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zoom RSS 青少年健全育成条例改正案で日本はシナやナチスなみの「健全国家」に

<<   作成日時 : 2010/03/15 22:32   >>

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 さて、本日東京都庁にて行われたマンガ関係者による「東京都による青少年健全育成条例改正案と『非実在青少年』規制を考える」と題した記者会見と、その後行われた集会を取材してきました。

 パネリストは竹宮惠子(漫画家・京都精華大学マンガ学部学部長)、里中満智子(マンガ家・(社)漫画家協会常務理事・マンガジャパン事務局長・デジタルマンガ協会副会長・内閣官房知的財産戦略本部本部員・大阪芸術大学キャラクター造形学科教授・文化庁文化審議会委員・文部省中央教育審議会委員、他)、ささやななえ(漫画家 代表作:児童虐待防止法成立に力のあった「凍りついた瞳」)、森川嘉一郎(明治大学国際日本学部准教授、ヴェネツィア・ビエンナーレ第9回国際建築展日本館展示「おたく:人格=空間=都市」(コミッショナー)、呉智英(評論家、日本マンガ学会会長、京都精華大学客員教授)、藤本由香里(評論家 明治大学国際日本学部准教授 文化庁芸術選奨推薦委員 国立国会図書館納本制度審議会委員)、山口貴士(弁護士)ら各氏などでした。

 会見と集会では様々な議論がでました。ぼくが呼びかけて取材に参加したメディアもいくつかありました。各パネラーの発言はメディアの報道をご覧ください。


 この改正案で奇異な点がいくつもあります。

 まず、児童という定義が広すぎます。三歳児も17歳の高校生も我が国では「児童」と同じである、とされています。
 本来、例えば小学生までは児童、それ以上の18歳未満は青少年と分けるべきです。たとえば、5歳児の幼女に性交を強要するのと、17歳の高校生同士の恋愛を同じように「不純」あるいは「違法」というニュアンスで括っていいものではありません。
 
 18歳未満を「児童」とまとめて呼称しているのは世論の誘導を図法規制推進派の「戦略」に姑息な基づくネーミングだと思います。


 実在の17歳以下の児童・青少年の保護には誰も反対しないと思います。意思に反して、あるいはその意味をわからずに、その種のビデオなどに出演させることを防止することは必要です。
ですが、架空のキャラクターを「保護」の対象にするというのはその趣旨には馴染みません。ハッキリ言えばヤクザの言いがかりのようなものです。

 「非実在青少年」即ち、架空のキャラクターを規制するというのであれば、活字、即ち小説も含めるべきではないでしょうか。法令の文面を素直にとれば、都知事閣下の「太陽の季節」、その他村上龍、村上春樹氏の「ノルウェーの森」など多くの小説が規制の対象になるはずです。
 また「源氏物語」や「好色一代男」などの古典も、ロリコン、強姦、近親相姦などがてんこ盛りなので「焚書」にすべきということになるはずです。

 ところが、都側からは小説を除外した合理的な説明はなされていないそうです。となればそれは「文学者」たる都知事のお立場を忖度したのか、あるいは活字は高級、マンガやアニメ、ゲームは低級という独善的な価値観による差別であるのではないでしょうか。


 石原都知事はあくまで行き過ぎた一部の鬼畜なエロマンガの取り締まりのためというような説明をしていますが、入手した法案をみると対象はすべてのマンガやアニメなどを投網をかけるような内容になっています。しかもその基準は極めて恣意的です。
 都知事の言の通りならば、本来テロリストの立て籠もった一軒家を精密誘導爆弾一発で攻撃すればいいのに、法案はB−52の大編隊で絨毯爆撃するような内容になっています。都知事は法案の内容をご存じないのではないでしょうか。

 法案はすべての18歳未満の性行為に関する描写を禁止しているようにとれます。無論これは一部のエログロマンガやアニメだけではなく、極めて広範囲の作品がその対象になります。
 都は法案には「強姦など著しく社会規範に反する行為を肯定的に描写したもの」に限るとしていますが、その前項の「不健全図書」の規定では「図書類または映画などで、その内容が、青少年に対し、著しく性的感情を刺激し…青少年の健全な成長を阻害するおそれがあると認められたもの」とあります。


 記者会見でも集会でも出たのですが、法案推進派は世の中には「いいマンガ」と「悪いマンガ」があり、「悪いマンガ」を成敗すれば「いいマンガ」だけが残りめでたしめでたしになるという論理です。 

 つまりは二元論です。

 ところが実際の社会では「いいマンガ」と「悪いマンガ」の定義にしても諸説があるわけです。仮にいいマンガ」と「悪いマンガ」に分けられたとしても、その間には極めて大きなグレーゾーンが存在するわけです。

 頭の悪いアメリカ人は「グッド・ガイ(正義、自分たち」と「バッド・ガイ(自分たちから見た悪)」に世の中を二分して考えます。世界中でその論理で独善的な正義を振り回して不必要な戦争を多数起こしております。
物事を二元論でとらえる、あるいは白黒とわけることは極めて危険で、社会を不安定にします。

 例えばちんちんで障子を破るような都知事閣下の小説をエログロだ、子供に見せられないハレンチ小説だと思う人もいるでしょう(いえ、ぼくは違いますよ、おなじ「表現者」「作家」として表現の幅を許容すべきだと思っておりますから)


 更なる問題は、例え作者がキャラクターを成人と設定しても都が「未成年」と判断すればアウト、ということになります。ところが、この法案では18以上の成人が「有害図書」を所持することまで禁止しています。つまり児童の保護が目的ではなく、成人も東京都が正しいと思う「道徳」で縛ることを法制化しようとしているわけで、立法の趣旨とは大きく乖離しています。

 しかもOKかNGかを誰が決めるかも明確ではありません。
 細かいことは条例が改正された後に詰めるとしています。ですが、誰が線引きをするかは本来大きな問題です。業界関係者や中立な法曹関係者まで含むような機関が決定するのか、桜の代紋の暴力団=警察の天下りばかりがいるような「御用機関」になるのかでは大きな違いです。恐らく後者になる可能性は大です。

 今月出した「専守防衛」でも書いていますが、我が国では地方警察も含めた警察、防衛省、情報機関すべてが中央の警察官僚に牛耳られています。とても民主国家とは言えない状態です。さらに警察利権を拡大することは民主主義をさらに危うくすることになります。

 マンガと言えばサザエさんとか、孫のみているアンパンマンぐらいしか知らないような連中が自分の「常識」で判断すればどのような自体になるのでしょうか。


 そもそも芸術とはいわないまでも、創作や表現とはその時代の「常識」や「良識」とは相反する場合が少なくありません。故手塚治虫氏のマンガですら昔は「俗悪」と「良心的なお母さん達」から給弾されていた時代がありました。
ゴッホだって彼が生きているときは絵が売れませんでした。当時の「常識」のままであれば、未だにゴッホは無名で価値のない三流画家と評価されているはずです。
 
 ぼくらが高校生ぐらいの時までは、婚前交渉は是か非か、という議論が週刊誌にのっていました。また30歳以上の独身女性は「オールドミス」とか「ハイミス」とか呼ばれてました。そのようなことが「差別」とすら認識されていませんでした。

 都知事閣下がお嫌いな「シナ」では共産党が長年小説を規制してきました。それは恋愛小説や推理小説は色恋沙汰や犯罪を誘発するからでした。唯一許されていたのがSFです。それは科学技術の振興という共産党の「健全な目的」に沿うからです。
 
 当局が道徳を決め、それを市民に押しつけるわけです。また戦前のナチスではスポーツが奨励され、不健全な文化は廃絶されました。ナチスは「健康」「健全」を追及しました。


 この改正案が通るのであれば東京都議会のメンタリティは「シナ」やナチス並に「向上」することになります。
そもそも推進派の議員のセンセイ方の道徳はそんなに高いものなのでしょうか。


 本来もう少し精査してからアップしようと思ったのですが、採決まで時間がありません。

 何しろ改正案が発表されたのは2月24日、意見表明期間は25日、一日のみ、3月3日のは代表質問、4日に一般質問しかも質問は事前、提出議員にも数日しか時間がありませんでした。18日の総務委員会で事実上賛否が決定し、3月末に投票、成立することになります。

 この規制は東京だけに影響があるわけではありません。出版社などはほぼ東京に集中していますから全国に投網をかけるような規制になります。
 ですから地方の方も自分の問題ではないということではありません。当事者です。

 東京都議特に自民党(この際公明党はほっときましょう)の議員にメールなどで抗議をおくりましょう。また地方の自民党関係者にもこの法案に東京の自民党が賛成するならば、夏の参議院選では自民党には投票しない旨を告げましょう。

 特に都知事のご子息で、自民党の有力者で、東京が地盤の石原伸晃氏に抗議を送り、お父上と都議の皆さんを説得してもらうのが効果的ではないかと思います。
 
 石原伸晃氏へのメール宛先
 http://www.nobuteru.or.jp/feedback/iken.html




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都青少年健全育成条例改正案 「文学」は高尚だがマンガ・アニメは下劣が石原都知事の本音
都青少年健全育成条例改正案:再提案へ 性的漫画規制、都が対象作品を明確化http://mainichi.jp/select/seiji/news/20101123ddm012010032000c.html ...続きを見る
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内 容 ニックネーム/日時
精華大学による「東京都青少年健全育成条例改正案」に対する意見書
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/post-d9eb.html#more

非実在青少年規制反対集会速報
http://blog.livedoor.jp/nob_kodera/archives/2487793.html

「文化が滅びる」――都条例「非実在青少年」にちばてつやさん、永井豪さんら危機感
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1003/15/news074.html



どれも正論としか言いようが無い。
これに理論的に反論出来る賛成派はいるのだろうか?

追加:
都の2次元児童ポルノ規制に反対する作家リストがすごすぎると話題に
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1439891.html

ちょっと陰謀論めいて紹介するのは気が引ける部分もあるのですが、事実なので紹介しておきます。

「非実在青少年」規制をゴリ押ししている警察官僚の正体
http://d.hatena.ne.jp/killtheassholes/20100314
鹿児島の冤罪事件、志布志事件の関係者だそうで・・・・。ダメじゃん。
774
2010/03/16 01:24
本文下段あたり
>18日の総務部引火医で

誤字ではないかと思います。
らいとる
2010/03/16 17:40
>>総務部引火医

総務委員会の誤りです。訂正します。
キヨタニ
2010/03/16 22:27
東京都の性表現規制条例は継続審議になりました。
アイゼンシュタイン
2010/03/17 17:20
葛飾北斎もエロ漫画を描いていましたが(所謂春画)、あれも規制対象なるのでしょうかね?w
シロ
2010/03/17 22:59
はじめまして。

架空のキャラクターを、18歳未満と判断する基準は確かに不明です。逆に「若く見えるけれども、主人公は18歳です」などとどこかに小さく注意書きを入れておけば大丈夫ということでしょうか???

知事も副知事も作家なのに、容認しているのはおかしいですね。次は当然活字の世界にも波及してきますよ。携帯小説など性描写を含んだものは、若年層でもかなり読まれていますからね。警察官僚は漫画やアニメの何を知っているというんでしょうね。性犯罪も、欧米より格段と少ない国なのに。
安藤
2010/03/17 23:37

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