参議院 外交防衛委員会集中審議 民主党の防衛調達関連の質問は何故弱いか?

 さて、本日参議院外交防衛委員会の集中審議のテレビ中継がありました。たまたまこれを見ていたのですが、民主党尾立源幸議員が防衛調達に関して質問しておりました。
 
その質問は掴みとして、同議員はぼくが協力した週刊朝日の日本と外国の兵器の価格差に関する記事を使っておりました。
 で、問題は「F-16」と「F-2」をの値段は比較していたりするわけです。これは拙いでしょう。フリップにも単に「F-16」と書いてある。
 
 いうまでもありませんがF-16にもA/B、 C/D(ブロック30とか、50とか60とか色々あるわけです)多用なモデルがあります。それによって装備やグレードが違うわけですから、F-2に相当する機体、例えばブロック50/52当たりを比較しなければフェアではありません。例えばA/BとF-2を比較するのあればそれは詐欺です。
 
 F-2はF-16Cをベースに開発された機体ですからその元になった機体よりも値段が高いのは当たり前です。それを元の機体より値段が高いというでは批判ではなくインネンです。

 また「F-16」は70年代から調達されてきた機体です。単純に70年代と今世紀に入ってからの調達では仮に同じ機体を調達してもインフレを加味すれば調達コストはかわってきます。ですから、どの年代の調達かということも重要になってきます。

 しかしながら、どう考えてもF-2と同程度あるいはそれ以上の性能を持った「F-16」を比較すれば後者の方が割安ですから、そこを堂々と突けば宜しいわけです。このあたりをキチンと詰めて質問をしないと、議論が更に先に進まないわけです。
 
 「F-16」は全部同じみたいな、胡乱な紹介の仕方をするから石破大臣に逆襲される隙を与えているわけです。

 しかも答弁に立った石破大臣は「その記事の元ネタは『間違いだらけの自衛隊兵器カタログ』でしょう」と、余裕で切り返していました。
 不思議なことに尾立は石破大臣が答弁しようすると、それを何度も制しました。大臣の逆襲を防ぐためでしょうが、これはTV的には極めて印象が悪くなります。


 同じように陸自のAH-1Sと海兵隊のAH-1Wを比較していました。陸自のAH-1S(米陸軍のAH-1Fに相当)は元来米陸軍向けに開発されたモデルでエンジンは単発です。対してAH-1Wは双発で値段はAH-1Fより高いわけです。ハッキリ言えば陸軍のAH-1とは別な機体です。同議員はこれを1機15億円と紹介していました。わざわざ高いモデルを持ってき比較するとは不思議な話です。

 しかもAH-1SとAH-1Fの写真のフリップの名前のキャプションが入れ替わっている。つまりAH-1FをAH-1Sと紹介し、AH-1SとAH-1Fと紹介していたわけです。

 米陸軍の調達値段と比較し、「米軍がとっくに調達を終えた80年代半ば以降も一世代古いこの旧式を、8倍以上の高い調達単価で生産する必要があったのか」と突っ込みを入れるべきでした。
 
 これでは追及に迫力が出ようはずもありません。

 ほぼ同じ条件というのであれば、陸自のAH-64Dと英空軍が採用したAH-64Dとの比較をすべきだったでしょう。予定していた調達機数も概ね同じ、しかもどちらもライセンス生産です。多少の仕様変更はありますが、概ねイコールコンディションです。

 英国の調達は概ね1機60億円、陸自は85億円以上(60機程度ならば13機だと約120億円ですが)。この違いがどこから出てくるのか、こういうことを質問すべきではないでしょうか。

 で、このセンセイは輸入装備が高いのは商社を介しているからだと仰る。確かにそういう部分はあります。ですが、防衛省が直接調達ができないわけです。
 ノウハウも人員もいないわけです。前から言っておりますように英国は装備調達部門が約2万9000名、防衛省は約850名、英国と同じレベルの人員が必要となるのであれば、差し引き2万8000名が必要になります。
 即ち陸自4個師団分、あるいは一個方面隊丸ごとの人数です。そのくらい増やせていうのでしょうか。
 いまの防衛省の陣容では直接輸入はできない。にも関わらず商社を通すなと、出来ないことをやれと仰るのは、無責任であり政治家の弁ではなくて評論家です。いえいえ評論家ならもう少し気の利いた突っ込みをいれるでしょう。

 それからこのセンセイは「ジェーン年鑑とかで調べれば装備品の値段がわかる」と仰りましたが。本当にジェーン年鑑をご覧になったことがあるのでしょうか。色々あるジェーン年鑑には実は価格はあまり記されていません。
 むしろジェーンのオンラインシステムのご利用をお勧めします。特にJDWほかジェーンズの雑誌類、年鑑すべてカバーするパッケージがありますので民主党におかれても、是非これをご利用ください。値段は決して安くないですが政党は国から補助金をもらっているわけですから、こういうものに使っては如何でしょう。
 もっともいくら宣伝してもぼくのJDWのギャラが上がるわけではありません。念のため。


 そもそもこういう質問をするならば、

 オレに聞けよ、オレに!

 とは、言いいませんが、事前に専門の人間にレクチャーを受けるなり、チェックを受けるべきでした。別にあたしも国益になるのであれば、民主党でも共産党でも協力を拒みはしませんよ。基本的には(タダでいくらでもこき使えると思われても困りますが)。

 週刊誌の記事を元に質問すること自体、悪いことではありません。ですが、週刊誌の記事は読者の理解のレベル、あるいは誌面の物理的な制約から充分に価格比較の前提条件を説明したりできません。実際この記事に関してぼくは記者に5、6時間に及ぶレクチャーをしています。ですが、それがすべて記事になるわけではないわけです。

 ですから、あくまで記事はきっかけとして使い、それを書いた人間なり、専門家に頼んでより深く掘り下げて、国会での質問を練るべきだと思います。


間違いだらけの自衛隊兵器カタログ-改訂版 1999年 アリアドネ企画
(清谷信一・プロデュース)
間違いだらけの自衛隊兵器カタログ

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この記事へのコメント

土門見人
2007年12月13日 21:09
 そういや、対テロ特措法審議時、スポーツ新聞を論拠に小泉総理に国会質問した社民党議員がおりましたな。活字になったものを、疑いもせずに信じるのは、怠け者の証拠です。週刊誌でも単行本でも、活字になるのは集めた資料の中の何分の1かで、省略された情報も知らないと正確に理解できないということを、ミンスの議員は知らないのでしょう。
へろ
2007年12月14日 05:31
私は早く衆議院解散はしないほうがいいと思っています。

現在の民主党の作戦としては民主党での参院での議員立法・参院での証人喚問がある。
参議院立法での与党議員からの質問には民主党参議院議員は(国会答弁という本番では)民主党衆議院議員の力を借りることなく、答弁しなければならない。参議院の証人喚問でも、民主党参議院議員は(国会という本番では)民主党衆議院議員の力を借りることなく、質問の段取りなどを考えなければならない。

これらのことを続けていくにつれて、民主党参議院議員の政治家スキルのアップしていくことに私は期待したい。
総選挙よる政権奪取は遅ければ遅いほど、民主党参議院議員は鍛えられる舞台に立たざるを得なくなる。
guest
2007年12月14日 08:43
残念ながら、自公にも、民主にも防衛技術の専門家が居ないように見えます。問題の本質は、もう世界の兵器研究開発動向が、有人機から無人機へ、切り替わる
状況にありて、有人戦闘機(これの配備は全く意味無し)の機種選定を議論している愚かさにあると思います。この軍事革新(無人化/遠隔化)の推進は、平成大本営では不可能に思う。更迭された元国防総省ラムズ長官の沖縄演説は、日本の民間エンジニアへ、この革新自主研究開発を促したとしか思えない(防衛の一部民営化) 日米軍事官僚の有人兵器至上主義の打破が重要とラムズ長官は考えたものと思う。 
とーりすがり
2007年12月14日 23:08
この国会中継を聞くともなしに聞いていて、どこかで見聞した覚えのある内容だ?と思ってたのですが、なるほど。情報ソースに一言の挨拶もないとは、この議員の人間性がよく現れているというものです。同時に、議員秘書の社会常識の無さもですね。質問原稿作りは秘書の力量がものをいいますから。
まあ大臣が石破氏だからよかったようなものの、派閥順送り人事で大臣ポストにありついたような議員だったとしたらまず確実に答弁に窮していたでしょうから、あれでも民主党としてはよかったのかもしれません。現に総理は嵌められてましたし。
ところで、F2の設計段階で、日米貿易摩擦の影響を食らって技術供与が止められた経緯の追及もあれば面白かったと思うんですが、そんなことはどこの政党にも期待できそうに無いですね。
guest
2007年12月15日 10:00
民間企業で、何人ものエンジニアが航空機産業の自主研究開発にチャレンジしていていると、どこからともなく圧力が掛かり、挫折してエンジニアを何人も見ています。故に、国家や軍や企業に頼ることなく、趣味的研究会で、無人機に取り組み、自主研究開発するしか我が国であれ、アジアであれ、欧米に頼ることなく
航空機産業の勃興は不可能に思える。アキバ地球村として、コミニテーを構築し、国家、軍、企業に頼ること無く、自律+遠隔手動操縦飛行デバイスの研究開発、試作、シミュレーションに取り組んだ理由である。 この芽生えの延長でしか、欧米の飛行技術隷属を離脱する方法は無いと思う。
2007年12月17日 23:52
週刊朝日編集部にこのセンセイのところから連絡があったので、ぼくの連絡先は教えておいたそうです。が、ぼくにはコンタクト取ってこなかったわけです。
ぼくが嫌いなのは長妻昭と小沢一郎なだけなんですが。

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