少子高齢化でも大連合艦隊志向の帝国海軍



護衛艦、最新型で省人化 4割置き換え 採用難でも防衛力維持
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO68095330S1A110C2PP8000

>防衛省は2030年代前半までに、海上自衛隊の護衛艦の4割を少人数で運用できる最新型に置き換える。1隻あたりの乗組員を半数程度にして自衛官数を増やすことなく稼働する隻数を増やす。採用難でも防衛力を弱めない装備に変える。

>装備は艦載砲や対艦ミサイル、対潜水艦の装備など通常の護衛艦と同等の機能を備える。既存艦にない機雷掃海機能も付け、将来的に海洋監視活動の中核とする。

>防衛省が省人型装備の開発に乗り出す背景に少子化に伴う採用難で、自衛隊員の人数確保が難しくなった事情がある。特に近年負担が増す海自の人手不足は深刻だ。高卒中心で任期3年の海自の「自衛官候補生」は15年度以降5年連続で採用計画を下回った。

>防衛装備品の省人化や小型化は世界の流れだ。20年に当時のエスパー米国防長官が、45年に米海軍の艦艇数を現勢力より7割多い500隻以上にすると発表した。大型艦は減らし、小型艦や無人化した艦艇を増やす。

>護衛艦の生産を担う国内の造船業界は規模の大きい中国や韓国勢との競争に押され、経営に苦しんでいる。海上保安庁が沖縄県・尖閣諸島周辺の監視にあたる巡視船も製造しており、護衛艦の新造を通じて業界を下支えする思惑もある。



率直に申し上げれば、艦長のポストがそんなに欲しいいんですか?という感想しかありません。海軍栄えて国滅ぶ、のではないでしょうか。
しかも護衛艦だけではなく哨戒艦12隻も防衛大綱の計画に入っています。


記事にも有るように、自衛隊特に海自の艦艇乗組員の募集は困難です。そしてせっかく採用しても辞めてしまう隊員が何割もいるわけです。特に潜水艦の乗員は適性がシビアです。それを16隻から22隻増やしただけでも相当大変なことです。

ただでさえも艦艇乗組員は長期の航海で閉鎖空間に閉じ込められるので人気がない。その上に旧海軍からの伝統のいじめが横行し、それを組織的に隠蔽する陰湿な体質があります。
萌キャラや海幕長が空幕長とカレーVS唐揚げで注目集めて、リクルートに活かそうとしても入って現実みれば辞めてしまう隊員が多いわけです。その根本に目をつぶって奇抜な広報活動に力を入れても問題の解決にはなりません。

米海軍が増やすから、日本も可能ではありません。米国は人口、特に若年層が増えています。対して我が国は人口が減少し、少子高齢化が進んでいます。


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この環境で海自の隊員を増やすのは現実的とは言えないでしょう。

それに医官はどうしますか?今ですら本来定員に入っている医官が基本護衛艦にのって言いません。医官の生える木でもあって、有事になれば医官が生えてくるんでしょうか。

更に申せば、将校の予備役が殆どいません。予備自衛官でいるのは通訳や医官などです。
このように貧弱な予備役体制も問題です。

しかもFFMでクルー制導入といっても3隻あたり4クルーです。他国のように1隻に2クルーではありません。どの程度艦の稼働率が向上するか検証が必要です。海自もこれは前提的な計画だと認めています。今後運用によっては3隻2クルーとか、1隻で2クルーというような形になるかもしれません。


無理に隻数だけを増やすと、艦だけが揃って、全部定員不足でろくに戦闘ができない可能性も出てきます。しかも艦隊の4割は低性能のFFMです。
基本的に低価格、低維持費で少ない乗員のFFMのコンセプトは間違っていません。ですがすでに何度もしてきているように、できるだけ高性能なコンポーネントを低価格で揃えるということをやらずに、値段を下げてそれなりのものをいつもの国内ベンダーから買っています。

それが核心的な技術であれば仕方がないですが、世界中で手に入るものを採用せずに、低性能、高コストの国内品を調達しています。このような硬直した調達体制を是正せずにつくれば「安かろう、悪かろう」になるのは当然です。RWS1つをとってもまともな海軍なら絶対やらないような、いい加減な調達をやっています。
コンピューターやジャイロなどは一社独占です。コスト競争が働くインセンティブは

海自FFMと隊員減対策(前編)
https://japan-indepth.jp/?p=56206
海自FFMと隊員減対策(後編)
https://japan-indepth.jp/?p=56255


それが可能なのは民主国家の軍隊であれば開示して当然の情報を開示しないで、密室の中でことを進めるからです。財務省、会計監査院、国会にも知らされません。まるで旧帝国海軍のようです。
米海軍が公開しているような情報がなぜ海自には公開できないのでしょうか。
財務省の資料が提示している海自の情報をなぜ海自が公開できないのでしょうか。

そして、21世紀が20年以上過ぎた現在、自衛隊や軍隊は20世紀で殆どはなかった、ネットワーク化、宇宙、サイバーと言った領域の投資が必要不可欠です。仮に6兆円の防衛費があってもそれは昔ならば全部、コンベンショナルな用途に使えました。ところが現在ではその何割かを新しい領域に使わないといけません。当然ながらカネとモノだけではなくそのためのヒトも必要です。

つまりはコンベンショナルな部隊、装備は予算や規模を縮小しなければならないのが道理です。

そうであれば、海自が現在以上の隻数の艦隊を整備しようというのは、FFMを量産使用が現実的ではないでしょう。寧ろ水上艦艇にしろ、潜水艦にしろ、隻数を減らしてクルーの数を増やして、できれば1隻あたり2クルーにすべきです
それによって、艦の稼働率が上がり、乗組員の離職率が増えれば艦の数だけを増やすよりよほどメリットがあると思います。

海自は無人機では艦艇や哨戒機任務を肩代わりできないといいますが、本当でしょうか。途上国でも無人機を使っているのに、海自は試験的にすら導入すらしていません。「昭和のレトロ海軍」です。運用もしたことないのに、何で不可能だとわかるのでしょうか。靴を履いたことがない人間が靴は不要なだというようなものです。

初めに艦長のポスト拡大ありきで、それにそれらしい理屈をつけているだけではないでしょうか。無論全部の任務を無人機でこなすことは不可能でしょう。ですが少なくとも無人機であれば艦艇よりコストが低いし、また運用人数も少ない。艦艇の乗組員を当てる必要もありません。また艦艇よりも速度が早いというメリットもあります。
有人機と比べてもコストは圧倒的に安いしクルーも少なくて済む。そして航海手当や航空手当も出さなくてすみます。体力や病気で艦隊勤務や航空機に搭乗でできない人員を当てることもできます。
現状を見ている限り、第二次大戦で空母や航空兵力の有用性が明らかになっても主役は戦艦である。空母では戦艦に役目を代用することはできないといって、空母を増やさす戦艦の建造を増やすようなものです。

やらないための言い訳を探して言い張るよりも、不可避な変化に対応する努力をすべきではないでしょうか。


艦隊増やすしかないと無理を重ねて、乗員がスカスカで実戦能力が怪しいフネを大量に保有するのか、隻数を減らして本格的にクルー制を導入して艦艇の充足率を上げ、有人哨戒機の数を減らし、燃料費を下げ、浮いたカネや人員をネットワークやサイバーなど新領域の投資に振り向けるべきではないでしょうか。

>護衛艦の新造を通じて業界を下支えする思惑もある。
それは経産省の仕事であって、海自の仕事ではありません。
造船生き延びて、国滅ぶ、です。
実際は造船業界の競争力を下げるだけです。

輸出もせず、国際競争力もない高コストで、使えない軍艦を作ってもメーカーへの補助金と同じです。
農業同様に、税金を使って産業の弱体化を早めることになります。黙っていても補助金同然の仕事が降ってくるなら、
だれが一生懸命に生き残りを賭けて知恵を絞るでしょうか。
官需、ことに防衛省全面依存がどうなるかヘリ産業みればわかるでしょう。
そもそも国家予算の四分の一を利払いに当てている我が国にそんな余裕はありません。


組織防衛よりも本来の国家の防衛を主軸に据えて、変革を受け入れるべきではないでしょうか。カレーや萌キャラでいくら隊員を釣っても最後は人で不足で自滅します。これらと同時にいじめを根絶するために本気になり、いじめを組織的に隠蔽しない、不要な業務で隊員を疲労させない、やる気を奪うようなパワハラ、セクハラを行わない。
改革を提案する人間を寄ってたかって潰さない。そういう健全な組織としてはあたりまえの努力をすべきです。そうでないと散々税金使った挙げ句にボロ負けして国民に迷惑をかけた昭和の帝国海軍と同じ道をたどることになるでしょう。



Japan in Depth に以下の記事を寄稿しました。
海自FFMと隊員減対策(前編)
https://japan-indepth.jp/?p=56206
海自FFMと隊員減対策(後編)
https://japan-indepth.jp/?p=56255

自衛隊機のコスパを検証する(前編)
https://japan-indepth.jp/?p=55801
自衛隊機のコスパを検証する(後編)
https://japan-indepth.jp/?p=55809
官庁の情報開示は途上国以下~記者クラブの弊害~
https://japan-indepth.jp/?p=55598

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
来年度の防衛予算5.3兆円が実はもっと多い訳
実際は5.7兆円、過小に見えているのはなぜか
https://toyokeizai.net/articles/-/398559

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