「軍服海外調達『聞いたことない』」 北沢俊美防衛相の無知

 北沢俊美防衛相が行政刷新会議の「事業仕分け」で、自衛隊の制服購入費が海外調達などによる縮減を求められたことについて
 「軍服を海外に依存するなんて話は世界中で聞いたことがない。その国と危険な状態になったら、おんぼろ服で事に臨むのか」と発言したそうです。

 率直に申し上げて北沢俊美防衛相は装備調達に関してご存じないです。ならばこのような感情的な発言をなさらない方が宜しかったのではないでしょうか。

 まず、昔からアフリカなどでは自国で軍服が作れないので、欧州の商社あるいはミリタリー・サープラスの問屋などから輸入をしております。
 またこれらの地域では軍事援助と国々はソ連や東欧諸国からも輸入してきました。今は中国からの輸入が増えています。

 先進国でも輸入している例は少なくありません。
 欧州ではベルギーは昔からテキスタイルが盛んで、周辺国を中心に輸出してきています。また英国の軍用セーター業者は以前から欧州、アジア、アフリカなど世界中に輸出してきました。このように軍服の輸出輸入は前から行われています。

 特にソ連崩壊後、軍事費削減の観点から軍服を輸入する欧州の軍隊は増えています。
 
 英国は90年代後半から被服の調達を国内だけではなく、外国にも広げています。特にベルギー企業の受注が増えています。昨今では中国で製造している業者が落札し、さすがにこれは問題になっているようです。
 またドイツはゴアテックスのパーカなど製造に人件費のかかるものはトルコから輸入しています。トルコは工賃が安いこともあり、NATO諸国に軍服を輸出しています。
 また米国は軍事援助の一環として被服も輸出してきましたが、これは調達コストを下げるために中国製切り替えられています。

 NBC関連や特殊部隊用の被服は高度なノウハウが必要な必要なために、輸入品を使うところが少なくありません。
 イ●●ルは●●からNBC用の素材と完成品を輸入しています(ぼくも自分が可愛いので●●●は伏せ字にしておきます)。


 このように外国から被服の調達は普通のことです。

 フランスは頑なに殆どの被服の国内調達を続けていますがこれはむしろ例外的です。
 ですがそのフランスでも一時期米軍のゴアテックス迷彩パーカを使用していました。また同様にドイツのアディダスの運動着を採用していました(これは当時の防衛相がリベートをもらっていたためその後発注は止まりました)。

 北沢防衛相の発言は「自分はものを知りません」と公言したのに等しいものです。

その国と危険な状態になったら、おんぼろ服で事に臨むのか
 別に中国、韓国、台湾などの周辺諸国を除けば問題はないでしょう。
 それともまさか我が国が米国やNATO諸国とも交戦の可能性があり、防衛省はそのような自体に備えて、鋭意戦備をととのえているのでしょうか。我が国が北朝鮮と同じような状況に陥る可能性がある、大臣の発言はそのようにもとれます。

  このような安全保障観、外交感覚を持つもたれた政治家が21世紀の我が国の防衛相というのは極めて不幸です。

 恐らく大臣を補佐する人達も海外の実情知らないのでしょう。あるいは本当のことをレクチャーすると自分たちに不利益があるから敢えてこのような大臣の発言を放置したのかもしれません。
 
 
 一言相談してくれたらぼくが懇切丁寧にレクチャーして差し上げたのに。

 ぼくは石破茂氏と共著を出したこともあり、世間では自民党よりと思われているようですが、まともなお話でしたら民主党も共産党もウエルカムです。
 そのように前から申しておるのですが、民主党からお座敷がかかったことはありません。結果として参議院の質問で自衛隊と米海兵隊のヘリの写真を取り違えたり、トンチンカンな質問をしたりするわけです。
 参議院 外交防衛委員会集中審議 民主党の防衛調達関連の質問は何故弱いか?http://kiyotani.at.webry.info/200712/article_12.html

 防衛省は国内調達が高いのは当たり前だ、と開き直るのは怠慢です。

 確かに国内生産は高くつきます。それは事実です。ですがもっとコスト削減は可能です。
現在、迷彩服など被服の調達は東レなど特定の企業の独占、あるいは寡占が多く利権化しています。他の企業が中々参入できない仕組みになっています。これがコスト高の大きな原因です。

 昔からいうではありませんか。「足らぬ足らぬは頭が工夫が足らぬ」と。
 

 この利権構造を崩し、調達を透明・単純化すればコストは下がる余地はまだあります。この利権構造で得をしている人達が省内にいるからそれが出来ないだけです。


おんぼろ服で事に臨むのか

 おんぼろどころか、そもそも支給していない被服があるじゃないですか。

 高価格もさることながら問題なのは、セーターや訓練用のジャージなど任務に必要で、本来は支給されてしかるべき被服が支給されていないことです。これは軍隊として極めて異常です。この現状を異常と思わない防衛省・自衛隊の体質が異常なのです。
 戦闘服など一部の被服の調達費が高すぎるので、このような本来必要な被服にカネが回らないことが恒常化しているのではないでしょうか。


 北沢大臣、戦場でセーターが破れたからといって、戦闘中の隊員がどこかに買いにいけますか?そとも防衛共済会が「従軍」して販売するのですか?

 しかもこれらを隊員自腹を切らせて買わせて、その一部は業者と癒着となり、裏金の出所となっていることは現場の隊員たちにとっては公然の秘密です。

 ぼくは長島政務官にこのようなことをインタビューで質問しようとしたら答えられないとのことでした。大臣がこの為体ですから、大臣を含む政務3役には答えられるだけの知識が見識もなかったということなのでしょう。
 防衛省 長島昭久政務官  予算がらみの質問にはお答えできません、でいいのでしょうか http://kiyotani.at.webry.info/200911/article_2.html

 官僚に言われたことを鵜呑みして、顔を真っ赤にして盲目的かつ脊髄反射的にに国内産業の保護を吼えるのではなく、海外から調達できるものがあれば行うことも念頭にいれて調達コストの削減を検討すべきです。


 加えるならばブーツ・ソックスなど一部の被服の品質がこれが先進国の軍隊のものか、というぐらい低いことも問題です。現在はどうかしりませんが、陸自の90年代には戦闘服のコストが高いからといって、赤外線を低減する処理を省略したことがあります。実戦はおこらないからいいや、というのか、あるいは隊員が実戦で死んでもいいやと思っていなければ、このようなコスト削減はできないと思いますが、民主党の先生方はこのような事例をご存じでしたでしょうか。


 防衛相の仕事は「海外で軍服を輸入している国は無い」などという世迷い言を述べるのではなく、本当にこれ以上国内生産でコストが下がらないのか、また本来支給してしかるべき被服が何故支給されていないのか、ということであると思います。如何でしょうか。
 


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「正論」1月号に「ガラパゴス化する日本の防衛産業」を寄稿しております。

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