清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所 

アクセスカウンタ

zoom RSS 87式自走高射機関砲の後継、AW(装輪自走高射機関砲)の予算化なるか

<<   作成日時 : 2010/08/12 23:55   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 14 / トラックバック 0 / コメント 26

 陸幕は現用の87式自走高射機関砲の後継の装輪自走高射機関砲(通称AW)の予算化を目論んでいます。

 ですが、これが来年度の予算に加えられるかどうか微妙な状況だそうです。

 AWは国産のテレスコープ方式の40ミリ機関砲を搭載した8輪装甲車であるとされています。砲は日本製鋼所、車体、砲塔は三菱重工が担当することになります。

 さて、主砲となる40ミリテレスコープ機関砲ですが、当初口径は50ミリとされました。
 その理由はどうも例によって「他国にはないから自主開発」という言い訳wのためだったようです。ところがその後50ミリでは具合が悪いということで口径が40ミリに変更されました。最近は内局からも「外国にないものじゃなくて、外国と同じで更に高性能、安いものをつくれ」といわれていますが。

 ですが、それでも上手く作動するものがつくれない。

 テレスコープ方式の40ミリ機関砲はフランスのGiat(現ネクセター)社と英国のBAEシステムズ社が合弁で立ち上げたCTAインターナショナル社が90年代から開発を進め、近年やっと実用化しています。当初開発は難航し、発射速度のレートは当初の予定のものよりかなり低くなっています。

 ぼくは以前からこの開発は無謀だと主張してきました。
 技本の開発といっても実際は日本製鋼所の開発です。戦後まったく機関砲の開発がない我が国で、テレスコープ機関砲という難易度の高いものを開発すること自体まず無謀です。

 しかもCTA社が基本的な特許を押さえていますから、それをかいくぐって開発する必要があります。同社の連中は「まあ、お手並み拝見」とニヤニアしていました。
 昨年のロンドンの見本市でも日本の関連メーカー各社はこのCTAのブースにで熱心に情報をしておりました。

 40ミリに変更となったテレスコープ機関砲ですが、その後も作動不良と低い発射速度に悩まされているようです。実用に耐えない失敗作という話が複数のソースから聞こえてきます。

 今更ですが、まだテレスコープ機関砲は英仏のように歩兵戦闘車などの対地用に開発すればよかったのではないでしょうか。それから完成度を上げていけばよかった。対空に使用するのでは高い発射速度が求められるのは当たり前です。
 技本のリサーチと技術評価能力が問われるでしょう。

 車体はかつて技本の研究で使用されたコマツの8×8装甲車ではなく、三菱重工が新たに開発したものだそうです。現在開発中の機動戦闘車とは一部互換性がある程度で、実質的には別な車体となるようです。

 かつて陸幕は多くの装甲車輛を個別に開発、生産してコスト高を招いたことを反省し、新型の8輪装甲車はコマツが開発したものをファミリー化し、これによって調達及び運用コストを下げるとしていましたが、この話は100万後年先に飛んでいったようです。
 
 今後砲塔のある装甲車輛は三菱重工が担当し、砲塔のないものはコマツが担当するという縄張りになりそうです。で、96式装甲車の後継はコマツのNBC偵察車をベースに開発される車輛が採用されるらしいです。
 あたしゃ、事業統合をすべきだと思いますが。また装甲車輛メーカーには更に日立があります。我が国で3社も必要なんでしょうか。

 これでめでたく、今まで同様に高調達コスト、高運用コストで、兵站の負担も大きくなる個別開発が復活することになります。益々お先真っ暗ですが陸幕もメーカーもあっけらかんのカーです。まあ自分たちの首を絞めているのですが、JAL同様にアブナイ組織ほど危機感がないのが世の常です。


 さて気になるAWのお値段ですが、どうも10式戦車よりも高くなるそうです。

 恐らくは例によって北海道限定どころか、第7師団限定になるでしょう。
 何しろ対空用のレーダー及びシステムを開発しなければなりません。87式と同じ隘路にはまることは避けられないでしょう。開発費を調達数でわれば87式以上にトンデモな値段になるでしょう。

 さて、AWは内局も困惑しているらしいです。
 さすがに陸幕の中でも問題ありとする声が多いようです。特に機関砲がまったく当てにならないことが大きな問題となっています。

 では機関砲はCTA社の製品や既存の中口径機関砲に変更ればいいじゃないの、とシロウトは思います。ですがプロはそうはいきません。
 そうなると技本のメンツが潰れます。いままで多額の費用をかけたのに、無駄になったと後ろ指を指されます。担当者やハンコを押した人達は出世できません。
 導入された外国製の機関砲の評判がよければ尚更です。

 そこでみんながハッピーになるのはAW自体の予算を要求しないということです。じゃあ87式の後継はどうなるんだろうかとは思います。どうなるんでしょう。

 ちんけなプライドやメンツよりも、重要視するべきことがあると一納税者としては思うのですが。


 そもそもヘリの空対地ミサイルの長射程化が進んだ現在、射程がさほどない機関砲と対空システムを組み合わせたものが費用対効果としてどうなの?という疑問があります。87式もアッという間に陳腐化しました。その後も陸幕はこの時代遅れで高価な対空車輛の調達を続けました。
 しかもドイツのゲパルトのようにミサイルを追加するなど近代化もなされませんでした。

 彼のナポレオン1世は「愚者は経験から学ぶ。世は歴史から学ぶ」といいました。
 ですが、技本も陸幕も経験からすらも何も学んでいないようです。ぼくには技本と陸幕が組んで自衛隊の弱体化を狙っているように見えるのですが、気のせいでしょうか。

 因みにエリコンのスカイシールドの車載型の砲塔も6億円以上はするそうです。ですから導入が中々進んでおりません。この手のシステムは値段の割りに合う装備であるのか検証が必要です。

 限られた予算を有効に使うという意識があれば、AWのような無謀な開発や実用化を目論まないと思います。
 例によって技本のリサーチ能力が低いことに起因する失敗です。海外での情報収集を殆ど行わず、たまにいったら卒業旅行で、そのあとすぐ退職するような将軍様ばかりでは、まともな情報収集はできません(しかも外国の国防省からのご招待だったりします)。
 オフィスに引きこもってネットで情報収集ができるならば誰も苦労はしません。

  技本の93万円
  http://kiyotani.at.webry.info/201005/article_1.html



 せめてメーカー並みに海外での情報収集を行うべきです。



 さて、今月末の防衛省の概算要求がどうなるかが楽しみです。


テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 14
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス
面白い

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(26件)

内 容 ニックネーム/日時
政治主導すべき問題のような。
文章読んでいると,官僚には荷が重そうだ。
K
2010/08/13 00:26
そもそも対空機関砲というもの自体が現在は有効性が相当薄れてきているように思います。機関砲自体は威嚇射撃の時とか対地・対人装備として、あるいは艦艇の近接防御としては有効なため全廃にはならないでしょうが、いわゆる「対空戦車」(今回の開発は装輪式のようですが)は今や携行対空ミサイルにも劣る装備のような気がします。以前、アフガニスタンに侵攻したソ連軍は山腹を駆け下りて攻撃してくるゲリラの駆逐用に意外にも対空戦車の機関砲が有効だったという話を読んだことがありますが、そうした事実からも本来の用途の有効性に疑問を感じるような気がします。
SNK22
2010/08/13 06:15
キヨタニ様、平成14年度事前の事業評価「将来装輪戦闘車両(対空)」を見てみますと、開発線表の変更が記載されており、本文”評価の内容2-(1)-B”の最終段落にも、その旨、記述があります。その後、平成20年度事後の事業評価「将来装輪戦闘車両」として、”所要の機能・性能を有することを確認した”と、CTA機関砲及び弾薬を含めて、所内試験の終了が報告されております。また、平成17年度事前の事業評価「近接戦闘車用機関砲システムの研究」に、技術的成果が適用されるとしており、当該研究は平成20年度及び21年度に試験を実施する予定、と記述されています。私が読み取れる範囲ですが、部内研究から研究試作に移る際(H15年度)に、対空だけでなく、対地も含めた基盤的技術獲得を行える様な方針変更があり、”対地用”の開発は行われているよう思われるのですが、この時期では、遅すぎたのでしょうか?
関心
2010/08/13 06:20
対空車輛よりもむしろ、歩兵戦闘車のほうが優先順位が高いと思うのですが、陸幕はそうは考えなかったのでしょう。
それから防衛省の政策評価や事業評価はあまり当てになりません。泥棒が縄をなうようなものですから。例えば機動戦闘車に関しては将来装輪装甲車の研究成果を利用するようなことが書いていました。普通ならばコマツの開発した車輛をファミリー化して使用すると思うでしょう。ですが、三菱の開発した車体が採用されるわけです。嘘ではないが、わざと誤解を招く表現をしています。本来この手の評価は第三者的な委員会などが行うべきです。
キヨタニ
2010/08/13 10:16
キヨタニ先生の仰る通りです。物には優先順位がありますからね。どーしても国産化しなきゃならない物でもないと思います。取捨選択すべきですね。

キヨタニ先生に質問なんですが、陸自は米国のストライカー装甲車が装備しているようなスラット装甲の装備には関心がないのでしょうか?自衛隊の海外派遣が恒常化しているからこそこの手の装備は必要だと思うのですが。
松本信二
2010/08/13 10:49
>松本信二さん
>スラット装甲の装備には関心がないのでしょうか?

RWSや何やらと同じでもちろん最近のイラク・アフガンの戦訓を念頭にした研究はもちろんしてる。そもそもスラット装甲は後付装備で全く問題ありません。
詳しくは週刊オブイェクトへ行ってらっしゃいな。
RWS
2010/08/13 11:16
キヨタニ様、お返事頂きまして、有難うございます。恐縮ながら、ご確認させて頂ければ。これら政策評価は、総務省と第三者で構成される「政策評価に関する有識者会議」(現在10回開催)に提出されるプロセスを持っております。また、平成21年度総合評価にある「防衛省における政策評価への取組」と当該有識者会議議事録(防衛省HP上)、特に第10回議事録と合わせ読むと、この方式の限界(例えば、客観性、専門性、透明性の確保と防秘)を認識された上で、改善する方向性を模索されている様子が伺えます。また、実際の調達に関しては、サンプリング調査を中心に、こちらも第三者で構成される「防衛調達審議会」によって審議され、現在85回の議事録が閲覧できます。以前、米国GAOを例示していらっしゃいましたが、特に専門性と客観性の確保や法整備も含めて、日本国ではどのような制度が望ましいと思われますか?また、もし可能であれば、英国の事例等、ご紹介頂ければ幸いです。お休み(?)に、お邪魔して申し訳ありませんが、どうぞよろしくお願いいたします。
関心
2010/08/13 11:36
開発部門に仕事を与えるため,次々に試作しているように思えてならない。
開発能力維持は、別の方法を模索しないといけない。
K
2010/08/13 13:16
>もちろん最近のイラク・アフガンの戦訓を念頭にした研究はもちろんしてる。そもそもスラット装甲は後付装備で全く問題ありません。

初耳ですがソースは?
ソースは?
2010/08/13 15:10
>初耳ですがソースは?

BSフジプライムニュース7月15日放送分(だったかな?)あたりじゃないでしょうかね。
事実カナダ陸軍は間に合わせでまかなったし(戦車だけど)。
たぶんそうなんじゃない?
2010/08/13 15:23
RWSなんかも一応技本が研究・開発”だけ”はやっているらしいし。
このあたりはイスラエル陸軍が保有する戦車すべてに装備するかどうかの動向を見守りたいと思う。
現段階ではスラット装甲は分かるけど、RWSが必須になるかどうかは現段階では本当に分からないからなー。
たぶんそうなんじゃない?
2010/08/13 15:27
しかし……書き上げた文章は一回読み返して誤字脱字のチェックを済ませてから記事としてアップして下さいなキヨタニ先生。
たぶんそうなんじゃない?
2010/08/13 15:49
我が国においては審議会や各種外部有識者の
委員会が単なる官僚のアリバイ工作に使用されているのはよく知れられております。
つまり機能していません。

防衛省の政策評価でも自画自賛、検討隊衣装の外国製品が意図的に古いものが入れられたり、するなども目立ちます。

委員を選び、報告書をつくるのは官僚です。これから是正する必要があります。実際委員にも防衛省や自衛隊OBも目立ちます。これは日本の官庁に共通した通弊ではありますが。
キヨタニ
2010/08/13 16:23
誰へのお返事ですかキヨタニ先生?
たぶんそうなんじゃない?
2010/08/13 16:31
RWS氏

私はキヨタニ先生に質問したんです。
松本信二
2010/08/13 20:12
>スラット・アーマー
国内では道路法の問題があって、96式などでは使用が難しいと思います。それから最近は同様なもので金属フェンスや、繊維を使ったより軽量の装甲などが開発されています。

問題はPKOなどでも財務省の意向もあり、できるだけ既存の装備で行うべきという方針があるために新規の装備調達が抑えられていることです。現状で国際任務を行うと出さなくていい犠牲者がでるかと思います。
もっとも軍隊や政府は犠牲者がでないと考え方を改めないようですが。
キヨタニ
2010/08/13 22:05
キヨタニ様、これは困りました。”議員(委員会)側から、第三者委員会参加有識者リストを提出、官側で絞り込み”とかになりますかね。さすがに、一つ一つの政策評価レベルに対して、技術的・軍事的合理性を持って評価できる人材を充て、且つその人材を防衛省・自衛隊関係者以外から探すとなると、それだけでも至難の業(内輪注意ですが、プライムのOBの方等にお願いしますか)。この部分は、事後評価の形を取らざるを得ないかもしれません。いずれにせよ、実効性の高い改善案が生まれる事を、期待しております。ご教授頂き、有難うございました。
関心
2010/08/14 01:05
確か、ゲパルトのスティンガー搭載計画は没になったんでは?
まあ、役割も違う上に射線の被る携帯SAMとガンでは、別々に運用した方が良いのは当たり前ですけどね。
ST核融合炉
2010/08/14 06:12
ありがとうございますキヨタニ先生。

道路交通法を盾にして国産の言い訳にしたり、犠牲者が出ない事を前提にしたり・・・・国際的な水準から著しく乖離している現状に不満を抱かずにはいられません。
松本信二
2010/08/14 07:56
スラット装甲については諸外国に平和維持活動などで派遣される際、諸外国の道路規格と交通法規にあわせて対応する必要があるかと思います。現地改修できるキットがあれば楽なのでしょうし、予め構造材の選定や改修手順があればよいのでしょうけども。
とん
2010/08/14 17:06
で、なぜ事業評価書の内容が信用出来ないのか、という具体的な説明はなさらないのでしょうか?
anonymous
2010/08/15 21:36
前のコメントぐらい読んだら?
前の
2010/08/15 22:51
突然ですが今Twitterでこんな物を見つけました

marman_band @miduse ついでに言うと、この全てのルートでは、かの人は出禁状態なわけで。となると、人から聞いた話の又聞き、しかも正しいかどうかも怪しいという情報だたりする訳で。
marman_band @miduse 複数のソースって(笑)、開発中のアイテムの内情を知ってるのは@内局(ざっくりペース)、A技本の一部(担当部署及び開発官)、B陸幕(といっても開発中の話だからかなりザックリした話)、C試験補助の会社の人、程度だったりする訳で

清谷先生、先生が兵器開発関連の部署から取材を拒否されている、というのは本当でしょうか。また本当だとすれば、今回の「CTA機関砲の開発が難航している」という情報をどうやって手に入れたのでしょうか。
こんな下らない質問に返答するのはご面倒だと承知しておりますが、このmarman_bandさんの発言の真偽を確かめたいので御返答をお願いいたします。
anonymous
2010/08/18 20:18
>兵器開発関連の部署から取材を拒否されている

全くのデマです。未だかつて防衛省から取材拒否をされたことはありません。自分たちに都合の悪いことを書くジャーナリストをそのような形で排除するのは民主国家ではありません。ロシアやインドなどでは別でしょうが。

ニュースソースは多岐にわたっています。自衛隊でも現役OB問わず、上は将官から下は士クラスまでお付き合いはあります。
自衛隊の調達に関して海外のソースから情報が出てくることはすくなくありません。

出来るだけソースは出すようにしていますが軍事情報という性格上出せないものも多いわけです。

ネット上での誹謗中傷をいちいち相手にしていらきりがないのでほっていますが、そのような事実無根の中傷を行っているものに関しては民事だけではなく、刑事告発も含めて法的手段を検討しています。


キヨタニ
2010/08/18 22:34
可及的速やかに法的手段に訴えた方が良いと思いますよ。
まあそれはそれとして企業・官公庁・政党への取材という物がどの様な手続きを経てOKがもらえる物なのか興味はありますが。
スイフト
2010/08/19 09:13
まじめな話、無条件に取材のOKが出るなどという事はありえないと思うのです。
スイフト
2010/08/19 09:16

コメントする help

ニックネーム
本 文
87式自走高射機関砲の後継、AW(装輪自走高射機関砲)の予算化なるか 清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所 /BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる