二律背反する防衛省の戦闘機調達

F2戦闘機後継、16年度にも開発着手へ 防衛省
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819481E0E7E2E0E58DE0E7E2EAE0E2E3E28297EAE2E2E2;at=ALL

FX選定 F35に一本化へ 23年度概算要求 7億円計上
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100824/mca1008240946008-n1.htm


 防衛省、空幕の戦闘機調達は二律背反しています。
 FX(次期戦闘機)の本命がF-35であれば、ライセンス生産は不可能です。しかも現在開発中ですから、配備が可能なのはかなり先になります。
 で、次の戦闘機を開発するにして2028年頃までかかります。
 
 つまり我が国の戦闘機生産基盤を潰しておいて、新戦闘機を開発・生産しようといっているわけです。

 装備調達の当事者としての見識を疑われます。

 生産基盤を再整備し、生産手段を整え、人員を確保するのは並大抵ではありません。それこそ、ボーイングやらロッキードマーチンから熟練工を「お雇い外人」として招聘する必要が出てくるかも知れません。生産コストはかなり高くなるでしょう。

 生産基盤を維持するのであれば、FXでF-35という選択はありません。ライセンス生産できる既存機から選択すべきです。新戦闘機開発に向けて新規の技術を習得するのであれば技術開示に積極的なユーロファイターを選ぶべきです。ブラックボックスだらけの機体を組み立てても、新しい技術は習得できません。

 F-2増加説を触れ回っているのは三菱重工でしょう。以前も北沢大臣の逆鱗に触れたのに懲りない人達です。FXで新しい戦闘機をライセンス生産するしても、数年は戦闘機生産ラインが空いてしまいます。
対してF-2の生産を継続すれば、戦闘機生産ラインを数年は維持できるでしょう。ですが、新しい技術の取得はできず、将来に展望は開けません。
 
 F-2増産は明日の1万円より、今日の百円を選ぶ選択です。中の偉い人達は自分たちの任期中の仕事の確保を優先し、将来の戦闘機生産など知ったことではないのでしょう。「国家とともに」というキャッチフレーズはどこにいったのでしょうか。愛国心はおいておくとしても、愛社精神はどこへ行ったのでしょう。三菱マンの矜恃も過去の遺物となったのでしょうか。

 F-35の情報開示に来年度7億円以上(関係経費含む)が要求されるようですが、バカじゃないの?
 というのが正直な感想です。

 F-35に関していえば現段階ですら調達単価は135億円(カナダ議会の予算から、1ドル100円で計算)です。他の候補よりも3~4割は高いわけです。しかも今後オランダやデンマークが開発から抜ける可能性があり、となれば米国の負担は膨らみ、我が国が仮にF-35を買えば随分と上乗せされるでしょう。
 しかも米国初め、各国の調達数が減りそうなので、量産してもコストがあまり下がりません。米空軍はF-15やF-16など既存機の調達する方向で検討に入っています。
 その上、英国がプログラムから脱退する可能性すらあります。空母用にはユーロファイターの海軍用を開発すればいいという声が国防省や産業界から上がっています。独英伊などユーロファイターのパートナー各国で調達が減っていますから、それを補えるというメリットがBAEにはあるのでしょう。また最悪、グリペンNGを採用する手も残っています。英独では特に防衛費の削減は極めて厳しくなっています。戦闘機の定数や調達にも大なたが振るわれています。ですから、まったくあり得ない話ではないでしょう。

 またイスラエルにしてもF-35をどれだけ調達するか不透明です。伝統的にイスラエルは米国製戦闘機に自国製のシステムを使用してカスタマイズして使用してきました。これらのソフトウェアは装備、兵装はイスラエル兵器産業の輸出品として大きな金額を占めています。丸ごと輸入となれあば、これらの国内産業が大打撃を受けますし、兵器輸出も深刻な影響を受けます。イスラエルも調達をやめる、あるいは極小化するという可能性があります。


 とならば尚更F-35の調達・運用コストは上がるでしょう。

 そもそも制空戦闘機が欲しいといってたのに、一部ではF-35ではなく、A-35(攻撃機)と揶揄されるF-35を調達する必要があるのでしょうか。
 仮に調達を考えるにしてもFXXの候補とすべきです。

 今大金を払って情報を開示しなくても、少し待てば米国の方から是非F-35を買ってくださいと頭を下げてきます。
風呂は沸いてから入るものです。
 なんで日本の政治家や官僚はこんなにビジネス取引のセンスがないのでしょうか。

 それからFXに限りませんが、装備調達のコンペにあたっては、出来るだけ実物を借りるなり、サンプルを購入するなどて実際に使用してみてから調達すべきです。
 ユーロファイターにしても実際に使ってみたら意外な欠点があるということもあり得ます。
 ところが防衛省はヘリコプターのような高価な買い物ですら、試乗すらせずにカタログだけみて購入を決定したりしてます。もっと装備の選定に関して費用をかけるべきです。
 それから評価用にミグなどの中古を買ってこれと空中戦をやる、なども有効な手段でしょう。
 
 一両惜しみの百両損、というケースが多々見られます。



 以下に桃山学院大学の松村昌廣教授のFX調達に関する政策提言を紹介します。拙著「防衛破綻」の主張に良く似た主張をなさっています。

次期戦闘機の調達機種提案
http://www.rips.or.jp/from_rips/pdf/teigen20100805_jp.pdf

 

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