アレな首相の中小企業への賃上げ要求は画餅

大企業に中小との取引価格改善を要請 「中小も賃上げを」と首相 政労使会議
2015.04.02 産経ニュース
http://www.sankei.com/politics/news/150402/plt1504020038-n2.html

>「景気回復の風が全国に届くかは、中・小規模事業者が賃上げに踏み込んでいただけるか否かにかかっている。最大限の努力を図るようお願いしたい」

>会議で安倍晋三首相はこう強調した。その上で、この日の決定を踏まえ、大企業の協力の下、中小企業も可能な限り賃上げに取り組むよう要請した。


>また、サービス業の収益改善につなげるため、小売業や飲食業など分野ごとに官民の協議会を設立し、生産性の向上策を検討することも決めた。


 まあ難しいでしょうね。手脚を縛っておいて海に放り込まれて、泳いでみせろと。溺れるのは自己責任だ、それがアベノミクスです。

 中小零細企業の約6割はサービス業と言われております。アレ首相がアベノミクスを言い出して以来、輸入コストが1.5倍に跳ね上がっております。

 GDPの約6割の個人消費はエネルギーを元より、食品、生活関連用品は輸入に頼っています。
 
 このコストアップを輸入者、流通業者、小売業者、消費者の各階層で負担しています。洋服を売るのは小売業、サービス業ですが、日本国内に流通する洋服の96パーセントは輸入品です。ファッション業界やら雑貨業界は大変です。また食品業界でもこの4月から値上げが相次いでいます。その分消費は影響をうけるでしょう。

食品値上げじわり 乳製品・ドーナツ…
2015年04月01日 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/kyushu/news/20150401-OYS1T50040.html

「すき家」 4月中に牛丼を値上げへ
かつては200円台だった大手3社の並盛の価格は、
いずれも300円台でそろう形
2015年4月2日 2時16分 NHK ニュース・ウェブ
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20150402/k10010035751000.html




 つまり消費者商売の会社は、仕入れ原価の上昇と消費者の買い控えで、利益が減っております。確かに日本のサービス業は効率、収益率が悪いのですが、アベノミクスで利益が圧迫され、更に収益率が低下しています。 
 会社の構造改革には原資(オカネ)が必要ですが、その原資が削られているのが現状です。そして厚生年金未加入の企業に加入を強制する措置を政府は実行し始めました。無論、法的・社会保障上は正しいのですが、これまでお目こぼしを受けてきた企業にしてみれば単なるコストアップです。政府は加入しないと資産の差し押さえまでやると言っておりますが、それで潰れる会社も多いでしょう。

 そして、アベノミクスの手柄ではない完全雇用に近い状態ですから、人件費も今後上がるでしょう。であればコストアップによって、倒産する企業が増えるでしょう。

 そうなれば賃上げどころじゃないでしょう。国立大学法人政策研究大学院大学教授(公共経済学・経済政策)・公益財団法人日本生産性本部副会長(経済成長フォーラム座長)、つまり安倍政権の経済ブレーンの一人・ 大田弘子氏 は、生産性・収益率が悪い中小零細企業で、アベノミクス実施後に業態転換を出来ない企業、業態転換をする資金が無い企業は潰れろとすら仰っております。

 アベノミクスで収益を圧迫しておいて、どの口がそれを言うかね?と思うのですが、実際にビジネスをやったことがない人は気楽でいいですよね。

 以前、外国人記者向けの大田弘子氏のブリーフィングを聞いたのですが、終わった後、ぼくは彼女に「企業の負担している不動産の保証金に関してどう思われますか。」と尋ねたら、一瞬ポカンした顔をして「国交省に聞いて下さい。」と答えました。

 事務所や店舗などの不動産の保証金は、実は中小零細企業、特にサービス業の経営効率の圧迫しております。20ヶ月30ヶ月の保証金を取られることも多い。日本の不動産賃貸は貸し手・借り手両方にとってリスクが大きいので、このような金額になります。そしてこれは借り手の資金が拘束されるだけではなく、大家が使い込むか破産すれば返ってきません。つまり不動産の借り手にとってもリスクが高いわけです。

 資本金1千万円の会社が、家賃10万円で10ヶ月の保証金、店舗が20万円で、20ヶ月の保証金を取られれば、それだけで700万円が喰われます。この700万円は働いてくれないお金です。これでは資金繰りは大変になることは明白でしょう。あと事業用物件では、「償却」という名目の、法律的には何の根拠も無い、ただ大家が預かった保証金のあるパーセンテージ(10パーセント~30パーセント、とか)を契約終了時に借り手に返さない『不当利得』が、不動産業界を闊歩しており、野放しになっております。この「償却」条項を借り手が呑まないと大家は契約しないと、大家の誰かが思いついたのでしょう、今では大家たちの多くが見えないスクラムを組み、この一方的で不合理な保証金の一部の『剥ぎ取り』を既得権益化しております。政府はこの「償却」も契約時に遡って無効とする法律・規則を制定し、非生産性のベースとなっていてる高額の保証金を、さらに大家が取り上げてぶんどってわたくし化する前近代的な悪習を一斉にパージしなくてはなりません。また裁判所も、「償却」については借り手を勝たせて判例を積み重ね、判例法化しなくてはなりません。
 このような不透明な慣行はまた、外国の小売業の日本への投資の妨げにもなっています。
 大田弘子氏はこのような現実を全く理解していない、ということです。過日ぼくは経済評論家の中原圭介氏にこの保証金の話をしたら、全く同意見だと仰っておりました。

民間にある「埋蔵金」商業不動産の馬鹿高い保証金
http://kiyotani.at.webry.info/200810/article_6.html
店舗・事務所の出店時に必要な保証金が過大すぎる
http://webronza.asahi.com/politics/articles/2011012800013.html


 畳の上の水練しかしたことのない人間が、実際に泳いでいる人間にあれこれ上から目線で指示や不利益を強要しておいて、溺れたら自己責任だと強弁しても経済は良くなりません。



Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました
【陸自ファーストエイド・キットが貧弱な件 1】~陸幕広報は取材拒否~
http://japan-indepth.jp/?p=17056
【陸自ファーストエイド・キットが貧弱な件 2】~中谷防衛大臣の答弁に違和感~
http://japan-indepth.jp/?p=17059

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。

文民統制の放棄!なぜ「空母」が生まれたか
護衛艦「いずも」は、護衛能力のない被護衛艦
http://toyokeizai.net/articles/-/64841
自衛官の「命の値段」は、米軍用犬以下なのか
実戦の備えがないため派兵どころではない
http://toyokeizai.net/articles/-/63496



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