震災オスプレイの記事 プロとアマとの違い

 熊本の震災に米軍のオスプレイが投入されています。
 それについて対象的な記事が2つあります。

 熊本地震救援に普天間基地のオスプレイが出動
http://bylines.news.yahoo.co.jp/obiekt/20160417-00056727/

>この4機のオスプレイはフィリピンで訓練していた最中で、急いで普天間基地に戻り、その足で岩国基地に向かうというオスプレイの航続力の高さならではの機動展開を実施しています。これが通常のヘリコプターでは2日近くは遅れる事になっていたでしょう。

>東日本大震災の時は前任機のCH-46ヘリコプターが普天間基地から東北に向かいましたが、CH-46は速力が遅く航続距離が短く、到着まで何度も途中の空港で降りて給油
を繰り返して移動だけで2日も掛かっています。これがオスプレイならば、数時間で到着することが可能でした。


これはJSF氏の記事ですが、完全にシロウトの記事です。

 単に航空基地間の移動であれば、C-130Jなどの固定翼機の方がよほど、早いし搭載装備も多く、またペーロードも大きいわけです。しかも重機やトラックなどのまで運べます。オスプレイの搭載量はそれほど多くありません。また米軍の空中給油装置をもったブラックホークやCH-47でもこのくらいの距離は飛行できます。またチヌークであればオスプレイよりも多くの貨物が運べます。第一ヘリ団のチヌークであれば2日近くも遅れはしないでしょう。
 無論ヘリよりもオスプレイは飛行速度が早いのですが、それも何倍も違うわけではありません。事実オスプレイが投入されている輸送は短距離で、ヘリで十分可能です。

 我が国は世界有数のヘリ保有国です。空港間は固定翼輸送機で貨物を運び、後は荷物をバラしてヘリで運べばよろしいだけです。無論オスプレイが不要とは申しませんし、垂直離着陸機能も有用でしょう。ですが唯一無二に便利というわけでもありません。つまり上記の記述は、それがどうしたの? という話です。

 また次のパラグラフでCH-46とオスプレイを比べていますが、これもナンセンスです。よく知られているように、オスプレイはCH-46の後継機です。優れていて当たり前です。多少意地悪くこの記事をみるとじゃあヘリは要らない、時代遅れと言いたいのと取れてしまいます。
 この記事の根底には著者のオスプレイに対する偏愛があるように思えます。ですから、オスプレイを礼賛したい、「お花畑の」左翼や朝日新聞からいじめられているオスプレイを擁護したい。という気持ちが行間から溢れているわけです。つまりは情念から書かれています。プロは情念だけで記事を書いてはいけません。

 べつにこれがシロウトのブログならば別に問題ないでしょう。ですがプロの仕事であるならば、客観性に欠けているとし、新しい視点があるわけでもない。有り体に言うと気持ち悪い文章なだけです。なぜ「気持ちが悪い」かは、後でまた説明します。
 

 もう一つが航空軍事評論家、関賢太郎氏の記事です。

オスプレイ、熊本地震でどう活動? 安全に懸念は? ネパールの前例
http://trafficnews.jp/post/50455/

>「オスプレイ」は飛行機に準ずる非常に優れたスピードと航続距離を持ち、かつヘリコプターのような垂直離着が可能な「ティルトローター機」です。こうした性能は、遠方に急遽展開したり、物資や人員を空輸するといった任務において発揮されます。

>しかし今回の、本拠地である普天間基地から拠点となる岩国基地までの飛行は、それほど遠いとはいえません。また、岩国基地から被災地へ支援物資を輸送する際は200km前後の短距離を往復することになりますから、航続距離はあまり関係がなく、高速性能によって短縮できる時間も片道あたり十数分程度でしょう。負傷者などの急患輸送を担った場合でも、最寄りの医療拠点までせいぜい数十kmですから加速することもできません。したがって、「オスプレイである必要性」はあまり無いといえます。
 オスプレイの航空機としての能力をまず説明し、今回は別にオスプレイである必然性はない、と分析しています。


>では、なぜアメリカ海兵隊は「オスプレイ」を派遣したのでしょうか?

> その答えは、単純に「オスプレイ」がアメリカ海兵隊の主力輸送機であるからという理由にほかなりません。「オスプレイ」は現在、普天間基地に2個飛行隊およそ24機が常駐しており、在日米軍が運用する航空機のなかで最も数が多い機種のひとつです。もし仮に「オスプレイ」の前任機であったCH-46「シーナイト」ヘリコプターが現在も海兵隊に配備され続けていたとしたならば、「シーナイト」が派遣されていたに違いありません。実際、「シーナイト」は東日本大震災における「トモダチ作戦」へ投入されました。


 オスプレイが投入されたのは米海兵隊の主力輸送機だからです、と説明しています。オスプレイがない昔だったら、CH-46が投入されていたと、過去の事例を出して事実関係を述べています。

 ついで、多くの人が疑問にもっているであろうオスプレイの安全性について述べています。

>安全面の懸念は?

> 一部において、「オスプレイ」は垂直離着陸を行う際に発生する「ダウンウォッシュ(吹き降ろしの風)」の強さから、災害救助には不向きではないのかという懸念の声もあがっています。「オスプレイ」が比較的ダウンウォッシュの強い機体であることは事実であり、2015年4月のネパール地震に派遣された機体は小屋を吹き飛ばしてしまいました。


>しかしこれは「オスプレイ」特有の問題ではなく、自衛隊も保有するCH-47「チヌーク」など大型のヘリコプター全般にいえる弱点です。「オスプレイ」はある意味で政治的シンボルと化してしまっているため、小屋を吹き飛ばしたことがことさら欠陥のように繰り返し喧伝されていますが、ダウンウォッシュで地上の構造物を吹き飛ばした事例はそれほど珍しいものではなく、過去、自衛隊のヘリコプターにおいても発生しています。

>ダウンウォッシュ対策はそれほど難しい問題ではありません。学校や駐車場、または空き地など、ある程度の面積が確保できる場所へ着陸が可能な場合の輸送は「オスプレイ」を優先的に割り当て、狭い場所への着陸を余儀なくされる場所へはUH-60J「ブラックホーク」など別の機種を用いることで簡単に解決します。

>以上のように、「オスプレイ」はほかのヘリコプターとほとんど同じように活動することとなります。「オスプレイ」が輸送任務にあたることに対して、過度に不安視する必要は全くありません。

丁寧にダウンウォッシュについて説明して、これがオスプレイ固有の問題ではないよ、と説明しています。
どちらが記事として優れているかは言うまでもないでしょう。

関氏の記事に注文があるとすれば、オスプレイは離着陸時の排気ガスが高温であり、アスファルトで舗装された駐車場などの上で使用するのは問題が起こりうること、またヘリと同じ感覚で近寄ると危険であることを指摘して欲しかったです。ただしそれは運用側も理解して運用しているでしょうから問題はないでしょうが。だから関氏はあえて書かなかったのかもしれません。


関氏の記事は多くの人が疑問に思っているであろうこと、即ち何故、米軍のオスプレイの投入が必要なのか、オスプレイって安全なの?というようなことを、察してそれに答え、解説しています。対してJSF氏の記事はオスプレイに対するラブレターに過ぎません。

こういう人に、編集者、特に専門誌の編集者は記事を発注しないでしょう。「Yahoo!ニュース 個人」は原稿料を知らってはいるようですが内容ではなくブログのページビューの数だけで選んだのではないでしょうか。少なくとも専門媒体から仕事は来ないでしょう。

かつてJSF氏は「航空情報」に記事を書いたことがるのですが、その後同誌を専門誌からお声がかかっていないようです。対して手前味噌ですが、ぼくは航空情報で連載を依頼されてしばらく書いておりました。またJSF氏とは対照的にブロガーとして注目されていた元海自幹部である文谷数重氏は、軍事研究、丸、東洋経済オンラインなどでプロとして活躍されています。つまり文谷の各記事は専門誌やプロの媒体からみて魅力があったということです。


さて今回米海兵隊のオスプレイ活用は政治利用だという批判があります。
自衛隊には多くのヘリが存在します。チヌークにいたっては米軍に次いで世界第二位のフリートを保持しております。オスプレイではなく空自、陸自のチヌークその他のヘリを使えばいいじゃないかとの批判が新聞でもなされております。ですがJSF氏のような「ぼくのオスプレイは世界一」的な主張ではまともな反論とはなりえません。

実際にオスプレイが投入されている任務はヘリでも十分行えるものです。何百キロも離れた飛行場もない2点を一刻も早く往復するような任務ではありません。
オスプレイが着陸できるランディングゾーンならばチヌークも着陸できます。更に申せば、現地では孤立して食料などがない場所が多数あり、より小さなヘリが有用でしょう。それならば米海兵隊のUH-1Yが有用です。同じUH-1系列の陸自の単発のUH-1Jよりも遥かに強力な双発エンジンを搭載しており、サイズの割に搭載能力は遥かに高いです。UH-1Jの代わりにUH-1Yを投入しろ、というのは理解できる人も多いのではないでしょうか。

ぼくは海兵隊のオスプレイの使用に反対はしませんし、妥当だと思います。ですがそれは「ぼくの大好きなオスプレイ」が優れている、からではありません。

オスプレイの投入には政治的、外交的な要素が多分に存在します。

まず国内の政治的には、オスプレイは役に立ちますよ、危なくありませんよ、という印象を与えられます。これが朝日やら毎日から非難されている点です。

次に外交的には米国と周辺諸国に対して日米の協力をアピールできます。これは大きなメリットでしょう。

また米軍との「実戦」での共同作戦は日米共同作戦能力の維持と向上に寄与します。仮に今回米軍の手を借りなくて済むにしても、東日本大震災のようなより、大きな災害では必要であり、そのために日米で協力する体制の実績とそのノウハウの維持は必要です。

ですから、関氏が指摘しているように海兵隊の輸送機であるオスプレイを使うことに何の問題もありません。それが他のヘリでも固定翼機でもいいわけです。実際米軍はオスプレイ以外の機体も投入しております。
つまりキモはオスプレイではなく海兵隊の機材、ということです。

仮に米軍がオスプレイだけを使い、本来C-130の方が遥かに有用な場面でもオスプレイ飲みを使えば「政治利用」とのそしりも受けるでしょう。ですが、便利なものを使うのであれば非難される言われはありません。

逆に一部新聞などではオスプレイの使用に際してはランディングゾーンに水を撒く必要があったかのような記述がありますが、これは問題です。水を撒いたのはダウンウォッシュで発生するホコリを減少させるためで、ヘリで有用です。書いた記者、チェックしたデスクがものを知らないだけです。

繰り返しますが、オスプレイを含む米軍機の投入は日米同盟が機能していることを内外に示す、また災害時の日米協力能力の維持にために正当である、といえるでしょう。政治的、外交的、軍事的にも無理はありません。
つまり、オスプレイの特異性が故に投入すべきだという理由は存在しません。ただし日本政府には過剰にオスプレイを宣伝しようという思惑がすけて見えるのも事実です。しかも中谷大臣に発言も珍妙であり、広報の仕方が下手くそすぎます。

日本政府は陸自のオスプレイ導入の正当化をアピールしたいのでしょう。ですが今回のミッションはヘリでも十分可能です。より搭載量の多いチヌークの国産型の2倍、米国製の数倍の調達コスト、これまたヘリの数倍の運用費を払って維持するべきシロモノじゃあありません。


ところが単なる兵器フェチは政治的あるいは外交的、そして軍隊としての運用の面からの分析も行わず、あるいは行えずに「ぼくの大好きなオスプレイが活躍するはずだ、機能はこんなにすごいんだ」と、スペックを振り回して主張をするだけです。これでは程度の悪い軍オタやネトウヨを除いた、大抵の読者は説得できません。

プロのジャーナリストはまず対象を疑うことが始めます。これは情報を扱う人間の鉄則です。ところが兵器フェチはすく気な兵器が好きという「情念」をコアにしております。情念あるいはドグマですからそれを疑いません。
当然第三者が見ればおかしな記事ができあがります。

それは記事ではなく、アイドルに対する熱烈なラブレター、あるいはマスターベーションに過ぎません。人様の前でマスターベーションして金を取れるのはストリッパーぐらいなものです。
原稿料を頂く仕事で、私的なラブレターだのマスターベーションを行えば仕事は来ません。ですから「気持ちが悪い」と申し上げているわけです。


ああ、JSF氏でも産経新聞の記者にはなれるでしょう。

オスプレイのため息「なぜいやがられるのだろう。今まで、なんにも悪いことしたことがない」
http://www.sankei.com/column/news/160419/clm1604190003-n1.html

熊本地震】一部メディアのオスプレイ叩きに被災者から批判の声 「露骨な政治的パフォーマンスでは…」 
http://news.livedoor.com/article/detail/11434501/

あえて引用して指摘までしませんが、こういう「気持ち悪い」記事を是とする媒体もあります。率直に申し上げればアマチュアのブロガー並みの情緒的な記事が掲載されています。JSF氏も営業すればお仕事を貰えるかもしれません。


span style=font-size:larger>Japan In Depth に以下の記事を寄稿しました。
陸自の兵器開発は半世紀遅れ その1
http://japan-indepth.jp/?p=27107
陸自の兵器開発は半世紀遅れ その2
http://japan-indepth.jp/?p=27114

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
東芝、国から迫られた「賠償金12億円」の顛末
防衛事業をやり続ける必要があるのか
http://toyokeizai.net/articles/-/111619

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