米国防産業の問題の本質

米国防を支える産業に弱点、ホワイトハウスが報告

https://jp.wsj.com/articles/SB10174653378051494177104584513054130202012

>米国の国防関連の産業は「かつてないさまざまな課題」に直面している。そうした課題が、中国やロシアなどとの戦いで米軍が必要になるであろう航空機や部品、その他の機材を迅速に製造するための産業の能力を弱めている。米ホワイトハウスは新たに発表した報告書でそうした見解を表明した。

>報告書では潜在的な問題として幾つかの具体例が取り上げられている。例えば、部隊用のテントや軍服を作るための布地の供給元が限られていること、レーダーなどの装備の製造に必要なレアアースの多くについて中国が唯一の供給元となっていることなどである。

>こうした問題への対処で中心的役割を果たしている通商製造政策局長のピーター・ナバロ氏は、米国の溶接技術者が減っていることも、国防産業基盤をリスクにさらしていると指摘する。


>ナバロ氏は3日のインタビューの中で「問題の帰結するところは、単一障害点(1カ所の障害で全体が停止する致命的部分)がいくつもあるということだ」と指摘。「潜水艦用プロペラシャフト、戦車の砲身、ロケット燃料、ミサイル防衛用の宇宙空間の赤外線探知機などの重要な機材について、供給元が一つしかない」と語った。


> 国防省、産業界関係者は特殊ボールベアリングの調達問題から海軍向けプロペラ製造工場が米国内に1工場しか存在しないことまで、さまざまな問題が存在することを何年にもわたって認識していた。

>米シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」の研究報告によれば、2001年から 2015年の間に約1万7000の米国企業が国防省との「主契約者」契約を打ち切った。

> その影響で、数千人の労働者が防衛産業から離職。また、ボーイング、 ノースロップ・グラマン など大手契約企業は経費削減の一環として数千人を削減している。業界幹部によれば、その結果、防衛産業分野では人手不足が発生しており、人員採用時の人物調査の遅れやハイテク産業との人材獲得競争も事態に拍車をかけ、(防衛産業にとって)人手不足が最大の課題となっている。



実はここに書かれていることは大した問題ではありません。シングルソースしかなくとも、必要なものであればその会社がやめようとするなら他の会社が買収するでしょうし、国有化という手もあります。更には外国のソースを確保しておくことも大抵の場合は可能です。
 

最も問題なのは強欲資本主義による空洞化です。
アメリカの大企業は株主からの圧力で四半期ごとに高い利益を要求されます。
このため長期に渡るR&D、社員への教育、熟練工の保持、工作機械などの設備投資などの投資は株主から歓迎されませんそんな金があれば、自社株を買って株価を釣り上げろと要求されます。


端的に申せば、今儲かれば来年倒産しても構わない、従業員を役員以外は解雇して、工場も売り飛ばし、固定費を削減して株価を釣り上げればいいという考え方です。

当然ながら10年20年先を見越した将来の飯の種の研究や従業員の技術の向上などといった継続して企業活動を行い、継続して利益を上げるための方策がなされません。

極端にいえば戦車も潜水艦のメーカーも工場を持たずに、中国に丸投すればいい、ということです。

実際多くの企業では好業績でもレイオフして人件費を減らし、熟練工を育てることもしません。それが上記の溶接工の不足の原因でもあります。そして熟練工の賃金は高いからと、経験がなくとも安い人件費の移民などを採用します。あるいは工場をどんどん閉めるのでラストベルトみたいなことが起こっています。

また解雇されたホワイトカラーや熟練工が能力を活かせる職場がなく、低賃金の単純労働を強いられます。となれば、もともともアンダークラスの人たちは失業してホームレスになったりするわけです。

企業の内部に設計や熟練した工員が減っているので、現場力が下がっています。

新しい技術は外国企業と提携したり、ベンチャー企業などを買収することで補っています

システム統合を売り物にするボーイング、GD、ノースロップ・グラマンなどの大手ではその能力が下がっています。
これが納期の遅れや開発費、調達コストの最大の原因です。

例えば装甲車両の新規開発能力も大手企業は殆どなくなっています。
ですから既存の装甲車両の近代化や外国製の導入ばかりになっています。

ところがアメリカのメディアはウォール・ストリート・ジャーナルなどの経済メディアだけでなく、大手新聞、TVも大企業と株主と株屋が儲かることが景気が良いことだと報道します。庶民がレイオフされ、あるは低賃金を強要され、しかも政府やFRBの政策で生じたインフレで苦しんでも平気です。極論すれば大企業と株屋と株主さえ儲かれば、99%の国民が餓死しても「好景気」だというわけです。
ですから国民がメディアに不信をいだき、民主党の泡沫候補だったサンダースが本命となり、またトランプ大統領が誕生しました。


つまりアメリカの国防産業の抱える問題を根本的に解決するのは、強欲資本主義を修正しなければならないわけです。ですが、それは不可能でしょう。恐らく中長期的にはアメリカの国防産業の能力は更に低下するものと思われます。



































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