大手メディアの防衛産業に対するテクノナショナリズムのバイアス

大手メディアは日本の防衛産業が川口浩探検隊だと知らないようです。

>こんな大発見をしながら
けっして学会には発表しない
川口浩の奥ゆかしさに 僕らは思わず涙ぐむ

https://j-lyric.net/artist/a00078f/l005dab.html

世界最先端ならば何で輸出しないでしょうかね?
そういう素朴な疑問があればメーカーの言うことを鵜呑みしないはずです。


押っ取り刀の次期戦闘機エンジン共同開発 IHIが抱く一抹の不安
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00289/082400016/


>IHIは海上自衛隊の哨戒機「P1」など、防衛省向けのエンジン開発・生産を長年にわたり手掛けてきた。民間機では米ボーイングの中大型機「787」や欧州エアバスの小型機「A320neo」などのエンジン開発プログラムにも参画。ファンブレードや低圧タービン部品の材料開発から、高度な流体解析技術を用いた設計、そして材料の加工まで幅広い技術力を持つ。ジェットエンジンの国内市場では6~7割のシェアを握る。

>F3の開発に携わる三菱重工業もロールス・ロイスの“二股”を憂慮する。IHIや三菱重工からすれば、防衛省の考えは「押っ取り刀」に映る。日英で機体が違えばエンジンも異なるため、「日本にとって有利な開発プログラムやスキームをつくりにくい。逆に混乱しかねない」(IHI幹部)というのだ。

>さらに、チタンアルミ合金やセラミック基複合材など軽量で耐熱性の高い材料の開発や加工ノウハウでは日本勢が英国の先を行く。そうした技術は航空機エンジン大手の米ゼネラル・エレクトリック(GE)や米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)も認めるところ。共同開発となると、ひさしを貸して母屋を取られるような事態に陥る懸念がつきまとう。


>はたして政府はこうしたしたたかな戦略を描けているのだろうか――。そこに民間側の根強い不安があり、「せめて共同開発ではなく支援にとどめるなど関与の度合いを弱めてほしい」との声も上がる。

> エンジン開発でIHIは蚊帳の外に置かれ、GE製エンジンが採用された。その後、F2の機密情報は日本に開示されず、多くの基幹部品が米国主導となり、日本の防衛産業は辛酸をなめた。


この記事の根底にはIHIのエンジンの技術は世界最先端であり、独自に戦闘機のエンジンも開発できる。それなのに、というのが流れています。

でもねえ、それは妄想ですから。平素から世界のメーカーや軍隊への取材をせずに、日本のメーヤーや防衛省関係者に取材しているからこういうバイアスの掛かった記事になります。これは日本の防衛族の政治家も同じです。

まず、それほど他国の一流メーカーを凌ぐ技術を持っているならば、なんで独自ブランドのエンジンを国際市場で売らずに、GEなど海外メーカーの「下請け」をやっているのでしょうか。

つまりIHIにはエンジンメーカーとしての完結した開発、マーケティング、生産能力がないということです。
また戦闘用エンジンが実用化されたこともありません。実績がないのに優れたエンジンの開発、生産が可能だとなぜ言えるのでしょう。

P-1のエンジンにしてもそうですが、たかだか調達数が300基以下のエンジンを開発しちゃうわけです。商売としてこれは異常です。そしてこのエンジンの維持整備コストは極めて高い上に、お客から文句もでませんから、問題点があっても解消されません。
そしてこのエンジンを海外に売り込むわけでもない。つまり先につながらない仕事を、その時儲かるからとやっているメーカーです。
本気で航空機エンジンでいっぽんどっこで食っていくという野望も気位もない。防衛省から仕事が降ってくるからやっているだけです。

それに戦闘機のエンジンではなくても艦艇用のタービンエンジンだって独自の実績は殆どないでしょう。「優れた技術」があるならば海自がなんでロールス・ロイスやGEのエンジンを使っているのでしょうか。

ヘリ用エンジンも独自のものがなく、防衛省需要を三菱重工と分け合っている。本気でヘリ用エンジンを開発するならば三菱重工のヘリ用エンジンと統合するぐらいしているはずでしょう。


つまりIHIが優れた戦闘機用エンジンを開発できるというのは、妄想にしか過ぎません。
この記事にもありますが、個々の技術が優れているから「日本スゲー」的な発想がありますが、であればデンソーやボッシュはトヨタやフォルクスワーゲン以上の自動車を開発できることになります。

また防衛省や自衛隊、経産省にもまともな認識を持った人間が少ない。どの様に国際共同開発をすすめるか、その構想力を持った人間がいないのが実態です。それはメーカーも同じです。基本国営企業と同じですから責任感が大変薄い。

それで最先端の国産戦闘機が開発できると信じるのは楽観を通り越しています。

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この記事へのコメント

KU
2021年08月25日 19:34
ちょっと調べれば直ぐに分かるような事すら、調べる気も無いのでしょうね。だから大臣会見でも、ひたすらノーパソをカタカタ打つだけで給料が貰えるような優雅なお仕事を続けられるんだろうなあ。いやあ、何とも羨ましい( ´-`)。

>アフガニスタン退避支援に自衛隊派遣 法的に課題も?「人道と遵法」どう折り合うのか

https://trafficnews.jp/post/110129

今回の派遣にしても、正面切って反対を表明した与野党議員も大手メディアもいませんよね。ひたすら官房長官の安全安全安全という言葉を鵜呑みにしているだけorz。実際に空港の敷地内外で実弾が飛び交っているのに。否が応でも実戦に巻き込まれるリスクがありますけど。そこまで考えてガースー総理はじめ、政治家は隊員を送り出したのだろうか?装備も戦場医療のレベルも他国より劣る面が有りまくりなのに。全員、無事に帰国出来たならば湾岸派遣時のように、派遣後に装備面などで改善が図られる切っ掛けになれば良いですけど。
やれやれ
2021年08月25日 20:19
今や川口浩探検シリーズを生で見ていた世代はもれなくオッサンか爺さんなので若い人には何の事か分からないでしょうね。
面白かったですが、嘉門達夫の歌詞にある通りです。
俳優川口浩を隊長に盛大な冒険ものを装ったバラエティであり仕込みは色々用意されていたんですよね。その辺は川口浩もTVだったかラジオだったか言っていました。ただ本当に危険なロケだったようで想定外の怪我も多くて大変だったようです(映像の流血シーンは大概そうらしい)。詳しくは調べて下さい。Youtubeで 「水曜スペシャル 川口浩探検隊」で検索すると色々出てきます。面白いですよ(笑)。

「大手メディアは日本の防衛産業が川口浩探検隊だと知らないようです。」
航空業界に多少なりとも精通していれば実態位は分かるかも知れませんが、それとも忖度して本当のことを書かないか。まあ記者クラブと一緒ですね。日本が落ちぶれる訳です。

「世界最先端ならば何で輸出しないでしょうかね?」
最先端のものは軍事的に海外に出せるわけないじゃないですか(笑)
この程度の思考かと。良くて酷使様レベル。悪いと言いなり。

「押っ取り刀の次期戦闘機エンジン共同開発 IHIが抱く一抹の不安」
無料会員なので中身全部は読んでないんですよね。触りだけですがツッコミどころ満載の予感。

「軽量で耐熱性の高い材料の開発や加工ノウハウでは日本勢が英国の先を行く」
そうかも知れませんがIHIではRRのTrentシリーズなどの高効率超大型ターボファンエンジンを自力で完成させる能力は無いでしょう。V2500にしてもRRやPW含め多数での共同開発ですからね。飛鳥のエンジンFJR710も国内の共同開発で単独では無いし(日本の力量が認められて後のV2500の開発に参画した切掛にはなったかもしれませんが)。

「ひさしを貸して母屋を取られるような事態に陥る懸念がつきまとう。」
なら単独でどうぞ、ですけど。逆に言うと日本でなければ絶対困る技術が何かがあるのかと言うと?ですけどね。
カーボン繊維の様に他に代えがたい素材はあるかも知れませんがIHIが新素材そのものを作っている訳ではないですからね。F110のライセンスにしてもIHIがこれから研究しようとしていた耐熱超合金をGEは既にF110で実用化していてIHIが驚愕したと言う話もありますからね。この時点で20年遅れ以上ですよ。

長くなったので分けます。
Goodman80
2021年08月25日 20:41
「最先端の国産戦闘機」たるF-3の開発ですが、空自は
F-35A,B:147機
F-15改修機:102機
F-2:91機
の内F-2をF-3にする予定の様です。
F-3の完成予想図からみると、機体はテンペスト、機首廻りが若干変更された感じなので、FCS等の電子装置関連を米国より調達した改修機レベルになると思います。韓国のK-2戦車が世界中から最強の部品を集めてカタログ上は世界最強の物を韓国製の部品を混ぜる、置換える等で量産さえ進まないものになった物と同じ道を歩みそうな気がします。まあ、日本の事だから全数納入して欠陥を有償でちまちま改善していく事になると思います。
但し、F-35A,Bのエンジンは改善され、F-15改修分が予定通り改修出来、F-2がそれ迄持ってくれればの話ですが。まあ、想定外とか言いながら適当に辻褄を合わす名人達の腕前を拝見と言うところですか。
やれやれ
2021年08月25日 20:58
「つまりIHIにはエンジンメーカーとしての完結した開発、マーケティング、生産能力がないということです。」
全くその通りです。私はパリエアショーでIHIの人間に直接インタビューして確認しました。
XF9やF7、F3などパネルやチラシすら置いてなかったので意地悪く売れるかどうか分からないですがアピールしないのですか?と聞いたら防衛関係は出さないので...とのこと。
更にF7とかあるんだからベースにしてB737やA320のエンジンとして売り込みとかしないのか?と聞いたら試作で1台作ることはできるかも知れないが開発費が無いし売れる見込みもないし、売るとなったら整備拠点の整備を世界中に作らなきゃいけないしでとてもIHI単独でできるものではない、と予想通りの回答。まあ高効率ターボファンはF7を使ってJAXAが研究していますけどね。成功しても販売できなければ研究止まりでしょう。それこそ国家プロジェクトで1兆円以上投下しないと無理でしょうね。それでもRRなどのパートナーがいないとMRJの二の舞になるでしょう。エンジンの型式証明取るのも至難なので。

「また戦闘用エンジンが実用化されたこともありません。」
IHIと言うか前身の石川島でネ20がありますが試作で1回空飛んだだけですからね。完成し量産した実用では無い。
それにIHIの歴史で戦闘機エンジンはXF9が最初で試作が1台で空も飛んでない。まだまだこれから長い年月かけて試験をしないと使い物にあるかどうかも分からない代物。
地上のテストベンチでちょっと成績が良いだけでは程遠いですよ。発電用ガスタービンならともかく航空機エンジン、特に戦闘機エンジンでは低空から高空まで環境条件が異なるし何より全方向に激しいGが掛かる可能性があるのでその時に正常に動作しないと命に関わる。まだ赤ちゃんのエンジンに何を期待するのか?成人するまで今のペースだと人間並に20年近く掛かる。それだけ過去の自社技術の積み上げが無い。

「本気で航空機エンジンでいっぽんどっこで食っていくという野望も気位もない。」
上でも理由を書きましたがその通りです。IHIはそこまでやる気がない。そこそこ儲かればそれでいい、大きな冒険はしたくない、防衛省は開発費出してくれるお客、位のものです。
まあそれも分かります。RRはTrentの前身となったRB211の開発に難航し倒産しちゃいましたからね。だから自動車部門と分割してエンジン部門を英国が助けて持ち直し現在がある位ですから失敗=倒産する位金がかかり危険な賭けと言えるでしょうから。

「ロールス・ロイスやGEのエンジンを使っているのでしょうか。」
RRは輸入でGEはIHIでライセンスでしたか。独自では無いですね。

「それで最先端の国産戦闘機が開発できると信じるのは楽観を通り越しています。」
皆厳しい現実より楽しい夢を見たいんですよ。
ここで言う夢とは実現する目標とかアメリカンドリームでは無く、寝ている時に見る楽しい夢の事ですけどね。
八重歯
2021年08月26日 02:10
10年前にTACOMっていう戦闘機から発射する技術実証機がありましたけど、フライトシムのMODが作られるくらい注目されてたアレ、その技術が国産装備に活かされたという話も聞かないし、どうなったんでしょうねぇ?
やれやれ
2021年08月26日 10:38
八重歯さん、
TACOMの開発には失敗しました。
今は岐阜基地と府中基地で飾り物になっています。
輸入したエンジンの性能が良くなかったから墜落事故起こしたとか
悪い噂はありますが、エンジンを変えてまで後継の実験機を作らなかったところを見ると他の性能も色々残念だったのでしょうね。
意欲的だとは思いましたが、巡航ミサイルの偵察機版みたいな用途にどれだけ価値があるのかよく分かりません。
色糸
2021年08月27日 14:42
アフガニスタンには、ブッシュマスターを持っていってるのだろうか。報道ベースだが、輸送防護車の話は聞かない。
こういう時の邦人輸送のためにブッシュマスターを購入したのでは。使うべき時に使うことができないのは、気の緩みと責任感の欠如としか考えられない。
偽陸士
2021年08月27日 17:24
色糸様。

今回陸路を堂々と進めないケースでは、ブッシュマスターなんて使えません。

というか政府を当てにするから、金が無駄になるのです。
政府の役割は軍事・外交・司法ですが、それすら上手くありません。

今必要とされているのはロス ペロー氏の様な企業経営者と、アーサー D サイモンズ大佐のような傭兵です。

決して正規軍や外交官、はてまた地元軍閥に守ってもらえないNPOに出番はありません。

デルタですら失敗して沖縄からはるばる飛ばしたタロンを失っているのに、その教訓から何も学んでいない。

ただどうしても正規軍を使うなら、キルギスやタジキスタンにAn-124でチヌークとブッシュマスターを運び込み、そこからアフガン国内にブッシュマスターを空輸するならあるいは・・・・・
ブロガー(志望)
2021年08月29日 19:55

お邪魔します。
 「現実から目を背けるために夢想に耽る青い鳥症候群」かも知れません。日本はレシプロからジェット、巡行及び弾道ミサイルの実用化という重大な節目で外され、そのため周回遅れになってしまいました。しかも周回遅れを挽回しようとすれば相当の人・モノ・金を投入しなければならないでしょうが、軍事といった短期的な成果や利益を生まないものに相当の人・モノ・金を投入できるものが無いので、企業の収益もしくは学術研究の範囲内に収まる人・モノ・金しか投入できません。となればランチェスターの弱者戦略で局地戦というか勝てる・成果を出せる範囲内で戦うか、取り敢えず引き離されないようにして先に行く者がこけるか状況の変化で先行が仇となるのを待つしか無いのでしょうが(一時日本が欧米相手の貿易で優位に立てたのは古い設備や小規模メーカーが残る欧米に最新設備や規模の大きさで挑めたのが一因とか)、それでは自分達のプライドが満たされない連中がいるのでしょう。それで現実に目を背ける事で益々離されていくのではないかと。