防衛と防衛産業に弱い経済紙、日経が一面トップ記事で誤報


日本の防衛産業「土俵際」 受注数半減、選択と集中問う

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA138FN0T11C21A2000000/

本日の一面トップ記事です。執筆者は安全保障エディター 甲原潤之介、越智小夏、川崎なつ美の各氏の署名原稿です。

ところがこれに誤報が。
>2019年にコマツが防弾性能などを持つ「軽装甲機動車」の開発を中止した。

整理部レベルでも普通の新聞なら気がつく誤報ですが、安全保障エディターを含む、記者の皆さんが相互に確認したであろう記事でこの失態です。以下に日経の記者が軍事と軍事産業に無知であるかを象徴しています。

しかも装甲車が防弾性能を持つのは当たり前の話で、こんな説明で限られた紙面を無駄に使う必要はないでしょう。いや必要だと強弁するのであれば10式戦車や96式装甲車でも「防弾性能を持つ」と前置きしなけりゃいかんでしょう。

これは軽装甲機動車の開発ではなく、排ガス規制に適合するための改良型の開発です。

コマツが装甲車輌から引かざるを得ない理由
https://toyokeizai.net/articles/-/268241

>軽装甲機動車は近年の排ガス規制によって改良が必要となり、防衛省はコマツに対して改良を発注し、平成28年の2016年度予算では改良型6輌が3億円で要求された。単価はそれまでの約3000万~3500万円から5000万円へと、約1.5倍に高騰した。このため財務省が難色を示して政府予算に計上されなかった。そもそもこの手の小型4輪装甲車の国際相場は1000万円程度である。コマツ、防衛装備庁、陸幕の認識が甘すぎたとしか言いようがない。

>その後、エンジンをカミンズ社のエンジンに換装するなどしてコスト削減を図るなどの案も検討されたが、採用されなかった。またコマツは自社ベンチャーで軽装甲機動車6輪型も開発していたが、これまた陸自には採用されなかった。


更に申せば、コマツは装甲車輌の生産からも手を引いています。新規の生産も開発もありません。既存の車輌のサポートも何時まで続くかわかりません。この記事を読むと「軽装甲機動車の開発をやめただけ」と読者は誤解するでしょう。



日経がこういう、しょうもない誤報を垂れ流すのは、誤報について指摘があっても無視するからです。人間恥をかいてこそものを覚え、成長するものですが、「我が対日本経済新聞に誤報なし」と現実を無視しているわけです。

以前技本の手投げ式無人機の誤報がありました。これは写真付きでした。これから開発するのになんで実機の写真が載っているのか?普通整理部でもそう思うんじゃないですか。これはそもそも川田工業が開発を始めた無人機で、それを日立が引き継いで技本に提案したものです。記事が掲載された時点ですでに開発は始まっていました。
これをこれから開発するという記事でした。で、日経に氏名と軍事ジャーナリストであると名乗ってこの記事が誤報であると伝えました。ところが担当者は記事には絶対の自信があると居直り、書いた記者とデスクの名前を教えろといっても安全上の問題があると断りました。「同業者」に氏名教えてなんの脅威があるのでしょうか。であれば上場企業のトップに取材行く際も名刺をださないのでしょうか。
それともフリーランスというヤクザな連中に、「上級媒体社員」である日経の記者が名乗る必要はないと考えているのでしょうか。

C-2の輸出に関してもそもそも航空機の基礎的な知識がなくかいた1面誤報記事を書いています。

C-2輸送機の輸出構想は、「画に描いた餅」

>多くのメディアは政府や防衛省、メーカーなどの発表を疑いもせず、そのまま報道する。その好例が2007年7月3日付けの日経新聞1面。この記事ではC-2について、「競合するボーイング、欧州エアバスが旅客機を転用しているのに対し、トラックをそのまま積めるなど積載能力が高い」とある。

>この記事を書いた記者はC-2のライバルがA400Mやイリューシンのランプドアをもった軍用輸送機であるというごく初歩的な知識もなく、C-2のライバルがボーイングの767や747などの通常のジェット旅客機を転用した民間用輸送機と誤解している。つまり専門知識がまったくない。このようなレベルの記事が日本を代表する経済紙の一面に掲載されてしまうのだ。

こういう間抜けな記事を一面に掲載するわけです。
昔から日経の読み方は「後ろから、下から」と言われています。
それは面白いのが終面の文化欄。一番誤報と飛ばしが多いのが一面で、一番下は広告、その上にある雑報は通信社配信や企業リリースがもとの外部ソースの記事だからです。

さて記事に戻りましょう。

>防衛装備品はもともと利益が出にくい。防衛省は一般的に原価に5%ほど上乗せした額で発注し、企業努力の余地は少ない。営業利益率が10%超の米防衛大手ロッキード・マーチンなどと差がある。

「5%ほど上乗せした額」というのは表向きで、各工程で多少ずつでも利益を乗せているのは業界の常識です。それに日本場合100セント官需ですからリスクはありません。そもそもそんな僅かな利益で、いつ調達が終わるのかわからず、30年も掛かることはあたり前で、
事業計画が立てられないような商売で利益がでるはずがないでしょう。例えば外国が5年で終わらせるものを30年かければ人件費もラインの維持費も6倍です。

対してロッキード・マーチンなど外国企業は必ずしも採用されるとは限らないものを自社ベンチャーで開発するなどリスクをとって商売をしております。また米国政府はシビアなので開発費や値段が高騰するとF-22のようにバッサリ調達数が減らされたり、プロジェクトが中止になったりします。また彼らは世界市場で戦うために常に研究開発、見本市絵の出展、広告費などと掛けています。
両者を単純に比較はできません。

>日本勢の多くは事業全体に占める防衛分野の割合が低い。「仮に100%のシェアを取ったとしても年間予算からするとわずかだ。新規生産するメリットはない」。21年に陸自向けの新規の機関銃生産から撤退した住友重機械工業の下村真司社長は漏らす。
こういうコメントをそのまま載せるのは無責任です。
そもそも住友重機械工業は40年以上に渡って製品の性能や品質を偽った札付き企業です。還元すれば、不正な手段で延々と利益を得ていた企業です。それの会社の言い分を無批判に掲載していいのか?他に当たるべき企業はあったでしょう。

機銃に関して100パーセントの供給者である住友重機械工業が撤退したのはこの問題が露見したあと、まともな商売をするとコストが上がって旨味がなくなったことが一つ、もう一つは新規の商売が取れなくなったことでしょう。12.7ミリ機銃や、7.62ミリ機銃などが他のサプライヤーに移ることはほぼ確実となったからです。更に申せば5.56ミリMINIMIも外国製のコンペとなって仕事を失いました。

「100パーセントあった仕事」が「100パーセント無くなる」ことが火を見るより明らかになったら同社は機銃から撤退したのでしょう。

そもそもオリジナルの5~10倍の値段とって、品質性能が劣る製品をのほほんとうっていながら、危機意識のかけらもなかったのが問題です。


更に申せば、陸自が普通科の7.62ミリ機銃を廃止することを決定してもなんの反論もせず、御用商人丸出しで唯々諾々と「お侍様」に従っただけでしょう。62式の後継の機銃があれば売上は下支えできたはずです。また小銃や、機関砲にウイングを広げるという戦略もあったでしょう。もっと言えば、豊和工業や日本製鋼所などとの事業統合という手段もあってでしょう。

税金を詐取することしか考えない、無能な経営陣、それを是としてきた防衛省や自衛隊の責任も感化できません。このようなコメントを無批判に掲載するのは世論をミスリードするものです。

スクープ!住友重機械が機関銃生産から撤退へ
https://toyokeizai.net/articles/-/422914
なぜ自衛隊は「暴発する機銃」を使うのか
https://toyokeizai.net/articles/-/52889


>米国が開発した最新鋭のF35戦闘機の開発費は6.1兆円で、70年代に運用を始めたF15の6倍を投じた。各国は苦労して手に入れた独自技術を簡単に譲らない。日本は機体の組み立てしか許されず、ほとんど生産に携われない。

これも頭が悪い話です。
米国=各国というロジックになっています。中学校の小論文で書いたら原点でしょう。
「各国」でリスクの低減や輸出促進のために共同開発、共同生産を行うことは珍しくありません。むしろ普通に行っています。FX選定時のユーロファイターの提案でも、技術移転が目玉でした。そしてユーロファイターは独自の改良も可能で、アップデートのため会議にも参加できました。コンポーネントの一定パーセンテージの生産も可能でした。
ところが「アメリカ様と同じ玩具が欲しい」と防衛省と空幕ははじめに、技術移転がほぼゼロのF-35を出来レースで採用しました。
つまり自ら技術移転と輸出の機会を自ら潰したわけです。


>艦艇などに搭載する巡航ミサイルの射程は大幅に伸び、戦闘機はレーダーに映りにくい「ステルス機」が主流になった。国内企業の独自開発は困難で、米国の日本への対外有償軍事援助(FMS)が10年間で10倍に膨らんだ。

これまた木に竹を接ぐ話です。FMSが大幅に伸びたのはステルス機=F-35だけではありません。グローバルホーク、オスプレイ、AAV7、イージス・アショアなど自衛隊に不要で高価な米国装備を、米国の歓心を買うために調達したことは無視されています。


>自前の防衛産業が衰退すれば自衛隊が使う装備の機動的な導入が難しくなる。保守や修理にも悪影響が及ぶ。

保守や修理は「産業」ではないというのでしょう。さすが大日本経済新聞です。MORE(Maintenance, Repair & Overhaul整備・修理・重整備)というビジネスをご存じないのでしょう。日本飛行機は自衛隊や米軍機の整備や改修をおこなっておりますが、日経では未だにメーカーが整備も全部やっていると思っているのでしょうか。

前のパラグラフを受けたパラグラフです。

>どうすればよいのか。国内企業保護のため単純に大量発注するのは非効率で本末転倒だ。最新装備を海外から導入しつつ、米国などが一目を置く技術に集中投資する戦略が基盤維持に不可欠だ。

これまたお子様レベルの見識です。常識的に考えればまずは零細レベルの国内メーカーの事業統合、更に輸出、それは単独ではなく国際共同開発、オフセットも含めた輸出の拡大でしょう。共同開発にしても国内メーカーの統合は必要です。固定翼機メーカー3社、ヘリメーカー3社が防衛需要に寄生しているような状態を放置して健全化はありません。

あとは軍用トラックなどの輸出でしょう。メーカーにその気があればですが。いすゞあたりにしても同社のトルコの子会社は軍用トラックを作っていますが、タトラ社のものをベースにして国内生産している自衛隊向けのトラックを販売する気はないようです。

そもそも日本のメーカーに防衛が「産業」という意識がありません。その意識がなければ何をやっても画餅になります。
そして日経の言う一目置く(軍事)技術なんてほとんどありません。むしろソニーのイメージセンサーなどデュアルユース技術が有望です。

>政府は22年度予算案で防衛分野の研究開発費を1.4倍に積み増した。中国の極超音速ミサイルを迎撃できる「レールガン」やドローンを電波で撃ち落とす研究を進める。
>研究開発は22年に改定する国家安全保障戦略の柱にもなる。将来の戦い方を見据えて中国の抑止に真に有効な技術の見極めが欠かせない。

日経の認識ではレールガンなどが「有望」なのでしょう。ですが既にレールガンは米国が長年費用を掛けて研究して、実用化の手前まで来てやめたものです。それを後追いして果たしてゲームチェンジャーになるのか。

率直に申し上げて官民ともに日本の防衛産業は一種の国営企業と思っているフシがあります。官の側は内向きの組織防衛のために空路空論を振り回し、諸外国の動向も調べずに内向きの組織政治を優先して頓珍漢なものを作れと指導する。
メーカーはこれまで黙っていてもGDPに比例して売上が増えてきたわけです。売上は少なくともリスクゼロで一定の利益は入ってくる商売です。

ところが今世紀に入って調達数が減ってきた。この記事では無視していますが、装備が高度化してその分、調達単価があがり、維持整備費が増加した。実はこれが、調達数が減った最大の理由です。次いでGDPが横ばいで増えなくなった。この記事を読むとあたかも防衛費が減っているから調達数が減ったかのように誤解するでしょう。

そしてこの記事の処方箋は役に立ちません。
それはメーカーの経営者にやる気も当事者意識も能力もないからです。
所詮プライムでも精々数%の売上でしか無い防衛産業です。しかも続けていればリスクなして自動的に利益が入ってきます。
ですから売上が下がってきても多勢に影響はない。しかも多くの企業では防衛産業をやっていることは「恥」と思っています。何かあれば世間から「死の商人」と指をさされる。だからサイトにも防衛装備は乗せていない企業が多いわけです。ご案内の住友重機もその手合です。

かと言って、手仕舞いしようとすると、摩擦も起こるので、経営陣は自分たちが現役の間は
穏便に済ませるために再編や撤退に手を付けない。次の経営陣に丸投げです。つまりは事なかれ主義、無責任ということです。

今後自社の防衛部門に力を入れて、再統合を受け入れたり、世界の市場に打って出て、リスクを負っても防衛部門を育成しようというビジョンを持った経営者は極めて少数派でしょう。であれば、そういう企業に期待しても無駄です。新明和、東芝、日立、川重などがそうでしょう。

こういう記事を連休の谷間とはいえ、防衛専門記者がこのような記事を書き、それを一面に持ち出す新聞の記事を信用するのは大変危険であります。



また、このような記事を書く媒体が、記者クラブというKKKやナチ同様の差別主義団体を組織し、他の媒体やフリーランスを取材から排除して、取材機会を独占し、特に専門記者を排除するのは国民の知る権利をないがしろにする行為です。

"防衛と防衛産業に弱い経済紙、日経が一面トップ記事で誤報" へのコメントを書く

お名前
ホームページアドレス
コメント

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。