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zoom RSS 国産水上戦闘艦と装備開発の実態

<<   作成日時 : 2012/07/10 04:12   >>

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 現在発売中の「世界の艦船」8月号に元自衛艦隊司令官・海将の香田洋二氏が「最新護衛艦『あきづき』その計画から誕生まで」という一文を寄稿してます。

 この中で香田氏はあきづき型に搭載された装備に言及しています。
 「『国内開発の対空・対潜武器体系』は、高性能ではあろうが性能限界を検する施設が国内にはない。将来もDDの標準装備となる公算の大きい国内開発各種装備の性能限界を見極めることは必須である」
 とし、さらに「国内開発武器システムは(中略)予算上の制約により、開発段階からの実射数がアメリカ開発品に比較し著しく少ない」と、指摘しています。

 以前から申し上げていますが、戦後我が国は実戦を経験したわけでもない。また武器輸出ができないので、装備が海外市場で揉まれたこともない。国内のメーカー同士でも競合をさけ「住み分け」を行って来ました。

 本来このような状態では他国よりも開発費や試験費を増やすべきです。ところが調達単価が高いこともあり、実際はその逆となってきました。

 それではたして実戦的な高性能な装備が開発できるのでしょうか。
 情況証拠を見る限り、疑わしいと思うのが普通でしょう。

 国産魚雷も非常に評判が悪いのですが、本年度も新型魚雷の開発が認められてしまいました。P-1用のソノブイの処理機も既にご案内のように同様に使い物になりませんでした。
 現実として、国内メーカーの製品には見た目が外国製品と同じようなものにみえるだけ、そいうものが多数あります。国内メーカーは出来ないくせに「できます!」と手を挙げるとの批判が海自関係者から多く聞きます。

 実際問題として国内火器は実射をする場所も極めて限定されています。
 これも不利な点です。

 155ミリ榴弾砲などでも国内では長射程での試射はできません。開発は国外の試射場を確保するか、試射場を持っている国との共同開発も考えるべきです。ドイツのラインメタル社が南アのデネル社の砲熕部門を買収したのは、同社の技術が優れているだけではなく、ドイツ国内では不可能な射撃実験が可能だったからです。
 今後射場の確保のためには我が国はオーストラリアなどとも連携していく必要があると思います。
 

 ただ、開発費や試験費に多額の費用をかければ、調達コストは更に高くなります。その支出が現在の防衛省に可能なのでしょうか。ただでさえ高い国産兵器が更に高くなります。
 このため、コストを掛けても残す技術と、国産を諦める技術を峻別する必要があります。 

 当然国内メーカーの実力を冷静に測る必要があります。

 プロの書き手はもとより、ネットなどで見かけるマニアには自衛隊の国産装備は世界最高峰と自画自賛する人がちが少なくありません。
 防衛省の公式見解だけを信じるとそういうことになりますが、それはあまりにもナイーブです。
 かつて海自は自分たちの掃海能力は世界一と胸をはっていました。メディアも無批判に同調していました。が、湾岸戦争の後始末では自分たちの装備があまりに前近代的な事を知って愕然としました。

 確かに国産兵器は優れていると思いたくなるのは人情でしょう。
 ですが、情けに流されて現実を見る目が曇っていると後で痛い目にあいます。
 前の戦争でもそうでした。

 「大本営発表」の公式見解ばかりを盲信して軍事を語ることは非常に危ういと思います。



 

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コメント(15件)

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×あきずき
○あきづき
簡単な質問の名無し
2012/07/10 09:28
重箱の隅ですが「あきづき」型であります(^_^;)
みづせ@黒書刊行会
2012/07/10 09:34
155ミリ榴弾砲などの長射程での試射って米国で実施していると貴殿記述の雑誌記事で拝見した覚えがあるのですが
匿名希望
2012/07/11 12:46
あれは仕上げての段階で僅かな数を撃っているに過ぎません。開発初期から、或いは基礎的な実験で数千発も撃てるわけではありません。
キヨタニ
2012/07/11 16:01
キヨタニ氏の言われる数千発が具体的に何発か分かりませんが、90式戦車の120mmは1200発以上の射撃試験を行ったとの情報もあります。
名無し
2012/07/11 16:45
120ミリ戦車砲弾が40キロも飛びますか。
キヨタニ
2012/07/12 02:38
>>名無し氏殿
>90式戦車の120mmは1200発以上の射撃試験
 正確には1次試作(国産120mm砲)で1,220発、ラインメタル社製120mm砲で約3,100発です。因みに全て国内で実施しています。
>>あれは仕上げての段階で僅かな数を撃っているに過ぎません
 技本が弾あるいは砲の開発で海外の射場(アリゾナ州米陸軍ユマ試験場)を使用し始めたのは1997年(15年前)からで、その内容は93式155mm長射程りゅう弾、99式、155mmりゅう弾砲用多目的弾です。ちなみに、「155mmりゅう弾砲用多目的弾」の試験は2000年に実施されており、その内容は「技術試験(実用試験の前段階。少なくとも「しあげの段階」ではない)」です。
簡単な質問の名無し
2012/07/12 20:29
清谷氏の言われる通り、盲目的に「国産装備は最強だ」と絶賛したり、条件反射のように「弱いに決まっている」と決め付けるのは危険なことですね。
どうしても思考にはバイアスがかかってしまうものなのかもしれませんが…私も自戒します。
通り抜け
2012/07/15 11:48
開発時なら最近はシミュレーションで圧力計算して、撃ってみるにしても覆洞射場とかでいいんじゃないですか?
実際の弾道特性は射表作成時にいやってほど撃つでしょうし
ゆう
2012/07/15 21:57
93式155mm長射程榴弾の開発においては米国アリゾナ州陸軍ユマ試験場にて3ヶ月間実施し成功を収めています。その後も99式自走155mm榴弾砲、155mm榴弾砲用多目的弾の試験を行っています。それと99式自走155mm榴弾砲は1044発を研究試作、6867発を試作し米国にて日本国内で行えない長射程射撃試験を実施しています。常識レベルをご存知ないようなのでコメントさせて頂きました。
ユマ
2012/07/18 16:48
上記の数字は現在検証中です。
数字が正しい前提でお話します。

ご案内の南アの自走砲と99式を同列で比較はできないと思います。南アのG6改良型の場合、既存製品の改良でした。
対して99式の場合、砲、砲弾、装薬などが全て新規開発でした。自走砲の場合、射撃時の安定性の確保の技術のためより多くの試射が必要であります。これは常識だと思います。

因みにM777の開発では1年間の砲自体の実用試験だけで14,000発を射撃しています。
また南アのG5、G5の開発でも数万発の試射をしていると聞いております。

砲、砲弾、装薬あわせての研究・開発を通じて
8,000発弱では非常に少ないですし、またそのうち何発をYPGで撃ったのかもこの記述では不明です。

3ヶ月の試射期間は恐らく開発が終わった段階の試験段階での検証のためだと思いますが、本来開発段階から試射ができるような体制を確保すべきだと思います。

ご参考まで。
キヨタニ
2012/07/19 11:00
であるならばユマでいいのではないでしょうか?
なぜオーストラリア?
オーストラリアとは安保も結んじゃいませんよ。
ユマ
2012/07/19 12:35
防衛省は現在オーストラリアとの協力を深めつつあります。陸自も同国で演習や訓練を行う計画もあります。

別に安保が無くとも、共同開発はできます。
実際英国とは共同開発を行う方向で調整が
進んでいます。もっとも乗り気なのは外務省で
あり、防衛省の反応は今ひとつですが。
キヨタニ
2012/07/19 17:12
G6は99式よりも10年以上前に採用されているし、改良前のG5も含めれば開発の時期に20年近い差がありますが、一概に比べられるのでしょうか?
工業製品の研究開発って10年経つと使うツールやノウハウまでほぼ全部入れ替わったりするし、それに応じて開発期間やその中で注力する部分もかなり変わるので、できればPzh2000とかK9とかの同世代の砲と比較したほうが説得力が上がると思います。(ついでに欲を出すならば、世代によって開発手法がどのように変化するか、という内容があればそれはそれでとても面白いと思います)
CC
2012/07/20 20:40
消費税が他の先進国なみになったら、国産を支持している人達もキヨタニさんのいわれるように、どの分野に傾注するかを議論せざるえないと思います。自分の 身銭を切るのですから。
その時がハードランディングでないことを祈るばかりですが。
多摩っこ
2012/07/21 14:52

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