軍事技術の先を見る
かつて、90年代にぼくは、将来装甲車は圧倒的に装輪装甲車になる、と「予言」ました。
ところが当時陸自もそうですが、軍オタさんたちは、装軌装甲車の有用性を主張し、装輪装甲車が重用されるというと、「装輪厨」などと揶揄しました。また水田が多い日本では装輪装甲車は使えないという話もありました。
実際の所、現在開発、生産されている軍用装甲車の大多数、恐らく95パーセントは装輪装甲車です。
我が国でもMCVも装輪式など装輪装甲車が主流です。
なぜ、ぼくは装輪装甲車が主流になると判断したのか。
それはカネの問題です。
ざっくり言って装輪装甲車の維持費は装軌車輌の1/3です。
ソ連が崩壊した後、多くの国で国防費が削減されました。
また、装甲車両のネットワーク化、RWSやセンサー、情報把握システムなどの比重がドンガラの装甲車に比べて高くなりました。これららコストがかさみ、装甲車両の値段は上がってきました。
ドンガラ、そしてその維持費を抑えるならば、装輪装甲車を選択するしかない、というのが各国の軍隊の
実情となりました。
整備費用、特にPKOなど遠隔地での長期に作戦では整備費用に加えて、装輪装甲車であれば兵站をミニマイズできます。
無論、装軌装甲車と装輪装甲車はそれぞれ一端があります。
ですがコストという面を考えれば、装輪装甲車が主流になったのは当然の結果であり、それは「予言」ではなく、論理的な帰結です。
また見本市などで多くのメーカー関係者や軍人に取材し、彼らがどう考えているかも参考になりました。
特に南アの取材は大きかったです。90年代までの南アの戦争はまさに現在の非対称戦の前触れだったわけで、南ア国防軍の戦訓を十分に研究すれば、今世紀に入ってからの非対称戦、ハイブリッド戦争がどうなるか、という予測は可能だったはずです。また装輪装甲車が主流となることも予想できました。
一部の残念な軍オタさんたちが、こういう予測ができないのは、情緒を元にしているからです。さらに申せば、現状常に肯定したいという硬直した思考があったからです。
兵器をあたかもアイドルと同じように考えていので、そのアイドルを否定するような結論には目をつぶるわけです。
アイドルは常に他正しい、と。
始めにそのアイドルを全肯定することから論が始まります。そのために都合のいいエビデンスをネットで拾ってきて論理武装して、仲間内で盛り上がるわけですが、元が誤っているで、いくら個理屈をつけても正しい結論にはたどり着けません。
ところが何かの変革が起こるときはそのアイドルを否定されることがあるわけです。
ですが、アイドルが大好きなのでそれができない。
趣味の軍事と、現実の軍事は分けて考えるべきですが、それができない。
なお悪いことに、自分は軍事の専門家だと誤解している場合が多く、議論が紛糾し、議論を相手を「素人さん」呼ばわりしたりすることも見かけます。
A-10攻撃機礼賛も同じです。マッチョな飛行機が好きなだけです。
多目的に使えない、しかも低空で使用して被弾の可能性が高く、維持費が極めて高い特殊なA-10は米空軍御荷物だし、他国で同様な機体の開発も調達もありません。ロシアの攻撃機ぐらいでしょうが、これらもA-10とは異なります。
攻撃ヘリよりA-10がいいのであれば米空軍が米陸軍に押しつけようとしたときに、陸軍が攻撃ヘリを全廃して、A-10を引き受けていたでしょうが、実際は陸軍は断りました。
それでも大本を見ずに、些細なディテールだけを積み上げて自説を強弁するわけです。当然、現実からどんどんはなれていきます。
「最新型戦車が無いと死ぬ病」も同じです。戦車が何のために必要かという視点が欠如してます。
師団規模の機甲部隊が本土に揚陸してくる可能性はゴジラ上陸と同じぐらい現実味が無い話です。
想定されているのは島嶼防衛と、MD、ゲリコマ対処です。
であれば最新型のM1A2やレオパルト2などと殴り合うような戦車は必要ありません。ゲリコマ対処の普通科支援であれば74式の近代化で十分です。
ところが陸幕はありもしないゴジラ上陸に備えて、戦車とMCVを大人買いして、本来必要なネットワークや普通科の現代化という投資を軽視してきました。その点では程度の悪い軍オタは陸幕と同じレベルの思考だと言えなくもないですが。
しかも不思議なことに10式戦車がないと死ぬという人たちは、89式ICVが数も足りず、近代化もされずに、機甲部隊のネットワーク化も存在しないこと(10式のネットワークはローカルです)は目をつぶります。
更に申せばネットワーク化、情報化にもカネが掛かります。
陸自の予算をみれば、戦車につぎ込むカネはないし、その優先順位も低い。
それが理解できません。
問題なのは我が国の世論では納税者として防衛を語る人が少なく、イデオロギーか、この手の偏った軍事知識の軍オタさんの声が大きいことです。
繰り替えますが、防衛にはカネが掛かります。それは無限にあるわけではありません。
限られた予算をどう使うか。買った装備の維持にどの程度のカネがかかるのか、そういう視点が無い、単なる兵器フェチが現実の軍事を語るのは大変危険なことであると思います。
新兵器買ってくれないと死ぬと騒ぐのは、子供がオモチャ売り場で、床に寝転んで手足をばたつかせて高価なオモチャかってくれないとヤダと駄々こねるのと同じです。
親御さんならばそれが子供もに必要か、また家計の中で、オモチャばっかり買えないよねといさめることになります。当然ならがぼくらジャーナリストや納税者が前者ではなく、後者の視点を持つべきあるということです。
■本日の市ヶ谷の噂■
ミネベア製の9ミリ拳銃は2500発も撃つとクラックが入る粗悪な品質、耐久性で、オリジナルとは月とスッポン、ライセンス国産能力は低いとの噂。
ところが当時陸自もそうですが、軍オタさんたちは、装軌装甲車の有用性を主張し、装輪装甲車が重用されるというと、「装輪厨」などと揶揄しました。また水田が多い日本では装輪装甲車は使えないという話もありました。
実際の所、現在開発、生産されている軍用装甲車の大多数、恐らく95パーセントは装輪装甲車です。
我が国でもMCVも装輪式など装輪装甲車が主流です。
なぜ、ぼくは装輪装甲車が主流になると判断したのか。
それはカネの問題です。
ざっくり言って装輪装甲車の維持費は装軌車輌の1/3です。
ソ連が崩壊した後、多くの国で国防費が削減されました。
また、装甲車両のネットワーク化、RWSやセンサー、情報把握システムなどの比重がドンガラの装甲車に比べて高くなりました。これららコストがかさみ、装甲車両の値段は上がってきました。
ドンガラ、そしてその維持費を抑えるならば、装輪装甲車を選択するしかない、というのが各国の軍隊の
実情となりました。
整備費用、特にPKOなど遠隔地での長期に作戦では整備費用に加えて、装輪装甲車であれば兵站をミニマイズできます。
無論、装軌装甲車と装輪装甲車はそれぞれ一端があります。
ですがコストという面を考えれば、装輪装甲車が主流になったのは当然の結果であり、それは「予言」ではなく、論理的な帰結です。
また見本市などで多くのメーカー関係者や軍人に取材し、彼らがどう考えているかも参考になりました。
特に南アの取材は大きかったです。90年代までの南アの戦争はまさに現在の非対称戦の前触れだったわけで、南ア国防軍の戦訓を十分に研究すれば、今世紀に入ってからの非対称戦、ハイブリッド戦争がどうなるか、という予測は可能だったはずです。また装輪装甲車が主流となることも予想できました。
一部の残念な軍オタさんたちが、こういう予測ができないのは、情緒を元にしているからです。さらに申せば、現状常に肯定したいという硬直した思考があったからです。
兵器をあたかもアイドルと同じように考えていので、そのアイドルを否定するような結論には目をつぶるわけです。
アイドルは常に他正しい、と。
始めにそのアイドルを全肯定することから論が始まります。そのために都合のいいエビデンスをネットで拾ってきて論理武装して、仲間内で盛り上がるわけですが、元が誤っているで、いくら個理屈をつけても正しい結論にはたどり着けません。
ところが何かの変革が起こるときはそのアイドルを否定されることがあるわけです。
ですが、アイドルが大好きなのでそれができない。
趣味の軍事と、現実の軍事は分けて考えるべきですが、それができない。
なお悪いことに、自分は軍事の専門家だと誤解している場合が多く、議論が紛糾し、議論を相手を「素人さん」呼ばわりしたりすることも見かけます。
A-10攻撃機礼賛も同じです。マッチョな飛行機が好きなだけです。
多目的に使えない、しかも低空で使用して被弾の可能性が高く、維持費が極めて高い特殊なA-10は米空軍御荷物だし、他国で同様な機体の開発も調達もありません。ロシアの攻撃機ぐらいでしょうが、これらもA-10とは異なります。
攻撃ヘリよりA-10がいいのであれば米空軍が米陸軍に押しつけようとしたときに、陸軍が攻撃ヘリを全廃して、A-10を引き受けていたでしょうが、実際は陸軍は断りました。
それでも大本を見ずに、些細なディテールだけを積み上げて自説を強弁するわけです。当然、現実からどんどんはなれていきます。
「最新型戦車が無いと死ぬ病」も同じです。戦車が何のために必要かという視点が欠如してます。
師団規模の機甲部隊が本土に揚陸してくる可能性はゴジラ上陸と同じぐらい現実味が無い話です。
想定されているのは島嶼防衛と、MD、ゲリコマ対処です。
であれば最新型のM1A2やレオパルト2などと殴り合うような戦車は必要ありません。ゲリコマ対処の普通科支援であれば74式の近代化で十分です。
ところが陸幕はありもしないゴジラ上陸に備えて、戦車とMCVを大人買いして、本来必要なネットワークや普通科の現代化という投資を軽視してきました。その点では程度の悪い軍オタは陸幕と同じレベルの思考だと言えなくもないですが。
しかも不思議なことに10式戦車がないと死ぬという人たちは、89式ICVが数も足りず、近代化もされずに、機甲部隊のネットワーク化も存在しないこと(10式のネットワークはローカルです)は目をつぶります。
更に申せばネットワーク化、情報化にもカネが掛かります。
陸自の予算をみれば、戦車につぎ込むカネはないし、その優先順位も低い。
それが理解できません。
問題なのは我が国の世論では納税者として防衛を語る人が少なく、イデオロギーか、この手の偏った軍事知識の軍オタさんの声が大きいことです。
繰り替えますが、防衛にはカネが掛かります。それは無限にあるわけではありません。
限られた予算をどう使うか。買った装備の維持にどの程度のカネがかかるのか、そういう視点が無い、単なる兵器フェチが現実の軍事を語るのは大変危険なことであると思います。
新兵器買ってくれないと死ぬと騒ぐのは、子供がオモチャ売り場で、床に寝転んで手足をばたつかせて高価なオモチャかってくれないとヤダと駄々こねるのと同じです。
親御さんならばそれが子供もに必要か、また家計の中で、オモチャばっかり買えないよねといさめることになります。当然ならがぼくらジャーナリストや納税者が前者ではなく、後者の視点を持つべきあるということです。
■本日の市ヶ谷の噂■
ミネベア製の9ミリ拳銃は2500発も撃つとクラックが入る粗悪な品質、耐久性で、オリジナルとは月とスッポン、ライセンス国産能力は低いとの噂。
この記事へのコメント
興味深い記事を見つけたもので。
「中国で警察に眼鏡越しで見られたら…それは検問チェックされているのかも!」
https://www.gizmodo.jp/2018/02/chinese-police-smart-glass.html
「北京のLLVision Technologyが供給しているとされる同スマートグラスは、眼鏡越しに写った人の顔をスキャンし、わずか数秒で登録データベースの人物情報と照合可能とされています。」警察でもこれですからね。日本と違って中国では顔写真入り住基カードの様な身分証明書を
皆持っていますからデータベースも簡単に構築できるでしょう。人権的に問題ありそうですがそれは置いておいて同じノリで軍事もやっていればネットワーク化の重要性、データの共有化が大事な事が分かると思います。
ある国立研究開発法人、応用研究の研究所にお勤めの研究員曰く、技術とは、1 ペイされる。つまり産業として成立する。経営ができること。2 基盤となる。インフラとして成立すること。3 汎用性があること。つまり製品となり、バカでも使いこなせる。
1の項目が最優先として考える。
研究者は道楽や趣味で仕事していませんし、子供の夏休みの自由研究ではありません。ビジョンがあるから。研究開発も予算、マンパワー、時間という資源が不可欠で有限である。優先順位を決定して研究開発の仕事をしているわけ。
研究開発も経済性は求められるのは当然で、独り善がりの研究なんかできません。オタク諸君は装備体系のことなんか理解できないでしょうし、責任ないから 言いたいこと言える。 いい身分ですなぁ。
今頃はこの記事を見て「また清谷ガー」とキレるヲタが続出しているのでしょう。いくらウヨ&酷使なヲタ連中が泣こうが喚こうが否定しようが、現実は清谷さんが指摘されたとおり(戦車や火砲の定数削減など)に進んでいるというのに。諦めが悪いと言うか往生際が悪いと言うか。事実を事実として受け入れる度量のない人間ほど、扱いにくい人種はいませんね。
>>>9ミリ拳銃
住重がラ国生産したミニミもアレでしたが、ミネベアもですか...。そんなメーカーに長年納入させていた陸自もアレですよね。拳銃というと、新小銃(HK416で決まりでしょうか)や新拳銃は、いつになったら正式に採用されるのでしょう?
http://www.fnn-news.com/sp/news/headlines/articles/CONN00385225.html
観閲式の実施そのものを取りやめよう、という話にはならないんですねorz。
リアリティのある今の現状を清谷様は伝えて下さるので、ブログの更新が待ちきれません。
ピーターパン達との戦いでは孤軍奮闘されておりますが、心から応援しております。
えっ、味噌も糞も一緒にするな?
軍事・国防に関してお金の事を持ち出すと、「儲けにならない事などするなと言いたいんだろう、この守銭奴め。」みたいな受け取り方をする人もいるようです。確かに軍事は利潤や付加・効用価値を生むものではものではありませんが、「持続できる仕組みを作る」「限られた元手で国や社会のマイナスをより少なくする(ゼロにする事は無限大のコストがかかるのでまず不可能)」ために経済・経営的な視点は必要不可欠です。旧ソ連は欧州の中では後進的でかつどちらかと言えば農業国だったロシアを工業化し、人類初の人工衛星や有人宇宙飛行といった華々しい成果も挙げましたが結局は消滅しました。失業者を出さず国営企業を潰さなかったら国が潰れたわけで。自衛隊も「国は潰れない、国は自分達を潰さない」と高を括っているのかも知れませんが、旧ソ連崩壊も崩壊前にそれを予測した人は少なかったはずです。それに日本の権力者は北朝鮮とかのそれと違い「軍事力こそが最後の砦」でもないですし。
余談ですが中国は日本の生産量に匹敵する量の鉄鋼を余らせているそうですが、体制の都合で減産もままならないと聞いています。ダンピングの連発で世界の鉄鋼業に深刻なダメージを与えないか心配です。
なんでまた、制服の調達に限って問題視するのか理解出来ないのですが。制式化されてから25年以上経っても更新の終わらない小銃とか、いつになったら調達が終了するのか不明な正面装備が山ほどあるのに。そちらを放置するほうが、よほど現場の士気を下げていると思います。
該当記事のURLが抜けておりました。
陸自隊員の新制服 全配布に10年も 予算確保や生地調達苦慮 士気低下の懸念も
http://www.sankei.com/smp/politics/news/180220/plt1802200002-s1.html
失礼しました。
10式戦車と機動戦闘車じゃ、どれにも対処できませんね(笑)
兵器の「進化」も生物のそれと同様に「環境への適応」であり、必ずしも「より強くなる」とは限りませんが、「右肩上がり」しか考えられず認められない人達もいるのでしょう。
文谷氏が言う「制海艦」にも当てはまるのではないかと思われます。「SVTOL機+VTOL母艦」が「CTOL機+(カタパルト付き)CTOL母艦」を打ち負かす事は無いでしょうが、「CTOL機+(カタパルト付き)CTOL母艦」は実質アメリカしか運用しておらず、もしかしたらアメリカも運用が難しくなるかも知れない事を思えば、「CTOL機+(カタパルト付き)CTOL母艦」が自らのコスト高で"自沈"した後に残るのは制海艦かも知れません。生物の世界でも勝者とは「生き残れたもの」であって「タイマン勝負で勝つもの」ではありませんし。尤も「通常戦闘機の(最高速度他の)進歩の鈍化で部分的に追いつけたSVTOL機」であるF35Bを、あたかも超兵器みたいに思っている人達もいるのでしょうが。
最後に軍事技術の世界でも「偶然の産物」とか「悪貨が良貨を駆逐」もあるでしょうから、具体的にどういった事例があるのかと思います。例えば紫電改は「陸戦にも艦戦にも勝ち目の無くなった水上戦闘機が陸上戦闘機に”転進”して、本来烈風が占める位置に部分的にも収まった」代物なのかと。
所詮拳銃はサイドアームでしかないからバンバン撃つことは無いんでこんなもんで良いんだよ、というのも一つの考え方ですがね。
でもこれを戦場で持たされた隊員が最後の最期で使うかもしれない武器が欠陥品でございます、となったら自分なら嫌ですね。
そんなものを平気で納入するミネベア、平気で受領して代金を払っている防衛省の双方共に腐ってるとしか言いようがありませんね。
米軍の次期製式拳銃もSIGになった事だし、トライアルをやって新拳銃をさっさと決めて配備するべきですね、当然ミネベアにラ国させる選択肢は無しの方向で・・・