日本のビジネスメディアの記事が明後日な理由その2



2021年10月25日号
沈むな防衛産業 技術革新の種 守れるか
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/mokuji/00142/

先週号の週刊日経ビジネスの防衛産業特集です。

例によってですが、記者もデスクも外国での軍隊や軍事産業の取材経験がおそらくは殆どなく、国内の防衛産業関係者や防衛省、自衛隊関係者にしか取材をしていない。
ところが取材対象が世界的にみれば、当事者意識も能力の低い、トンデモな人たちなので、当然記事もバイアスがかかるのですが、それを理解していない。だから延々と同じ「コップの中の嵐」をみて世界がわかった気になるような記事を書くわけです。


次期戦闘機「国産」主導で発進 名を捨て実を取れるか
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/special/00924/?i_cid=nbpnb_tobira_211025_3


>事業が凍結された国産ジェット旅客機「三菱スペースジェット(MSJ)」で色濃くにじんだ自前主義が国産へのこだわりと重なってくる。

>特に経営幹部にはその傾向が強いが、現場のプロジェクトマネジャー以下にはロッキードとの協調派もいる。「ロッキードからかなりの支援を仰がなければ『第6世代』の戦闘機としてモノにならない」。F-Xに関わる関係者はこう明かす。国産主導とは裏腹のこうした発言の真意は何なのか。


>「IHIの素材の技術は素晴らしい」。軍民の航空機エンジンで実績を持つロールス・ロイス。同社の担当者は10月初旬、IHIの航空宇宙事業本部の幹部らと向かい合い、あらためて称賛した。

>ロールスがそうした難題を解決する切り札として着目するのが、IHIの耐熱素材、CMC(セラミック基複合材)だ。エンジンの燃焼空気が最初に当たる高圧タービンの温度が理論値で1800度でも耐えられる。ニッケル合金など従来の金属材料に比べ20%ほど耐熱性が高い。また、3分の1軽く、強度も2倍あり、軽量化にももってこいの素材だ。


>しかも、CMCの材料となる炭化ケイ素(SiC)繊維を量産できるのは世界で日本の2社のみとされる。宇部興産と日本カーボン子会社のNGSアドバンストファイバー(富山市)だ。IHIは宇部興産からSiC繊維を調達し、織物にする技術を確立。織物を部品の形状に成形するノウハウも開発した。

> IHIが国際競争力を持つ素材は枚挙にいとまがない。例えば1800度の耐熱・耐圧強度を実現した単結晶超合金やその鋳造加工などだ。
> IHIはこうした門外不出の技術を前面に自前の戦闘機エンジンを送り出したい考えだが、そこに秋波を送るのがロールスだ。

>日本勢からすればF-Xを足掛かりに英国勢が深入りしてくれば国産の色が薄まると神経をとがらせる。米国と英国という2つの変数を抱えればプログラムはより複雑になる。


>F-Xの開発費は1兆4000億~5000億円を見込み、量産や維持整備などの費用を含めると6兆5000億円規模と空前の規模になるといわれている。だが、膨大な作業量と人件費、試作開発の難しさを考えれば「8兆円は優に超える」との声が早くも上がる。

>国産主導か共同開発かの二者択一ではない。時には国産の看板を下ろした「ふり」をして実利を追う。風立ちぬF-X。巨費を投じるからには15年後、国益につなげる必要がある。


そもそも論で言えば、日本に先端戦闘機が開発できる前提な記事なわけです。ところがその現実はないわけです。実戦の経験もなく、他国での運用経験もない。それはF-1、F-2見ても明らかなわけです。F-2の開発担当者がそれを認めているわけです。
かといってイスラエルあたりからそういうデータを買ってくるような要領の良さはないわけです。因みに米国製戦闘機は勝手に改造できないと言われていますがイスラエルはやっています。それだけの交渉力があるわけです。我が国にはそのような能力がないわけです。それで米国と共同開発しても主導権は取れないでしょう。

ところが防衛省、メーカー、国防族議員も「我が国の優れた技術を持ってすれば」という白日夢を見ているわけです。率直に申し上げて「寝言は寝てから言え」です。

たかだか100機程度しか調達しない機体で、数兆円の開発費を掛けて国産開発するということ自体無理ゲーですよ。そもそも成立しない話です。どうなるかといえば、開発費をケチって、F-2同様に半端なものを作らざるを得ない。鳴り物入りで導入されたF-2は長年レーダーの不具合も直らず、調達コストは高く、維持費はF-15よりも高くなったわけです。能力的には同世代のF-16に遠く及ばない。まさに自慰的な開発の産物でした。

文中のもIHIの技術力を褒め称えていますが、素材やコンポーネントの開発力と製品としてのエンジンの開発、製品化は別な次元の話です。一部のコンポーネントが優れていれば優れたエンジンが作れるならば、東レだって戦闘機が開発できるはずです。

実際問題として市場において、IHIはR&RやGEなど海外企業の「下請け」に過ぎません。また優れたエンジンを作る能力があるならば民生エンジンで世界でシェアとるような製品を売っていそうですが、そのような事実もありません。

それでいてより難度の高い戦闘機エンジン、しかも他国を技術的に引き離すようなものを開発できると信じるのはフランス書院の官能小説をノンフィクションと信じるようなレベルのお話です。

予算も十分に確保できない環境で機体、エンジン、システムを全部自前で開発したいというのはそもそも無理な話です。


少なくともぼくが取材する限り、装備庁は英国との協力に傾いています。水面下ではかなり具体的な交渉が進んでいるようです。それがエンジンだけなのか、テンペストに参加するのかはわかりませんが、参加する可能性は決して低くないと思います。

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この記事へのコメント

Goodman80
2021年11月02日 13:06
日本なんて誰も攻めてなんかくれないんだから、F-35A、とF-15X辺りを合わせて180機くらい買って、残りはこの程度の機体で十分。
インドが開発を進めるテジャスMK.2、グリペンやJF-17といった競合機よりも支持を集めるか
https://grandfleet.info/indo-pacific-related/will-india-gain-more-support-than-competitors-such-as-tejas-mk-2-gripen-and-jf-17/
F-3の開発とか寝ぼけているとしか思えない。いい加減バブルの夢からは覚めて欲しい。台湾みたいに高等練習機とか言って軽戦闘機を作るくらいの強かさはそろそろ身に着けても良いころ。
やれやれ
2021年11月02日 13:07
「それでいてより何度の高い戦闘機エンジン」
難度ですかね。

「装備庁は英国との協力に傾いています。水面下ではかなり具体的な交渉が進んでいるようです。それがエンジンだけなのか、テンペストに参加するのかはわかりませんが、参加する可能性は決して低くないと思います。」
これは朗報と言うべきなのでしょうか。続報を待ちたいと思います。
キヨタニ
2021年11月02日 14:35
ご指摘ありがとうございます。訂正しました。


>やれやれさん
>
>「それでいてより何度の高い戦闘機エンジン」
>難度ですかね。
>
>「装備庁は英国との協力に傾いています。水面下ではかなり具体的な交渉が進んでいるようです。それがエンジンだけなのか、テンペストに参加するのかはわかりませんが、参加する可能性は決して低くないと思います。」
>これは朗報と言うべきなのでしょうか。続報を待ちたいと思います。
>
偽陸士
2021年11月02日 15:23
Goodman80様。

F-35もF-15EXもあわせて80機くらいで良いのでは?

残りは艦載機になり得る上に、無人機との連携がとれるテジャスにしましょう。

数を稼げる上に、戦い方を近代化出来るチャンスです。
ミスターフリゲート
2021年11月02日 15:57
Goodman80さん
F16Vもお忘れなく
Goodman80
2021年11月03日 09:14
日本のマスメディアでは到底書けない記事。
世界最強の「武器庫」である日本列島(1)=韓国にはあまり知られていない日本の軍事基地の凄さ
https://news.yahoo.co.jp/articles/b8c5ffd780ce4b6fe9aa7f0024ab0db9dae12a8e
この国が国家として存続出来ている意味が判ります。最近は韓国はなどそっちのけで中国用にシフトされていますが、国連軍(占領軍)の地位はむしろ向上している様な気が。まあ、日本政府(ポチ)には全く関係は無いようです。
Masaya Hariu
2021年11月03日 12:20
JAS39EグリペンをF-39Eグリフォンとして採用するのはどうでしょう?
Goodman80
2021年11月03日 15:30
偽陸士様 ミスターフリゲートさん
F16Vも普通の国では主力戦闘機が勤まる高性能機なので、那覇、築城、千歳はF-35、新田原、小松、三沢はF-15X、百里F-16V単座、松島、浜松はF-16V複座を各20機ずつ、松島、浜松を除く全ての基地に軽戦闘機20機ずつ、松島、浜松には高等練習機、その他の基地には初・中等練習機を配備すればそれなりに戦えるような気が。高価で維持費のかかる機体は最低限の保有で十分。
それよりもE-767の更新とE-2Dは各基地に配備を早急に。無人機は他国と連携して開発しないと独りよがりな物になるが、井戸の中の引き籠り体質の自衛隊では結構難しい。
偽陸士
2021年11月03日 18:05
Goodman80様。


>偽陸士様 ミスターフリゲートさん
F16Vも普通の国では主力戦闘機が勤まる高性能機なので、那覇、築城、千歳はF-35、新田原、小松、三沢はF-15X、百里F-16V単座、松島、浜松はF-16V複座を各20機ずつ、松島、浜松を除く全ての基地に軽戦闘機20機ずつ、松島、浜松には高等練習機、その他の基地には初・中等練習機を配備すればそれなりに戦えるような気が。高価で維持費のかかる機体は最低限の保有で十分。

同意です。
調達価格もそうですが、運用コストの面からもF-16Vを主力とするのが理想的です。


>それよりもE-767の更新とE-2Dは各基地に配備を早急に。無人機は他国と連携して開発しないと独りよがりな物になるが、井戸の中の引き籠り体質の自衛隊では結構難しい。

早期警戒機もステルス機や長距離ミサイルの脅威に晒され易くなっています。
そろそろ早期警戒用のドローンの調達も検討すべきかと。