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zoom RSS 戦闘機のライセンス国産は必要か(追記あり)

<<   作成日時 : 2009/10/13 22:40   >>

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 FXの調達では長らく機種の話ばかりが話題になり、戦闘機の開発生産基盤の維持に関しては無視されてきました。

 FXの選定がずれ込んだのは、防衛省も空幕も戦闘機の開発生産基盤の維持をどうするのかをキチンと考えてこなかったからです。
 今年になってやっと「戦闘機の生産技術基盤のあり方に関する懇談会」が行われるようになりました。この会議は戦闘機だけに限らず防衛産業全般に関しても論じられているようです。ただやり方を見るに、本当にやる気があるのかな、という感じを受けます。

 資料にしても日本航空工業会が出してきたものばかりです。これらの資料は全部とはいいませんが、我田引水的なところがあり、産業界寄りに偏っています。
 本来中立的な専門のコンサルタントなどに依頼して他国、例えばイスラエル、スウェーデン、台湾、ブラジルなどの現状や産業育成の政策などを調査させるべきです。コストはかなり掛かりますが、戦闘機の国産を続けるにしてもやめるにしても、莫大な金額が動くわけです。決定の基礎となる情報をけちってはいけません。

 戦闘機の開発生産を続けるにしても選択は色々あります。例えば、イスラエルのように機体は諦めるが、レーダーや火器管制装置、システム統合、火器などの開発は行うというものがあるでしょう。
 ブラジルは9月にFXとしてフランスのラファールを選び、ライセンス国産を決定しました。ですがブラジルは単独でジェット戦闘機を開発したこともライセンス国産の経験もなく、80年代にイタリアと攻撃機AMXの開発をやった以降は開発を行っておらず、以後はスカイホークなどの近代化などを行ってきた程度です。
 
 つまり一旦戦闘機の開発を諦めて、再度ライセンス国産を行うわけです。これは日本には出来ないか、という疑問が出てくるでしょう。ブラジルのケースは一旦戦闘機の開発や生産をやめた後でも、再開は可能ということを示唆しています。

 ですが、一方で戦闘機の生産には高度な技術と熟練工が必要であるのは事実です。一旦やめた場合にはこれらが失われてしまいます。現状と同程度の技術を取り戻すことは可能なのか、可能とするならばそのコストはどれほど掛かるかなど精査する必要があります。
 因みにブラジルはラファールの調達を36機としていますが、最終的には100機以上調達する予定だそうで、ライセンス生産のコストはかなり下がるでしょう。またサルコジ大統領は多くの技術移転を約束しただけではなく、エンブラエルが開発中の輸送機C−390の開発にも参加、12機の調達を約束しています(ついでにブラジルの国連常任理事国入りを強くサポートすることも約束したそうです)。
追記:この契約はサルコジ大統領の先走りというはなしもあるそうです。軍はC−390は必要ないといっているそうです。今後この件は揉めて、最悪仕切り直しということもありうるというのが消息筋からの情報です。



 我が国では国産を継続する理由として、それをしないと輸出国とネゴができないことを理由に挙げる人多いのですが、メーカー同士を競わせればいいわけです。そもそもこれまで米国とまともにネゴをしてきたのでしょうか。


 また将来国産開発が可能かどうかという問題もあります。
 莫大な金額の開発費がかかります。しかも今の心神の延長上ならば完成時には2週遅れて登場した「ラピュターの劣化モデル」になる可能性もあります。
 例えば開発に5000億円かかるとして、それをまかなえるのか。仮2000億円しか使えないとなると、これを機体、エンジン、レーダー、サブステムなどに平均してばらまくと、それぞれ必要金額の4割程度しかかけられなくなります。今までの国産開発同様で、まともなものが作れないということになります。
 
 ならば何かを諦めるて、何かを残すとということになります。その場合はレーダーやシステム統合の部分になるのではないでしょうか。

 防衛省には本気で国産をやる意気込みが感じられません。例えばF2のレーダーが謳い文句通り優秀ならば、その技術を発展させ、次世代の戦闘機に繋げるべきでした。国産なら国産兵器の情報を米国に開示する必要もありません。

 ところがF−15の近代化では米国製のレーダーを選びました。
 これでは技術の継承が出来ません。それは必要な性能がでないからなのか、開発調達費が高くつくからなのか、あるいはその両方なのでしょう。
 国産技術を育てるならば、ダメ元で開発を行うべきでした。本当に必要なものであれば、他の予算を削っても開発すべきでしょう。そうしないと技術の継承ができません。金がかかるというならば、たかだが140機(当初の計画では)ほどの戦闘機を開発すること自体がおかしかったことになります。

 戦闘機のレーダーは特殊ですから、F2の後になにもつくらず、20年後、」30年後にポコッと他国に勝るとも劣らないレーダーを開発できるということはありません。それが出来ればどこの国も苦労はしていません。
 最後までやる気がない、出来ないなら初めからやらない方がいいと思います。資金という戦力の逐次投入です。

 恐らくは次世代の戦闘機はコストを考えれば、国際共同開発になるでしょう。その前提としては武器禁輸の緩和が必要です。それをやるかやらないかでも、戦闘機の生産を続けるか否かの決定が変わってくるはずです。

 さて、民主党政権はどのような舵取りをみせてくれるのでしょうか。

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コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
興味深い内容ですね。ところで、
>ところがF−15の近代化では米国製のレーダーを選びました。
とありますが、私はよく知りませんが、ライセンス生産の場合、契約上、勝手に改造(近代化)はできないのではないでしょうか。その当たり、専門家のご意見をうかがいたいところです(アメリカ側の了承を簡単に得られるのか、アメリカの了承を得ずに日本のレーダー搭載は可能なのか…といった部分です)。
フェリ
2009/10/14 18:37
交渉は必要でしょう。交渉次第では不可能ではなかったはずです。因みに我が国が導入したF−15に関しては電波妨害装置が装備されておらず、国産で賄いました。イスラエルは自国産のシステムを搭載しています。イスラエルに出来て日本に出来ないのは何故でしょうか。インドのフランカーのエンジン関連のソフトなどは国産です。トルコはF−16のソースコードを国産化しています。
相手のいうまま、値段も条件も丸呑みさせられているのは如何なものかと思います。
キヨタニ
2009/10/14 23:50
<イスラエルに出来て日本に出来ないとおっしゃっているのはレーダーについてでしょうか?
電子戦システムについては日本も国産の物を開発し搭載している(もしくは予定?)と思っていたのですが…。
F2予算オーバーについてはアメリカのごり押しでソースコードリリース拒否→国産開発、と米国メーカー(GD→LM)に対する開発・生産のワークシェアにあったと思っていたのですが…。
確かに交渉で押し切られた点は、仰るとおり如何なものかとも思いますが、当時の状況は知らないので、本件も含めて教訓として活かせるか如何かと思います。ただ、見通しはかなり暗そうに思えるのが気ががりですが…。
ぽち
2009/10/17 10:16
本当にF−2が優れた戦闘機で、戦闘機の生産の技術がどうしても必要ならならば、少なくとも交渉の準備なりロッキード社に問い合わせなりして(F−22が調達が怪しくなり、F−35が間に合いそうにないと変わった時点で)増産の検討に入ってもいいはずなんですけどねえ。
あるいは近頃売り込みに熱心な欧州メーカーとか。
それすらして無いんですかね?
anto
2009/10/17 20:32
ブラジルのケースがどういうものなのかは分かりませんが、日本の場合YS11の開発成功と販売展開の失敗が教訓になってないのかな、とも思います。
まして中小国ではその国の持てる技術を総動員しても作れない最新鋭戦闘機です。
F2については未だに評価が真っ二つに分かれているようですが、F16のアレンジ付き模倣ですらこうなのですから、国産で行った場合、ベースとなるであろう「心神」とやらの出来がFX対抗馬たる中国の「暗剣」(だったかな?)とやらに勝てるかどうか疑問ですね。
あちらさんはアメリカから技術を盗んだりして作ると思われるので、時間はかかるでしょうがそれなりの出来にはなると思います。
周辺機器の開発のみに絞って国産にした場合、それなりの仕事量は確保できるでしょうが、エンブラエルという優秀な航空機会社を持つブラジルと違い、まともな航空機メーカーがなく、防衛需要で細々とやってる日本で同様に出来るかはちょっと疑問に思います。
「ガンダム」の国ですから試作機は優秀なものが出来るとは思うんですがね・・・(^^;)
八王子の白豚
2009/11/08 17:46

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