産経新聞【防衛最前線】執筆者交代  90式戦車 「北の守り」の傑作、戦車不遇の時代もなお国防の要

90式戦車 「北の守り」の傑作、戦車不遇の時代もなお国防の要
http://www.sankei.com/premium/news/150703/prm1507030001-n1.html

 いつの間にか、産経新聞の【防衛最前線】の担当記者が、杉本康士記者から石鍋圭記者に代わっておりました。石鍋記者は杉本記者ほど過剰な愛国的なところは無くなったようですが、ちょっとアレなところは引き継いております。

>旧ソ連による北海道侵攻を想定していた冷戦時代、「北の守り」の要として「全てにおいて最先端技術を盛りこむ」という方針のもと研究開発が進められた。陸自関係者の間では「当時は列強のどの戦車にも劣らない傑作」との呼び声も高い。

 まあ自衛隊の「社内的」にはそうでしょうや。装備は選べませんが、自分のところの装備を信じないとやっていけないでしょう。
 ですが、新聞が聞いたことをそのまま書いて、それいいのでしょうか。実際に陸自の機甲科の人間でどれだけ他国の戦車を詳細に調査し、実際に触れたことがあるのしょうか。
 技本の人間すら殆ど海外視察はせず、たまに行くのは偉い人の卒業旅行で、情報収集じゃないわけです。それで自社製品の評価がまともにできますか?一般の隊員ならば尚更です。
 もっとも技本の視察費はぼくがあれこれ書き出してから増える傾向ににはあるそうです。

>第4世代の「10(ひとまる)式戦車」が登場する直前の平成21年度までの間、61式戦車の全てと74式戦車の一部を更新するため341両が配備された。

 何をもって第四世代というかにもよりますが、専門家で10式を第4世代とする人はまずいないでしょう。
 さきごろ公開されたロシアの新型戦車、T-14が、かろうじて第4世代と呼べるかも知れません。これは無人砲塔や積極防御システムを標準装備しており、かなり現用の3・5世代戦車とは異なります。ですが、それでも他の主要国の戦車がフォロワー登場しないと第4世代とは言えないでしょう。ドイツが新型戦車を開発するようですが、その動向によるでしょう。
 個人的にはT-14は依然3.5世代の戦車だと認識しております。

>打撃力、防御力に優れる10式が登場した。ハイテク電子機器を満載し、高い射撃の命中精度を誇る。陸自戦車としては初めて、C4Iシステムを搭載。他の戦車や普通科(歩兵)部隊と情報を共有し、瞬時に味方と敵の位置を識別して連携の取れた作戦行動が可能になった。

 この認識は誤りです。基本10式がネットワークで結合しているのは隊長車を除けば戦車中隊内部だけです。歩兵の装甲車も下車歩兵も航空機ともリンクされておりません。というか、他の兵科の殆kどが音声無線機しかもたず(それも数が不足し、通じないことが多いのですが)、データや画像のやりとりもできないので、どうやってネットワーク化を実現されているのでしょうか。

 率直に申し上げて10式の開発・導入が予算を喰っいるために陸自のネットワーク化を阻害している一因となっております。


>国防に「万が一」は許されない。ロシアのショイグ国防相は8日、ウラジオストクで軍の幹部に対し、北方領土を含む島々で計画している基地や施設の建設を現在の2倍の速さで進めるよう指示した。ロシア陸軍による極東地域での演習頻度も再び高まっている。北の守りに、90式戦車の抑止力は不可欠といえる。



 あいかわらずにロシア脅威論ですが、彼らにそんな実力も意図もありません。冷戦時代だって対日戦争の計画すら無かったぐらいです。

 そしてそれほどロシアが脅威であるならば、何故90式が近代化、ネットワーク化されないのでしょうか。90式は恐らくすべて10式で更新されるでしょうが、それには後15年ほどはかかるでしょう。その間陸自の戦車のネットワーク化は完成しないし、89式や96式など装甲車のネットワーク化も全く予定がありません。

 ロシアの脅威を陸自が意識しているならば、10式の開発配備で予算を浪費せずに、90式の近代化、更には増産を行ったでしょう。であれば10式の開発、調達の数分の一の予算と期間で、90式の近代化可能であり、また10式に投入する予算で他の装甲車や普通科などのネットワークの予算も確保できたでしょう。

 よく10式は高くない、90式の近代化の方が高いのだという人がいますが、現実ではありません。仮に10式の価格の半分がC4IRだとしても5億円に過ぎません。そして近代化の開発費も1千億円も必要ありません。仮に単価の半分がC4IRならば車体の価格は5億円です。一回り小さいとはいえ、90式と殆ど同じ車体かそれ以上の戦車が半分で製造できるでしょうか。
 普通、そこを疑問に思うでしょう。
 そもそも近代化の方がカネがかなるなら、世界中で戦車の近代化ビジネスが行われているはずがありません。

 90式にセンサー類の更新とネットワーク機能の付加ならば5億円もしないでしょう。しかも毎年数十両のペースで行えば量産効果もでるので更にコストは下がるでしょう。

 そして毎度申し上げておりますが、10式導入で戦車は74式、90式、10式の3世代で、教育・兵站とも重なって、それぞれの効率が極めて悪い。そして今度さらに機動戦闘車まで入れれば、状況はさらに悪くなります。
 陸幕には予算という概念が無いように見えます。

 こういう分析も行わず、ひたすら自衛隊の装備を褒め称えるのは報道機関として如何なものでしょうか。前から申しておりますが、そういう提灯記事は防衛省からカネを貰っているMAMORでやればよいでしょう。いやしくも社会の木鐸を自称する新聞社のやることではありません。


Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました
【自衛隊は空中給油機活用を見直せ】〜その高い費用対効果〜
http://japan-indepth.jp/?p=19634
【少女漫画男性主人公に異変アリ】~ガチムチ、オタク、キモメンらがモッテモテ!~
http://japan-indepth.jp/?p=18452
【お粗末な自衛隊の「衛生」装備】~チュニジアでテロにあった女性医官は「特別」なのか?~
http://japan-indepth.jp/?p=17323
【陸自ファーストエイド・キットが貧弱な件 1】~陸幕広報は取材拒否~
http://japan-indepth.jp/?p=17056
【陸自ファーストエイド・キットが貧弱な件 2】~中谷防衛大臣の答弁に違和感~
http://japan-indepth.jp/?p=17059

span style=font-size:larger>東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
自衛官を国際貢献で犬死にさせていいのか
海外派遣の前に考えるべきこと(下)

http://toyokeizai.net/articles/-/73521
<自衛隊員の命は、ここまで軽視されている
海外派遣の前に考えるべきこと(上)

http://toyokeizai.net/articles/-/73492
川崎重工は「世界のヘリメーカー」になれるか
http://toyokeizai.net/articles/-/73114
「国際軍事見本市」が、日本の国防力を高める
日本での初開催イベントの意義は大きい
http://toyokeizai.net/articles/-/71866
防衛省の装備調達は、これから大きく変わる
キーマンの防衛省装備政策課長に聞く<上>
http://toyokeizai.net/articles/-/70516
日本の防衛産業は鎖国から開国へシフトする
キーマンの防衛省装備政策課長に聞く<下>
http://toyokeizai.net/articles/-/70529
防衛省装備調達に欠落している"大事なもの"
兵器調達の際に「時間」「総額」の概念がない
http://toyokeizai.net/articles/-/69177


WEBRONZAに以下の記事を寄稿しました。
オーサさんに聞く「マンガ」の魅力と不思議(上)
初めて読んだ高橋留美子先生の『らんま1/2』に自分で色を付けました
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015060400004.html
北欧女子オーサさんに聞く「マンガ」の魅力(下)
「日本語がお上手ですね」と毎回聞かれると……
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2015060400005.html


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