天下の文藝春秋が軍オタの後追い記事を載せていいのか?

本日以下の記事が文春オンラインに掲載されました。著者は石動 竜仁= dragoner 君です。


陸自ヘリ墜落事故で考える、現代戦に求められる戦闘ヘリの条件
このままでは自衛隊から戦闘ヘリが消滅する
http://bunshun.jp/articles/-/6205

これはぼくが東洋経済オンラインに2月10日に書いた記事の後追い記事です。

陸自の攻撃ヘリ部隊は、すでに瓦解している
墜落事故を機に長年の課題に向き合うべきだ

結論から言えば、これはプロの記事ではありません。
はっきり言ってアイドルオタのアイドル礼賛みたいな気持ちの悪い記事です。

攻撃ヘリの脆弱性などについては、異論はありません。ですが、著者のいっていることは自衛隊は正しい、AH-64Dはいらないよね、A-10攻撃機の方が役に立つよね、ということです。
この主張はネット上の軍オタさんたちに散見される意見の典型例です。
ですが全くの見当外れです。


まず石動 竜仁= dragoner 君の文章を引用しましょう。
>配備からわずか2年ほどでのスピード打ち切りだったが、この理由としてはメーカーのボーイング社での自社生産が終了したため、富士重工で生産する部品のための追加投資が必要となり、価格高騰が見込まれたためと報じられている。
>だが、実機を試験した陸自側で、価格に見合う価値がないと判断したことも、打ち切りを後押ししたと噂されている。特にAH-64Dのウリの一つだったネットワーク機能の面で、陸上自衛隊側のシステムとの適合性が問題視されたという。


この文章を読むと単に悪いのはメーカーだよ、自衛隊じゃ無いよと読めます。
ですが、ボーイングは一定期間部品の供給を約束していました。ぼくは当時のボーイング社の広報担当者に確認しています。しかも富士重工で生産している部品のパーセンテージはかなり少なく、殆ど組み立て生産で価格が高騰するような話ではありません。

次のパラグラフも「噂」です。そしてその噂は事実ではありません。
そもそもオリジナルに「我が国独自の環境と運用にあわせて」カスタマイズされたのが陸自用のAD-64Dです。
それが適合しなかったのであれば、陸幕側の責任でしょう。その事実もありませんけども。リンク16も搭載せず、音声無線機だけでネットワーク適合もないものです。

石動竜仁= dragoner 君が根拠にしている「報じられている」とか「噂」は5ちゃんねるあたりで転がっている「定説」でしかありません。

事実は先の記事でご案内したとおり、以下のごとくです。

>調達をやめた最大の理由は、ボーイング社がアパッチの生産を終了すると聞いて狼狽したからだ。ボーイング社は韓国が採用したF-15Kのオフセットとして2003年からアパッチの組み立てラインを韓国に移管したが、2006年から新規の胴体の製造が止まり、D型からE型へのアップグレードだけに対応することになった。

>だが、「実は生産ラインが止まるまで相当期間があり、それまでのペースで調達しても30機程度は調達できた。一部を安い輸入に切り替えれば予定数はほぼ調達できたはずだ」と当時の調達関係者は語る。


ぼくは陸自の方面隊航空司令以上のOBや業界関係者に裏を取っています。
この手の話が難しいのは、直接の担当者だと自己弁護のめに虚偽を言ったするとがあります。ですから中枢部にいた人間1人だけに聞くと、誤った情報を掴むことがあります。ですからできるだけ複数のソースに確認すべきです。

石動竜仁= dragoner 君は以下のように続けます。

>この事態は日本における戦闘ヘリという戦闘職種の危機ではあるが、戦闘ヘリという存在自体が、現代の戦場で存在意義を問われていて、AH-1S後継が10年宙に浮いている問題を難しくしているのではないかと考えられる。

>湾岸戦争の続きとも言える2003年のイラク戦争では、戦闘ヘリは大きな損害を出している。イラク軍のメディナ師団攻撃に向かった30機のAH-64Dのうち、同師団の猛烈な対空攻撃を受けて1機が不時着。残る29機中28機が損傷するという大打撃を受けている。現代的な軍隊と対峙した際、戦闘ヘリがいかに脆弱な存在かを物語っている。

>大型で高性能の対空ミサイルを持つ部隊に直面した際、戦闘ヘリに出番はあるのだろうか?」、「正規軍同士が戦う戦場で、戦闘ヘリは生き残れるのだろうか?」と疑問視されている。


と、あたかも「専門家」的な解説をおこない、攻撃ヘリ不要説を唱えております。

ところが石動竜仁= dragoner 君の主張は大きな間違いがあります。
まず、知ってか知らずか、イラクやアフガンでの戦闘において、攻撃ヘリの運用が大きく変わっていることを全く述べていません。かつては攻撃ヘリは低空を匍匐飛行して敵の機甲部隊を攻撃する、という任務を想定されていました。

ところがアフガンやイラクではそのような使い方が合っておらず、上空にとどまってISR(情報・監視・偵察)を行うという任務が主体となっています。実際にオランダ軍のアパッチは一定以上低空に降りないという制約をつけて運用されていました。
これは戦車がかつて機甲戦を想定したのから、歩兵の直援に切り替わったのと同様です。
切り替わったから3.5世代の戦車は機動力を犠牲にして生存性を高めたわけです。


>CASを行う航空機はその特性上、敵の機関銃弾が届くような近距離を飛行する。必然的に対空ミサイルから銃弾まで、様々な脅威に晒されることになるため、それに備えた対策が必要となる。
>そのため、CAS専用に開発されたアメリカ空軍のA-10攻撃機は、「バスタブ」と呼ばれるチタン合金製の厚い装甲でコックピットを守り、高い生存性を確保している。ところが、ここまで徹底した防護策は重量増を招くため、積載量に余裕のないヘリコプターでは難しい。


これも前世紀の「常識」でしかありません。

戦車不要論と同じです。携行型対戦車火器の発達で戦車の優位性は減ったけども、戦車がいらなくなったわけはない。また運用も対機甲戦から歩兵支援にシフトしている。これと同じです。


まずCSA以前に、火力支援を行う機体はより遠距離から攻撃することが増えています。地上部隊がレーザーデジネーターで指向すれば、目標を確認できない遠距離からでも精密にミサイルを誘導できます。それに昨今の滑空式の精密誘導爆弾も同じです。これはアークエンジェルなどのCOIN機でも搭載しています。航空機による火力支援も前世紀とはかなり様変わりしています。
攻撃ヘリにして一定以上の上空にとどまっての火力支援が多くなっています。無論必要があれば機銃、機関砲の射程内におりてきます。攻撃ヘリにはこのような柔軟性があります。

>軍事費の削減圧力が強い国は多い。そのため、少しでも節減しようと、航空機にマルチロール(多目的)性を持たせようとする傾向が強い。つまり、1機でなんでもできる万能選手が好まれている。ところが、CAS専用に開発された戦闘ヘリはこれが弱い。


これも矛盾した記述です。石動竜仁= dragoner 君が大絶賛するA-10こそ、CASに特化した潰しの効かない機体です。しかも維持運用費は極めて高い。

そもそも昨今の攻撃ヘリはCASのために開発されたわけでなく、対戦車は勿論ですが、火力支援、ISRなどの多様な任務をこなせるプラットフォームです。

>CAS専用に40年以上前に開発されたA-10はアメリカ陸軍の信頼をガッチリと掴んで放さない。運用者であるアメリカ空軍は、潰しが効かないA-10を何度も退役させようとしてきたが、その度に陸軍からの反発にあって断念している。F-16戦闘機のような多目的に使える機体は、CAS以外の任務に引っ張られてしまうことがあるが、CASにしか使えないA-10は他に取られることもなく、陸軍部隊を助けてくれる。陸軍にとってかけがえのない味方なのだ

>同じCAS専用と言える航空機でありながら、AH-64とA-10でここまで差がついたのは何故だろうか。それは戦闘ヘリというより、ヘリコプターそのものが持つ脆弱性に由来するだろう。

米空軍はかつてA-10を陸軍に押しつけようとしたことがありますが、陸軍に拒否されております。
アフガン、イラクで攻撃ヘリが不要と認識され、A-10のような機体がいいという判断になったのならば、そんなことは起こらかったでしょう。

>固定翼ジェット機はヘリコプターよりもずっと速い速度で、より高い高度を飛び、より強力な装甲を付与できる。つまり、ヘリコプターよりも機関銃弾やミサイルの脅威に遭いにくく、仮に命中しても高い生存性を確保できるのだ。また、ヘリコプターが持つ優位性であるホバリング能力も、戦場ではともすれば脆弱性になる。


これまたまったく一面的なものの見方です。そうであれば対地支援はF-16があれば十分で、A-10は必要ありません。 
ジェット機の対地速度が速すぎるからA-10のような比較的低速の攻撃機が開発されたわけですが、それでも対地速度が速い、攻撃するのは一瞬です。これでは精密な攻撃ができない。対して攻撃ヘリはホバリングしてゆっくり目標を定め、攻撃することが可能です。

そして石動竜仁= dragoner 君が「大好き」なA-10にはいくつもの欠点があります。まず、ご案内のとおり、攻撃ヘリに対して対地速度が早く、精密な攻撃ができない。

それなりの整備され、長い滑走路がないと運用できない。だから火力支援の要請を受けて、すぐに飛びたっても到着まで時間がかかります。そして航続距離は340海里程度なので、現場上空に長時間とどまることができません。
仮に戦域上空に常にA-10を置いておくならば、かなりの機数が必要です。

対して攻撃ヘリならばある程度の広さがあれば戦域近くあるいは、戦域内から飛ばすことができます。最もヘリの滞空時間は更に短いのですが。

更に問題は単機能の機体の割に維持費が馬鹿高いわけです。ですから空軍でも何度も退役が叫ばれてきたわけです。費用対効果がよければそんな声が空軍内部や議会からあがるものですか。


>そして、戦闘ヘリの価格が戦闘機に準じるものになった今、純粋にCAS用途で、高価で脆弱な戦闘ヘリを使うのは躊躇するだろう。だったら、長射程の誘導兵器を遠方から発射するか、今発達しつつある無人機を選択するという、人命リスクのない方法が好まれるかもしれない。

>しかし、いかに脆弱な存在だと言っても、現状で戦闘ヘリにすぐに代替可能な決定打と言えるものが存在しないのも事実だ。これは自衛隊のみならず世界的にも同様で、それまでは漠然と今ある戦闘ヘリを使い続けるしかなく、戦闘ヘリ自体がすぐに消えることはない。ただ、いつかは“次”を決める必要がある問題だ。



ここで不思議なのは、なんでターボプロップのCOIN機を挙げないのでしょうか。
既に米空軍では10年ぐらい前からCOIN機導入の機運があり、LAARプログラムは一度は潰えたものの、現在OA-Xプログラムで、積極的に導入が検討されています。同時に安価なジェット式の攻撃機、スコーピオンなども候補に挙がっています。

米空軍がA-10に満足であればこんなプログラムはでてこないでしょう。

ターボプロップのCOIN機が注目されたのは、F-16の戦闘機、更にA-10と攻撃ヘリのギャップを埋め、保管する存在であり、しかも運用費が安いことが挙げられます。

まず固定翼ジェット機に比べて速度が遅いので、ISR任務に適しており、火力支援に際しても目標を正確に認識できます。

そして、ジェット戦闘機は調達コストは勿論、多量の燃料を消費します。また整備のコストも高いです。整備要員も多く必要だし、整備自体時間がかります。特に海外で常に高い稼働率を維持するためにはかなりの費用がかります。これが短期決戦ならともかく、アフガンのように長期間にわたってこのような作戦を続ければ、軍当局は極めて重い経済的な負担わざるを得ないわけです。

また機体も消耗します。概ね戦時の航空機は平時の5倍ぐらい酷使されるといわれていますが、アフガンのような頻繁な作戦飛行を行う状態が続き、対地攻撃を頻繁に行えばその分だけ機体の寿命も短くります。

となれば、近い将来追加の機体の調達あるいは、新型の機体の調達が必要になるだろう。現在ではジェット戦闘機の価格は高騰しており、このためマルチロール化して機数を減らして傾向が多い。本来かならずしも向かない任務で貴重なジェット戦闘機をすり減らすのは経済的ではないし、それは大きな経済的な負担を負うことになります。高いジェット戦闘機を追加調達する必要がでてきます。調達できればいいですが、生産が終わっていれば追加調達はできません。

対してターボプロップのCOINl機は調達単価が8~10億円でジェット戦闘機や攻撃ヘリよりもお安く、また運用コストも一桁以上安いわけです。


F-15Eストライクイーグルの1時間当たりの運用コストは1万5千ドルです。対してビーチクラフト社が開発したCOIN機、AT-6の運用コストは時間当たり、千ドルに過ぎません。つまり15倍も異なります。

そしてCOIN機は前線に近い小さな飛行場で運用が可能であり、AT-802Uのような機体であれば不整地においても離発着が可能です。

そして攻撃ヘリに比べても調達・運用コストが極端に低いわけです。しかもざっくりいって速度が2倍、滞空時間が3倍程度です。戦域の上空にとどまれる時間はヘリよりも遙かに長いわけです。

更に小直径誘導爆弾なども使用可能であり、アウトレンジからの対地支援も可能です。
またコックピットはジェット戦闘機並みで、自己防御システム、射出シート、防弾板なども装備されており、昔のCOIN機と比べれば格段に戦闘力、生存性は高まっています。


石動竜仁= dragoner 君がこのようなCOIN機の実情を知らないとは考えられません。これは推測ですがお友達の#JSF君がかつてCOIN機の有用性を説くぼくに対し、攻撃するためにCOIN機は時代遅れだと貶したからではないでしょうか。あるいはそれを未だに真に受けているのでしょう。


まあ、常識的に考えればそれほど攻撃ヘリが無用の長物化しているならば米軍がAH-64DをE型にアップグレードし、多くの国が攻撃ヘリを近年導入したり、イタリアや中国などが近年になって新型の攻撃ヘリを開発するでしょうか。こういう視点がなく、アイドルを応援する体で記事を書くのはプロではありません。


石動竜仁= dragoner 君のこの記事は憶測と、自衛隊は常に正しいというドグマがキツすぎます。現状を先ず疑ってみるとことをせず、自衛隊擁護が先に立っています。

まずは対象を疑うのがジャーナリストの仕事です。


更にA-10という軍オタするマッチョな機体を好きで、それを礼賛しています。
それはご案内のように、まったく現実外れなわけです。まるでアイドルオタが、推しのアイドルに対するラブレターみたいものであります。現実を見ていないだけではなく、気持ちが悪い。

この原稿は「軍事の専門家」の記事としては明らかに落第点です。対象を冷静に、かつ懐疑的に見られない人はジャーナリスト、評論家には向いていません残念ながら石動竜仁= dragoner 君は向いていません。

まあ、同業者にはぼくもここまで失礼なものいいはしません。ですが、石動竜仁= dragoner 君はかつて、ぼくにたいしてかなり失礼な決めつけと批判をしてきたので、相互主義ということで。それにぼくは石動竜仁= dragoner 君
のことを「同業者」とは思っておりませんものですから。


■本日の市ヶ谷の噂■
陸自のAH-XでOH1ベースの機体を提案する川重はさすがに筋が悪いと考えたか、BK117=H145Mの武装型をプランBとして提案する予定も、陸自は機種数を増やさないとされており無理筋との噂。





























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