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zoom RSS 日経産業新聞の愛国的大本営発表 いつから同紙は産経新聞になったの?

<<   作成日時 : 2014/07/20 20:02   >>

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 今ヒースロー空港でビールを飲んでいます。もうすぐ搭乗です。
 
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 ウエイトコントロールのため、ビターもチップス(フライドポテト)も封印していたのですが、まあ最後だからいいかと。因みにチップスは自主規制でハーフポーションです。

 英ファンボローで開催中の世界最大級の航空展示会「ファンボロー国際航空ショー」。
日本からの防衛装備品で注目を集めているのが川崎重工業の哨戒機「P1」だ。海上から
潜水艦などを探知する監視航空機。オールジャパンの粋を集めた新型機は、世界の先頭を
走る米ボーイングの「P8」との一騎打ちに挑む。


川重、新型哨戒機「P1」でボーイングと一騎打ち
http://www.nikkei.com/article/DGXBZO74435040Y4A710C1000000/

防衛省御用達の広報誌、MAMORでもこんな夜郎自大記事は書かないでしょう。

P-8とP-1では月とすっぽんです。インドや中国の新興自動車メーカーが、我が社のクルマはメルセデスやトヨタの高級車と対等に勝負できる!!!などというようなものです。

そもそも川重にはそんな気はないですし。海自も「我が軍の最新最高機密を外国に手渡すものか」とか、息巻いちゃうでしょう。大した新兵器じゃないのに。
まるでマニアが始めたマニアショップみたいなものです。商品に愛着があって、自分が気に入った商品は全部自分のものにして、いらないものだけ、店頭に並べる。で、売上が立たずに店を畳む。まあ商売の常識と当事者意識の欠除ですが、自衛隊・防衛省もセンスは同じです。


川重がやっているC-2の民間転用型にしても、やる気はありません。不可能です。エアバスのA400Mは開発と同時に耐空証明を取っています。ところがC-2では何もやっていない。
つまりA400Mに較べて恐らく何倍も高いコストを掛けて耐空証明を取らないといけない。で、民間市場でそのコストを載せた値段で、かなりの数を売るのは実際無理で、これは川重の人間も認めていました。実際に商売するならば軍用型が現実的だと。

ところが売ります、というスタンスで出展している。しかも新しいパンフでも最大ペイロードは30トンのまま。不当表示です。世の中を舐めています。

受注競争ではボーイングとつばぜり合いを演じることになるP1
このキャプション書いていて恥ずかしくないのでしょうかね。

 哨戒機は艦艇の監視に加え「ソナーブイ」と呼ばれる音響探知機器を海中に投下。セン
サーが潜水艦を探知する。ボーイングのP8は哨戒機で世界の先頭を飛ぶが、日本の防衛装備品の輸出緩和で思わぬライバルが登場した。川崎重工と防衛省が開発した哨戒機P1だ。
近年、潜水艦の音波は微弱になる一方だが、P1のブイはわずかな周波数でもキャッチ。
海中の雑音のなかから音響信号を自動解析する。




なんかこう、北朝鮮のニュース番組とか、戦時中の我が国のニュース映画を見ている気分です。

まず米国が世界でもっとも対潜のノウハウと、データを持っています。我が国のそれは及ばない。しかもソナーのソフトウエアの開発では大きく遅れをとっているのは海自の提督も認めているところです。

すでに何度も書いておりますが、国産ソノブイはNECと沖電気が生産しておりますが、能力が低く値段が米国製に較べて何倍も高い。このためリムパックでは海自は米国製を使用しています。この記事が正しいならばリムパックで海自は国産ソノブイを使用しているはずです。

これまた何度も申し上げていますが、NECが開発したソノブイの情報の解析装置は使い物にならず、沖電気がライセンス生産するカナダ製ものが導入されます。ところがNECのも搭載される予定だそうです。パッシブとアクティブのソナーの解析を分けるのだと。余分なコストと重量が嵩むのですがオトナの事情があるのでしょう。

そもそも世界的なセールスとアフターサービスのネットワークを持つボーイングと、全く持たない川重が同じ土俵で互角に戦えるはずもない。そのインフラを作るには莫大な投資が必要です。だからMRJも苦労しながらやっているわけです。

 「荒唐無稽。本気なのか」。当時、技術陣の一員だった航空宇宙カンパニーの児玉直樹
サブ・チーフデザイナーは13年前を振り返る。


荒唐無稽に決まっているじゃないですか。
C-1の開発メンバーはすでに退職、しかも少ない陣容の日本の航空設計者陣で、777とUS-2、と同時にC-2、P-1の開発を同時に行うのですからそもそも無理がありました。だからC-2、P-1のトラブルもこの無理が祟っているといえるでしょう飛行機に初期不良はつきものですが、人災を疑われても仕方ないでしょう。


また我が国に挙国一致体制がありません。例えばオフセットを要求されて、生産の一部をやらせろとか、ウチのコメを買ってくれとか言われたらだれが調整するんですか?
そんな体制はありません。これでは事実上取引はできません。
新明和にしても「US-2の知的所有権は防衛省にあります」とか、海外からの現地生産を希望する企業に答えたりしています。本当は新明和にあるんですが、そんなこともわからないで商売はできないでしょう。これが日本企業の現状です。



 機体のどこを共通化できるか技術陣は図面と格闘した。外形の形状が同じで強度などに問題がない部位を目を皿にして割り出した。その結果、主翼、後方の水平尾翼、コックピットを覆う風防、電子機器システムなど品目数で75%、重量ベースで20%を共通化した。開発費用で250億円の節減につなげた。


 防衛省のリリースの丸写しですが、C-2とP-1は全く別な機体なのに、これで部品の共用化といっても無理があります。これまたぼくが報じましたが、着陸装置など結局別々にコンポーネントが開発、生産され開発費もコストも高騰しています。
 それがどの程度か防衛省は発表もしていません。開発・生産コストに関しても当初の予定からうなぎのぼりになっています。



 最新技術はソナーブイだけではない。その1つが光信号を使った操縦系統システムだ。


 世界初だ、エッヘン。なのでしょうが、本当に十分な開発費をかけたシステムなのでしょうか。基礎研究の分野で技本の予算は殆どありません。米国は先端技術に関しては膨大な予算を掛けて徹底的に試験します。ところが防衛省は形だけです。
例えばCCV技術の開発でも米国は60年代から莫大なコストを掛けて行ってきましたが、F-2に応用された我が国のCCV技術はT-2をテストベッドに行われましたが、飛行時間は悲しいぐらいに少ない。これは前間孝則氏が著書で書いております。
先の大震災で富士重工のUAVが一度も飛ばなかったのは十分な試験と、採用後のフォローアップがなされていなかったからです。ひとりP-1だけがまともな試験をしてきたのでしょうか。疑ってしかるべきです。

 それに本当に優れた技術ならば欧米メーカーが何故未だに導入していないのか、あるいはできないのか、それも疑ってみる必要があるでしょう。


 P3CからP1へ。ロッキードの手を離れた川重だが、防衛装備移転三原則が決まった
4月からは、世界の受注競争でボーイングと激突する。欧州最大の軍用機メーカー英BAEシステムズは哨戒機の開発を断念、西側諸国で生産できるのはボーイングと川重だけなのだ。


 この記者は日本語が不自由なようです。激突というのは双方の力がそれなりに拮抗している状態なんですが、日経産業新聞の校閲でも問題にならなかったのでしょうか。
 この記事も穏当に言えば事実誤認、悪く言えば嘘です。世界には哨戒機を作っているメーカーは多数あります。エアバスもサーブも作っています。
ニムロッドMR4を諦めた英国に対してL3やサーブは安価なターボプロップの双発機をベースにした哨戒機を提案しています。それはこのファンボローでも大々的に発表されていました。
この記事を書いた上阪欣史は本当に現場にいたのでしょうか。

 そもそもコストの面でP-8の敵ではありません。これまた何度も書いてうんざりですが、P-8はベストセラー旅客機737がベースで調達運用コストが極めてリーズナブルですし、市場でパーツも入手が可能です。そして双発です。エンジンもこれまた世界中で多くのエアラインが採用しているものですからコストも安い。

 対してP-1は機体は新規開発、エンジンも新規開発で生産数が極めて少ないので、調達・運用コストが高い。金持ちの米海軍ですらやらない道楽をやっているわけです。英国がMR4を諦めた原因は開発費の高騰ですが、たかだか12機程度で、しかも4発の専用エンジンというP-1と同じ高コスト維持費を嫌ったことは十分に想像できます。

 その高コストで、お値段はP-8と同じかそれ以上。普通どちらを買うかといえばP-8でしょう。ですがぼくは、P-8はあまり評価しません。それは低空での運動性が低いからです。高空を高速で飛行して現地に向かうとい高速性と、長時間低空で哨戒するのは相反する飛行性能が要求されます。ですから多くの国では未だにターボプロップ機を使用しているわけです。
 その二律背反を求めたためにP-1は無理のある設計になっているでしょうし、運用コストも極めて高くなっています。

 実際問題として多くの国ではターボプロップの輸送機やリージョナル機の機体を転用した哨戒機を使用しています。P-8にしてもこんなシロモノを買えるのはある程度カネを持った国です。


政府の厳格な輸出管理のもと、P1が日本領空だけでなくアジアの海上を舞う日は訪れ
るのか。装備品輸出は政府間交渉で決まるため川重は受注活動はできない。だが、成功すれば東南アジアで一大ブランドになっている二輪車に続き、「アジアの安全保障」に力を貸す新たな企業ブランドを手に入れることになる。空の一騎打ちに世界の防衛産業の目が
集まっている。


だから一騎打ちじゃないって(笑)。
井上和彦氏だってこんなヨタは書かないでしょう。川重の関係者も苦笑しているじゃないでしょうかね。

これが普通の新聞ならまだしも、産業新聞を自称する媒体の記事としては極めてお粗末で、媒体の信用性自体を毀損するような記事です。
このような記事をファンボローまで来て書いているなんて取材費の無駄遣いです。

 この記者は航空機に関しても軍事産業に関しても全くの無知です。デスクも同じ。このような記事が出ること自体日本のメディア、ことに産業メディアが不勉強である証拠です。
 わかならければ専門家に聞けばいいのにそれもしない。取材力にも大いに問題ありです。あるいは自分の知識に過剰なぐらいに自信をもっているのでしょう。
 2ちゃんあたりに巣食っている程度の悪い軍オタレベルの見識です。

 フィナンシャル・タイムズあたりの、ファンボロー関連の記事とこれを比べれば、記者と媒体の質に悲しいぐらいの格差があることがよくわかります。


 
新しい防衛航空宇宙専門サイトを始めました。
「東京防衛航空宇宙時評・Tokyo Defence & Aerospace Review」

http://www.tokyo-dar.com/

strong>NEXT MEDIA "Japan In-Depth"[ジャパン・インデプス]に以下の記事を寄稿しております。
NEW<海上自衛隊のシーレーン防衛はフィクション>日本には戦時に守る対象となる自国の商船隊が存在しない
http://japan-indepth.jp/?p=6994

<バーバリーと三陽商会>ファッション業界「ライセンスビジネス」の怪
http://japan-indepth.jp/?p=6198
<防衛産業も営利企業>政府は防衛産業の持続可能な利益確保の必要性を国民に説明すべき
http://japan-indepth.jp/?p=5052

<武器禁輸緩和>安倍政権は「防衛装備生産基盤の危機回避」という本意を国民に説明せよ
http://japan-indepth.jp/?p=5014

<200億円の海自P-1哨戒機>性能も怪しい高コスト機の開発ではなく現有機の近代化を
http://japan-indepth.jp/?p=4818

朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しました
NEW国連加盟は憲法違反である
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014061900005.html?iref=webronza

国益のために国内ヘリ産業を潰すべきだ
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014051200007.html?iref=webronza

ロシアとウクライナが簡単に刀を抜けない理由
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014041500002.html

知られざる日本発のクールジャパン的ヒット商品「エア・ソフト・ガン」はなぜ市場を失いつつあるのか?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2014032400011.html


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コメント(10件)

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清谷様

おっしゃるとおりかと思います。一つ気になるのがP−8は日本が現在運用しているP−3Cのような低空での哨戒任務は可能なのでしょうか。

B737はベストセラー旅客機ですが、旅客機は基本的に高高度を飛ぶので、その点が気になっております。もっとも米海軍はP−8から運用方法を変えるような話もあるので、低空飛行はしないのかもしれませんが‥

そういえば文谷数重氏が全く同じ見解を示していますね。
ブリンデン
2014/07/20 20:07
先程書き込ませていただいた航空ファン9月号の記事でありますが、記事を書いた小野正春記者は以前、26年度概算要求案を扱った記事で、グローバルホークやオスプレイの導入が事実上、決まったことに対し、批判的なスタンスの記事を書いておりました。しかし、翌月にはなぜか、トーンダウンしておりました。何故なんでしょうね。不思議な事があるものです^ロ^;
KU
2014/07/20 21:02
お邪魔します。

 戦前の陸軍では「ソ連侮り難し」という「普通」の事を言うと「恐露病」というレッテルを貼られたように、日経産業新聞社内で「普通」の事を言うと「自虐」「欧米数は」というレッテルを貼られるのかも知れません。

 それと余談ですが「低空を低速で長時間飛ぶ飛行機」をどこかが開発してくれないのかなと思います。哨戒機としてだけではなく、民間向け海洋調査機や乗る事「自体」(下の景色等)を楽しむクルーズ旅客機として。こういう他(老舗等)がやらない事に日本のような「新参者」のチャンスがあるのではと思ったりします(下手にP8とかに対抗しようとした事がP1の過ち?)。
ブロガー(志望)
2014/07/21 17:53
P-1を持ち上げてる人間は大抵ネトウヨ
話が通じない
P
2014/07/21 20:27
変なレスばかりだなー。
?
2014/07/21 22:20
訂正
×「欧米数は」⇒○「欧米崇拝」
ブロガー(志望)
2014/07/21 22:27
 航空分野での選択と集中とはいっても、そうそう簡単に歴史ある製造企業が合併してスムーズに資本規模に見合った業績をあげられるとは思えないです。たとえば、半導体でのルネサスがそうだと思います。
 P-1については、機体そのものよりも海底聴音網やケーブル敷設修繕を行う艦艇、低周波ソナーを積んだ音響測定艦、地上の設備などの対潜ネットワークも重要なんでしょうね。南西島嶼にP-1よりも小型の機体をおいて補完できないんだろか。
とん
2014/07/22 13:24
P1を持ち上げるのは、日経新聞に広告費がたっぷり入った(笑)からでしょ。
マリンロイヤル
2014/07/22 17:33
P様へ、
「P-1を持ち上げてる人間は大抵ネトウヨ
話が通じない」ですが、だったら、哨戒機
より、遥かに技術的に敷居が低く、供給者
も多くいる小火器類の国産を何故、途上国
が行うのですか?

因みに手元にあるセルビア ツァスタバとイ
ンドネシアPINDADのオリジナルカタログを
見比べると、性能的にまずまずなツァスタ
バ製AKは安い物で、200ユーロ台ですが、と
ころがPINDAD製FNC改は、700ドル台です。
単に安さを求めるならば、海外から買った
方が手早いでしょう。
しかし、補給等の問題がありますし、それ
から、再三に渡り、私が述べていますが、技
術は試行錯誤しなければ、身につかないし、
国内にお金も落ちます。
それから、何をどのように国産化するのは、
最終的には、その国の国家戦略=政治ですが、
それをネットウヨ云々と述べるのなら、途上
国(勿論、日本もですが)の関係者はどうなり
ますか。



チャイカ
2014/07/22 21:48
お詫び。
投稿文の作成と投稿時に手違いがあり、
公開された文章が、非常に読みにくいものになりました。
主様を筆頭に、お詫び等を申しあげますし、以後、注意していきます。
チャイカ
2014/07/23 10:53

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