財務省歳出改革部会(令和2年10月26日開催)資料を読む。その1

財務省の歳出改革部会、防衛関連の資料を検証します。これは結構示唆に富む指摘がなされているのですが、記者クラブメディアの皆さんも含めて、何故かあまり注目されておりません。

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https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings_sk/material/zaiseier20201026/03.pdf

4つの大きな項目が示されています。
1.安全保障を取り巻く現状
2.人材育成・確保
3.調達改革
4.収入の確保
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まず、1.安全保障を取り巻く現状です。(P2)
P2では○ 我が国周辺には、大規模な軍事力を有する国家が集中している。
○ 加速化・複雑化するパワーバランスの変化が、より重大な事態へ発展していくリスクをはらんでいる。

と指摘しています。そのうえで、防衛費における後年度負担の増加を憂いております。(P3)

○ 平成25年度以降、防衛関係費は増加。平成30年12月に決定された「中期防衛力整備計画」では、令和元年
度から5年度までの各年度の予算の編成に伴う防衛関係費について、25兆5,000億円を目途とすることを規定。
○ 格段に速度を増す安全保障環境の変化に対応するため、防衛力を強化する必要があるが、同時に厳しい財政状
況を踏まえ、SACO・米軍再編経費を含め、防衛関係費をメリハリある予算としていく必要。

ここで示されているグラフで注目すべきは令和2年度から3年度で8.3%の増額になっていることです。実質更に令和2年度の三次補正予算が加わります。

中期防衛力整備計画の構造(P4)
では、
○ 「01中期防」においては、防衛関係費を適切にマネージする観点から、新規後年度負担額を含む今後5年間で新たに契約する事業の総額(17兆1,700億円)を新たに規定し、後年度負担を適切に管理することとしている。
と、しています。これは極めて巨額です。
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新規後年度負担額等の推移(P5)
○ 「26中期防」以降、新規後年度負担額が歳出化経費(既契約に基づく支払)を上回り、後年度の要支払額が累増している。
(参考)3年度概算要求の新規契約額(一般物件費+新規後年度負担額)は、「01中期防」における契約総額の年平均額(約3.4兆円)を上回る規模。
○ 後年度の要支払額が増えれば、毎年の最新の状況を予算に反映する余地が狭まることになる。
○ 不確実性を増す安全保障環境の中で、計画的に必要となる防衛力整備を行うためには、調達の効率化・合理化を徹底すること等により、新規後年度負担を抑制する必要。
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平成23年度の新機構年度負担は1.65兆円だったのに対して、令和3年度予算案では2.67兆円に膨れ上がっています。


後年度負担の適性水準をまずは考えるべきです。防衛装備はその年に発注しても完成して納入されるまで年数がかかります。それを後年度負担でというのは当然です。ですが、現状当年度の予算以上の予算を使うための、付け回し、例えるならばサラリーマンがリボ払いであれこれ買いすぎているのが現状です。
そしてそれは防衛費の中で義務的な支出となります。そしてそれは柔軟な防衛予算の使い方を阻害します。ただでさえ、人権料食費、地元対策、米軍関連費用などの義務的な支出が多く、後年度負担が増えれば増えるほど、柔軟な政策を実現するための余裕がなくなっていきます。
そして一般会計では国債の利払いで予算の約四分の一が使われています。安易に防衛予算を増やせる状況にありません。


安全保障をめぐる状況の根本的変化①-宇宙・サイバー・電磁波領域-(P6)
では安全保障環境の変化を指摘しています。

○ 宇宙・サイバー・電磁波といった新たな領域の利用の急速な拡大は、陸・海・空といった従来の物理的な領域における対応を重視してきたこれまでの国家の安全保障の在り方を根本から変化。
○ 各国は、全般的な軍事能力向上のため、宇宙・サイバー・電磁波領域における能力を強化。⇒ これらの領域の安定的利用が妨げられれば、軍事のみならず民生を含む国家・国民全体の安全に重大な影響。
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これは何が言いたいかというと、これらに対して莫大な予算と多くの人的リソースが必要だよ、ということです。防衛費を大幅に増額できないわけですから、何かをバッサリ削減しないと手当できないよ、ということです。例えば連隊単位の侵攻すら本土にありえないのに、戦車・火砲が300両もいるのか、陸自の定員多すぎないか、海自の護衛艦の速度30ノット以上を実現するために高い艦艇調達&運用コスト払い続けるんですか?
ということです。
パラダイムの変革は自衛隊や防衛省には無理でしょう。危機意識もなく、組織防衛第一ですから。ここは政治が指導力を発揮することころです。

安全保障をめぐる状況の根本的変化②-全産業の支え手減少-(P7)

○ 一国の防衛力の在り方は、その国の社会・経済の構造からも大きく影響を受ける。
○ 我が国においては、特に少子高齢化により20~64歳人口は約65万人/年のペースで減少。(2040年時点で2020年対比▲1,300万人)
○ 全産業において支え手の確保が課題になることが予想されるが、自衛隊もその例外ではない。
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 少子高齢化でそもそも労働人口が減少します。そして自衛隊は必ずしも魅力的な職場ではありません。任期制自衛官は退職後の職探しが大変です。非任期制自衛官も、民間では定年が70歳になろうかという時代に50代での退職が殆どで、その後の収入が激減する可能性が高いわけです。しかも組織として閉鎖的で、結果をださなくていいから惰性で仕事をする、そのうえいじめが横行するわけです。
 兵力削減は不可避であり、それにどう対処していくのか。萌キャラ使ったポスター作るぐらいで解消するようなものではありません。
 ところが、自分たちの組織の宿痾を直視し、それを根本的に改善しようとは思いません。陸自なんて未だに課業中にかけっこだの棒切れふりましてちゃんばらゴッコやっているような始末です。

防衛関係費に係る効率化・合理化の視点(8P)
ここでは以下のように論点をまとめています。

今後、少子高齢化による生産年齢人口の減少が更に進む中、新領域(宇宙・サイバー・電磁波)の利用・連携を含む安全保障環境の変化に適切に対応し、国民の生命・財産を守るための体制を構築していくには、限られた資源(ヒト ・ モノ(産業基盤)・カネ(財源))を有効に活用する必要がある。そのため、以下の視点について検討し取組を行っていくべきではないか。

◇視点1.防衛省・自衛隊の組織・人材
⇒ 上記の変化への対応の前提として、現在の人材活用は十分に効果的・効率的なものとなっているか。
◇視点2.防衛装備品
⇒ 調達は十分に効果的・効率的なものとなっているか。また日本の産業基盤の強みを生かせているのか。
◇視点3.財源確保
⇒ 保有する資源を十分に活用し、効果的・効率的に収入を確保しているか。

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いずれに関しても防衛省、自衛隊の危機感は薄いと言わざるを得ません。何しろ戦争なんておこらない、今のまま回していけばいい。改革なんぞして摩擦なんぞ起こしたくない、というのが本音でしょう。
もし、このまま抜本的な改革が無理であれば、国防を全うすることはできない組織に無駄金を流し続けることになります。
本来防衛省に昇格したということは政策官庁になったということですが、政策立案の能力は皆無で実質的に看板を掛けかえただけです。

いっそのこと、内局も含めて予算、人員を三分の一ぐらい減らしたほうがいい。その上で、
内閣の外局の防衛庁に戻し防衛庁、自衛隊の首脳部、次官以下局長クラス、装備庁長官、幕僚長から将まで、米国防省のお雇い外人を受け入れて、改革が成功したらボーナスを弾む方がよろしいでしょう。

改革を阻んでいるのは防衛省、自衛隊の民主国家の軍隊ではありえないレベルの情報隠蔽体質です。たたき台となる情報やデータを開示していないわけですから、メディアや国会がこれを監視したり、具体的に批判することができない。
だから軍隊からみれば異常な状態が放置されてきていると言えます。
文民統制の根幹は政治による人事と予算の掌握であり、その基礎となるのが情報開示です。
前の戦争でも帝国陸海軍は「民間人が軍事に関して知る必要なし」と情報を隠蔽してきたわけです。その結果外部から批判をされなくなり、組織の独善化が進みました。
結果負ける戦争を始め、しかも現実を見ないからボロ負けを続けて最後には原爆まで落とされました。


■本日の市ヶ谷の噂■
財務省が力こぶを入れて、F-35戦闘機の調達をより安価な輸入に切り替えたのに、怪しげな根拠でこれをヒックリ返して、再度国内生産継続となった裏には森本敏元防衛大臣が暗躍、との噂。


Japan in Depth に以下の記事を寄稿しました。
海自FFMと隊員減対策(前編)
https://japan-indepth.jp/?p=56206
自衛隊機のコスパを検証する(前編)
https://japan-indepth.jp/?p=55801
自衛隊機のコスパを検証する(後編)
https://japan-indepth.jp/?p=55809
官庁の情報開示は途上国以下~記者クラブの弊害~
https://japan-indepth.jp/?p=55598

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。
来年度の防衛予算5.3兆円が実はもっと多い訳
実際は5.7兆円、過小に見えているのはなぜか
https://toyokeizai.net/articles/-/398559


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この記事へのコメント

偽陸士
2021年01月11日 23:01
財務省のレポート、如何に門外漢の人々に問題点を理解してもらうか良く考えられています。

更には一部改善策まで提示してくれる親切さ。
これは財務省から防衛省への勧告か或いは警告なのでしょうか。

何れにせよ財務省が防衛省に対しこれからどの様な姿勢で臨むのか、このレポートは予想する手掛かりになります。

Goodman80
2021年01月12日 08:47
ロッキードマーティンが米海軍に対空レーザーシステムを納入したようです。
Lockheed Martin Delivers HELIOS Laser Weapon System To U.S. Navy
https://www.navalnews.com/naval-news/2021/01/lockheed-martin-delivers-helios-laser-weapon-system-to-u-s-navy/
実用的な性能の物を、それなりの価格で実現した装置で、アーレイバーク級に搭載され、試験が行われる様です。我が国の自衛隊は此れから開発を始める様です。ゴミみたいな物を高額な開発費を掛けて、ごく少数装備する何時ものパターンになりそう。
やれやれ
2021年01月12日 11:47
財務省は親切ですね、わざわざこの様な資料まで作って説明してくれるとは。
財務省ができる官庁で防衛省は無能揃いか私腹を肥やす為に邪な心を持った売国ではないかと勘ぐりたくなります。

それと最後の噂は聞き捨てなりませんね。
三菱からの要求を押し付けたか私腹を肥やしたいのか。血税を無駄使いして何がしたいのかしっかり納得行く説明して欲しいですね。
まあけむにまくでしょうけど。
もう防衛省も財務官僚にやらせた方がマトモな組織になるのではないかと思います。
戦略、戦術、敵の戦力分析まで含めて素人の方が正解に行きつきそうです。