F-35は「お得な戦闘機」か?

F-35は「お得な戦闘機」か?

今やF-35の選択は正しいというのが趨勢のようですが本当でしょうか。確かにユーザーも多く、有事にパーツの供給も潤沢でしょう。
ですが、維持費に関しては問題がありそうです。JDW誌6月23日号のF-35 engine difficulties contributing to higher than expected cost per flight hours によれば、飛行時間辺のコストは2012年に3万3千ドル2021年には3万8千655ドルに跳ね上がっている。元プロジェクトマネージャーによると飛行時間あたりのコストは2万5千~3万ドルと見積もられていた、といいますからかなり高騰したことになります。
また元プロジェクト担当者はF135-PW-100エンジンが次の10年の最も大きなリスクとなりうると述べています。
米会計監査院の担当者によればエンジンパーツの不足で20機のF-35が2020年末まで飛べなかった、また有効な手を打たなければ2030年には800基程度のエンジンが使えなくなり、43%のF-35が飛行できなくなると警告しています。
また元プロジェクト担当者は、F-35は航続距離を伸ばすために燃料タンクが大きくなり、機体内部の余裕がなく、エンジンの整備ややりづらく、整備にはエンジンと推進系のコンポーネントを外して行う必要がある。当然整備時間が長くかかる。当然ながら人件費も押し下げ、信頼性はさげることになる、と述べています。

同様に同誌7月21日号のPentagon Services face unaffordable F-35 orations and sustainment costs by 2036 という記事があります。
米国防総省によると2036年にはF-35は6千億ドル弱の維持費用超過が見込まれるそうです。ジョイント・プログラム・オフィスは2018年に710万ドルだったF-35Aの維持費が2020年には780万ドルに上昇、本来の適切な維持費は1機あたり410万ドルとされており、その差は370万ドル、約1.9倍にもなっている、というわけです。これが更に上昇する可能性もあるでしょう。
米会計監査院は最大のF-35ユーザーである米空軍は1763機のF-35Aを調達する予定だが、そうであれば2036年までに維持費を47%減らす必要があると述べています。
空軍は会計検査院に対して仮にスペアパーツのコストをゼロだとしても33%しか削減できないと述べたそうです。
米空軍はまた会計検査院に対して、取りうるオプションは調達機数を減らすか、飛行時間を減らすかだと述べています。



つまりF-35は維持費の高騰で米軍ですら調達機数を減らさざるを得ない、ということになります。ライフサイクルコストが一定ならばそうするしかありません。もしそれをやらないのであれば、なにか別なものを「諦める」必要がでてきます。

前からぼくはF-35に過度の期待を持つべきではないと申し上げてきました。F-35を導入するにしてもコンベンショナルな機体と併用すべきだと主張してきました。

それはコストの問題があるからです。ステルス機であるがゆえに、通常の戦闘機よりはそもそもが維持コストが高いわけです。ソフトウェアでシ複雑なステムを制御するために、その更新にはコストがかかる訳です。
また、ステルスモードで使用するためには兵装を内蔵しないといけない。このため搭載兵器あたりのコストはF-15、特に最近の改良型よりは格段に少ないわけです。

そうであればF-35の調達は少なめで、F-15などの通常の戦闘機と組合わせて使うべきです。あるいは無人機を併用すべきでしょう。特に我が国は中国に機数で圧倒され、質の差も減ってきています。いくらF-35が強くても、搭載ミサイルが少なければ勝てません。

ステルス戦闘機こそが次世代の戦闘機というのはぼくは、極めて懐疑的です。

そもそもF-22とローハイミックスというコンセプトで作られたのに、あれこれ盛り込みすぎて複雑化して、エンジンも単発にこだわったので技術的なハードルも上がりました。
今にしてみれば、もっと出力の小さなエンジンを双発にして機体にも冗長性をもたせるべきだったのかもしれません。

当面我が国はF-35が主力の戦闘機になるでしょうが、調達しても維持費を捻出できるのでしょうか。それは国産の次期戦闘機にも言えます。専用の機体、専用のシステム、専用のエンジンを開発、使用すればコストはものすごく高くなります。それはP-1哨戒機で「実証済み」です。

F-35を手放しで礼賛する風潮はいささか危険であると思います。防衛装備を語るときに、我が国ではコストが無視されることが多いのですが、それはマニアの視点であります。残念ながら自衛隊まで「マニア」の視点です。そうでなければP-1やC-2など導入できないでしょう。


それから以前以下のブログを書きました。


英日防衛相共同会見から英国含めて外国メディアを締め出した防衛省
https://kiyotani.at.webry.info/202107/article_13.html


>、20日の日英防衛相共同会見に関する案内はありませんでした。

>どうも防衛省はこの会見を記者クラブへのご褒美、あるいは国内向けの「広報」だとおもっているのでしょう。外国に発信する必要はない、そう思っているのでしょう。

>当然ながらJDW(Jane’s Defence Weekly)誌の特派員である高橋浩祐氏もこの会見は知りませんでした。英国の防衛大臣との共同会見から英国の専門メディアすら締め出したわけです。ぼくも以前JDWの特派員をやっており、高橋氏はその後任で、僕より遥かに多くの日本の防衛記事を寄稿しておられます。
JDWは英国向けというよりも世界で一番読まれており、権威ある防衛専門誌です。防衛省は記者クラブ限定したことで専門誌の記者も締め出しました。

>つまり一般メディアだけ呼べば格好がつくと思っていたのでしょう。何か専門的なことを聞かれるまずかったのでしょうか。こいいう中二病をこじらせたような報道管制をしているのは僕の知る限り日本だけです。



この件は英国防省の広報関係者に知らせておきました。先方はたいへん驚いておりました。
英国防相にまで話伝わる可能性はあるでしょう。


以下の記事をJapan In Depthに寄稿しました。
自衛隊をタダで使えるガードマン代わりに東京五輪に派遣するな
https://japan-indepth.jp/?p=60688
サイバー戦、物理的攻撃の脅威
https://japan-indepth.jp/?p=60613

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この記事へのコメント

ミスターフリゲート
2021年07月26日 19:23
結局f35に限らず、ステルス機全般は維持費が高い割に、搭載できる武器が限られたりと、メリットが少ないわけで、隠密偵察か牽制くらいしか使い道がないように思えてしまいます。スクランブルに使おうにも維持費が高くつきますし、厄介ですな。f15も改修が進まず、そろそろ後継も考えないといけないわけで。せいぜい60機でしょうね。
残りは皆さんが言うように、要撃機はf16、攻撃機はスーパーホーネットやf15EXが、理想なのでしょう
やれやれ
2021年07月26日 19:52
「ソフトウェアでシ複雑なステムを制御するために、」
複雑なシステム、ですね。

元々F35の主な目的は制空戦では無く攻撃機ですからね。
F22でFA22にしきれなかったツケもあるでしょう。
高価すぎて中途半端な配備数になったのも大きいかも。
基本ステルスモードは攻撃のためにあるのであって
アラート時は使用しないし迎撃時も複数機のチームでの
近距離ドッグファイトはできないし自機レーダーも滅多に使えないので各個撃破の可能性もあり迎撃にも使いにくい。なんせステルスモードだと僚機をレーダーで確認することも通信も満足にできないでしょうね。
空戦でも先制攻撃する時に有利に働くだけで。
もちろんビーストモードでは関係ありませんがステルスの恩恵は当然少ないです。運用コストも少なくて済むならF35でビーストモードを積極的に利用するべきでしょうが、
エンジンが予想外に短命で頻繁に部品交換が必要となれば
結局修理でエンジンのない機体が増えるだけで実稼働が減る一方。流石にこれは容認できないでしょう。

F35も正直もっと安くなると聞いていたのですが蓋を開けてみるまで分からんもんですね。
となると日本はF35B含めるといささか多すぎる数になると思います。日本も調達数量を早急に見直さないと飛べないF35の山が数年後にできるかも。

あとハイローのハイをF3にするのはやはり無謀でしょう。
開発時期的にも。個人的にはF16かF15EXを購入するのが手っ取り早くて良いと思いますけどね。T7Aの軽戦闘機型は開発時期的に見ても次点になるでしょう。正直ここまでF35にコストが掛かり致命的トラブルが生じるとは思いませんでした。
ネトウヨはF135の部品をIHIで作ればエンジン問題は解決とか言いそうですが、果たして作れるものなのかどうなのか。
Suica割
2021年07月26日 23:18
また元プロジェクト担当者は、F-35は航続距離を伸ばすために燃料タンクが大きくなり、機体内部の余裕がなく、エンジンの整備ややりづらく、整備にはエンジン推進系のコンポーネントを外して行う必要がある。当然整備時間が長くかかる。当然ながら人件費も押し下げ、信頼性はさげることになる、と述べています。

当然ながら人件費を押し上げ、信頼性はさがることになる、と述べています。

が、正しいと思います。
全部読んでみて、そうなるとしか思えませんでしたね。
性能は良くても、維持できるかはよく考えなくてはいけません。
F15やF14のあとにF16やF18も実用化され、米軍により、ハイ・ローミックスで導入され、F16に関しては、F15の何倍も導入されたのは、コストの問題です。
性能が及第点なら、安いのが正義なのはどこも変わりません。
F22とF35はハイ・ローミックスではなく、ハイ・アッパーミドルミックスかハイ・アンダーハイミックスですから、見直しされても仕方ないと思いますね。
Goodman80
2021年07月26日 23:22
F-35は性能からすれば「お得な飛行機」であると思います。但し、大量に必要な物では無く、「決戦兵器」呼ぶべきもので、140機とかの大量な数の装備は必要ありません。米軍もそうですがF-16とF-15の補助的に使われるべき物でしょう。単座のF-16VとF-15CXを前線の飛行場に20機配備し、後方の教育飛行隊にF-15EXと複座のF-16V、教育隊の無い後方基地にF-35Aと単座のF-16Vを20機ずつ配備すれば十分でしょう。よってF-35Aは現在の分40機で十分と思います。
F-3の開発などはバブルが再度来た時に行えば良い。使いこなせる訳もないF-35Bなど当然キャンセルで。
偽陸士
2021年07月27日 16:43
リビア攻撃のあとアメリカのGAOがユーロファイターの稼働率の低さを指摘していましたが、今やF-35がこれに続いています。

なんか旧陸軍の飛燕がエンジンの生産整備が上手く行かず、首なしが続出したのを想起させます。
その後別のエンジンを搭載して五式戦に成りましたが。
このF-35の場合機体構造自体に整備困難の原因があるなら、新しいエンジンを開発しても劇的な稼働率の向上は望めません。

ただステルス機の場合、対地攻撃やAEW機攻撃に護衛戦闘機や電子戦機の同伴が不要ですので、機数はそんなに要らない筈です。
40機も在れば充分でしょう。
使い勝手を考えると個人的には全部B型にすべきだったと思いますが。

コロナ以前なら第四世代機の新造で穴埋めもアリだとは思いますが、今の財政状況では中古機の調達が関の山です。

F-3なんて調査開発費出して終わりです。
最初に低額で示して高額を吹っ掛ける腹積もりでしょうけど、これは無惨に失敗します。
何故なら台湾有事になれば日本人もAI搭載無人戦闘機の猛威を目の当たりにするからです。
そんなタイミングで高価な有人戦闘機なんて提示されれば、有権者は戦意を喪失します。
ブロガー(志望)
2021年07月28日 23:27
お邪魔します。
 昨今は兵器の開発他が余りに高コスト化したが故に、ある意味どこも「貧乏性」に取りつかれて「王道」から逸れていっているように思われます。「目先の金に固執して中長期的な費用対効果に目がいかない。」「一つに何でもかんでも盛り込もうとする。」「変なところに凝り、何でこんなところといった個所を切り捨てる。」といったところでしょうか。F22は「相手に戦闘すらさせない」事を目指した戦闘機ですが、F35は幾つもの次世代機開発をくっつけたコンセプト不明機とも言える機体なので、それ程多くは期待できないのではないかと思ったりもします。「ハリヤー後継の超音速VTOL機」で突破して、その後展開するのが良かったかも。
 現状の路線のままで縮小または後退させようとしてもそれはそれで却ってより歪になりそうなので、いっそパラダイムシフトを目指すべきではないかと思われます。旧海軍も軍縮条約で軍艦に制約が課されたため、当時はまだ海のものとも山のものとも知れなかった航空機に力を入れて一定の結果を出す事に成功しました。尤も皆がそちらに行き出したら、その中では勝てなかったようですが。