令和4年度財政制度分科会の防衛関連資料を読む 参考資料編その2

財務省では毎年財政制度分科会が開催されています。これは国の予算、決算および会計の制度に関する事項などを調査審議するものです。
その中に防衛に分科会があり、そこで使用される資料が毎年公表されています。意外に注目されていないのですが、防衛省では出さない資料や防衛省には都合の悪い指摘も含まれており、防衛に関しては貴重な資料となっています。これは「資料」と「参考資料」があり、今回から数度に渡って、この「参考資料」を解説していきます。

「資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/03.pdf
「参考資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/04.pdf


NATO基準(国防費対GDP⽐2%⽔準)について(令和3年度財政制度等審議会資料⼀部計数更新)(P3)
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○ NATO加盟国については、NATOウェールズ⾸脳会合(2014年)において、2024年までに、国防費対GDP⽐を2%⽔準へ引き上げることを決定。
○ NATO定義の国防費には、退役軍⼈への年⾦⽀払い、恩給、PKOの関連経費、海上警察などの予算も含まれ、我が国の国防費は対GDP⽐おおむね1.1%〜1.3%程度と推計される(H31.4.9 衆・安全保障委員会答弁より)。
> NATO基準の定義
◆国防費 ⇒ ⾃国、同盟国の軍隊のニーズを満たすために各国政府が⽀出するもの。
◆軍隊 ⇒ 陸海空軍、管理・司令部、特殊作戦部隊、医療部隊、兵站部隊、その他の軍隊(軍事訓練を受け、軍事⼒としての装備を備え、展開された活動において直接軍事的権限の下で活動が可能で、軍事⼒を⽀援するために現実として国の領域外に展開することができるものに限る。)
特徴①退役軍⼈年⾦、PKO、NATO拠出⾦、R&Dへの⽀払を含んでいる。
沿岸特徴②警護隊など、その他の部隊についても、対象に含んでいる。


>平成31年4⽉9⽇ 衆・安全保障委員会(⼩野寺五典委員からの質疑に対して)
[岩屋防衛⼤⾂]
これは、我が国はNATO加盟国ではもちろんございませんので、NATO定義に基づいて所要経費を整理してはおりません。
(略)確かに、NATO定義といっても、運⽤は今先⽣御指摘のように各国で⼀律ではありませんので余計になかなか計算がしづらいというふうに申し上げてきたんですが、今御指摘がありましたように、恩給費、PKO関連経費、海上保安庁予算など安全確保にかかわる経費を含めて、簡便な⽅法で機械的に試算をしてみますと、このような安全保障に関連する経費の⽔準は、経済状況や経費の⽔準によって幅はありますものの、今般の中期防の期間中にはおおむね1.1%から1.3%程度になるのではないかと考えております。


昨年まで政府は防衛費はGDP1%程度と言ってきたがわけですがこれをNATO同様に2%まであげるといいまだしました。ですがこれまで防衛費はGDP1%のシーリングと言っておいて、その数字で他国と多寡を比べてきました。
べつにNATOと同じ基準を採用しなければならないとはいいませんが、諸外国ではNATOだけではなく、NATOと同じような基準を使用するところが多い中、我が国だけ意図的に少ない基準を使用してきたのではないでしょうか。これは普通他国の海軍が満載排水量を基準とするのに、海自はより少ない基準排水量を基準に公開するのと似ています。

NATO基準を採用しなかったのは防衛費を過小に見せるための世論操作と、増大しても容易に1%のシーリングを超えないための方策だったのではないでしょうか。

1996年以降の⽇本・中国の陸上⾃衛隊/陸軍の体制(令和3年度財政制度等審議会資料)(P4)
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○ 中国は、国防費を⼀貫して増加させている中、特に、1995-1996年の台湾海峡危機以降、陸軍中⼼の軍構造を転換し、空海軍を増強。
○ ⽇本は、陸上⾃衛隊中⼼の⼈員・体制を維持。


中国は1996年に220万人だった陸軍兵力を2018年までに97万人まで減らしています。つまり44%まで減らしています。中国と言うと軍事費の増大がだけが注目されがちです。ですが中国の軍事費はGDPの増加にあった「身の丈にあった」軍拡です。
ですが、それと合わせて陸軍の兵力を大幅に削減し空海戦力に予算を振り向けて近代化を行い、合わせて陸軍の装備も近代化しています。

率直に申し上げて人民解解放軍陸軍の方が、陸上自衛隊より遥かに先進国の軍隊です。
そして駐屯地は1996年の160から2021年の163と増えています。

対して陸自は1996年が15.2万人、2021年でも14.1万人と横ばいです。
人民解放軍に限らず、外国では陸軍を削減し、基地の閉鎖なども行い、浮いた予算で海空を強化し、なおかつ陸軍の近代化の予算を捻出しています。

対して自衛隊ではそれができていない。それは政府、防衛省、自衛隊に当事者能力が無いからです。反対されると嫌だからと、漫然と前例踏襲をしているだけです。

だから陸自は途上国以下の状態です。ドローンやネットワーク化、精密誘導兵器の導入にでも大きく遅れを取っています。
いまや歩兵装備は30年前とくらべて一人あたりの予算は一桁高くなってます。それだけ近代化にはカネがかかるわけです。陸自の普通科だけでも同じ兵隊の数で近代化ができるわけがない。であればドローンなどの導入もしてこなかったのはわかります。それを本格的にやると部隊を潰さないといけない。それは嫌だとダダをこねてきたわけです。
そのくせ高いて古い装備を使用する。未だに幹部は革製のWW2タイプのホルスターを使用して、途上国でも当たり前のプレートキャリアも導入なし。水筒も旧来型で1個カバーなしで7千円もするもの延々と調達します。

そんなに近代化が嫌ならば、槍と腰みので戦えばいいじゃないですか。

それでいて、新しい部隊を創設するから駐屯地の数も増える。タダでさえ充足率が低い部隊から人員を引き抜くから、更に充足率がへって、骨粗鬆症、あるいは10倍に薄めたカルピスみたいな部隊ばかりです。戦争やる気は全くありません。

だから基地、駐屯地の削減もできない。基地を削減すると地元の政治家と愚民が騒ぐから手を付けなれない。

であれば政治の仕事って何なんでしょうね?
これで月給100万円が安すぎるとかいっている自民党の大物議員がいましたが、仕事しないなら給料半分でも高いし、議員定数へらすべきです。いると有害ですから。


韓国の国防及び経済の動向(P5)
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○ 韓国の国防費は近年増加傾向にあり、我が国の防衛関係予算に近い⽔準にまで、総額を伸ばしている。
○ 他⽅、国防費の増加と同時に、GDPや税収も増加。
○ また、半世紀以上にわたって朝鮮半島の南北が分断状態にあり、地上軍同⼠が対峙を続けていることや、徴兵制度を設けていることなど、安全保障環境や国防を巡る制度が我が国と異なっている。



2004年から2022年までで韓国の国防費の伸びは2.7倍、日本は1.1倍です。
対してGDPは韓国が2.4倍に対して日本は1.1倍に過ぎません。
税収も韓国は2.5倍に対して日本は1.3倍に過ぎない。そして国家の債務は韓国のほうが圧倒的に少ないわけです。

ここでも強調されているのは、韓国もGDP、税収にみあった「軍拡」をやっているわけです。GDPの2.6倍の借金がある国で、借金で軍拡しろと政府、与党がいうのはどうよ?ということです。

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この記事へのコメント

やれやれ
2022年05月18日 14:08
呆れてしまいますね。
他は軍事費が上がったと言ってもGDPも上がり
身の丈に合うレベルでの話。
要するに景気が良いから軍事費も上げちゃえって
事で貧乏で税収も減っているのに軍事費だけは
人並み以上に上げたいと言われてもない袖は
振れないでしょう。
それを狸の刷った葉っぱで代用しようと言うのが
信じられませんね。
いっそ使い物にならない兵器を無稼働にしてマニアに販売して上げればwinwinになれるのでは無いでしょうか。
装甲が薄くて使い物にならない装甲車とか1億円位なら出す物好きがいるでしょう。軽装甲機動車も二千万円とかで。
普通にボッタクリ価格ですが軍オタとか酷使様ならお国の為、趣味の為と大枚はたいてくれる事でしょう(適当)。
まず民間のマニアや支援者から吸い取るだけ吸い取ってから考えて欲しいものです。
少しはマニアの見る目も変わるでしょう。

それにしても…文谷さんのお話によると中国軍でさえ水筒がチタンの保温水筒に変わったそうですよ。
7000円もするマニア向けの水筒より余程実用的かと。多分値段も大きく変わらないでしょう。
市販品のチタンの保温水筒が同程度よりちょい高い位ですから大量購入すれば安くなるでしょう。
保温水筒が良い人は自前で持ってくるそうですが、何だかな…支給品の色落ちする戦闘服とか直ぐにボロボロになる半長靴とか蒸れるカッパとかもそうですよね。テッパチも凹むんですよね。
官給品でも差をつけられて…無駄遣いと人員整理しないと組織防衛ばかり力入れていては差がつくばかり。
偽陸士
2022年05月18日 19:29
政府にお金が集まると、皆様そこにタカる様になります。

駐屯地出ていかないで。
ウチから装備買って。
議員の報酬もっとくれ。


政府と言う果樹が大きく、甘い実を付けると悪い虫が付くものです。

ならば肥料(税金)や水(権力)は、あまり与えぬのが宜しいかと。

でないと市民経済が立ち枯れしてしまいます。

減税と緊縮財政がこの国には必要です。
ミスターフリゲート
2022年05月18日 20:03
偽陸士さん
とどのつまり、財政は税金依存はやめて倹約し、装備も出来るだけ妥協して賢い選択をするべきってことですわな。しかし本当に金は恐ろしいものですよ。使い方間違えれば、目がくらんで人間性を失う、まるっきりアルコール依存症などと同じですね。金の使い方は気をつけねば。
ブロガー(志望)
2022年05月18日 22:27
お邪魔します。
 この状況は「無能」「怠慢」といったレベルでは無く「自国に対する焦土作戦」とすら言えます。先の大戦終了時に「4年間も死闘を繰り広げた日本の軍事力を復活させてはならない」というアメリカの思惑と「血と死と人の恨みに穢れた軍事なんかとは関わりたくない」という日本の思惑が一致する事で戦後の体制が開始されました。将来的に「やっぱり軍事力は必要」というのが出てくる事も想定し、「たとえ戦おうとしても戦えなくする」事が一貫して行われてきました。だから本来国防に使えるはずの人・物・金を使って役に立つどころか邪魔にしかならないようなモノを作り続けているのです。アメリカが求めているのはせいぜい「下働き(身代わりも含めた地雷や機雷の撤去他)+米軍の拠点であり続ける事を妨げる日本人の排除」ぐらいではないかと。そういった「仕組み」がもはや「自己運動」しており、人々の意識も責任もその中に「埋没」している以上、それこそ「朝廷から幕府へ」といったレベルで変わらない限り何も変わらないのではないかと思ったりもします。
 余談ですが橘玲という人が仏のマクロン大統領について書いていました。それを読んで感じたのは、マクロン大統領はええ格好しいで泥なんか被らない人なのではないのかと(ロシアとウクライナが共同で暴露してくれるか)。尤もマクロン大統領は超エリート(岸信介レベルか)には違いなく、そこは元首相とは違うのかも知れません。
ミスターフリゲート
2022年05月19日 00:28
ブロガー(志望)さん
もはや清谷氏や我々の意見なんか取るに足りない、もう改善なんか絶対しない、諦めて滅ぶしかないと?
やれやれ
2022年05月19日 09:30
日本が次期戦闘機を日英開発に転換した理由、米国が乗り気ではなかった
https://grandfleet.info/japan-related/the-united-states-was-reluctant-to-explain-why-japan-switched-the-next-fighter-to-japanese-english-development/
ご参考まで。私は強引にでもF22+F35でゴリ押しすると思っていましたが、この案が通らなかったのでやる気を無くしたのかなと言う気もします。今更な戦闘機を金もらって開発しても人的リソースの無駄遣いにしかならないと思ったのでしょうね。

海上戦闘におけるTB2の威力は想像以上、UCAVは戦争を再定義する存在
https://grandfleet.info/european-region/the-power-of-tb2-in-maritime-combat-is-beyond-imagination-ucav-is-a-redefinition-of-war/
ご参考まで。いくら小型とは言え何もない海の上ではこのサイズでも発見されやすいので撃ち落とされやすいのでは?と思ったのですが、実際はそうでもなさそうですね。
要は使いようだという事のようで。