清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所 

アクセスカウンタ

zoom RSS 海自は次期哨戒機を何機調達できるか。

<<   作成日時 : 2010/06/10 11:00   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 15 / トラックバック 0 / コメント 23

 海幕は次期哨戒機P−1の調達数は65機+補機7機の合計72機としています。

 果たしてそれは可能なのでしょうか。

 いつもしつこくて恐縮ですが、普通軍隊で調達数も調達プログラムの総額も決めないで新兵器開発することはありません。

 ところが我が国では国会が調達数も総額も決めないのにプロジェクトが始まります。

 実際には100機調達するのか、50機しか調達しないのかもわからないのに調達が決まってしまいます。無論自衛隊は独自に見積もってある程度の腹案をもっています。ところが政治がこれを了承していないわけです。
 にもかかわらず、開発や調達が始まるわけです。

 不思議なことに文民統制にことのほかご熱心な北沢防衛大臣は、このことに触れようともしません。
 現場の指揮官の言を小姑のように論うよりも、こちらの「軍部の独断専行」の方が由々しき問題だと思うのですが。

 しかも幕僚監部は開発費は技本の予算なので調達コストには含まれない、という態度をとっています。
 こんな状態ではまともな調達計画なんぞできるわけはありません。丼勘定以前の問題です。

 さて、海自は現在80機のP―3Cを運用していることになっています。実際は更に大綱の変更で余剰となった15機ほどがローテーションで使用されています。
 対してP−1は65機+補機7機の合計72機を調達しようと目論んでいます。

 問題はP-3Cの多くの機体が整備費の不足で、地上にとまっまま、中には部品の共食い整備で飛べない機体もあります。具体的な稼働率はわかりませんが、あれこれ話を聞くと7割以下らしいようです。


 さて、これからP−1の調達が本格化します。機体の価格は現状一機あたり211億円です。これに更に初度費がかかります。
 メーカーの川重は纏めて調達しても値段はあまり下がらないといっています。つまり一機買っても、10機かっても値段は変わらんよ、というわけです。

 果たして海自はこの高い機体と高い維持費を払い続けることはできるのでしょうか。国産の専用エンジンを4発搭載したP−1の維持費は極めて高いものになります。

 現在のP−3Cですら、予算不足のために稼働率が下がっているわけです。P−1を調達したとして、まともに運用できるだけの維持費と訓練費が確保できるのでしょうか。
 例えばXP−2の稼働を保障するために護衛艦の数を減らすとか、潜水艦の数を減らすとか、基地をいくつか閉鎖するとかの話は聞きません。唯一救難ヘリ部隊が空自のそれと統合されて空自が運用することになるぐらいでしょうか。

 常識的に考えればXP−2の調達数を減らすしか解決方法がないでしょう。
 恐らく海幕は抵抗するでしょうが、財務省は「だって、P−3Cの稼働率が低いのに放置しているじゃないですか。それで問題があるならば何故他の予算を削ってもでもP−3Cの稼働率を上げないのですか?」と質するでしょう。
実際海幕の中でもXP−2の調達数削減やむなしという声も聞こえてきます。

 たとえばの話、72機を調達しても整備費が確保できず、5割、36機しか稼働しないならば、調達を40機ぐらいに減らして、整備費を確保した方が合理的という見方もできます。

 海自も政府も魔法を使えるわけではないし、打ち出の小槌や金の卵を産むガチョウをもっているわけではありません。

 限られた予算を各分野に割り振っているわけです。その一つの分野の予算が10パーセントを占めていたのが、20パーセントになったら、どこかを削って増えた10パーセント分の予算を賄う必要があります。小学生でもわかる簡単な算数です。

 しつこいようですが、天からお金は降ってきません。

 海自はP―1を72機調達するならば、何かを諦めないといけません。それが嫌ならば調達機数を減らさなければなりません。例えばP−1の調達機数を大幅に減らし、一部はP−3Cの延命でしのぐもの一案です。
 
 P−3Cの寿命はまだ大幅に残っています。
 搭載機材の近代化であればP−1で開発したものを流用できます。ただ二種類の哨戒機を運用することによるコストアップは問題となります。が、XP−2の調達機数が年に1〜2機程度であれば72機調達するためには30〜60年程度かかる計算になります。

 調達が年3機の場合24年はかかります。年4機ならば19年かかります。その間P―3Cは現役に留まる必要があるので、2機種並列でも、実はあまり憂慮することでは無いかも知れません。

 本来いつまでに調達を完了するという期間を区切るべきです。締め切りのない調達や設備投資はあり得ません。
  
 川重は量産してもコストが下がらないといっていますから、財務省は量産する必要はなし、と判断する可能性は高くなるでしょう。とならば大量発注は望めないでしょう。
 まあ、そもそも例によって何年までに調達を終了し、相応の部隊を戦力化するという縛りもありませんから、

 72機調達をするのであれば何か節約が必要です。

 例えば潜水艦の建造所を現在の2箇所から1箇所に減らします。となると、毎年建造しなくても済むようになります。となると発注は二年に一度でOKとなります。
 また現在のような巨大な潜水艦ではなく、もっと小さな浅い海で運用が便利な潜水艦も合わせて生産してハイ・ローミックスをするという手もあります。

 つまり防衛産業の再編です。

 その他、米国製の3倍もして、性能が劣る(同等、それ以上ならば何故わざわざリムパックには米国製ソノブイを購入・使用するのでしょうか)哨戒機用のソノブイの国産をやめることも一案です。

 海自がどうしても新哨戒機は72機欲しい、その稼働率も確保、訓練費用も削らないというのであれば、その予算の根拠を納税者に対して示すべきです。
 整備費足りずに動かない機体をハンガーに並べ、飛べる機体も訓練費用が削減されて練度が低いのでは何のために新哨戒機を導入するのかわかりません。





防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備 (中公新書ラクレ)
中央公論新社
清谷 信一

ユーザレビュー:
自衛隊の調達と装備に ...
防衛費へのわかりやす ...
無駄を省く仕組みのモ ...
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ商品ポータルで情報を見る



専守防衛──日本を支配する幻想 (祥伝社新書195) (祥伝社新書 195)
祥伝社
清谷 信一

ユーザレビュー:
「専守防衛」について ...
「専守防衛」というの ...
皆が口にする「専守防 ...
amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by ウェブリブログ商品ポータルで情報を見る


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 15
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた 驚いた 驚いた
面白い 面白い
かわいい

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(23件)

内 容 ニックネーム/日時
海外でも、その時の財政状況で延期だの縮小だの多いですがね。悲惨な稼働率も良く記事になっている。
日本もそれで良しという訳ではないですが,1年で終わりそうな子ども手当とか、言っても詮無し。
K
2010/06/10 12:15
>唯一救難ヘリ部隊が空自のそれと統合されて空自が運用することになるぐらいでしょうか。
これは初めて聞きましたが、本当でしょうか。となると、機種も統一されることになるのでしょうね。先日、岩国で南極へ行ったCH-101の操縦士にお話を聞くことができましたが、CH-101は起動させるのに時間がかかるようです(一度、飛んでしまえば問題はないそうですが)。
フロッシュ
2010/06/10 12:52
救難部隊は統合されます。

既に新型機種選定もぼちぼち始まっています。重工のUH−60の改良型(Kベースにあらず)とNHー90の一騎打ちになりそうな雰囲気です。

キヨタニ
2010/06/10 13:11
キヨタニさま、どうもありがとうございました。確かに任務が重なっている部分があるので、合理的な判断だと思います。
そうなると海自の救難部隊は、そのまま空自へ移籍することになるのでしょうか。
フロッシュ
2010/06/10 13:39
キヨタニ様、防衛省H19事前の政策評価には、4機一括調達のほうが2ヵ年で2機ずつ調達するよりも、約141億円削減できるとあり、H20予算に於いては646億円で4機予算化しております。また、H20度の調達実績では、4機(機体・エンジン)で710億円とあります。一方、H22予算では1機で211億円となっており、川重さんの見解と違い、量産効果があるように見受けられるのですが、如何でしょうか?また、中期防の狭間に位置したH22予算制定の状況は考慮する必要はあるように思えるのですが。他方、先般、「契約制度研究会」を設置する旨、防衛省より発表がありました。キヨタニ様のご努力の一端が良い形で結実されたかのよう、一読者としてうれしく思います。
関心
2010/06/10 16:38
 ご指摘のように量産効果はありますし、実績もあるわけです。
 ですが川重は最近は内局や財務省、経産省などに対してそれが「出来ない」と仰っているようです。
 何かオトナの事情があるようです。恐らくは過度なディスカウントを強要されることを警戒しているのでしょう。
が、それは自分の首を絞める結果になるのでは、と思っています。
キヨタニ
2010/06/10 17:41
哨戒機の件なのですが、現在、中国海軍の兵力増強が著しい今日、キヨタニ様としては海自は何機ぐらい運用することが現実的だとお考えでしょうか。もし、よろしければキヨタニ様のご見解をうかがえれば幸いです(もし、著書に記述があるようならば、そちらを拝見しますが)。
フロッシュ
2010/06/11 10:12
キヨタニ様、なるほど、オトナの事情でございましたか。突然の仕様追加などがあったのかと心配しておりました。さて、H21LCC管理年次報告書にある、H30年台までの約70機調達方針の場合、今後中期防あたり約16機(H20実績ベースで約2800億円)必要となりますね。オトナの事情が解消されたとしても、19DD約4隻分ですか。「ゆき」「きり」型の代替ペースをゆっくり且つ小型化・減数方向で調整したとしても、大変な額です。当方、P-1の配備運用は、哨戒任務達成能力向上だけでなく、各種兵装等投射・搭載プラットフォームとして、死活的に重要なものと理解しております。例えば、16大綱での配備目標を達成したMD関連予算・今後の計画を少し穏やかな形にして頂いてでも、なんとか当初計画通りのP-1を配備運用して頂きたいと願っているのですが(でも、世論はMDよりでしょうね)。
関心
2010/06/11 14:03
>何機ぐらい運用することが現実的

率直に申し上げてわかりません。常識的に考えれば、P−3Cより進出速度があるので(なおかつP−3Cの稼働機が少ないので)、数を減らしても大丈夫ということになります。
実際問題として、P−1の実力がどの程度なのか、また中国海軍の潜水艦戦力の増強をどの程度に見積もるのかにもよって必要とされる数は変わってくるでしょう。P−1の性能に関しては悲観的な噂も多く聞きます。

また、聞くところによるとUAVの運用機能やAIRBOSSの様な装備を搭載するのはペイロードの制限から無理、その分追加の機体が必要だなどとの話も聞こえてきます。
本来電子戦機などの派生型も含めて調達計画を立てるべきです。

あとはその他の予算などとの折り合いをどうつけるかによって調達可能な機数は変わるでしょう。

>H21LCC管理年次報告書
これはあくまで単なるシュミレーションにすぎないわけです。国会が承認した計画でもなんでもない。ですから調達数や調達期間を保証するものでもありません。
個人的には調達機数削減になるのではないかと、予想しています。
キヨタニ
2010/06/11 14:41
予算の有効活用としては艦艇の推進器に統合推進システムなどを導入して燃料費などを節約するという方法もあります。
で、浮いた予算を装備に回すとか。

が、未だにタービン一本槍ですからね。海幕も頭を切り換えないといけないのですが、それが出来ない組織なのでしょう。
キヨタニ
2010/06/11 14:46
キヨタニ先生の「防衛破綻」と「専守防衛」買いました。軽装甲機動車の改良型が開発されていたとは驚きでした。例のIED探知車?の構想図の端っこに書かれていた車両だと思うのですが違いますかね。

キヨタニ先生に質問があるのですが、今回の防衛大綱見直しや、新中期防策定などで陸・海・空各幕僚監部はどんな装備の新規調達や組織の見直しを考えているのでしょうか?
また、麻生前政権時に一部雑誌などで導入が噂されていたトマホークなどの長射程ミサイル等を導入する気は現在の防衛省にはあるのでしょうか?

差支えがなければキヨタニ先生が知っている範囲内で教えていただけないでしょうか。
松本信二と申します
2010/06/11 21:38
>軽装甲機動車の改良型が開発

まだ検討段階のようです。
大綱や中期防に関してはまだあまり洩れ伝わってきません。事前に情報が漏れるとあれこれ大変ですから情報管制が敷かれているようです。
先に述べた水陸両用装甲車などは新アイテムですが、その他簡易型の自走榴弾砲の開発と調達、海空救難ヘリ部隊の編成、それから恐らくは特殊部隊用のヘリの調達なども俎上にのっているでしょう。

キヨタニ
2010/06/11 23:56
わざわざ答えてくださりありがとうございます。
キヨタニ先生のブログや著作を見るに日本の国防の現状が心配で仕方がありません。民主党政権の防衛力整備に関する考えもいまいちよく解りませんし・・・・・。(自民党のように民主党も党として防衛大綱案なんかを出してくれると解りやすいんですがね)

これからもキヨタニ先生のブログと著作に期待しています。石破先生とまた対談本などを出してください。
松本信二
2010/06/12 01:07
>XP-2
とうとう幻覚を見るようになったか?
あほくさ
2010/06/16 19:22
あほくさ氏
清谷氏は極秘の新兵器調達情報をキャッチする天災ですから。いつも誰も知らないのですが。
例>小松のピラーニャ
復活ぐすたふ
2010/06/16 20:25
要らんP−3Cを売って運用予算調達すればいいんじゃね

2010/06/17 16:43
あ氏
兵器輸出の為の法案が通る頃には
耐用年数超過でスクラップ同然。
寝言は寝て言いなさい。
ぐすたふ
2010/06/18 01:00
>調達プログラムの総額も決めないで新兵器開発することはありません

最初に決めた総額で収まったプログラムがどれだけあるのかは非常に疑問ですが(笑)。
ただ、C-X/P-Xのプログラムでもそうですけど、開発にかかる総額を防衛省の事業評価で試算したうえで初年度の予算を請求してますし、概算要求の時点でLCC管理年次報告書が提出されている以上、総額は決まっていると見てよいのではないでしょうか。むしろ研究開発と生産を分けているので、その分判断がしやすくなっていると考えます。あとは政治の問題ってことですが、こればっかりは自衛隊が口出ししちゃいけない問題ですからねえ。
KEI
2010/06/22 01:08
>概算要求の時点でLCC管理年次報告書が提出されている

新戦車を30年もかけて途中近代化もしないで600両も調達するとかいうアレですか。
閣議決定も国会で承認もされていない単なる試算にすぎないんですけどね。
それで勝手に陸幕が調達数と総額を決めているなら「軍部」の独断専行ですよ。

それに装備の調達を政府に要求するのは最終的に自衛隊ではなくて防衛省ですけどね。
とおりすがり
2010/06/22 01:30
LCCのはあくまで「何両調達したら幾らかかるか」という試算。プログラムの開始時点で「何両、何隻整備する」ってのは出てる場合も多いから(アテにならないですけど)そっからわかると思いますよ。中期防衛力整備計画でも何をどれだけ調達するかは明示されているし(これもあんまりアテにならないけど)、それは閣議決定も受けてますね。

そういった試算や概要を予算請求より前に出しているんだから、それを議論しないのはもう国会の責任でしょうね。。

それと、詳しいようなので教えていただきたいのですが、プログラムの最初に試算した経費の中に近代化改修の費用がどのように含まれているか、例も含めて教えてくれませんか?どのように試算しているのかが分からないのでぜひ知りたいです。
KEI
2010/06/22 20:50
幕で見積もって数字はだすけども、政治がオーソライズしない。清谷氏が言っているとおり。
中期防はその期間の買い物リスト。そのあとは
しらねーよ。というわけ。

だけど大綱では何をいくつ買うのか明示されない。例えば戦車ならどんな旧式でも数が揃っていれば問題ない、そんなことろ。

普通は近代化の予算は計上しない。ただ、ユーロファイターみたいに、スパイラル的に開発する場合はある程度目処を立てるみたい。
もっともご指摘のように予算がオーバーするの
が昨今の傾向。
とおりすがり
2010/06/23 00:31
大綱で何をいくつ買うかまで具体的に縛るメリットが無いと思う。プロジェクトが途中で変更されることはそれなりの頻度であるわけだから、それが大綱の見直し期間と合致しないでしょうな。正直、目標値は大綱から切り離してもいいんじゃないかなと思うくらい。
しかし、空自も海自もある程度はっきりした調達数の目標は出しているからLCC報告書とかで値段も結構わかるけど、陸(特に車両系)はあまり見当たらないね。まあ、まともに議論してもらえないならそもそも出す意味が無いんだけど。

近代化はやってもあんまり意味ないものも含まれるから(74式G型とか)、計上しないのは当然っちゃ当然なのかな。
KEI
2010/06/25 00:33
リムパックで海自が米国製ソノブイを使うのは税金を無駄にしないためです.(バカスカとんでもない数を使う消耗品をわざわざ日本から空輸する費用を節約するため)
高くても国産のソノブイや弾薬類を開発して使うのは有事の補給能力を維持するためです.
とおりすがり
2014/07/21 04:11

コメントする help

ニックネーム
本 文
海自は次期哨戒機を何機調達できるか。 清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所 /BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる