令和4年度財政制度分科会の防衛関連資料を読む その10

財務省では毎年財政制度分科会が開催されています。これは国の予算、決算および会計の制度に関する事項などを調査審議するものです。
その中に防衛に分科会があり、そこで使用される資料が毎年公表されています。意外に注目されていないのですが、防衛省では出さない資料や防衛省には都合の悪い指摘も含まれており、防衛に関しては貴重な資料となっています。これは「資料」と「参考資料」があり、今回から数度に渡って、この「資料」を解説していきます。

「資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/03.pdf
「参考資料」
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseisk20220420/04.pdf


防衛装備品の調達実態(P26)
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○ 防衛装備品の多くは国内企業から調達しており、国内調達⾦額は平成23年度以降25%増加し、約3兆円に⾄る。令和元年度以降、輸⼊⽐率も低下傾向に転換。
○ 戦⾞・艦船・戦闘機等の前線で使⽤する主要防衛装備品の調達数量は増加傾向。
○ 多くの防衛装備品は、市場価格がないという特性等から、原価計算⽅式を適⽤。調達相⼿⽅が⼤企業にも関わらず⼀定の利益確保策(R2実績︓利益率7%超)等を講じており、他産業に⽐べて利益率が⾼いのではないか。


第二次安倍政権では不要で高価な米国製装備を防衛費で買うことで、防衛予算を圧迫してきました。米国におもねる為に不要な装備をかうならば防衛費ではなく、外務省の予算でやるべきです。
結果自衛隊が本当に使える予算が減少したので防衛費を増額したわけです。それでも不足なので概算要求で事項要求分の数字を入れないとか、当年の補正予算で装備を買うとか、インチキを始めたわけです。ですから国産装備の調達率も上がってきた。

よく防衛産業がお国のために、損をして防衛装備品の仕事をしているという浪花節を言う人がいますが、嘘です。そんなことを上場企業がやっていれば株主から訴えられます。中小零細は防衛依存度が大手より高いので、そんなことをやれば会社が傾きます。下請け企業では利益よりも仕事と売上というところがありますから、利益があまりでなくても継続している企業はあるでしょうが。

そもそも原価計算も厳密にはできません。下請け孫請けまで関わってきますし、例えば大手の製品だと、何段階にも分けて原価計算をします。重工の労働組合に取材したら、その各段階で工程数を乗せておくそうです。例えば5段階あってここの段階で5%ずつ乗せれば相当利益があがります。

商社にしても2~3%の利益で儲けがでるわけがありません。メーカーに行ったり、見本市にいって打ち合わせも必要です。また新規開発も必要ですが、新しい商品が全部うれるわけでもない。
ですから、海外メーカーは商社に対して、高めの価格を出しておいて、手数料以外に代理店フィーなどとして、商社に還流させるなどしています。本来こういうやり方は不透明なのでやめた方がいいでしょう。仮に現在の手数料でやれと強要すれば商社は一斉に防衛から手を引くでしょう。


防衛産業の疲弊(P27)
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○ 前ページのとおり、主要防衛装備品の調達数量の増加や他産業に⽐べて⾼い適⽤利益率といった実態にもかかわらず、防衛関連企業の撤退が相次いでいる。
○ 防衛産業が「疲弊」した⼀因は、戦⾞から戦闘機まで、需要は防衛省のみの「独⾃仕様」「少量多種」の国産開発・調達を⾏ってきたことにあるのではないか。
※ 「防衛省の要望を忠実に踏まえ」た開発を⾏った結果、世界市場で売れる装備品はほとんどない。

「疲弊」の原因は防衛省、防衛産業ともに当事者意識と能力が欠けているからです。防衛産業を「産業」という視点で見ることをしていないからです。

毎度毎度指摘しておりますが、諸外国では国防省、参謀本部が調達計画を作ります。どういう理由でその装備が必要で、開発費はいくら、調達数はいくつ、製造と戦力化に何年、総額はいくら、それを議会が承認した上で契約します。
例えば新型戦車が300両必要で、調達期間は6年間、総額が1200億円などです。
そうであればメーカーは平均すれば平均50両の戦車を6年間製造すことがわかっているので、事業計画が立てられます。
ところが我が国では予算を承認する国会の議員ですら、何両を何年で調達するのか、総額がいくらなのかを知りません。知らないで承認しているわけです。
民間企業ならば取締役会が設備投資の計画の表紙みただけでめくら判をおしていると同じです。

当然メーカーも普通に考えれば事業計画なんて立てられません。ところがそれが「普通」になっているから「事業」という意識がありません。
調達が5年と30年ではラインの維持費や人件費も6倍も違います。それがどうなるかもわからない。国産装備といても外国のベンダーも増えていますが、ベンダーと価格交渉もできません。

こんなものは商売ではありません。

そして防衛省、自衛隊はまともに海外の情報収集をやらずに妄想で装備開発や輸入品にもあれこれカスタマイズしろと注文をします。
実戦の経験がない上に、装備庁の担当者はメーカーで物を作った経験がない。要求側も諸外国の実態を知らずに思いつきで要求します。

空自のE-2Dも初めからついていた共同交戦能力(CEC)をわざわざ外しました。こうなると一種のカスタムとなり、外した状態での作動確認などの手間が必要ですから調達コストが上がりました。これは単にCECがあると海自とのリンクが必要で、それが嫌だという「ワガママ」でした。ところが、後にCECが必要だと追加装備することになって、余計にカネがかかることになりました。

普通に考えればバカでしょう。

自衛隊の運用者も頭が旧軍の大本営参謀と同じで観念的、空想的な思いつきで注文をくわえたりします。こういってはなんですが、AVやフランス書院の官能小説で「勉強」して3Dのおねいさんを口説こうとするようなものです。

そもそも小銃の手入れもできない、演習をそつなくこなすことが仕事のエセ軍隊がまともな装備を調達できるわけがないでしょう。

そして防衛省もメーカーも自分たちの仕事は防衛省の予算で開発や生産させるだけと思いこんでいます。既に何度もご案内していますが壁面透過レーダーもゴム製履帯も輸出が可能な装備です。それらを輸出しようという気は官民ともにサラサラありません。

基本国内メーカーは四十ヅラ、五十ヅラ下げて自宅で引きこもって、防衛省という親に喰わせてもらっている「子供部屋おじさん防衛メーカー」です。

メーカーに防衛省向けに開発した製品、あるいはその技術を使って内外の市場で撃っていこうという意欲はありません。それはリスクが伴うからです。防衛省の仕事だけしていれば、儲けはあまりでなくても、損をすることはありません。いわゆる事なかれ主義です。
当然世界の市場でも揉まれることもないので、性能、品質、コストで顧客からダメだしされることなく、それを乗り越えて、良い製品が作れるわけがない。

だからコマツの装甲車や住友重機の機銃のようなコストが高くて性能、品質が低いクズばかりが装備化されるわけです。そして防衛省、自衛隊は他国の何倍も高くてもそれを平気で調達します。

だから世界的に見て弱小の航空メーカーの統合も未だにできない。
これが七〇年代ならば将来のために、今はコスト、品質、性能に目をつぶって調達する、というのあったでしょう。ですが日本の防衛産業に将来性はありません。事業を拡大しようという当たり前の意欲がなく、防衛省に寄生虫のように寄生していればいいという考えですから、将来的に高性能、高品質、低コストが実現される可能性がないわけです。

それがわがっていながら国産装備を調達して税金を無駄に使うのは、防衛省、メーカーともに日本の財政を圧迫して、国力を削ぎ、自衛隊を弱体化させているだけです。
日本国の内なる敵と言っていいレベルです。


防衛関連企業等の声(P28)
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このページでは上記で述べた実態が紹介されています。

○ 装備品の調達実態を把握するため、財政当局として、企業ヒアリングや現場視察等を実施した結果、以下を把握。
🉑 防衛関連企業は、装備品の開発・⽣産において、「防衛省からの度重なる仕様変更」「少量⽣産」を含め「顧客の要望に応えること」を求められ、防衛部⾨における⾃社の強み(コア・コンピタンス)を追求しにくい状況。
🉑 そもそも開発当初から海外移転を意識しておらず、防衛省以外のマーケットは念頭にない。
○ こうした状況を踏まえ、装備品移転に係る課題にも対応しつつ、防衛装備品の調達⽅法、海外移転、さらには防衛産業の在り⽅などについて、抜本的な対策を検討することが必要ではないか。
開発・調達に係る主な声について
➗ ⾃衛隊向け仕様は世界的にニッチ。マーケットは国内のみ。
➗ 契約後の開発過程で防衛省からの度重なる仕様変更に直⾯。
➗ 搭載武器の変更等で、その都度、装備品全体の設計⾒直し。
➗ 防衛技術の⾼度化・複雑化に伴う開発期間の⻑期化が課題。
➗ 調達数量が少量で発注が不安定。その中で、⽣産後の運⽤基盤の
確保まで求められる。
➗ 安定基盤を維持したい。⺠需が強い分野は、防需を⽀えやすい。
➗ 製造基盤・能⼒の維持に向けて、官⺠合同で知恵や技術を集約で
きる場がほしい。
➗ 防衛部⾨に⾼い利益率を求めていない。
➗ 防衛部⾨は安定しているものの、他部⾨と⽐べて利益率が低い。
➗ ⺠間で進められる要素研究は、⾃分たちで⾃由にやらせてほしい。防衛省の技術開発は失敗が許されない。
➗ 防衛部⾨は、最先端技術に触れられるテクノロジードライバーであり、安全保障関係事業に参画すること⾃体がメリット。

装備品移転に係る主な声について
➗そもそも⾃衛隊のみを顧客として開発。海外市場は念頭にない。
➗当初設計に組み込まれていないダウングレード・リバースエンジニアリン
グ対策を装備品移転時に求められる。余分なコストが発⽣。
➗安保上の判断や、オフセット条件、装備品運⽤、現地租税、法令なども関わり、⺠間企業では相⼿国政府と交渉できない。現地での⽇本⼤使館の⽀援体制も貧弱。
➗レピュテーションリスクが課題。相⼿国での反対運動や⽇本たたきという形で、他の⺠⽣分野の事業に波及しないか懸念。

官公庁の声について
➗ 経済安全保障の観点から我が国の⾃律性の確保及び不可⽋性の獲得が喫緊の課題である現状も踏まえれば、防衛⼒そのものである我が国の防衛⽣産・技術基盤の維持・強化は⼀層重要。
➗ 各企業において防衛部⾨はシェアが⼩さく発⾔⼒がない。
➗ 新技術の開発・実⽤化において、データをとって証明していくというプロセスができていない。ある部材技術は、冗⻑性等に係る証明もなしに技術を作り上げていたが、使えない。

これらをみると防衛省、自衛隊に発注側としての能力が根本的に欠如しており、メーカーも企業としての当事者能力がなく、防衛省に喰わせてもらえばいいや、という持たれないの構図が見えてきます。

当事者全部にやる気がないのですから、防衛産業の振興とぶち上げても、絵に描いた餅でしかありません。
むしろ無理に防衛産業を維持しようすることが、高コスト、低性能、低品質の装備を調達することによって防衛費の使い方を非効率にして、国防を危うくすることなるでしょう。


「三⽂書」の⾒直しに向けて(まとめ)
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視点1
○ 真に有効な防衛⼒を持つため、現実を直視した議論をするべきではないか。
🉑 安全保障環境が⼀層緊迫化し、対応するための時間が限られる中で、「真に有効な防衛⼒」を持つことが必要。
🉑 そのためには、⻑年維持してきた防衛態勢、成果を得るために多くの時間と費⽤を要する研究開発、構造的な課題を抱える我が国の防衛産業などについて、様々な課題を洗い出し、現実を直視した議論を正⾯から⾏わなければならない。

視点2
○ 経済・⾦融・財政⾯における「脆弱性」の低減と防衛⼒強化をいかに両⽴させるか。
🉑 経済・⾦融⾯では既に有事対応となっている中、我が国⾃⾝に軍事的有事が⽣じれば、あらゆる状況が⼀変し、我が国に深刻な影響。
🉑 脆弱性を放置し続ければ、その脆弱性・姿勢を相⼿国に狙われるおそれ。
🉑 防衛⼒は、国⺠⽣活・経済・⾦融などの安定があってこそ。
🉑 防衛⼒強化のみならず、経済・⾦融・財政⾯の脆弱性を低減しなければ、必要とされている「抑⽌⼒」や「継戦能⼒」を強化・確保することにはならない。


ここに書かれていることはすべて軍事あるいは軍事予算については常識的なことです。財務省は何でも削れ、何でも安くしろと思い込んでいる人達、自民党の国防部会の先生方たち含めて少なくありません。
ですが、実態は財務省は防衛費には限りがあり、それを優先順位をつけて予算化しろ、また使うならばそれを有効に使え問言っているだけです。
対して自民党は防衛費をGDP2%、4兆円強あげろ、使い道は上がってから考える、です。
そして防衛省自衛隊は軍事に対する基本的な知識にすら無知であり、諸外国の3~10倍で装備を買っても気にしない金銭感覚です。そしてそのバカ高い調達費や維持費で予算が圧迫されたら本来必要な訓練費や需品を削ります。それは戦争なんてあり得ないと舐めきっているからです。日々の訓練と演習をこなせばいい。
戦える軍隊を目指して自己改革すれば組織内に軋轢もでる。だから改革はしない。しようとするやつは追い出す、です。こうして組織防衛だけが目的になっています。

この項に書いていることを防衛省がきちんと認識しているとは思えません。
防衛費を増やす前にやることは多くあるはずです。


東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
財務省が戦車の有益性を辛辣に指摘した真の意味
現実を直視した「真に有効な防衛力」の議論が必要だ
https://toyokeizai.net/articles/-/587274
apan In Depth に以下の記事を寄稿しました。
 ゴム製履帯の可能性 前編
https://japan-indepth.jp/?p=66289
 ゴム製履帯の可能性 後編
https://japan-indepth.jp/?p=66297
国産防弾装備を盲信する岸防衛大臣の見識 その1
https://japan-indepth.jp/?p=66121
国産防弾装備を盲信する岸防衛大臣の見識 その2
https://japan-indepth.jp/?p=66134

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この記事へのコメント

ミスターフリゲート
2022年05月14日 20:25
メーカーのやる気が出ないのは、輸出先の国に人殺しとか言われるのが嫌だから、いつしかテキトーになってしまうんでしょう。
航空機ですが、個人的案に
○固定翼機 川崎重工、IHIの各航空部門を三菱重工または三菱航空機に譲渡して統一
○ヘリ スバルの航空部門、三菱重工のヘリ部門を川崎重工へ譲渡して統一
にすべきと見ました。

>防衛⼒強化のみならず、経済・⾦融・財政⾯の脆弱性を低減しなければ、必要とされている「抑⽌⼒」や「継戦能⼒」を強化・確保することにはならない。

これを兵站と呼びますね。強化するならミサイル弾薬燃料糧食の調達備蓄を最優先、訓練費の割合へあてるべきですね。