日本で倒産が激減しているが、決して良いことではない 自主廃業の実態と倒産と

日本で倒産が激減しているが、決して良いことではない
http://www.newsweekjapan.jp/kaya/2016/03/post-10.php

>倒産件数が減少している直接的な原因は、2009年に導入された中小企業金融円滑化法の影響である。この法律は、資金繰りの厳しい中小企業から返済条件の変更を求められた場合、銀行は可能な限り、金利の減免や返済期限の見直しに応じなければならないというもの。法律そのものは時限立法となっており、2013年に効力を失っている。だが銀行は、引き続き円滑化法の趣旨に則った対応をしており、これが倒産件数の減少につながっている。


 ここはまさにその通りです。ですが、自主廃業が増えていることにこの記事では触れておりません。ダメな企業は市場から退場し、新たな企業がどんどんできればいい、と著者は主張しますが、ちょっと待ってください、という感じです。

>中小企業金融円滑化法が効力を失ってからも、同じような状況が続いているのはなぜか。それには、銀行が政治問題化を懸念し、躊躇しているという面もあるが、企業自身が前向きな倒産を決断できないという状況も大きく関係している。


前向きな倒産ってなんだよ、ですよね。仰っていることはカネを借りまくって最後に迷惑かけてバンザイするよりも
早めに倒産しろよ、といいたいのでしょう。ですから自主廃業する企業が多いわけです。

実際には倒産する前に自主廃業は増えております。地元の商工会議所主催の新年会でもそのような話が出ていました。自主廃業は後継者がいなくて、とかも多いのですが、倒産する前に会社をたたんでしまう人も多いわけです。そのような倒産の前の自主廃業が多い。このことを筆者は知らないのでしょうか。

 つまり世間のイメージの「倒産」は見た目よりも増えているということです。
倒産と自主廃業の両方を見ないと、実際の「倒産」の実情はわかりません。
安倍首相やそのサポーターたちはアベノミクスで、倒産が減ったと自慢しておりますが、中小企業金融円滑化法と自主廃業の問題を無視しており、悪質なプロパガンダ、あるいは無知といえます。
 無論、中小企業金融円滑化法によって生き延びてきたゾンビのような企業はつっかえ棒を外すべきです。これを温存する必要はありません。

最近では出版取次中堅の太平社が自主廃業しました。
これによって既に1社倒産した会社がありますが、今後増えることが予想されます。自主廃業ならば売掛金の未回収を被ることは倒産よりも少ないでしょうが、取引先が無くなったことによって、売上が激減したり、商品の供給が止まったりして、連鎖倒産する企業もでてきます。

そして自主廃業にはアベノミクスの負の影響が関係しています。

>2013年の休廃業・解散件数は3万件弱で、過去10年で最多です(「倒産件数」が834件に対し、休廃業・解散は月平均で約2500件ですね)。建設業、飲食業、宿泊業など、じつに10産業中6産業で休廃業・解散が前年と比較して増加しています。


>隠れ倒産が増加している背景には、アベノミクスの政策の弊害があります。
>アベノミクスでは「3本の矢」をやりましたね。「財政出動」、「金融緩和」、それと「成長戦略」です。
「財政出動」とはつまり、国が税金を使って民間の会社に仕事を発注することです。仕事をもらった企業は儲かり、その分人を雇います。たしかにこれは、景気対策になります。しかしその副作用で、人材不足になりました。特に、建設業や飲食店では、働いてくれる人がいないという人手不足が深刻になっています。大企業でも採用に苦労することがあるようです。時給もどんどん上がり、それでもなかなか人を雇えないと嘆く経営者もいます。


http://thepage.jp/detail/20140701-00000008-wordleaf

 儲かっている輸出企業はごく少数、360社にも満たない輸出が多い企業です(無論零細輸出企業は儲かったでしょうが、それでも輸出はGDPの15%に過ぎません)。それも輸出が増えたからではなく、今で1ドル分売ると日本円で80円の儲けが、政府・日銀の円安誘導で120円以上、約1.5倍です。濡れ手に粟です。

 努力無くして得たあぶく銭です。これが地面から湧いて出たカネならば良かったのですが、ところがこの儲かったカネはGDPの6割の内需の消費者や国内向け産業から政府が意図的に収奪したようなものです。
 
 筆者は外国のように会社を潰しても、それなりに対策をとればOKと気楽に書きますが、日本の場合、起業がものすごく大変だし、米国のように有限責任ではなく、無限責任を負わされて家も財産も根こそぎ取られて、夜逃げということも珍しくない。だから必至になって会社を守ろうとするわけです。
 しかも不動産無いとカネを貸さないとか、店舗やオフィス借りるのに20ヶ月とか、30ヶ月とか保証金払えとか、数百万程度の取り込み詐欺がやり放題だし、裁判起こしても時間がかかって、しかも強制力もなかったりするので事実上無法がまかり通っているという実態も知らないのでしょう。
 上場企業のIR担当者とあっていれば、企業や実社会の実態を知ったつもりになっているとすれば、それは単なる勘違いです。


 脳天気に企業の新陳代謝すればいいというのは、現実を見ていない評論家の世迷い言です。実際この記事の著者は金融出身の評論家ですが、実体経済を全く見ていないとしか思えません。
 金融しか知らない人物が「経済」を語るのは極めて危険です。

 経験者として言わせて貰えば、ご自分も一度ゼロから起業をすることをお勧めします。企業経営、そして利益を出すことがどれだけ大変か身にしみて分かるでしょう。
 
 金融は経済の血液といわれますが、血液だけみて人間の身体をわかった気になるなら大間違いです。しかも現在の社会では「血液」が身体である実体経済の何百倍も膨れ上がって、血液から血液を生む錬金術こそがビジネスであるかのように思い、実体経済無視する「経済の専門家」が増えています。

 経済を語るのであれば、もっと現場の取材をするべきです。繰り返しますが、大手企業のIR担当者に会うくらいで、実体経済がわかったつもりになるのは極めて危険です。IR担当者なんて自分の会社の実態も知っているかどうか怪しいし、知っていても都合の悪いことはいいません。
 まともなアナリストは実際に工場や営業所を視察しますが、少数派です。ぼくにしても兵器メーカーの工場はできるだけ視察するようにしています。また軍隊でそのメーカーのユーザーである現場の将兵にも話を聞きます。そこでは会社案内に書かれていないことを多々知ることができます。


 ところが新聞や経済誌には現場もみない、取材もろくにしない、アメリカの偉い学者の受け売りばかりの株屋、金貸し屋のアナリストはとかストラティジストとか称する人たちの記事やコメントばかりが並んでいます。
 権威があるからなのでしょうが、少なくともぼくの経営判断には役に立たないので、ごく一部の例外を除いて読んでおりません。役に立たないどころか、有害だったりします。しかも彼らはいくらとんでもなことをいっても、仕事の依頼がきます。出版やジャーナリズムの世界で一番楽な分野かもしれません。

  
 
奥村宏氏のこの著書にはそのような膨れあった経済と、実体経済、企業の話、そしてそもそも会社とは何なのかということが書かれております。

資本主義という病: ピケティに欠けている株式会社という視点
東洋経済新報社
奥村 宏

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