キヨタニの防衛省記者会見の質問がウザい件について

先日、某外国通信社の記者と話していたのですが、某幕僚監部広報室に取材を申し込んだら「その情報は記者クラブには出せますが、あなた達には出せません」と言われたそうです。

 実はこの手の話は多くありまして、ぼくも多々経験があります。
 出せません、でも理由は言えません、というの話があまりに多いのです。でも同じ情報は記者クラブには出す。外国メディアやフリーランスの人間と記者クラブには大きな情報格差があります。

 先の内閣府主催の防衛大綱と国家安全保障戦略のレクチャーにしても外国メディア向けのものは閣議決定後、既に国内メディアが報道した後に行われました。しかも英文の文書は国家安全保障戦略は暫定訳、大綱と中期防に関してはサマリーでした。そのうえ、中期防に関してはレクチャーがありませんでした。

 これではまるで中国政府の記者会見だ!」〜情報発信強化を謳いながら、安全保障報道で外国メディアを差別する安倍政権
http://japan-indepth.jp/?p=1939

 国家安全保障戦略や大綱では対外情報の発信強化が謳われていたのですがね。この様子を見ていると、お先があまり明るいようには思えません。
 

 3年ぐらい前でしょうか、空幕の広報の内薗2佐(当時)からは「フリーランスの取材は雑誌に載る前提でないと受けない」と何度も言われました。当時の室長に抗議ましたが、そんな方針は取っていないとのこと。でも現場ではそう言われました。

 記者クラブ以外の面倒くさい取材は極力断りたかったのでしょう。広報の仕事は「掲載」という形になると「評価」され易いところがあります。ですから、自衛隊に「好意的」なドラマなどのへ協力に防衛省は協力的です。
 ですが、その面倒なこともこれまた広報の大事な仕事です。ご自分のお仕事なのですがその自覚はないようです。

 自衛隊広報の担当者としては理想的な職場は北朝鮮やジンバブエでしょう。上からお仕着せの情報だけを垂れ流させばいい。ブンヤが反抗的なことをかけばムショにブチ込めばいい。首領様、ムガベ大統領閣下マンセーを連呼していればいい。
 ですが民主国家ではそうはいきません。

 空自広報室長は単に取り繕ったのか、部下が室長を無視していたのでしょうか。
 
  しかし防衛省は記者クラブ向けには掲載を前提としないレクチャーを多数受けています。特にキャップクラス向けのレクチャーは高官からオフレコの話も聞けたりします。
 つまり記者クラブはの取材は必ずしも書かなくともよい、だけどもフリーや外国メディアはその限りではない、というわけです。一般社会では差別だと思うのですが市ヶ谷の常識では違うようです。


 記者、ジャーナリストは記事を書く際には紙面に載らずとも、膨大な過去の取材の経験が土台となっています。ですから直接記事にのらないことでも取材をする必要があるわけです。予備知識がないと、取材に際して相手の言ったことを検証できません。

 つまり先の空自の担当者の本音は、自分たちの出す情報だけを載せればいいんだよ、ということでしょう。ですがそれは御用メディアです。

 以前「航空情報」に連載していたときに、空自様のご機嫌を損ねる記事を書きました。その時空幕広報室はぼくには抗議を行わず、「キヨタニの主張は編集部の主張か!」と編集長を呼び出して抗議しました。

 普通に考えれば、文句があるならばまず著者にするべきでしょう。
 編集部、出版社に抗議をするのはこんな記事を載せていると、今後協力しないからな、という恫喝と考えるのがオトナでしょう。
 
 またこれをやれば書き手に対しても編集部から圧力がかかるので、自粛を促せる効果があります。まあ「ソフトな脅迫」です。あまり褒めれた手段ではないですが、普通のフリーランスを黙らせるには有効な手段です。
 ですがぼくには全く効きませんでした。元々国外取材からこの仕事を始めたので国内で取材できなければ海外の話だけを書いていればいいだけです。よしんばこの仕事をやめても別に喰うには困らない収入もあります。

 この手の人間に上記のような高圧的な対処をすると逆効果です。ぼくはこの件の後、空自に不都合な情報をブログで連続して公開しました。
 

 まあ、そんなわけでぼくたちフリーランスや外国メディアの記者はイスラエルにおけるパレスチナ人、アパルトヘイト時代の南アの黒人のような二等市民扱いを受けております。


 ところが大臣や幕僚長の記者会見ならば、大抵の質問には何らかの形で回答が得られます。ですからぼくらが記者会見に出る価値があるわけです。

 最近他の役所の人から、あまり細かい質問を大臣や幕僚長にするとウザがられるから、損ですよ、できるだけ良好な関係を持ったほうがいいよ、ともアドバイスされることもあります。

 ぼくだってできるだけ嫌われずに、仕事がしたいのは山々です。
 ですが先述のように、現場レベルでは欲しい情報が出てこない。あるいは木で鼻をくくったような回答しか出てこないことが多々あります。現状としてはある程度細かい話も記者会見で聞かざるを得ないという事情があります。

 またどこまでが「細かい話」というのも見方によります。これでもぼくもはあまりミクロな話を大臣や幕僚長にしないようには心がけているつもりです。

 ただ記者クラブの「常識」と専門記者の「常識」は同一ではありません。

 基本的に記者クラブの求めるものと、我々専門記者の求めるものは異なります。新聞・TVは老若男女、幅の広い層を相手にしています。また紙面や放送時間の制限から極めて単純化けされた話しか紹介できません。我々からみれば記者クラブの記者の質問の98パーセントぐらいは役に立ちません。

 対して我々の業界では更に細かい情報が求められます。どちらいい悪い、正しい間違っているのではなく媒体特性が違うわけです。
 当然ながら質問も性質も異なってきます。

 スカートの長さに例えるならば、普段昔のスケバンみたいなロングスカートを履いている女性からみれば、ひざ下のスカートでも「短すぎる」でしょう。
 逆にパンツが見えそうなひざ上20センチぐらいのミニスカを履いている女性からみれば、ひざ上ぐらいのスカートの丈は結構長い、ということになるでしょう。

 どのあたりが適当か、例えばこれは大臣に聞くべきか報道官に聞くべきことなのかは、現在手探りでやっています。何しろ防衛省記者会見に関しては初心者ですから。
  
 恐らく官側の「常識」は記者クラブの「常識」に近いのでしょう。


 昨年末住友重機の不祥事の件で大臣に質問しましたが、そのとき「MINIMIやM2などは輸入に切り替えることは検討しなかったのか」ということを聞きました。
 これを「機銃を輸入に切り替えないのか」と尋ねれば、「74式とかは国産ですから輸入できません」と切り返されて終わりです。ですからMINIMIとM2というライセンス品に絞って質問をしたわけです。
 またこの時、たった5ヶ月の指名停止で、その間に不具合は直るかとも尋ねました。無論大臣がそんな、細かいことを知るわけはないでしょう。

 ですがことは極めて深刻です。機銃という極めて重要な装備が40年にわたってデータを偽装され、要求に合う品質のものが納められてなかったわけです。僅か5ヶ月で本当に問題が解決するのか、普通に考えれば疑問が湧くでしょう。

 であれば他の国産装備についても疑われてしかるべきですし、また今後の防衛装備調達の改革にも、この件は大きな影響を与えるのではないと思ったから質問したわけです。以前から
優先順位を考えて、国産装備を輸入に切り替えるべきという話は事あるごとに防衛装備取得改革に盛り込まれています。

 これは官僚ではなく政治家が大きな影響力を持つ案件です。
 ですから、大臣の回答によってどれだけ大臣がどれで装備調達改革を真剣に考えているか、ということが推し量れます。
 この質問の後には大臣は部下を呼んで、その後に予定されていた次年度の予算のレクチャーでぼくの質問に対して備えたようです。

 また同様に君塚陸幕長(当時)に昨年から導入された個人救急キットについて、PKO用と国内用のセット内容が違うのはなぜかと質問しました。
 このセット内容が違うというは陸幕は発表していません。ぼくが足で稼いだ取材で知ったことです。

 国内用のセットはPKO用に較べてかなり簡略化されており、の理由を問うたわけです。

陸自の救急セットでは、自衛隊員の命を救えない
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013082100006.html


 当初ぼくは医師法などの法的な制限のためかと思っていました。というのも、自衛隊の衛生は通常の医療関連の法律に縛られて実戦的ではないことが多いからです。
 諸外国の衛生兵に当たる看護陸曹は、看護士と同等の権限しかなく、投薬や簡単や手術など他国の衛生兵ができることもできいなどの制限が多いとか、有事法ができるまで陸自には野戦病院があっても有事には法的に設置できないなどの、ある意味喜劇的な法制限が多数あります。

 ところが陸幕から回答では、法的な制限ではなく国内には病院などの施設が整備されているから、というもので、ぼくの予想とは異なっていました。

 ですが、南西諸島のどこに総合病院があるのでしょうか。また応急処置をキチンとすれば、その後の回復が大きく異なります。逆に言えば応急処置をおざなりにすれば、死ななくていい人間が死に、失われくていい手足が失われたりします。 ですが陸幕の回答からは陸自がそこまでの意識を持っていない事がわかりました。
 ただ将来的にはセットの内容を見直すことも回答にありました。
 
 この件はファーストエイドキットという「細かい装備の話」でしたが、この回答から陸自の衛生に対する姿勢や有事をどの程度真剣に考えているのか、浮き彫りになったと思います。マスメディアの報道では実際に戦闘が起きた場合の隊員の生命や心身の保護が殆ど話題になることはありません。ですが実戦になれば死傷者がでるのが当たり前です。
 
 因みに次期防衛大綱でも衛生に力を入れるということが明記されています。
 また、君塚陸幕長からは「いい質問だ」とコメントを頂きました.


仮にぼくが「大臣、オスプレイの沖縄配備についての沖縄県民の感情をどのように思われますかぁ」とかいうような質問をしてればい、大臣や事務方の手もわずらわせないでしょう。
 また、そのような質問をばかりをしてれば非常に「友好的」な関係を官の側と構築できるでしょう。

  ですが、それならばぼくがわざわざ記者会見に参加する意味はありません。ぼくはそのような関係は馴れ合いだと思っております。また敢えて誤解を恐れずにいえば、大臣や幕僚長が困る質問をすることがぼくの役割だと思っています。別に佐藤正久議員のようにクイズ大会をやろうとは思っておりません。


 陸幕しろ、先の大震災でヘリ型UAVが一度も飛ばなかったのはなぜかとか、空幕にしても新型救難ヘリの調達単価は平均24億円なにに、何故過去の3カ年約40億円なのか、平均24億円弱にできるような具体的な算段はあるのか、などといった質問は嫌でしょう。

 ですが、このような質問をしない限り、納税者が自衛隊にどのような問題があるのか知ることはかないません。またこのような質問が常に行われるのであれば、防衛省や自衛隊側も襟を正すことろがあるでしょう。

 因みに上記の質問に対する空幕の回答は「特にコスト削減の手段はありません。努力します」です。

 つまり、新型救難ヘリの機種決定にあたって、真剣に調達コストが検討されなかったということです。これは入札のレジティマシー(正当性)が謳われて然るべきです。陸自のUHーX同様の官製談合が疑われても仕方ないでしょう。
 
 このような「細かい話」は殆ど新聞やテレビでは紹介されません。しかし、一度UH-Xのスキャンダルになるとそればかりがクローズアップされて報道されます。
 ですが、急にそんな話をされても読者や視聴者は理解できません。ですからぼくはもっとマスメディアも掘り下げた報道をすべきだと考えています。紙面や画面で無理でもネットと合わせ技ならば可能はなずです。

 またこのような「細かい話」を掘り下げて報道することが専門記者としての存在意義だと考えています。


新しいウェブニュースサイト、NEXT MADIA Japan In-Depthに寄稿しております

陸上自衛隊の水陸両用車の調達先は『アメリカ製』だけが候補の「出来レース」?〜水陸両用装甲車=AAV7は導入ありきでいいのか①
http://japan-indepth.jp/?p=2220
陸上自衛隊の水陸両用車の調達先は『アメリカ製』だけが候補の「出来レース」?〜水陸両用装甲車=AAV7は導入ありきでいいのか②
http://japan-indepth.jp/?p=2220
陸上自衛隊の水陸両用車の調達先は『アメリカ製』だけが候補の「出来レース」?〜水陸両用装甲車=AAV7は導入ありきでいいのか③

http://japan-indepth.jp/?p=2234
安倍政権の安全保障軽視が露呈!やっつけ仕事の国防計画?〜安倍首相はまともに安全保障を考えていない
http://japan-indepth.jp/?p=1956
これではまるで中国政府の記者会見だ!」〜情報発信強化を謳いながら、安全保障報道で外国メディアを差別する安倍政権
http://japan-indepth.jp/?p=1939
低性能でも価格は数倍から10倍の国産小火器〜住友重機が防衛省に納入していた機関銃データの改竄も露呈
http://japan-indepth.jp/?p=1930

夢想的な平和主義者ではなかったネルソン・マンデラ〜武装組織への上手な処遇が生んだ安定政権
http://japan-indepth.jp/?p=1900
「軍事産業は国の財産」と演説した現実的政治家ネルソン・マンデラの死と「最後の未開拓巨大市場」南アフリカの現在
http://japan-indepth.jp/?p=1919


朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しています。
陸自の水陸両用装甲車、AAV7導入は裏口入学だ
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013122500002.html?iref=webronza


日経が伝えないトルコとの戦車エンジン共同開発の真実(上)――トルコの狙いは何か?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013112500006.html
日経が伝えないトルコとの戦車エンジン共同開発の真実(下)――日本がパートナーを組むべき国はどこか?

アベノミクスで食材偽装が増える?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013111100009.html
機動戦闘車は必要か(上)――島嶼防衛にもゲリラ・コマンドウ対処にも不向き
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013103100010.html?iref=webronza
機動戦闘車は必要か(中)――脆弱な防御力
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013110100004.html?iref=webronza
以下は12月24日の防衛大臣記者会見のぼくの質問です。
http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2013/12/24.html

Q:韓国からの弾薬の要求ということは、5.56mm以外の要求というのはあったのでしょうか。それとも、5.56mm弾だけだったのでしょうか。
A:今回、私どもが現地から報告を受けているのは5.56mm弾のみの要請というふうに承知をしております。

Q:中期防で水陸両用車とオスプレイと思われるティルトローター機の調達が明記されているのですが、両方ともまだ十分な評価をしていない段階だと思います。AAV-7に関しては先日報道官の方から平成26年度中に評価を行うという回答があったのですけれども、平成26年度中ですとAAV-7指揮通信型、回収型が到着していないということで、APC型のみで判断をすると。そうすると、そもそもなぜ指揮通信型と回収型は評価目的で購入しているのかということになりますし、オスプレイに至ってはそういう評価を全くしていない段階で既にもう中期防で調達を決めるということで、すごく拙速な感じを受ける。何か政治的な導入をしなければ行けないという理由が両方ともあるのでしょうか。
A:私どもは、部隊から様々なヒアリングをする中でこのような装備についての検討を行っております。今日具体的な予算についてのレクチャーがあるというように聞いておりますので、そこでしっかり聞いていただければありがたいと思います。

Q:住友重工の指名停止の件なのですけれども、機関銃関係で非常にデータなんかに一貫して不備があったということで、これに関して5ヶ月というのは非常に軽いのではないかと思うのです。74式機銃を調達された時期ではじめから全てデータが偽装されていると。これに関して例えばもう少し重たい処置はないのか、あとは例えばM2であるとかMINIMIに関しては外国からの輸入に切り替えるということは考えていないのか、あとは過去の損害賠償などは考えていらっしゃるのでしょうか。

A:この問題については、担当部局から私の方に報告があった時点から、ある程度時間をかけての対応について協議させていただき、内部でかなり検討して、最終的には報告も受けております。いずれにしても、今日終わった後細かく説明させますので、そこでお話をしていただければと思います。



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