エビデンス至上主義 ロンパールーム症候群の隘路

 以前のエントリーで以下のように書きました。

>このとき富士重工はIRAN(inspection and repair as necessary、航空機定期修理)の期間を大幅に伸ばすことなどによって、整備コストを低減できると主張しました。空幕装備部はそれを鵜呑みにしたわけですが、ぼくは当時僅かな期間でIRANを延ばすことは不可能だと指摘しました。

 その結果ですが、まさにそれ見たことかで、会計監査院は空自が導入した初等練習機T-7が、2003年度の導入からの17年間で約21億8300万円と見積もられていた整備費用が、実際には10年度までの8年間ですでに約18億2500万円と全体の約8割に達していたとして、改善を求めました。


 つまり富士重と空幕の整備コストを下げられるという主張は嘘だったわけです。まあ控えめにいっても事実ではなかったわけです。
嘘でないならば当時の空幕の装備部航空機課は無能者の集まりだったことになります。


産経新聞・杉本大本営発表:T7練習機のスキャンダルや問題は報道しません
http://kiyotani.at.webry.info/201505/article_12.html


 これについて、会計検査院の文書を根拠にした反論がありました。

http://report.jbaudit.go.jp/org/pdf/240927_zenbun_2.pdf

 IRAN費用は当初の見積もりよりも減っている。その他の費用が増えても、それは想定外である。というものです。でお前を論破した、「負けを認めろ」と主張するコメントもありました。

 なんか、論破、論破と ロンパールームみたいですね。

 率直に申し上げれば、根拠となるエビデンスを盲信するするのはリテラシー能力が欠けた、反知性主義です。

 まずはそのエビデンスを信用するに値するかどうか評価が必要まず必要です。当局の書類だから全て正しいと頭から信じ、特にその一部だけを抜きだし、それを論拠にすべてに拡大するのは知的な行為とはいえません。

 これが中立的な第三者機関が諸経費の定義を決めたのであれば、信用できるでしょう。ですが、空自が決めたものです。つまり泥棒が縄をなっている状態です。

 例えば昨今東芝の不正会計が問題がありましたが、東芝が公的な会計基準を決める立場にあり、自分に都合のいいルールをつくれば、東芝の不正会計は「不正会計」にはなりません。

 このケースでは空自はIRANなどライフ・サイクル・コストのごく一部だけを、評価の対象にしています。例えばバケツに5つある穴のうちのひとつだけを塞ぎ、「バケツの穴は塞ぎました」としているわけです。あとの4つの穴から水が漏れることは言うまでもありません。


 幾度と無く申しておりますが、情報の基本は疑うことです。

 ところがご主張の方々はまず、「航空自衛隊や富士重工は絶対に正しい、嘘も情報操作も行わないという前提に立っていることになります。

 そして実際にT-7練習機の整備費用は予定よりも大幅に膨らんだわけです。空自が富士重に仕事が落ちるようにあえて、項目の一部だけを管理対象にしたのは明らかでしょう。
 IRAN費用=整備費用 ではありません。


 当局の書面が常に正しいのであれば、水俣病も認定されなかったでしょう。10年以上も国はそんなものはないと、しらを切っていました。
ロンパールーム症候群の人たちは、たとえば騒ぎが起こって5年目でこの件に関して、国の書類で不備はない、公害病などインチキだと主張するのでしょう。

 また多くの杜撰な公共事業も同様です。これらも当然始めから破綻がわかっていても、そのようなことはかかれません。適当な数字をでっち上げてそれらしく計画書が作られます。
 でも計画書に書いてあったから、赤字を垂れ流しても計画を作った連中には全く責任はなかった、不可抗力だったと弁護するようなものです。


 そのような主張をするならば。中国の国防費も全面的に信用すべきということになります。中国の国防費は公表額の数倍というのは定説ですが、中国当局の書面を信じるならば、そのような「デマ」は信じてはいけないことになります。
 何しろ国連常任理国様の「権威ある発表」です。


 役人というのは都合のいいように数字や内容を作ることは少なくありません。そして嘘はつかないけども事実を伝えず、相手をご誘導するこも多々有ります。

 ここで何度も紹介しておりますが、石破茂氏が防衛庁長官だったころ、彼が外国製NBC車輌をつなぎで数輌導入したらどうかと行った時に防衛省の役人は、「大臣それは幅が2・5メートル以上あり、道路法の規制でできません」説得し、石破氏は諦めました。
 ところが後日ぼくが国交省を取材したところ、年に1回国交省に書類を出すだけで使用が可能でした。そして現在開発されている機動戦闘車は横幅が約3メートルです。

 その官僚は嘘は言っておりません。ですが事実を大臣には伝えていない。結果として自分たちの長である大臣すら騙しているわけです。こういう役所の作った書類や計画を頭から信じていいわけがありません。

 役所の書いた書類は無批判にすべて信じろという「ロンパールーム症候群」は反知性的であります。ぼくはそのような思考停止に与しません。


 まして、軍事の世界は公開されない情報が多いわけです。公開された都合のいい情報だけを報道するなら文屋も情報機関もいりません。

 そもそもこのT-7のコンペは始めから怪しいわけです。

 当初、富士重工は調達単価を何割も下げました。ご存知のように防衛省の装備は原材料や工数を算定し、それに利益を載せて請求します。調達単価が何割も下がるということは、材料を見直し、工数を大幅に減らすことを意味しますが、富士重工がそのようなことをやったという事実はありません。

 そして二回のコンペで富士重工はIRANの間隔を開けることになどによって整備コストをさげられるとしたわけです。
 繰り返しますが空自は富士重案の方がライフ・サイクル・コストが安いと判断したのです。ですが実際に採用後の整備費用はあっという間に予定していたライフ・サイクル・コストを食いつぶして、整備は大幅に超過しているわけです。
 そして空自が対象としてきた「整備」は実際の整備のIRANなどのごく一部です。

 仮に空自に何らかの富士重に対する配慮がなく、管理すべき整備コストを規定したならば空幕の装備は素人の無能者だらけで、まともなコスト計算すらできない組織だったということになります。


 あくまで空自は正しい、公的な資料は全て正しいだという人をぼくは説得しようとは思いません。それはある種の原理主義であり、宗教だからです。


 実際に整備コストは想定より大幅高騰してもなお、整備費=IRAN費用だったのだ、その整備費用は空自の管理するところはなかったのだと、泥棒が縄をなう式の官僚作文が唯一雑体のエビデンスだと主張するならば、ご自身の信じるのもを信じてくださいとい言う他はありません。このテの人に限ってご自分が意識とリテラシーが高いと思い込んでいるようですが、それはイリュージョンです。
 いくら丁寧に説明しても、始めから結論ありきの知性とリテラシーのない人に何を説明しても無駄でしょう。


 
朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しました。
陸自が導入した輸送防護車は使えない
机上の空論では済まない邦人救出の現場
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015100200004.html


東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
陸自「攻撃ヘリ部隊」は、自滅の危機にある
オスプレイ大量調達の前に見直すべきこと
http://toyokeizai.net/articles/-/84832
エアバスは、なぜ日本政府に激怒しているのか
不透明すぎる日本の防衛調達の問題点
http://toyokeizai.net/articles/-/84639

東京防衛航空宇宙時評で軍事見本市、DSEIのレポートを掲載しています。
 http://www.tokyo-dar.com/














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