産経大本営発表 日本の戦闘機エンジンは世界一
次期戦闘機エンジン、民間機用に開発応用も 米国製上回る技術、燃費効率が強み
http://www.sankeibiz.jp/business/news/150317/bsc1503170500001-n1.htm
>米国製上回る技術
>すでに実証エンジンは5トン級では、加速性能の目安の一つである「推力重量比(地上
最大推力÷エンジン重量)」で米国製を上回るなど国産エンジン技術は長足の進歩を続け
ている。
言うまでもなく、西側で主な戦闘機用エンジンメーカーはGE、ロールスロイス、プラット&ホイットニー、そしてスネクマ(サフラン)あたりです。
いままで独自の戦闘機用エンジンも開発したことがない、IHIなど日本のメーカーがこれら一流メーカーを一気に追い抜けるなどと思うのは誇大妄想狂もいいところです。
確かに日本のメーカーはこれら企業の下請けとして、一定部分で能力は高いものがあります。ですがそれが完成品のエンジンメーカーとして実力とはイコールではありません。
エンジンは長年の蓄積、ことに基礎研究と経験工学的な蓄積がものをいう世界です。それが日本のメーカーには充分にありません。
それが出来るているならば、既に素晴らしい民間機用エンジンを開発して、既にこれらの企業を追い抜いているはずです。民間用エンジンならば別に武器輸出にあたりませんから、堂々と市場に算入できます。
ところがあいも変わらず下請けに甘んじています。優秀な国産エンジンと称されるP-1のエンジンも実は試験運転が一流メーカーのそれと比べて、一桁少ない。こんなものが世界で通用するわけがありません。本来必要な試験も端折るような胡乱なエンジンを使うバカはいません。戦闘機用ならば尚更です。
三菱重工にしてもMRJでは散々苦労をしております。下請けから元請けになるのは如何に厳しいかはMRJの現状を見ても想像できるでしょう。
エンジン開発ならば外国のメーカー、政治的な自由度を獲得するためならば欧州勢と組むべきです。それ以外にまともなエンジンを開発出来る手段はありません。
また百歩譲って何兆円もかけてエンジンの開発が実現したとしても、開発費を入れれば他国よりも一桁高いエンジンになるでしょう。そのようなエンジンを調達することが国益になるのでしょうか。
欧米の基礎研究は殆ど行なわず、数分の一の開発費、試験費用で世界一の戦闘機エンジンが開発できるなどというのは妄想です。少なくとも新聞が書くような記事じゃありません。
いつも申しておりますが、日本人は優秀だからという根拠ない選民主義に基づく「願望」は報道ではありません。
>技本幹部によると、高性能のエンジン技術は航空機向けだけでなく、効率の良い発電用
タービン開発にもつながるといい、波及効果は大きい。
産経新聞の記者は基礎的知識が低い上に、まともな取材をしていないのでしょう。仮に知識がなくとも、関連書籍を読み、GEやらロールスロイスやらの日本支社やら、中立的な立場の学者などに取材もできるでしょう。
また自衛隊のOBにしても「ウリナラマンセー」的な意見ではなく、覚めた現実的な意見をもった開発畑の方もいらっしゃいます。そういう人たちを社内のつてをたどればさほどコンタクトは難しくはないでしょう。なにしろぼくのようなフリーランスにできることですから。
ところがそういう取材もやらずに技本の予算を取らんがためのバラ色のお話を、更に脚色してどうせネット版しか読まず金を出して本紙を買ってもくれない「情弱な愛国者」向けの記事を書いています。
例えばスーパー業界の記事を書くのに業界に関する基礎的な知識もない記者がイオンの広報だけの話を聞いてセブン&アイや他のスーパーの取材をしないでまともな記事をかけるでしょうか。
やっている仕事は防衛省からカネがでている御用雑誌であるMAMORならばまだ許されるでしょう。ですが新聞で出す記事じゃありません。「無敵皇軍」と宣伝してきた戦前、戦中の朝日新聞と同じです。
新聞は防衛省の広報誌じゃないでしょう。
産経新聞のスタンスは100パーセント政府の主張に沿うものだ、かつてのプラウダと同じだと仰るならば何も申し上げませんが。
戦闘機のエンジンを本気で開発するならば、輸出市場で相応のシェアをらないと無理です。そのためには何兆円も国費を投じ、10年単位の計画が必要です。ところがそんな覚悟は政府にありません。その覚悟、あるいはそのメリットを問うのがメディア仕事ではありませんか。
小遣い程度のカネで、お遊び程度の研究で世界一の戦闘機用エンジンの開発が可能と吹聴するのは読者をミスリードするだけです。
産経新聞の記者は防衛産業の記事を書くならば、ロイターとかブルームバーグでも出向して仕事を教えてもらってはどうでしょうか。
Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました
【お粗末な自衛隊の「衛生」装備】~チュニジアでテロにあった女性医官は「特別」なのか?~
http://japan-indepth.jp/?p=17323
【陸自ファーストエイド・キットが貧弱な件 1】~陸幕広報は取材拒否~
http://japan-indepth.jp/?p=17056
【陸自ファーストエイド・キットが貧弱な件 2】~中谷防衛大臣の答弁に違和感~
http://japan-indepth.jp/?p=17059
東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
文民統制の放棄!なぜ「空母」が生まれたか
護衛艦「いずも」は、護衛能力のない被護衛艦
http://toyokeizai.net/articles/-/64841
自衛官の「命の値段」は、米軍用犬以下なのか
実戦の備えがないため派兵どころではない
http://toyokeizai.net/articles/-/63496
http://www.sankeibiz.jp/business/news/150317/bsc1503170500001-n1.htm
>米国製上回る技術
>すでに実証エンジンは5トン級では、加速性能の目安の一つである「推力重量比(地上
最大推力÷エンジン重量)」で米国製を上回るなど国産エンジン技術は長足の進歩を続け
ている。
言うまでもなく、西側で主な戦闘機用エンジンメーカーはGE、ロールスロイス、プラット&ホイットニー、そしてスネクマ(サフラン)あたりです。
いままで独自の戦闘機用エンジンも開発したことがない、IHIなど日本のメーカーがこれら一流メーカーを一気に追い抜けるなどと思うのは誇大妄想狂もいいところです。
確かに日本のメーカーはこれら企業の下請けとして、一定部分で能力は高いものがあります。ですがそれが完成品のエンジンメーカーとして実力とはイコールではありません。
エンジンは長年の蓄積、ことに基礎研究と経験工学的な蓄積がものをいう世界です。それが日本のメーカーには充分にありません。
それが出来るているならば、既に素晴らしい民間機用エンジンを開発して、既にこれらの企業を追い抜いているはずです。民間用エンジンならば別に武器輸出にあたりませんから、堂々と市場に算入できます。
ところがあいも変わらず下請けに甘んじています。優秀な国産エンジンと称されるP-1のエンジンも実は試験運転が一流メーカーのそれと比べて、一桁少ない。こんなものが世界で通用するわけがありません。本来必要な試験も端折るような胡乱なエンジンを使うバカはいません。戦闘機用ならば尚更です。
三菱重工にしてもMRJでは散々苦労をしております。下請けから元請けになるのは如何に厳しいかはMRJの現状を見ても想像できるでしょう。
エンジン開発ならば外国のメーカー、政治的な自由度を獲得するためならば欧州勢と組むべきです。それ以外にまともなエンジンを開発出来る手段はありません。
また百歩譲って何兆円もかけてエンジンの開発が実現したとしても、開発費を入れれば他国よりも一桁高いエンジンになるでしょう。そのようなエンジンを調達することが国益になるのでしょうか。
欧米の基礎研究は殆ど行なわず、数分の一の開発費、試験費用で世界一の戦闘機エンジンが開発できるなどというのは妄想です。少なくとも新聞が書くような記事じゃありません。
いつも申しておりますが、日本人は優秀だからという根拠ない選民主義に基づく「願望」は報道ではありません。
>技本幹部によると、高性能のエンジン技術は航空機向けだけでなく、効率の良い発電用
タービン開発にもつながるといい、波及効果は大きい。
産経新聞の記者は基礎的知識が低い上に、まともな取材をしていないのでしょう。仮に知識がなくとも、関連書籍を読み、GEやらロールスロイスやらの日本支社やら、中立的な立場の学者などに取材もできるでしょう。
また自衛隊のOBにしても「ウリナラマンセー」的な意見ではなく、覚めた現実的な意見をもった開発畑の方もいらっしゃいます。そういう人たちを社内のつてをたどればさほどコンタクトは難しくはないでしょう。なにしろぼくのようなフリーランスにできることですから。
ところがそういう取材もやらずに技本の予算を取らんがためのバラ色のお話を、更に脚色してどうせネット版しか読まず金を出して本紙を買ってもくれない「情弱な愛国者」向けの記事を書いています。
例えばスーパー業界の記事を書くのに業界に関する基礎的な知識もない記者がイオンの広報だけの話を聞いてセブン&アイや他のスーパーの取材をしないでまともな記事をかけるでしょうか。
やっている仕事は防衛省からカネがでている御用雑誌であるMAMORならばまだ許されるでしょう。ですが新聞で出す記事じゃありません。「無敵皇軍」と宣伝してきた戦前、戦中の朝日新聞と同じです。
新聞は防衛省の広報誌じゃないでしょう。
産経新聞のスタンスは100パーセント政府の主張に沿うものだ、かつてのプラウダと同じだと仰るならば何も申し上げませんが。
戦闘機のエンジンを本気で開発するならば、輸出市場で相応のシェアをらないと無理です。そのためには何兆円も国費を投じ、10年単位の計画が必要です。ところがそんな覚悟は政府にありません。その覚悟、あるいはそのメリットを問うのがメディア仕事ではありませんか。
小遣い程度のカネで、お遊び程度の研究で世界一の戦闘機用エンジンの開発が可能と吹聴するのは読者をミスリードするだけです。
産経新聞の記者は防衛産業の記事を書くならば、ロイターとかブルームバーグでも出向して仕事を教えてもらってはどうでしょうか。
Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました
【お粗末な自衛隊の「衛生」装備】~チュニジアでテロにあった女性医官は「特別」なのか?~
http://japan-indepth.jp/?p=17323
【陸自ファーストエイド・キットが貧弱な件 1】~陸幕広報は取材拒否~
http://japan-indepth.jp/?p=17056
【陸自ファーストエイド・キットが貧弱な件 2】~中谷防衛大臣の答弁に違和感~
http://japan-indepth.jp/?p=17059
東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
文民統制の放棄!なぜ「空母」が生まれたか
護衛艦「いずも」は、護衛能力のない被護衛艦
http://toyokeizai.net/articles/-/64841
自衛官の「命の値段」は、米軍用犬以下なのか
実戦の備えがないため派兵どころではない
http://toyokeizai.net/articles/-/63496
この記事へのコメント
自衛隊と日本の防衛産業を貶しまくる一方で欧州を持ち上げまくる清谷信一氏
素人の認識としては両者の中間がちょうど良いのでしょうね
わかりやすくて助かります
産経の記者さんはアメリカがF22に至るまでの努力をちゃんと取材したのでしょうか?
したならばこんなお花畑全開の記事は書けない筈なんですがね・・・・
機動戦士ガンダムのRX78みたいな一品ものの試作機を作るだけなら頑張れば出来るかも知れませんが、ある程度生産するのであればやはり価格を何とかしてくれないといけませんが、安く作るのは無理でしょうからね・・・
産経の記事は空想であって、現実と空想の中間なんて無いですよ。旧日本軍は第二次大戦中、迂回奇襲作戦(ガダルカナル、インパール等)を連発して全て失敗してましたが、主に参考にしたのが織田信長の桶狭間の戦いでした。戦後、この戦いの史料的研究が進み、旧軍が集めて研究した史料は江戸時代の小説、つまり作り話だと判明しています。戦国時代の史料には、信長が迂回も奇襲もしていない事がハッキリ書かれています。旧軍人は、江戸時代の小説家の空想に基づいて作戦を立てた事になるのです。空想的な作戦は、空想の世界でした成功しません。産経の記事は空想であり、空想に基づいて政策や作戦を立てられてはたまりません。清谷氏の評論やレポートの中間を考えたいなら、他の実証的なレポートと比べるべきで、空想と比べても意味は無いでしょう。
要するに安直に自尊心を満たしたいだけでしょう。それだから自尊心を満たすのに不都合な事には目を背けるわけで。例えば三菱MRJも多くの(信頼性の高い)海外製部品を使っていると知れば目を背けるのでは(一つの機体にまとめ上げる事が三菱のチャレンジである事は関係なし)。
三菱もホンダも「リーガルジェットやビジネスジェットは市場が広がるから、新参者にも入りこむ余地がある」として参入しました。一方戦闘機(のエンジン)は「高コスト化と数の減少の悪循環」で新規参入どころか既存メーカーが生き残るのも困難な状況に思われます(老舗でも)。となればそこに入るとすれば既存メーカーと組むか、いっそ買収するぐらいしかないように思われます。
偏向報道になってしまうのではないでしょうか?