財務省歳出改革部会(令和2年10月26日開催)資料を読む。その4



財務省の歳出改革部会、防衛関連の資料を検証します。これは結構示唆に富む指摘がなされているのですが、記者クラブメディアの皆さんも含めて、何故かあまり注目されておりません。

https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseier20201026/03.pdf

今回は4つ目の収入の確保です。

防衛省における収入確保の必要性と現在の取組(P25)
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○ 我が国の厳しい財政状況のもとで、不確実性を増す安全保障環境に対応するための防衛力を着実に強化していくには、歳出面の工夫だけでなく、防衛省の有する資産も最大限活用し、財源の確保を図ることが重要。
○ こうした考え方に基づき、01中期防においても、防衛力整備の効率化・合理化と並んで、「その他の収入の確保などを通じて実質的な財源確保を図」ることとされている。
○ 防衛省においては、こうした取組の一環として不用物品のせり売り(令和2年7月26日、売上額約582万円)、大本営地下壕跡の有料見学が実施されているが、必要な財源の確保のため、さらなる取組が必要ではないか。

率直に申し上げて防衛省はやる気がありません。侍がなんで商人の真似をせんといかんのだ、という感覚があります。そして商売をした人間がおりません。
資料でも示していますが、河野太郎前防衛大臣が不用品のオークションを始めたのは金額の多寡よりも意識の改革を求めたものではないでしょうか。

(前略)わが国の置かれた厳しい財政状況の下、防衛力を着実に強化していくために、実質的な財源の確保を図ることが必要で、中期防にも収入の確保を図ることとされております。その取組の一環として、不用となりました自衛隊の物品につきまして、「せり売り」、いわゆるオークションを、7月26日に、防衛省において実施することといたしました。(中略)財務大臣からも収入の確保ということは言われておりますので、色んなことをやってF-35、1機分の収入を上げられたらいいなと思っております。
必要なのは装備庁で内に不用品を販売する組織を作ることです。他国ではそのような組織を国防省内にもっています。表向は耐用年数切れと称していますが、実際は使える装備は少なくありません。19式自走榴弾砲の導入で不要となるFH-70ですが潰すのはもったいない。売るべきものは売ればいい。ヘリや航空機などばらして部品単位にして売ってもいいでしょう。
64式小銃や9ミリ拳銃なんてアメリカの民間人向けに売ってもいい。コレクターが相応の値段で買ってくれるでしょう。
またトラックやテントや被服などはまとめて入札してもいいでしょう。実際に欧米のサープラス業者はそのような入札で仕入れをしています。そして小売店やアフリカなどの軍隊に売ったりしています。テントなどは自治体向けに安値でセールスすれば自治体も助かっって、国として税金のセーブになります。

収入確保のための具体的な取組み①-不用装備品の処分(P25)
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○ 耐用年数の経過などにより防衛装備品を処分する際、陸上自衛隊の戦車など一部の例外を除いて、部隊間で売却収入・処分費用の情報を集約し、適正性の比較を十分に実施する体制となっていないことなどから、同じ装備品であっても、処分契約ごとに費用や収入が大きく異なっている。
○ より経済効率的な不用装備品の処分のため、各自衛隊で処分契約の仕組みの統一を図るとともに、費用や収入等の情報を共有できるような体制を構築するべきではないか。

<装備品の処分にかかる費用の例>
(1)74式戦車
契約日付      処分単価
H28.1.27     650,160円
H29.12.22     609,120円
H31.2.15     1,331,640円
H31.2.15     486,000円
R1.12.9     1,557,600円
R1.12.9      911,900円

(2)82式指揮通信車
契約日付      処分単価
H28.3.3       4,263,840円
H29.3.23      3,914,640円
H30.3.27      3,565,080円
H31.3.20      3,662,280円

(3)F-4戦闘機
契約日付      処分単価    処分台数  処分地     契約形態
H27.12.17     507,600円     3機    百里      解体のみ
H30.10.23     247,860 円    4機    百里      解体・売却
R1.11.7 385,000円     3機   小牧      解体・売却
R2.2.6        82,500円    4機    百里      解体・売却

単にくず鉄として売ると解体費用もかかります。それよりはコンポーネント単位で売る方が、いいでしょう。74式戦車の105ミリ砲は英国のL7のライセンス品ですから砲だけをほしいという国もあるのではないでしょうか。ペリスコープなども海外のサープラス業者は普通に売っていますから、マニア向けアイテムとして業者に売れると思います。

またFH-70などは最大射程で撃ったこともない砲が多いわけですから、砲身寿命は長くあります。であれば老朽化した補助動力装置を換装し、オーバーホールすれば買い手はあるのではないでしょうか。
P-3Cも主翼を再生産して売ったほうが、くず鉄として売るよりも遥かに高く売れます。

単に不要なものは廃棄、ではなくできるだけ高く売る方法を模索すべきです。それが納税者に対する義務ですが、現状はそれが果たされているとは言えません。諸外国の組織を研究して不用品販売の組織を立ち上げるべきです。


収入確保のための具体的な取組み②-不用装備品の海外輸出(P27)
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ここでは先述のような海外の例が紹介されています。

○ 英国では、不用装備品の処分に関し、国防省防衛装備販売局(Defense Equipment Sales Authority)という専門部署を設けており、例えば、不用船舶について、再利用又は資源としての利用を念頭に海外政府や企業への輸出を含め、取組を行っている。
○ 我が国でも、防衛装備移転三原則等に留意しつつ、英国の事例等も参考に、より効果的な収入確保の手段として、不用装備品の海外輸出を含め検討すべきではないか。

<英国における不用船舶の売却事例>

艦艇           売却年  売却価格        売却先    
軽空母(HMS lllustrious)  2015年  約2.7億円(£200万)  トルコ企業 (鉄くず)
揚陸艦(HMS Ocean)   2018年  約109億円(£8,400万)  ブラジル政府(再利用)
掃海艇(HMS Quorn)   2020年  約2.9億円(£250万)  リトアニア政府(再利用)

<防衛装備移転三原則(平成26年4月1日国家全保障会議決定・閣議決定)>
【原則1】移転を禁止する場合を明確化し、次に掲げる場合は禁止
① 我が国が締結した条約その他の国際約束に基づく義務に違反する場合
② 国連安保理の決議に基づく義務に違反する場合
③ 紛争当事国への移転となる場合
※ 紛争当事国:武力攻撃が発生し、国際の平和及び安全を維持し又は回復するため、国連安保理がとっている措置の対象国【原則2】移転を認め得る場合を次の場合に限定し、透明性を確保しつつ、厳格審査① 平和貢献・国際協力の積極的な推進に資する場合
※ 平和貢献・国際協力に積極的意義がある場合に限る。
② 我が国の安全保障に資する場合
・ 国際共同開発・生産
・ 安全保障・防衛協力の強化
・ 自衛隊の活動、邦人保護に不可欠な輸出
※ 国の安全保障政策として積極的意義がある場合に限る。
【原則3】目的外使用及び第三国移転について
適正管理が確保される場合に限定

他国のように海外に販売するためには「防衛装備移転三原則」を更に緩和する必要があります。現状は防衛費を効率的に使うための視点が欠けており、綺麗事に過ぎています。もっと納税者の利益を考えるべきです。


収入確保のための具体的な取組み③-その他-(P28 )
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○ 平成28年度に通年での一般公開が実施された迎賓館をはじめ、各府省は、所管の魅力あるコンテンツを活用して入場料収入等を確保し、事業の運営等に役立てている。
○ 陸上自衛隊の富士総合火力演習は、見学者約24,000人(抽選倍率約27倍、2019年)となっているほか、航空自衛隊の航空祭など、防衛省は根強い人気のある広報行事を行っている。各行事の性質・効果も踏まえつつ、例えば、こうした行事の一部座席を有料化するなど、一定の収入確保につなげる工夫を行うべきではないか。
○ また、防衛省の病院(防衛医科大学校等)においては、企業的な事業経営により、保有する医療資源を有効活用して収入を確保するなど、収支改善を図るべきではないか。

総合火力演習は事実上見世物であり「国営仮面ライダーショー」の様相を呈しています。その準備に富士学校は3ヶ月も拘束されています。ぼくはこれは廃止すべきだと思っていますが、継続するのであれば全席有料にすべきだと思います。
また、各種音楽イベントなども有料でいいのではないでしょうか。
英軍など他国の軍隊では映画などのエキストラや、レコードのために軍楽隊を貸し出すシステムができており、料金も設定されています。このような他国の取り組みも参考にして稼げることはやるべきです。最近は害獣駆除でどこの自治体も苦労しています。例えば狙撃部隊をこれに使用し、その対価を自治体から受け取るというようなスキームもありではないでしょうか。
      英海兵隊では独自の売店でグッズを企画販売しています。例えばネクタイ、フラスコ、帽子などです。これを通販でも販売し、隊員の福利厚生にあてております。こういう取り組みも参考になるのではないでしょうか。

Royal Marines Shop
https://royalmarinesshop.com/


Japan in Depth に以下の記事を寄稿しました。
海自FFMと隊員減対策(前編)
https://japan-indepth.jp/?p=56206
海自FFMと隊員減対策(後編)
https://japan-indepth.jp/?p=56255

自衛隊機のコスパを検証する(前編)
https://japan-indepth.jp/?p=55801
自衛隊機のコスパを検証する(後編)
https://japan-indepth.jp/?p=55809
官庁の情報開示は途上国以下~記者クラブの弊害~
https://japan-indepth.jp/?p=55598

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
来年度の防衛予算5.3兆円が実はもっと多い訳
実際は5.7兆円、過小に見えているのはなぜか
https://toyokeizai.net/articles/-/398559


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この記事へのコメント

偽陸士
2021年01月14日 15:23
清谷様。

いつも分かりやすい解説ありがとうございます。
この財務省のレポートも具体例も豊富で概要は掴み易いのですがマニアやそれ以外の一般人向けの物販、外国軍向けのリファブリッシュした装備の売却など、肌感覚で理解しやすく読んでいて楽しいものです。

自分も連隊ごとに製作されているネクタイなど、イギリス軍の商品には興味があります。
これは連隊の縁故者でなくても買える物なのでしょうか?
キヨタニ
2021年01月14日 20:07
Royal Marines shop で 検索すると出てくる思います。部外者でも買えます。現地でぼくも買いました。ただ今は英国からの航空便が限定されているので、一時的には無理かもしれません。

>偽陸士さん
>
>清谷様。
>
>いつも分かりやすい解説ありがとうございます。
>この財務省のレポートも具体例も豊富で概要は掴み易いのですがマニアやそれ以外の一般人向けの物販、外国軍向けのリファブリッシュした装備の売却など、肌感覚で理解しやすく読んでいて楽しいものです。
>
>自分も連隊ごとに製作されているネクタイなど、イギリス軍の商品には興味があります。
>これは連隊の縁故者でなくても買える物なのでしょうか?
キヨタニ
2021年01月14日 20:08
https://royalmarinesshop.com/


ここでここです。

>キヨタニさん
>
>Royal Marines shop で 検索すると出てくる思います。部外者でも買えます。現地でぼくも買いました。ただ今は英国からの航空便が限定されているので、一時的には無理かもしれません。
>
>>偽陸士さん
>>
>>清谷様。
>>
>>いつも分かりやすい解説ありがとうございます。
>>この財務省のレポートも具体例も豊富で概要は掴み易いのですがマニアやそれ以外の一般人向けの物販、外国軍向けのリファブリッシュした装備の売却など、肌感覚で理解しやすく読んでいて楽しいものです。
>>
>>自分も連隊ごとに製作されているネクタイなど、イギリス軍の商品には興味があります。
>>これは連隊の縁故者でなくても買える物なのでしょうか?
やれやれ
2021年01月14日 21:36
F4など古い戦闘機のドンガラだけでも1機丸ごとオークションに掛ければ金持ちの物好きが入札するでしょうね。再利用できない程度に中を壊すとかで十分でしょう(その必要すらないかもですが)。持ち帰りは百里基地、岐阜基地まで取りに来て実費にてお持ち帰りで。輸送費込で2千万円位?で自分の庭にF4が鎮座すると思えば安いもの。
後は個別のパーツなどもそれなりに需要があります。航空博物館やサープラスショップでも売ってたりしますが、一定の需要があると思います。ましてやマニアの大好きなファントムなら尚の事。この手の戦闘機物の部品ってほとんどが米国等からの輸入品なんですよね。売ればいいカネになるのに勿体ないって国内のマニアは思っていますよ。
数年前百里航空祭に行った時に奥の方で部品取りされて無残な躯を晒していたF4の用廃機が宝の山に見えました(笑)。
細かい部品でもグラム幾らでも、一カゴいくらでも売り物になるかも知れません(爆)。

エンジンの部品などは民間用では再利用されると困るので(法的にらしい)特に後段のタービンブレード(インコネル製)などはぶった切ってアクセサリーにしたりしています。コンプレッサーはそこまででは無いので原型のまま磨いて元のエンジンの名称などが刻印されてたり、溶接して美術品にしたりして売っていますね。私もその手のパーツを航空祭や博物館で購入して悦に浸っています(笑)あまりお金は掛けていませんけど部屋の飾り物には良いかな、と。

国産大好きな酷使様には戦車の切れっ端でも文鎮にして高く売りつけてあげればWinWinですよ。エンジンのピストンもピカピカに磨き上げて高値で売れば良いかも知れませんね。
これが日本を守ってきた〇〇だ!と思えば随喜の涙が頬を濡らすことでしょう(汗)。
Goodman80
2021年01月14日 22:07
米海軍の第七艦隊の艦艇に新型の電子戦装置が追加されている様です。
Shadowy New Electronic Warfare System Has Been Installed On U.S. Navy 7th Fleet Ships
https://www.thedrive.com/the-war-zone/29626/shadowy-new-electronic-warfare-system-has-been-installed-on-u-s-navy-7th-fleet-ships
後付けで追加されている様で、装置の種類もいくつか存在する様です。誘導兵器の最終段階で妨害する装置らしいのですが、ある程度の種類の兵器に対応出来る様です。米機動部隊の弾除け用の自衛艦には必要ないかもしれませんが。
偽陸士
2021年01月14日 22:54
ありがとうございます。

早速覗いて観ました。
かわいい子供服も有るのは驚きです。
熊のデザインがまたなんとも。

Twitterも観ましたが訓練コースで運動会もやってるんですね。
しかも皆楽しそう。(笑)

他にも高速艇と熊のぬいぐるみの組み合わせや、クラフト・ジンなど見ていて飽きません。
Masaya Hariu
2021年01月14日 23:17
上念 司 氏、KAZUYA channel、専守防衛or積極防衛2 等の予算増額を主張する人達には是非読んでほしいですね。
勿論、武器の輸出に反対してる人達にも。
Suica割
2021年01月15日 14:57
土木資材や建設機械の部品とかは売れそうですね。
能力維持のために持たなきゃいけないけど、使わなくて余るものもある。
元々、民生でも使われるものも多い。
部品を用途廃止だからとそのまま捨てるのはもったいない。
そういう観点がないからダメですね。
缶飯とか売るのに最適ではないですかね?
あれ、機密も何もないし、適正に入れ替える必要もありますから。
ニ読者
2021年01月16日 11:46
装備品オークションは面白い試みでしたね。
河野前大臣が、イベントの有料化と併せて道を開いてくれましたが、現大臣はどのくらい継承されるのやら。
Suica割
2021年01月17日 22:44
https://youtu.be/Nmmy5n3ySmc
この動画とかのように、公開できることたくさんありそうなのに。
下手なゆるキャラとかで釣るより、募集に役立ちそう。
昔あった自衛館よりは、筋がいいと思います。