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zoom RSS 米国防産業の問題の本質

<<   作成日時 : 2018/11/21 17:34   >>

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米国防を支える産業に弱点、ホワイトハウスが報告

https://jp.wsj.com/articles/SB10174653378051494177104584513054130202012

>米国の国防関連の産業は「かつてないさまざまな課題」に直面している。そうした課題が、中国やロシアなどとの戦いで米軍が必要になるであろう航空機や部品、その他の機材を迅速に製造するための産業の能力を弱めている。米ホワイトハウスは新たに発表した報告書でそうした見解を表明した。

>報告書では潜在的な問題として幾つかの具体例が取り上げられている。例えば、部隊用のテントや軍服を作るための布地の供給元が限られていること、レーダーなどの装備の製造に必要なレアアースの多くについて中国が唯一の供給元となっていることなどである。

>こうした問題への対処で中心的役割を果たしている通商製造政策局長のピーター・ナバロ氏は、米国の溶接技術者が減っていることも、国防産業基盤をリスクにさらしていると指摘する。


>ナバロ氏は3日のインタビューの中で「問題の帰結するところは、単一障害点(1カ所の障害で全体が停止する致命的部分)がいくつもあるということだ」と指摘。「潜水艦用プロペラシャフト、戦車の砲身、ロケット燃料、ミサイル防衛用の宇宙空間の赤外線探知機などの重要な機材について、供給元が一つしかない」と語った。


> 国防省、産業界関係者は特殊ボールベアリングの調達問題から海軍向けプロペラ製造工場が米国内に1工場しか存在しないことまで、さまざまな問題が存在することを何年にもわたって認識していた。

>米シンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」の研究報告によれば、2001年から 2015年の間に約1万7000の米国企業が国防省との「主契約者」契約を打ち切った。

> その影響で、数千人の労働者が防衛産業から離職。また、ボーイング、 ノースロップ・グラマン など大手契約企業は経費削減の一環として数千人を削減している。業界幹部によれば、その結果、防衛産業分野では人手不足が発生しており、人員採用時の人物調査の遅れやハイテク産業との人材獲得競争も事態に拍車をかけ、(防衛産業にとって)人手不足が最大の課題となっている。



実はここに書かれていることは大した問題ではありません。シングルソースしかなくとも、必要なものであればその会社がやめようとするなら他の会社が買収するでしょうし、国有化という手もあります。更には外国のソースを確保しておくことも大抵の場合は可能です。
 

最も問題なのは強欲資本主義による空洞化です。
アメリカの大企業は株主からの圧力で四半期ごとに高い利益を要求されます。
このため長期に渡るR&D、社員への教育、熟練工の保持、工作機械などの設備投資などの投資は株主から歓迎されませんそんな金があれば、自社株を買って株価を釣り上げろと要求されます。


端的に申せば、今儲かれば来年倒産しても構わない、従業員を役員以外は解雇して、工場も売り飛ばし、固定費を削減して株価を釣り上げればいいという考え方です。

当然ながら10年20年先を見越した将来の飯の種の研究や従業員の技術の向上などといった継続して企業活動を行い、継続して利益を上げるための方策がなされません。

極端にいえば戦車も潜水艦のメーカーも工場を持たずに、中国に丸投すればいい、ということです。

実際多くの企業では好業績でもレイオフして人件費を減らし、熟練工を育てることもしません。それが上記の溶接工の不足の原因でもあります。そして熟練工の賃金は高いからと、経験がなくとも安い人件費の移民などを採用します。あるいは工場をどんどん閉めるのでラストベルトみたいなことが起こっています。

また解雇されたホワイトカラーや熟練工が能力を活かせる職場がなく、低賃金の単純労働を強いられます。となれば、もともともアンダークラスの人たちは失業してホームレスになったりするわけです。

企業の内部に設計や熟練した工員が減っているので、現場力が下がっています。

新しい技術は外国企業と提携したり、ベンチャー企業などを買収することで補っています

システム統合を売り物にするボーイング、GD、ノースロップ・グラマンなどの大手ではその能力が下がっています。
これが納期の遅れや開発費、調達コストの最大の原因です。

例えば装甲車両の新規開発能力も大手企業は殆どなくなっています。
ですから既存の装甲車両の近代化や外国製の導入ばかりになっています。

ところがアメリカのメディアはウォール・ストリート・ジャーナルなどの経済メディアだけでなく、大手新聞、TVも大企業と株主と株屋が儲かることが景気が良いことだと報道します。庶民がレイオフされ、あるは低賃金を強要され、しかも政府やFRBの政策で生じたインフレで苦しんでも平気です。極論すれば大企業と株屋と株主さえ儲かれば、99%の国民が餓死しても「好景気」だというわけです。
ですから国民がメディアに不信をいだき、民主党の泡沫候補だったサンダースが本命となり、またトランプ大統領が誕生しました。


つまりアメリカの国防産業の抱える問題を根本的に解決するのは、強欲資本主義を修正しなければならないわけです。ですが、それは不可能でしょう。恐らく中長期的にはアメリカの国防産業の能力は更に低下するものと思われます。



































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コメント(11件)

内 容 ニックネーム/日時
じゃあ日本はどうすれば良いんでしょうか?
同盟鞍替え?
スズキ
2018/11/21 18:59
こんな国から相手の言い値で、あんなそんな高額なオモチャを買うのが、防衛力の強化になる!キリッ!( ・`д・´)と真顔で言っている我が国の総理って...。


>ついに発注!航空自衛隊用グローバルホークは3機で総額4億9000万ドル

http://otakei.otakuma.net/archives/2018112102.html

ついに発注しちゃいましたねorz。今からでも遅くないから、どこか他所様に転売出来ないですかね、ホントに。
KU
2018/11/21 20:09
清谷さん、
これは日本の防衛産業、いや民間企業にも言えることでしょう。株価は重要かも知れませんが同じく株価を上げたり配当をげたりに血道を上げていると将来を見据えた投資にまわる金が減るわけで短期的にはともかく中長期的にはツケが回ってくるでしょうね。うちの会社含め同じ様な会社は多そうです。この辺の欧米型の株価優先、株主優先の考え方が強いとどうしても衰退方向に向かっていくことになります。投資もしないで毎期毎期ヒット商品を出せる企業なんてありませんよ。継続して新製品を開発していく土壌が無いと新製品も出せないでしょう。株主にも物言えるような創業者でワンマンな経営者はこのような局面では強いかも知れませんね。
やれやれ
2018/11/21 21:24
中国が百度を作ってグーグルを、アリババ作ってAmazonを自国市場から締め出そうとしているのは、これら強欲資本主義の権化たるグローバル企業に荒らされないようにするためなんですかねー
被本塁打大王
2018/11/21 22:35
>じゃあ日本はどうすれば良いんでしょうか?

「パンとサーカス」ですね。
通りすがりの人
2018/11/22 12:23
>新防衛大綱 陸自が初の海上輸送部隊創設盛り込む方針

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20181122/k10011719591000.html

作るのは良いとして、どこから人員を引っ張ってくるのでしょうか?
KU
2018/11/22 12:35
スズキさん、
アメリカでさえ兵器に使われている部品に中国製品があると騒いでいるんです。世界中どこでも一緒ですよ。もちろん中国だろうがロシアだろうが日本だろうが全て同じです。現代では兵器(兵器以外もですが)が高性能化複雑化高価格化してしまい、昔の様に鉄砲と弾、戦艦や戦車などを自国生産できればOKなんて明治大正の世の中じゃないんです。一から十まで自国生産できる国はどこにもありませんよ。北朝鮮だって日本製(どこから調達?)の部品使ってますから。国産化率は高いほうが良いでしょうが、現代ではいざ戦争になった場合、開戦時の兵器数がほぼ全てで開戦後に増産できるのはせいぜい鉄砲弾位ですよ。それも戦時体制でも取ってないと数は急には増やせません。ミサイルも安いのでも一発1億円位はするし発注から納入まで数年掛かりますから余程長期戦にでもならないと増産分は間に合いません。頑張って戦争前に発注したミサイルの前倒し納入ができるかどうかです。戦闘機は最早自国生産してない(F35は最終組立だけ)から論外だし護衛艦や戦車だって何年も掛かります。要するに自国で生産していたとしても急には物は作れませんから事前に修理用の部品等を準備しておくしか無いのです。どうせ間に合わないなら兵器と一緒に必要な部品も予備で輸入しておけば良いよねと言う落ちです。
やれやれ
2018/11/22 17:46
お邪魔します。
 問題は「自ら生み出す」のと「他者から奪う」のとどちらが、そいつにとって「費用対効果に優れる」かではないかと思われます。「他者から奪う」のも奪われる側が黙って奪われたり、ましてや進んで差し出したりはしないでしょうから、それなりのコストやリスクもあります。経済がそれなりに成長していた頃なら、「他者からの恨みを買って他者から奪う」よりも「自ら生み出す」方が「お得」だったのですが、成長に限界が見えた事もあって、「たとえ恨みを買ってでも他者から奪う」方が「お得」になってきたという事ではないかと思われます。
 マックス・ウェーバーは、近代資本主義は「強欲」ではなく「禁欲」から生まれたといった事を言っています。元々労働は「食べていくために"仕方なく"やるもの」だったので、裕福になれば仕事などとっとと辞めてしまいあす。現代でも途上国に農業指導をして生産性を二倍にしたら、現地の人は半分しか働かなくなったという例もあるそうです。で得た富を「散財」してしまうので、結局は「元の木阿弥」になります。近代資本主義の精神が生まれて人は「食べていくのに必要な最小限」を超えて働き、禁欲でそれを散財しないので生み出した富が設備投資に回り、その結果経済成長が実現したと。尤も山崎闇斎や浅見絅斎等の尊王思想が明治維新を実現したにも関わらず維新後それが顧みられなかったように、近代資本主義の禁欲精神も前近代から近代へ転換するその一点「だけ」に存在したのかも知れませんが。だから「自分が成功できたのは神様の思し召しなのだから、神様の御心に叶う事をしなければいけない」などとは考えないのか。
ブロガー(志望)
2018/11/23 14:39
>KU=サン
>作るのは良いとして、どこから人員を引っ張ってくるのでしょうか?

 「大日本帝国」式であれば、漁船の船員か日本郵船等の従業員。

 防衛省は、船員予備自衛官化に尽力されているらしいです。
 
 過去を振り返れば、日本人船員みんな逃げるよナ。
 あおりをうけて、フィリッピン人船員がとばっちりを食う。



 
はて?
2018/11/23 21:59
<税を追う>歯止めなき防衛費(9)米軍再編費、要求ゼロ 膨らむ予算「裏技」駆使

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018112402000129.html

そこまでして、防衛費を増やす必要性が全く感じられませんが。いっそのこと、一桁減らしたらどうなのでしょうね。


>新型護衛艦22隻導入、「尖閣」警戒監視を念頭

http://www.yomiuri.co.jp/politics/20181124-OYT1T50037.html

でも、積むべき哨戒ヘリは稼働率が(ry。
KU
2018/11/24 09:28
国防企業にもペーパーキャピタの毒が回ってたのね

知らなかった

そこらはマシな産業投資をしてると思ってたけど。
F35、新型空母あたりでは、さすがな力だと思ってたけど
aaa
2018/11/25 09:09

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