頼性しか発揮できない会社に発注はしないでしょう。おそらくは5年程度で調達が完了するはずです。拳銃の輸入化は財務省の意向もあったようです。


 新小銃に関しては関係者の努力も見えます。ですが大局的な調達製作が感じられません。
まず新小銃も30年かけて更新する予定ということです。これでは弾薬は同じとはいえ、兵站、訓練が二重になります。また調達が少量ずつになるので調達価格は下がりません。

 結論からいえば火器メーカーの統廃合を考えないといけません。それを防衛省はやっていない。火器メーカーが一社ならば7年で小銃を生産し、次の5年で拳銃を生産、その後10年で機関銃を調達してというふうに、切れ間なくラインを稼働させることができます。ところがそれぞれ別な会社に発注しているので食わせるために少数長期調達にならざるをえない。これでは設計者も経験をつめません。

あと成功するかどうかは別として輸出も行うべきでしょう。例えばフルオート機能は外して、民間や法執行機関向けに輸出するのもいいでしょう。小火器は過当競争市場ですから、難しいとは思いますが、市場で得られる知見は重要です。そのための費用は防衛省がだしてもいい。

それから光学照準器、グレネードランチャーなどを含んだシステムとしての運用、調達構想がないことは大問題です。グレネードランチャーを分隊、あるいは小隊に何基導入有するかで火力は大幅に変わってきます。またどのような弾種を導入するのか。例えば榴弾以外に、発煙弾、IR発煙弾、対装甲車輌弾など弾種が増えれば携行をどうするのかという問題も生じてきます。
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照準器にしても同じです。全部隊に等倍のドットサイトを導入するのか、それともエリート部隊だけなのか。また8倍のスコープはどのような隊員が使うのか。
当然予算規模も大きく変わってきます。
そのようなグランドデザインがない状態で小銃だけ予算化するのは大問題です。

どうもあれこれ取材していると、小銃本体しか買う金がない、あとのものは金ができたら買うという泥縄的なお話なようで、今回のスコープやフォアグリップなども金がなければ採用されなかったり、安いものが調達される可能性あるようです。
こんなものは計画とは言えません。

加えて申せば、7.62ミリバージョンの開発はしていない、ということです。これは今からでも開発すべきです。英軍ではMINIMIの後継に7.62ミリ弾の小銃を採用しました。これは5.56ミリ弾の分隊支援火器は威力が低いこと、分隊のメンバーが分担してMINIMIの弾薬を携行しなければならず、その負担が大きいことです。ですから光学照準器を搭載した7.62ミリ小銃を採用したわけです。

諸外国の動向とまた将来の見据えての調達計画、メーカーの再編成も考えた上で小銃、拳銃の決定をすべきでした。
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■本日の市ヶ谷の噂■
海自が調達している大塚光学製(契約はケンコー)の双眼鏡は安さ求めたために、落とすと簡単の軸がズレるというアレな品質で
現場では不満が鬱積との噂。

【NEW】19式自走榴弾砲を安価に調達する方法
https://japan-indepth.jp/?p=51931

日本に最先端戦闘機開発の能力無し
https://japan-indepth.jp/?p=51870


防衛大臣囲み取材は「三密」
https://japan-indepth.jp/?p=51726

軽装甲車の防御力強化策のトレンド
https://japan-indepth.jp/?p=51500

現代の主力戦車の進化は限界 前編
https://japan-indepth.jp/?p=51241

現代の主力戦車の進化は限界 後編
https://japan-indepth.jp/?p=51261

European Security & Defence に以下の記事を寄稿しました。
https://euro-sd.com/2020/04/articles/exclusive/17070/bulldozer-contract-win-for-hitachi/



東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。

培養肉がこの先「有望」な食材になりうる事情
環境負荷や食料自給の観点からも期待集まる
https://toyokeizai.net/articles/-/342551

防衛記者クラブの「台所事情」何とも厳しい実態
不要不急の支出、財政破綻の危機を迎えていた
https://toyokeizai.net/articles/-/343696

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