海自は次期哨戒機を何機調達できるか。

 海幕は次期哨戒機P-1の調達数は65機+補機7機の合計72機としています。

 果たしてそれは可能なのでしょうか。

 いつもしつこくて恐縮ですが、普通軍隊で調達数も調達プログラムの総額も決めないで新兵器開発することはありません。

 ところが我が国では国会が調達数も総額も決めないのにプロジェクトが始まります。

 実際には100機調達するのか、50機しか調達しないのかもわからないのに調達が決まってしまいます。無論自衛隊は独自に見積もってある程度の腹案をもっています。ところが政治がこれを了承していないわけです。
 にもかかわらず、開発や調達が始まるわけです。

 不思議なことに文民統制にことのほかご熱心な北沢防衛大臣は、このことに触れようともしません。
 現場の指揮官の言を小姑のように論うよりも、こちらの「軍部の独断専行」の方が由々しき問題だと思うのですが。

 しかも幕僚監部は開発費は技本の予算なので調達コストには含まれない、という態度をとっています。
 こんな状態ではまともな調達計画なんぞできるわけはありません。丼勘定以前の問題です。

 さて、海自は現在80機のP―3Cを運用していることになっています。実際は更に大綱の変更で余剰となった15機ほどがローテーションで使用されています。
 対してP-1は65機+補機7機の合計72機を調達しようと目論んでいます。

 問題はP-3Cの多くの機体が整備費の不足で、地上にとまっまま、中には部品の共食い整備で飛べない機体もあります。具体的な稼働率はわかりませんが、あれこれ話を聞くと7割以下らしいようです。


 さて、これからP-1の調達が本格化します。機体の価格は現状一機あたり211億円です。これに更に初度費がかかります。
 メーカーの川重は纏めて調達しても値段はあまり下がらないといっています。つまり一機買っても、10機かっても値段は変わらんよ、というわけです。

 果たして海自はこの高い機体と高い維持費を払い続けることはできるのでしょうか。国産の専用エンジンを4発搭載したP-1の維持費は極めて高いものになります。

 現在のP-3Cですら、予算不足のために稼働率が下がっているわけです。P-1を調達したとして、まともに運用できるだけの維持費と訓練費が確保できるのでしょうか。
 例えばXP-2の稼働を保障するために護衛艦の数を減らすとか、潜水艦の数を減らすとか、基地をいくつか閉鎖するとかの話は聞きません。唯一救難ヘリ部隊が空自のそれと統合されて空自が運用することになるぐらいでしょうか。

 常識的に考えればXP-2の調達数を減らすしか解決方法がないでしょう。
 恐らく海幕は抵抗するでしょうが、財務省は「だって、P-3Cの稼働率が低いのに放置しているじゃないですか。それで問題があるならば何故他の予算を削ってもでもP-3Cの稼働率を上げないのですか?」と質するでしょう。
実際海幕の中でもXP-2の調達数削減やむなしという声も聞こえてきます。

 たとえばの話、72機を調達しても整備費が確保できず、5割、36機しか稼働しないならば、調達を40機ぐらいに減らして、整備費を確保した方が合理的という見方もできます。

 海自も政府も魔法を使えるわけではないし、打ち出の小槌や金の卵を産むガチョウをもっているわけではありません。

 限られた予算を各分野に割り振っているわけです。その一つの分野の予算が10パーセントを占めていたのが、20パーセントになったら、どこかを削って増えた10パーセント分の予算を賄う必要があります。小学生でもわかる簡単な算数です。

 しつこいようですが、天からお金は降ってきません。

 海自はP―1を72機調達するならば、何かを諦めないといけません。それが嫌ならば調達機数を減らさなければなりません。例えばP-1の調達機数を大幅に減らし、一部はP-3Cの延命でしのぐもの一案です。
 
 P-3Cの寿命はまだ大幅に残っています。
 搭載機材の近代化であればP-1で開発したものを流用できます。ただ二種類の哨戒機を運用することによるコストアップは問題となります。が、XP-2の調達機数が年に1~2機程度であれば72機調達するためには30~60年程度かかる計算になります。

 調達が年3機の場合24年はかかります。年4機ならば19年かかります。その間P―3Cは現役に留まる必要があるので、2機種並列でも、実はあまり憂慮することでは無いかも知れません。

 本来いつまでに調達を完了するという期間を区切るべきです。締め切りのない調達や設備投資はあり得ません。
  
 川重は量産してもコストが下がらないといっていますから、財務省は量産する必要はなし、と判断する可能性は高くなるでしょう。とならば大量発注は望めないでしょう。
 まあ、そもそも例によって何年までに調達を終了し、相応の部隊を戦力化するという縛りもありませんから、

 72機調達をするのであれば何か節約が必要です。

 例えば潜水艦の建造所を現在の2箇所から1箇所に減らします。となると、毎年建造しなくても済むようになります。となると発注は二年に一度でOKとなります。
 また現在のような巨大な潜水艦ではなく、もっと小さな浅い海で運用が便利な潜水艦も合わせて生産してハイ・ローミックスをするという手もあります。

 つまり防衛産業の再編です。

 その他、米国製の3倍もして、性能が劣る(同等、それ以上ならば何故わざわざリムパックには米国製ソノブイを購入・使用するのでしょうか)哨戒機用のソノブイの国産をやめることも一案です。

 海自がどうしても新哨戒機は72機欲しい、その稼働率も確保、訓練費用も削らないというのであれば、その予算の根拠を納税者に対して示すべきです。
 整備費足りずに動かない機体をハンガーに並べ、飛べる機体も訓練費用が削減されて練度が低いのでは何のために新哨戒機を導入するのかわかりません。





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