谷本真由美@May_Roma の妄想 その6

 
 谷本真由美さんの『日本が世界一「貧しい」国である件について』に対する分析と批評です。


日本が世界一「貧しい」国である件について
祥伝社
2013-03-27
谷本真由美(@May_Roma)

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谷本真由美さんのツイッター
https://twitter.com/May_Roma
谷本真由美さんのブログ
http://eigotoranoana.blog57.fc2.com/


 谷本さんは日本のサービスが過剰であるといいます。それはぼくもある程度、同意します。日本人は必要以上のサービス、品質を求める傾向があります。ですが、それはコインの裏表で、非常に高い製品やかゆいところに手の届く製品の開発や、高い品質などに結びつき、日本製品の価値を高めている部分でもあります。

 そのようなことがない英国製品はことごとく市場から駆逐されております。

 「日本の居酒屋さんや小売店での過剰な挨拶やものを袋にきっちりつめるサービスなどは、お客さんが支払う料金を超えたサービスでありそんなサービスがなくても、お客さんは困らないのです」(P75)

 果たしてそうでしょうか。「おはようございます」とか「ありがとうございます」と挨拶することが労働強化でしょうか。谷本さんの理想とする社会はかつてのソ連や中国の国営デパートや商店なのでしょう。
  店員は仏頂面、ものを聞いても探しもしないで「無い!」の一言。買ったものは投げてよこす。そいういうのが理想なのでしょう。彼らがそうだったのはいくら努力しても給料が増えるわけではなし、首にもならないからでしょう。

 さて、その英国では5星ホテルでもサービスがぞんざいです。まともなサービスがこなせない。ことに外国人からの顧客からクレーム続出です。ところがこれが近年改善しています。

 何故かというと、ポーランド人の従業員が増えたからです(チェコ人も多いようです)。

 特にマネージャークラス。英国のホテルでは本当によくポーランド人のスタッフが増えています。英語はきれいだし、きちんとし仕事をします。英国人のスタッフとか大違いです。このためぼくがとまる2~4星程度のホテルでも以前に比べて不愉快な思いをすることが激減しました。

 これはすなわち、その分、英国人の仕事が減っていることを意味します。谷本さんがいうような「サービス」はしない、仕事は苦痛でできればやりたくない、それが当たり前、そう思っている英国人は仕事に就けなくなっています。

 また欧米崇拝の文化人などは駅のホームでアナウンスしたり、エレベーターに自動音声案内があるのは日本独自の過剰サービスで不要だとよく主張していましたが、現在英国でもフランスでもこれらは増えています。
 なぜかといういうとい利用者が望んでいるからです。日本式の「不要な過剰サービス」が外国でも取り入れられています。

 谷口さんは「日本では世界的に名の知られた多国籍企業であっても、机は島のようになっていて、従業員も管理職もお互いの顔や書類が丸見えです。島になっていればいつでもおしゃべりすることができるし、誰が何を食べているか、机に何をおいているか、誰と電話で話しているか丸見えです。仕事の成果よりも誰が『なにをやっているか』『どんな人か』分かる方が重要なわけです」 (P81)

 確かに日本のホワイトカラーの生産性は低いです。また馴れ合いがあるのも事実でしょう。ですが、欧米のようにパーテーションで区切って個別に仕事をする方が合理的なのでしょうか。

 ぼくはそうは思いません。アイランド型であれば誰が何をやっているか、把握できます。ですからチームとして動く場合に、非常に有利です。島の誰かが休んでも、カバーもできます。当人が不在でも、他の人間が何とかできたりします。
 対してパーテーション型では隣の仕事はしりません、ですから本人が捕まらないとなにも分かりません。
 しかも止めた後の引き継ぎなんぞやらないのが当たり前ですから、取引先は困ります。
 
 基本的に仕事はチームワークです。5人いればそれぞれが1として、1+1+1+1+1=5ではありません。成果主義だと個人のパフォーマンスしか評価されませんから、チームに貢献しようとか、自分の知識や経験は囲い込んで、分け与えようとか思わない人が多くなります。結果としてチームとしての生産性は下がる傾向があります。

 要はどちらにもメリット、デメリットがあります。白黒つけられる問題ではありません。我が国でも専門性が高い仕事は欧米式のほうがいいかも知れません。

 また谷本さんの主張するアイランド型の様相はかなりカリカチュアラズされています。実際にはこんな会社は殆どないでしょう。特に中小企業では売り上げが上がらないと死活問題ですから、「仕事の成果よりも誰が『なにをやっているか』『どんな人か』分かる方が重要なわけ」はありません。そんなことをやっていれば会社は潰れます。

 確かに日本のホワイトカラーの生産性は低いのですが、そもそも日本の企業のオフィスワークがそれほど無能だったら、過去の経済成長はなかったでしょう。ぼくは意識の問題だと思います。ぼくはサラリーマン時代でも夜のお付き合いはほとんどしませんでしたし、留学前は同僚と昼ごはんは食べずに自分で手早く済ませ、残った時間は英語の勉強をしていました。谷本さんの言う欠点は、アイランド型、共同型の問題ではなく、意識の持ち方の持ち方、運用の問題ではないでしょうか。

  そのあと谷本さんは、イタリアやスペインなど南欧の縁故主義を批判しています。あれ、南欧もふくめて日本よりも幸せ、だったのではなかのですか?
  日本以外は、と言っていたがいつの間にかアングロサクソンに変節しています。
 

 アングロサクソン系の強欲が批判されていることを谷本さんはご存じないのでしょう。アメリカでは1パーセントの人たちが富の半分を独占しております。経営陣は何十億円もの利益を手にしても、更に儲けるために黒字でもレイオフをしたりします。徹底的に人件費をけちります。
 レイオフされてもまともな職場がないので、マクドやウォールマートなどの低賃金労働を強いられます。

 このためミドルクラスが減っています。つまり途上国と同じで、金持ちと貧乏人ばかりです。英国でも同じような傾向があります。国内産業の空洞化はすさまじいものです。そこに移民が大量に流入してくる。これがアングロサクソン系経済の現状です。現地でも批判が多いのですが、谷本さんは新聞や経済誌など読まないのでしょうか。


   以下の記事を朝日深部のWEBRONZA+に寄稿しております。

空自のF-35は中国が導入するSu-35に対抗できるか(上)
――ロシアが売却する事情とは?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013070400007.html?iref=webronza

東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(1)――墜落を恐れた?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013061900007.html
東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(2)――省内の食い違い
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013062000004.html
東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(3)――難しい新規参入
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013062700005.html?iref=webronza 
東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(4)――「我が国固有の環境」とは何か
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013070100008.html?iref=webronza

 



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