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zoom RSS 空自F-15用偵察ポッド契約解除が意味すること

<<   作成日時 : 2010/10/09 16:46   >>

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防衛省:東芝との契約解除へ F15改修で部品調達できず
http://mainichi.jp/select/biz/news/20101002k0000m020086000c.html

防衛省は1日、F15戦闘機1機に偵察機能を備える改修事業を受注した東芝が、9〜
10月の予定だった納期を12年春まで猶予するよう求めたのに対し、これを承認しない
と発表した。


 で、最大の問題となったのは光学系センサーの性能のが不十分であるとのことです。

 この偵察ポッドの商戦は当初三菱電機、NEC、東芝に加えて、海外メーカー数社が提案していました。
 当初本命は光学系に強い三菱電機が有力と見られていましたが、当時同社は防衛省と取引が停止となっていました。

 そこで東芝が契約を獲得、随意契約となったわけです。東芝が光学系が苦手だということは空幕も重々承知していたはずですが。
 まあ後知恵ですが、東芝が元受になって三菱電機に仕事を振るとい手もあったかと思います。

  無論、R&Dに失敗はつき物ですから失敗すべてが悪いとは言いません。ですが、なぜ失敗したのかという教訓をきちんと検証して残すべきです。

 実際問題として主要コンポーネントはほとんど輸入です。しかも間には商社が入っています。
 国内メーカーにはこれらを開発する実力はありません。仮にあったとしても調達数が少ないから単価がとんでもなく高くなります。そうでなくても「国産」は随分と高いものになります。おそらくは外国製の数倍でしょう。
 たしか開発費は20億円ぐらいです。下手をすると外国メーカーの開発費より一桁少ない金額です。その程度予算でまともな開発できるものでしょうか。実際できなかったわけです。
 
 たいした数も調達しないのに「国産」にこだわるべきだったのでしょうか。
 そのようなものに大枚をはたくよりも、別なものに投資をするとう判断もあったはずです。

 確かにISTAR(Intelligence, Surveillance, Target Acquisition, and Reconnaissance)は今後重要な部分であり、その意味では、これらのアセットの国産化を計るということ自体は意味があります。
 それならそれにふさわしいグランドデザインが必要です。またR&Dの費用を惜しむべきではありません。

  当初お勉強のつもりでライセンス生産、という手段もありだとは思います。いずれにしても開発費を捻出するためには優先順位の低いプロジェクトを切る、調達に関しては輸入に切り替えるなどしてR&D費を捻出する必要があります。

 また性能的にも外国製に劣って、値段が高くても長期にわたって我慢して国産装備を育てる覚悟が必要です。個人的には外国製の8割程度のものが、ある程度の値段でがつくれるのであれば、国産もありだとは思います。
 つまり集中と選択が迫られるわけです。 そこまで空自に腹がくくれるでしょうか。
 

 今回の空自の決定は業界に大きな衝撃を与えたでしょう。

 これまでならば性能に問題があっても、開発が遅れても空自は待ったでしょうし、調達もしたことでしょう。実戦での能力よりも業界との関係や天下り先の確保を重視してきたからです。
 ですから、性能に疑問があっても(それは実戦をしない限り外の人にはわからないわけです)なんとなく、それらしく見える国産を採用してきたわけです。現場は我慢しろ、どうせ実戦はないんだし、と。

 これまで各部署の皆の顔を立てて、総花的に開発費や調達費を分けてきたわけです。例えば本来5個のプロジェクトで各100億円かかるが、手元には100億円しかない。だからその100億円を5等分して20億円ずつ分配するようなことをしてきたわけです。
 
 また当局はミスをしないという悪しき官僚制の伝統もあります。
 開発を決めておいて、それをキャンセルするとなるとあれこれ責任を問われたり面子がつぶれる人も出てきます。ですから大自衛隊に「失敗作」はないと、やってきたわけです。
 
 ですが、もはや空自はそのような馴れ合いをしなくなりはじめた、ということです。

 装備調達予算は非常にタイトになりつつあり、背に腹は代えられなくなってきたわけです。

 おそらく空自はもっとも優先順位が高い装備に予算を確保するため、優先順位の低い装備などに関しては極力絞りこむつもりでしょう。

 UH-X(次期救難ヘリ)にしても一番調達および運用コストが低いだろうUH-60Jの改良型が本命です。また前線航空統制を担当する部隊は空軍が持つのが一般的でですが、空自は持つつもりはなく陸自が編成することになるようです。これも「余分は予算」は使わないためでしょう。

 このブログで何度も紹介していますが、装備調達にかけられる予算は減少傾向にあります。近い将来5千億円台に落ち込むことすら予想されます。

 装備の自主開発するにしても、取捨選択が必要ですし、今以上に調達性が重要になるでしょう。
 
 今後国内メーカーは価格だけではなく、性能面でも厳しい要求に直面することになります。


防衛産業の凋落は当事者の責任大
http://kiyotani.at.webry.info/201010/article_2.html


 防衛省が装備調達に費やせる予算は今後も減る傾向にあります。以下のエントリーを参照ください。
財務省資料「平成22年度日本の財政と防衛力整備」 を読む その1
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_10.html

財務省資料平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その2
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_11.html
  
財務省資料平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その3
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_12.html

財務省資料平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その4
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_14.html

財務省資料平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その5
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_15.html

財務省資料平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その6
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_16.html

財務省資料平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その7
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_17.html




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タイトル (本文) ブログ名/日時
F-15の偵察システムをめぐって東芝と防衛省の泥仕合
東芝、93億円支払い求め国提訴 戦闘機改修契約解除で http://www.asahi.com/national/update/1031/TKY201110310226.html ...続きを見る
清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所...
2011/11/03 20:39
技本と空幕装備は無用の長物か  装置開発、契約通り行わず…防衛省が東芝訴える
装置開発、契約通り行わず…防衛省が東芝訴える http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20121126-OYT1T00503.htm?from=ylist ...続きを見る
清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所...
2012/12/02 16:26
F-15J用偵察ポッドをめぐる泥仕合、 原因は防衛省・空自・東芝の当事者能力の欠如
「F15改修装置、性能不十分」 国から受注の東芝に12億円支払い命令 東京地裁 http://www.sankei.com/affairs/news/160318/afr1603180028-n1.html . >航空自衛隊の主力戦闘機「F15」の偵察機への改修事業をめぐり、東芝が国から受注した偵察装置などが納入されなかった問題で、東芝が国に123億円の損害賠償を求め、国側も東芝に12億円の損害賠償を求めて反訴していた訴訟の判決が18日、東京地裁であった。沢野芳夫裁判長は「東... ...続きを見る
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2016/03/22 14:46

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コメント(19件)

内 容 ニックネーム/日時
今回の東芝の一件ですけれども、空幕は代替案を持っているのでしょうかね。例の無人システム(TACOM)にしても、あれはあれで研究段階なわけで装備化に関しては不透明なわけでしょう?まさか、全ては米国からグローバルホークを輸入するための布石、なんてことは・・・・。
かつかつ
2010/10/09 17:28
あーこれかー。
使用するはずだった外国製コンポーネントが相手企業の事情で入手出来なくなって、結局それが致命傷になって駄目になっちゃったんだよねー。

まあ、事の是非はおいておいて、部品を海外に頼る(MRJやC-2だってそうですし)以上はこういうリスクが常に発生し得るという事を再確認する良い教訓になったのではないかと。
もうちょっと詳しい記事をプリーズ!
2010/10/09 22:49
代用案は明らかにされていませんが、恐らく輸入になるのではないでしょうか。

>手企業の事情で入手出来なくなって

そうではありません。能力が充分で無かったからとされています。が、そもそも空自側が無理な要求をして本来の性能まで落ちたとの情報もあります。

一般論ではありますが、自衛隊はあれこれ思いつきで要求することが多いわけです。
結局、中途半端なものが出来たり、開発費が高騰したり、変な機能を付けたために本来の機能が損なわれたりというケースが多々あります。
それは自衛隊側の情報収集能力の欠如や、意思決定のシステムに問題に起因します。
発注者として能力を高める努力が必要です。

今回のケースに関しては、どこにどのような問題があったかを明らかにし、キチンと書面で残し、後の調達や開発に役立てるべきです。
キヨタニ
2010/10/10 00:24
「07〜08年度の随意契約で計約100億円で受注した。」と元記事にあります。「開発費は20億円ぐらいです」この20億円は何でしょうか?この偵察ポッドは防衛省技術研究本部が行っている戦闘機搭載用「先進統合センサ・システムに関する研究」の事でしょうか?研究総経費は135億円らしいですが。無知を晒すようですが上記の疑問にお答え下されば感涙で泳げそうです。
ぐすたふMk.U
2010/10/10 00:36
かつての様に、どんぶり勘定でP-3Cを100機ライセンス生産で導入するような贅沢が出来なくなったと言う事ですね。

政府の無駄遣いや経済政策の失敗には呆れてしまいます。
名無し
2010/10/10 01:26
ご返答、有難うございます。ところで海外勢が運用している偵察ポッドというと、何がありましたかね。AAMやらASM、各種誘導爆弾等は比較的、知っておりますが偵察機材となると、さっぱりなモノですので。仮に採用するとなると空幕の大好きな(どうかは知りませんけども)「インターオペラビリティ」でアメリカ製の機材(確か、スパホが「SHARP」なんてのを搭載してたような。うろ覚えで申し訳ありません)を導入するのでしょうか?何せ、中国と揉めて同盟関係を再強化する必要があるでしょうし。
かつかつ
2010/10/10 07:28
あれーキヨタニさんはとんでもない事実誤認をしているぞーw もしくは意図的に無視しているのかなー?w

これって、

L3コミュニケーションの部品が期日に間に合わない。
           ↓
このままでは納期に間に合わなくなる。
           ↓
納期に間に合わせる為に該当部品を自社で開発する事を検討する。
           ↓
それでは要求性能を満たせなくなる事だけがわかった。
           ↓
契約解除。代替計画なしの東芝の杜撰さが露呈した。

という一連の流れでしたけどねえ。

そうでないんなら第三者視点の資料でも提示して下さいなw
取材源の秘匿wなんてお決まりの台詞を言い訳に使わずに。
セミプロっ!w
2010/10/10 08:08
>当初お勉強のつもりでライセンス生産、という手段もありだとは思います。

ブラックボックスの塊な代物をライセンス生産? あははありえねーwwwww

ユーロファイターみたいな”ノーブラックボックス”みたいな気前の良いコメントを出している所でも、本当にやってくれるかどうかは保証の限りじゃないってのにwwww
ノックダウン生産が精々さっ!!!w
2010/10/10 13:38
東芝が部品を調達しようとした駄目になった企業の名前はL−3コミュニケーション”ズ”が正しい。

まあより正確を期すならL-3 Communicationsだけど。


今回の教訓はコスト圧縮の為に外国製コンポーネントを採用するのは良いんだけど、状況によってはプロジェクトの成功がそれを作っている海外メーカー次第になってしまう事も有り得るんだよ、という事かな。
もちろんメーカーによって違うだろうし、国内メーカーからの調達でも同様の事は有り得るんだろうけど、やっぱり物理的な距離、言語的な距離、民族性の違いから来る距離とかって僕らが考えている以上にあるのかもなー
後、防衛省はもっと予算を注ぎ込むべきだった?……うーん、自分で書いといてなんだけど、これはどうなんだろ?

現在進行中のMRJも同様のリスクははらんでいる訳で、今回のRF−15(仮)程深刻ではないにせよ、似た様な事態はどうしても起き得る訳だしなあ。



キヨタニ先生の意見? そんな物、事態の全貌をちゃんと書いていない時点で論外でしょ?w
○○の癒着は綺麗な癒着
2010/10/10 20:31
職業上の海外の機器での経験、その1。
日本で使用するにはプログラムの不備があり、同機器では海外大手の製品だったので、国内販売業者を通じてクレームを出したところ、次回のバージョンアップ時に対応する確約を頂いた。同じ機器を内緒で日本メーカーに改造依頼をしたところ、すぐに対応してもらい運用できるようになり、重大事件にならずに済んだ。一概にには言えないが、アフターサービスの重要性を感じました。
その2。交換部品が無いと国内販売業者が泣いたので、わざわざ横浜の倉庫まで出向いて話をつけて、飛行機で3日後に届くようにした事があった。帰りに、知り合いの部品業者に同部品を持ち込んで、その日のうちに同様の物を作り上げた。販売店には悪い事をしたので、届いた部品は予備品として引き取った。実は、その部品業者は以前に同じ商品を日本で販売していたが、海外の本店の対応が余りにも酷いので、部品を自社開発して対応していたのがバレて、契約を切られた会社なのだが、契約社会なら当たり前な話だが、それと同時に海外メーカーに日本メーカーと同じサービス対応を求めるのは間違いなのもわかった。
日本メーカーが海外で販売を売り上げた理由のひとつにアフターサービスがあります。最近は品質重視でサービスが軽視されがちですが、それでも海外メーカーよりましなサービス受けられると考えています。
長々と長文で申し訳ございません。

キヨタニ先生へ、出来うるなら今回の事で起きる自衛隊の運用での問題点と、その解決方法案を提示して頂ければあり難いです。
無名です。
2010/10/10 23:07
今月の軍事研究に,三菱重工への機体改修設計発注の記載がある。
K
2010/10/11 03:39
要するに本件は、安易に海外メーカーに頼ると痛い目に遭うという典型例ですね。
リスク管理の面で、良い教訓になったのではないでしょうか。
ライセンス生産にせよ、部品購入しての組立にせよ、誰かさんの言うようには簡単にはやらせてもらえないと。
568
2010/10/11 13:38
聞き捨てならないですね。
空自、しかも、15。
そして、偵察用。

スクランブルを考えると、全自の中でもっとも
実戦に近い。

キヨタニさん。あなたホントに自衛隊わかってませんね?
どうせ実戦は…
2010/10/13 13:14
>ですから、性能に疑問があっても(それは実 戦をしない限り外の人にはわからないわけで す)なんとなく、それらしく見える国産を採 用してきたわけです。現場は我慢しろ、どう せ実戦はないんだし、と。

 
 読解力のない国士様ですかw 
 
読解力?
2010/10/13 17:17
>読解力?

まったく意味不明なんですが?
表現力のない方ですか?
ぽこぺん
2010/10/13 20:01
解読力…
74乗り
2010/10/14 12:07
読解力でも解読力でもなく説明力
ぐすたふ
2010/10/14 14:27
横道に逸れて恐縮ですが教えて下さい。
>L3コミュニケーションの部品が期日に間に合わない。
って、どこかにソースが有りますか?
防衛省の発表から、旧ROIの光学センサポッドが問題だと認識していたのですが、L3の送受信機が問題なのですか?CDLは米国でさんざん実績のあるコンバットプルーブンなシステムなので、トラブルとしたら総務省関係ぐらいと見てたのですが…<笑

>たいした数も調達しないのに「国産」にこだわるべきだったのでしょうか。
とありますが、ISR器材、特に情報系の器材は極力「国産」にしないと、実力がジャじゃ漏れになってしまうと愚行するのですが… (せめてインテグレートと処理くらいは「国産」にしないと…)
delphi
2010/10/14 20:12
もともと機能の重複する無人偵察機に舵を切った時点でRF-15は予算がつけづらくなってたという背景が
定番の天下りのために劣っても調達〜は、しょぼい陰謀論ですねとしか
ねろ
2010/11/06 01:25

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