財政制度分科会(令和3年11月15日開催)「防衛関連資料」読む。その6 調達改革その3

財政制度分科会(令和3年11月15日開催)の防衛に関する資料、参考資料を解説評論していきます。
https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/20211105zaiseia.html

「資料」と「参考資料」2つがあります。既に「資料」編が終わったので「参考資料」を解説していきます。

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia20211115/02.pdf

今回は調達改革についてその4です。

<参考>装備品のライフサイクルコストの上昇(P13)
02_page-0014.jpg

○ 装備品のライフサイクルコスト全体は、引き続き、高止まりを続けているものも多い。



<LCCが増加し続けている装備品の具体例>
輸送機(C-2)(22機取得を前提に試算)

LCC設定時の見積り          17,296億円H21年度)
プロジェクト管理対象選定時の見積り  19,326億円(H27年度)+2,030億円
令和3年度の年度見積り        19,407億円+81億円

固定翼哨戒機(P-1)(70機取得を前提に試算)
LCC設定時の見積り          22,850億円H20年度)
プロジェクト管理対象選定時の見積り  32,182億円H27年度)+9,332億円
令和3年度の年度見積り        38,392億円 +6,210億円

如何に開発調達計画が杜撰だったかわかります。そしてコスト管理が成功しているとは言い難い現実が見えてきます。

また諸外国の軍用機と比較しても国産機は飛行時間あたりのコストは何倍も高いのが現実です。

自衛隊機のコスパを検証する(前編)
https://japan-indepth.jp/?p=55801
自衛隊機のコスパを検証する(後編)
https://japan-indepth.jp/?p=55809

C-2輸送機の開発遅延は人災①〜震災の補正予算で発注された輸送機の調達単価200億円は当初計画100億円の2倍!杜撰な計画で最大積載量も低下
https://japan-indepth.jp/?p=3246

【国産哨戒機P-1の開発は中止すべきだ(最終回)】 防衛省内で孤立した石破茂氏
https://webronza.asahi.com/politics/articles/2012092600003.html

 端的にいって防衛省にも自衛隊にも産業界にもまともな軍用機を開発、生産する人的基盤がない、ということです。A400M輸送機やF22のように諸外国でも開発費や調達費、維持費の高騰はもちろんあります。ところが国産機のそれは「異次元のいい加減さ」です。

防衛省自衛隊は内部の村社会にいい顔して、天下りができればそれでよし、です。稼働率がどうとか、実戦なんか考えていません。
産業界も防衛予算からカネがでればどんなクズを作ってもOKです。彼らもまた、自分たちの作った装備が実戦で使用されるなんて思っていません。安定して防衛省から発注があればそれでいい。

だから本来かけるべき開発費、例えばミサイルの試射回数とかはほとんど掛けないわけです。そして採用後の調達にいくら時間がかかろうが、途中で陳腐化しようか気にしません。調達すればそれでOKですから使うことは考えていない。英国の航空博物館の方がまだ機体の維持に熱心です。

P-1、C-2は両機同時開発によって、コンポーネントの共用化によって開発費、調達費を下げるとありましたが、そのパーセンテージは年々下がって行きました。例えば油圧装置などその例です。そもそも機体特性が全く異なるので、それはできるはずもないセールストークで財務省を騙せれば良かったからです。

しかも同時開発+US-2の開発が重なって、現場では技術者や設計者が不足して、経験不足の外部の技術者や設計者も多く投入されました。これで不具合がおこらないはずがない。当時の防衛庁、技本の無能による人災です。

ですからぼくは国産するのであれば、難度が哨戒機より低いC-2を先行し生産ペースを高くしてコストを下げる。その間哨戒機はP-3Cの近代化で凌ぐと提案してきました。そうであればP-3Cシステムの更新、主翼の再生産、エンジンやコクピットの換装程度で済みました。またC-2に続いて、P-1を開発すれば国内メーカーの大型機製造のノウハウも維持できます。ところが同時開発を行ったので、今後は大型機開発のノウハウは消滅するでしょう。

哨戒機は、かつてはプロペラや低速のジェット旅客機があり、それをベースに開発できました。ところが当時はそのような候補も見当たらない。かといって専用機を開発すればべらぼうなコストがかかる。P-8は737を採用したが、それが正しい選択かどうかもわからないよ。
金満米海軍ですら、専用機を開発せずに737を使用したのですから、その理由を考えるべきでした。

その場合、機体、エンジン、システムを専用で作るのは無理だから哨戒機のトレンドを見据えて、開発や調達を考えたほうがいいよ、といってきました。ぼくも正直現段階で、ここまで無人機が多用されるとは思っていませんでした。20~30年もあればそのような劇的な変化は起こるのが必定であり、それを見据えてから開発するなり、輸入するなりすればよかったわけです。

そしてP-1国産の専用エンジンを採用したわけですが、これがコスト高の一因になっています。わずか300基程度に過ぎないわけですから、数千単位で生産、使用される民間旅客機用エンジンあるいはベストセラーの軍用輸送機用エンジンとは調達及び、運用コストに大きな差が出てくるのは当然です。更に申せば信頼性も月とスッポンです。

それでもIHIがこれをスプリングボードにして、世界に自社ブランドのエンジンを販売していく、というのであれば自国産業の振興と防衛航空宇宙産業の基盤拡大のための投資として許容されましたが、IHIにその気はないようです。少なくとも何らかのアクションは見られません。つまりIHIはリスクを負わずに、自社開発のエンジンを作ってみたかった。それは税金を使って趣味で作ったようなものです。事業化をせずに税金にたかるのをみっともないと思わない。これが防衛企業のメンタリティです。仮に海外にでても勝てるわけがない。であればGEやロールスロイスの下請けだけやっていればいいのです。

このような官民無責任、税金にたかるもたれ合いこそが防衛産業衰退の原因です。そうであれば防衛装備国産は諦めるべきです。


■本日の市ヶ谷の噂■
現在の陸幕広報室長が職務に消極的なため第7普通科連隊が昨年11月に独自に「ドライブコンバット」なる、敵の侵攻時に民間人を誘導する一般公開演習を民間人参加で実施。陸幕広報室はこれをしらされず、両者は現在冷戦中との噂。


Japan in Depthに以下の記事を寄稿しました。
10式戦車の調達は陸自を弱体化させるだけ(上)
https://japan-indepth.jp/?p=63876
10式戦車の調達は陸自を弱体化させるだけ(中)
https://japan-indepth.jp/?p=63884
10式戦車の調達は陸自を弱体化させるだけ(下)
https://japan-indepth.jp/?p=63896


堀口英利さんへの公開質問状まとめ~101まで
https://kiyotani.at.webry.info/202201/article_9.html

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この記事へのコメント

やれやれ
2022年01月19日 19:38
C2,P1,US2それぞれの開発スケジュールが重ならないように計画すれば良かったのに結果首を絞めて今後の開発も首を絞める結果になりましたね。
US3とか他の機体開発をする時には型式照明必要なくてもMRJ以上に苦労するでしょうね。下手をすると開発前に構想段階でギブアップとか。

「IHIにその気はないようです。少なくとも何らかのアクションは見られません。」
私もパリエアショーでIHIの人にF7をベースに民間エンジン作らないのか聞いたところ売る気なしでした。
要するに試作レベルで作ることができたとしても、型式証明(エンジン単体で別途必要)、信頼性、性能、価格で他社に比することができない。できたとしても販路がないし整備拠点の整備もしないといけないしそんな金もない。と予想通りの回答でした。
まあ国家プロジェクトにでもして日本政府が上げ膳据え膳で100%全面的にバックアップすれば可能かもしれませんがIHI単独では荷が重い。最もIHIもそこまでしてやりたくないでしょうね。V2500の時はRRから話が持ちかけられた様ですが、F7の時はお声がかからなかったという事はそういう事なんでしょうね。一緒にするような代物では無かった。単独で十分と。他に欲しがる所があればPWでもGEでもSAFRANでも声掛けあったでしょう。低空を飛んで塩害も防ぐ事が唯一の取り柄と言えるF7にはどこも興味を示さず、技術力を買って民間派生型を共同開発しようと言う奇特な企業は無かったという事でしょうね。JAXAが地味にリーンバーン(希薄燃焼)の研究をしていますが試験だけで終わるのでは?
結局数が少なく高いだけの代物になった。これでは誰もP1を買いたがらないでしょう。ましてや4発の時点で見向きもされない。低空だから4発必要という思考では。737ベースのP8では長時間の低空低速飛行には不向きで最初からそんな事を考えていなかった。海自にはそのような視点は無かった、ぶっちゃけP3Cをジェット化すればOKレベルで運用もP3Cのまま維持したかった。トレンドの移り変わりに無頓着、現状維持が最大の目的だったのでしょうね。

「■本日の市ヶ谷の噂■」
えっと...もうなんて言っていいやら。
19190213
2022年01月19日 20:45
7連隊の広報が強すぎるんですよね。
色々な訓練やってますしおもしろい連隊ですよね。youtubeのチャンネルはおもしろいですよ。

とはいえ、戦時に民間人を支援する余力なんてないんですけどね。
Goodman80
2022年01月20日 09:58
ファンネルの実用化はもうすぐ!一人で130機を制御できるドローンを開発
https://milirepo.sabatech.jp/the-funnel-will-be-put-to-practical-use-soon-developed-a-drone-that-can-control-130-aircraft-by-one-person/
戦争のやり方を根本的に見直し必要が有るかも。陸自の駐屯地程度なら少数のテロリストに殲滅される可能性が。近くに制御装置のトラック止めて複数のトラックから自爆ドローンを飛ばして、偵察ドローンの映像見ながら操れば簡単、簡単。まあ、目標は駐屯地に限りませんが。
やれやれ
2022年01月20日 12:04
1919023さん、
第七連隊ってそうなんですか?
どんなものか暇な時にYouTubeチャンネル探して見てみます。

Goodman80さん、
東京オリンピックもそうでしたが、中国とかも何千機もドローンを一気に飛ばして空に絵や模様描いているので多数機の制御自体はもうあるんですよね。後は一人頭何機一度に使えるか装置やプログラム次第なだけで。
なので何の不思議もありません。空で光っているか代わりに小型爆弾がって襲ってくるかだけの違いです。
その危険性を理解できない人はヤバいですね。
アトラクションだけの利用とは限らないんですよ。
応用はいくらでもできますから。
酷い話民間用の奴に手榴弾やダイナマイトつけて飛ばしても良いわけだし偽装もやりようがあるので本当に厄介です。
ブロガー(志望)
2022年01月22日 22:51
お邪魔します。
 過去の機体を使い続ける事にも「限度」があるでしょうから、そのうち新規の機体を開発する必要があるのではと思ったりもします。その時には「低空を低速で長時間飛ぶ」のを生かして「眼下の景色や乗る事自体を楽しむリゾート旅客機」「海洋他の広域の調査」「今後無人機やドローンの利用が進んでそれらの数が増えるが、低空を飛ぶそれらを地上のレーダー等では取らえきれないと思われるので、それえらを管制・監視するための飛行機」といった様々な用途に使える機体として開発されるのではないかと。尤も日本は「そんなのはどこ吹く風」なのでしょうかど。
 後あれから考えたのですが、戦前戦中の日本が戦車開発で今一つだったのは「船や飛行機と違い、敵のそれが"直接"押し寄せてくる事は考え辛い」だったからではないかと。であるから思い切った絞り込みや割り切りができず、「あれもこれもの結果の凡庸化」か「変なところに固執してバランス等を崩す」になるのでしょう。戦後はリアルな状況等から遠ざかって「病」が「膏肓」に入ってしまいました。
Goodman80
2022年01月23日 08:31
やれやれさん
アトラクションで多数のドローンをコンピューターで動せるのは予めプログラムされた物のみです。ファンネルのヤバい所は仮想空間での戦闘が実際に複数の場所で行える事です。たった一人のテロリストが全く安全な場所から世界同時多発テロが行えるのです。今でもドローンに予めプログラムしておけば同じようなことは行えますが、これは自分が常時画面を見ながら操作できるのです。逆を言えば警察側も同じことが行えるので鼬ごっこの可能性も高いですが。特殊部隊員の様な特殊な訓練を行われた人間が操れば通常の警察や軍隊では防ぐことは難しいでしょう。映画の「ランボー」の様に。
Goodman80
2022年01月23日 11:01
 中国メディアが、北部試験場で国産の新型120mm車載迫撃砲の初試射を公開しました。
http://blog.livedoor.jp/corez18c24-mili777/archives/56381959.html
迫撃砲用の誘導弾を使用しても射撃の様なんですが、搭載車輛に誘導装置が見つからないので砲弾に予め目標を指定するか、砲弾が自分で判断して目標を探して命中するか。いずれにしても近年のドローンの技術がかなり使われていると思われる。発射前の準備段階や発射後の誘導等他のドローンの支援も重要だろう。
発展途上国の中国でこのレベルだから先進国でも上位の日本の自衛隊はどんなレベルなのか非常に楽しみである。
19190213
2022年01月23日 15:12
誘導弾の誘導はFOがやることが多いんで、FOがレーザー誘導装置をもって現地入りしているか、ドローンが代行しているかのどちらかでしょうね。
記事?の解説が正しければ恐らくコリメータは予備でしょうね。

完全な車載にすると駐退複座機を迫につけないといけませんし車両の足回りにもダメージが入りますし何かアウトリガーでもないと通常弾の精度も落ちる。
移動は良好だとしても展開地はある程度広い場所に限られヘリ機動は困難と考えれば一長一短ですな。

なんにせよ金持ちが使う車両であって本邦の貧乏軍隊が使える車両ではないかもしれませんね。
やれやれ
2022年01月24日 22:47
Goodman80さん、
誘導迫撃砲のモックは珠海で見たので今更感があります。
自走迫撃砲という所が新しいポイントなのでしょうけど
同じ様な物は珠海でも見たので新規性があるのは装輪装甲車と言う点かもしれません。

「発展途上国の中国でこのレベルだから先進国でも上位の日本の自衛隊はどんなレベルなのか非常に楽しみである。」
皮肉が凄いですね。


やれやれ
2022年01月24日 23:16
Goodmam80さん、

ちょっと自分のスマホの写真調べてみました。
これは前々回の珠海で私がスマホで撮ったものです。
誘導迫撃砲弾と誘導砲弾
https://i.imgur.com/voOjIVO.jpg

こう言ったタイプの自走迫撃砲はありました。
https://i.imgur.com/IFPRnsM.jpg
https://i.imgur.com/GHMrpEg.jpg

新規生はあの車両か速射生とかですかね?
あの形の6輪の装輪装甲車は無かったですね。
四輪はありましたが。