政府と企業の無策が企業の防衛産業からの逃避を招く。

ダイセル、今期純利益80%減に 防衛関連事業撤退で
2020/2/6付
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO55281110V00C20A2DTC000/

>ダイセルは5日、2020年3月期の連結純利益が前期比80%減の70億円になる見通しだと発表した。従来予想を145億円引き下げた。火薬など防衛関連事業からの撤退を決めたのに加え、エアバッグ用発火装置など一部の自動車部品の生産を日本と米国からタイや中国に移すことも決定した。合計で136億円の減損損失を計上する。


先日コメント欄でも指摘があったダイセルの防衛産業撤退の話です。

今後こういう企業が増えていくでしょう。次期国産戦闘機なんて夢を見ている場合じゃないかと思います。ダイセル撤退で、戦闘機の射出装置外国製になるでしょう。
コマツは既に装甲車からの撤退を表明していますが、売上の多くを占める弾薬からの撤退も時間の問題です。

企業の撤退時代は悪いことではありません。ただ長年に渡って多額の血税つぎ込んで国際価格よりも遥かに高いコストのものを調達してきたのに、その生産基盤が霧消するのは大問題です。だったら初めから輸入にしておけばよかったということになります。

本来撤退するならば事業統合や、事業譲渡でも行えばいいのですが、それができないところが殆どです。

また新規参入をするところが少ないし、それは魅力がないからです。

原因は防衛省、経産省を含めて政府がまともな防疫産業振興をやる気がないからです。メーカーの経営者も同じです。現状維持さえしていればいいと思っているのでしょう。
高度成長期ならば防衛産業はGDP(当時はGNP)に合わせて自然にグロスの売上が上がりました。ところが今は精々横ばいです。しかもネットワークやサーバー防衛、ドローなど新たな投資が必要であり、既存のメーカーへ割り振られる予算は減っています。また装備の高度化もあり、調達単価があがり、調達数は減っています。さらには高度化に伴って維持整備費が増えており、その分新規調達が減っています。

かといって防衛産業の経営者の多くは、例えばコマツなどがその典型例ですが、思考停止です。自社の防衛部門を生き残らせようという気が全くありません。
本気で考えているのであれば事業統合や買収、あるいは売却によって事業の効率化を図るべきですがそれはやらない。また売上をあげるために輸出に乗り出すわけでない。
ひたすらリクスを避けて国にぶら下がって寄生虫のような商売をして、自分が経営者である次期さえ凌げれば、後は野となれ山となれ、です。

また以前から繰り返し申し上げておりますが、防衛調達自体が世間をなめたようないい加減なシステムです。普通の国の国防省や軍隊ならば、まず、何が必要かをリサーチして、開発なり、既存の装備なりを幾つか絞って、トライアルを行います。
その後その装備が幾つ、いつまでに戦力化が必要かを示して調達期間、それに対する総予算を出して議会がこれを承認して企業と契約します。
つまり、開発費がどのくらいか、何が幾つ、どのくらいの期間で調達して、いくら掛かるかを明示するわけです。

ところが防衛省の場合、まず開発の段階でそのようなプランが検討されずに開発だけが行われます。調達も幕僚監部では内々には決めてはいますが、国会が承認しているわけでもない。
だから調達数は毎年分からない。出たとこ勝負です。毎年仕事があるかとどうか分からない。ラインを何年維持する必要があるか分からない。生産が5年で終わるのか30年かかるのかわからない。得てして引きのばしますから、事業の規模は小さくなる。

例えば5年で生産が終了し、100億円の売上が期待できるのと、毎年発注が何億円かわからず、あるいは発注がないもしれない、それで10年で終わるのか、30年かかるのかでは資金や人的資源の計画が立ちません。
だから輸入品も高くなるわけです。当然メーカーはリスクのプレミアを乗せます。

しかも官の側の指導力は皆無で、開発の経験もない担当者が装備庁は頓珍漢なことばかりいいます。まともな装備が調達できないのはメーカーよりも防衛省の責任が大きいと言えます。

これではまともな事業計画なんてつくれません。まともな会社なら防衛産業に参入しようとは思いません。だって商売じゃないもの。それが如何に異常であるか、既存の防衛産業も防衛省も、政治家も理解していません。

装備調達をまともにしたいならば、内閣府に司令塔を置いて、防衛省、経産省、国交省、総務省、文科省など関連省庁を横断的する長期ビジョンを作るべきです。それから防衛装備庁の首脳人事もすげ替えて、防衛産業以外から民間人を登用すべきです。

まずできるのは調達に際して何を、いつまでに、総額いくらかで調達するということを決めることです。それが無いとマトモな企業は参入してきません。どこでもやっている簡単なことができないならば、防衛省なんぞ潰すか、内局の外局だった防衛庁に戻すべきです。

国際価格の何倍も高いクズを漫然と調達しつづけて国費を浪費するぐらいならば、国内の防衛産業を潰して、防衛省の調達部門を廃止してどこか外国にでも頼むべきです。



Japan In Depthに以下の記事を寄稿しました。

現代の主力戦車の進化は限界 前編
https://japan-indepth.jp/?p=51241

現代の主力戦車の進化は限界 後編
https://japan-indepth.jp/?p=51261

東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿しました。

防衛記者クラブの「台所事情」何とも厳しい実態
不要不急の支出、財政破綻の危機を迎えていた
https://toyokeizai.net/articles/-/343696

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 10

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス ナイス

この記事へのコメント

通りすがりの名無し
2020年04月17日 17:12
政府の改善はともかく、企業は結局企業次第ってわけですか。やはり企業は一度トライアルに落ちたりでもしないと改善の方向にならないのかもしれません。
通りすがりの名無し
2020年04月17日 17:26
そういえば、前回の記事で96式も全く役立たずとの声がありましたが、関係して
1、82式指揮通信車、87指揮偵察警戒車も96式と同じ役立たずのか
2、96式がダメならさっさと廃棄して新しいものにすべきなのか
3、96式の置き換えに、16式を機動戦闘車としての運用をやめて、武装を外し、兵員輸送車とするのはどうか。対戦車地雷やIED、ロケランに耐えるよう改造するなど。
4、やはりIEDや対戦車地雷、ロケランに耐えうる構造でもない限り、既存を改造しようが使い物にならないのか
番号別にお答えいただければ幸いです
Masaya Hariu
2020年04月17日 20:00


「原因は防衛省、経産省を含めて政府がまともな防疫産業振興をやる気がないからです。」

「原因は防衛省、経産省を含めて政府がまともな防衛産業振興をやる気がないからです。」

「ところが今は精々横ばいです。しかもネットワークやサーバー防衛、ドローなど新たな投資が必要であり、既存のメーカーへ割り振られる予算は減っています。」

「ところが今は精々横ばいです。しかもネットワークやサイバー防衛、ドローンなど新たな投資が必要であり、既存のメーカーへ割り振られる予算は減っています。」

名指しはしませんが、諸悪の根源は軍事を盲目的に否定する輩が平気で政治家やってるからでしょう。

装備の調達は遅くても10年以内に終わらせるべきです。
やれやれ
2020年04月17日 20:17
「原因は防衛省、経産省を含めて政府がまともな防疫産業振興をやる気」
貿易産業ですね。今は防疫の方が大事ですが。

それにしても、
「先日コメント欄でも指摘があったダイセルの防衛産業撤退の話です。」
どこかに部門ごと売却しないんですかね?
射出座席以外に発射薬とロケットモーターの推進薬とか
あるようですが、ミサイルのモーターのどれくらいシェア持っているのか知りませんが、榴弾砲とかミサイルにも影響が?
部門の廃止だけなら本当に後は野となれ山となれ、知ったこっちゃ
無いですね。ダイキンとか中国化薬(中国地方の火薬)とかに
無償でも引き取ってくれないもんですかね。ついでにコマツの砲弾部門も。よく考えたら防衛装備の火薬会社、砲弾会社も一杯ありますよね。どういう棲み分けでこうなったのか知りませんが、競争原理が働いてこうなった訳ではなさそうですね。
もう全部集めて日本防衛火薬とか作ったほうが良いのでは?

「だから輸入品も高くなるわけです。当然メーカーはリスクのプレミアを乗せます。」
うちも産業用組込系の装置製造販売なので10年くらい作ってとかお客が言ってきますが、年度ごとの生産予定とか最終的に何台の製造をする予定とか最初に出ますね。あまりに長期だと部品の買いだめも必要で引取責任ありで部品在庫を抱える事もあります(場合によっては保管料も貰います)そうしないと長期供給を満たせない上に相当高くしないと赤字になりますからね。なので30年とか言われるとバカ抜かせ!となるわけです。
国が倒産しなくても付き合いきれません。全ての部品を自社で作れれば超長期供給もできるかも知れませんが、それはどんな大会社でも無理でしょう。機械部品を作るだけなら可能かも知れませんが、今やそんな単純な武器は小火器位では?
なので簡単に作れるもの以外は製造は長くても5年か10年以内で完納にして欲しいですね。数量や生産キャパにもよりますが、製造期間が短ければ短いほど安く効率的に作れます。

装備庁は1つでも民生品を開発してみれば良いと思いますよ。
腑抜けた事言っているとどこの会社も相手にしてくれないでしょう。特殊な防衛村の中にいるから世間ずれ、世界ズレしているんでしょうね。外の普通の世界は厳しいですよ。
KU
2020年04月19日 08:34
※途中で送信してしまいました。


>《独自》F2後継機、日米企業で作業部会 共同開発へ最終調整

http://www.sankei.com/smp/politics/news/200418/plt2004180010-s1.html



>日本主導の「絶対条件」が決め手 F2後継機、米との共同開発

http://www.sankei.com/smp/politics/news/200418/plt2004180011-s1.html

なんともバカな選択をしちゃったとしか...。英政府云々とありますが、そら、イギリスだってお人好しじゃないですもの。相応の見返りを求めてきますよね。産経の記者は、その程度の事すら知らないのでしょうか?
濡れネズミ
2020年04月19日 12:38
M113の後継型の装甲多目的車両(AMPV)の生産が開始される様です。

https://www.armyrecognition.com/april_2020_news_defense_global_security_army_industry/bae_systems_contract_for_engineering_and_manufacturing_development_of_ampv_for_us_army.html

陸自の共通車体と違って進展が速い気がします。
また、かなりの数を調達するだけでなく諸外国に輸出を考えている筈なので動向が気になります。
Suica割
2020年04月19日 13:42
やれやれ様へ

戦車部品とかでも、きちんと発注すれば、30年先でも作っては貰えるでしょう。
しかし、条件は短期間で一気に作るよりは悪いでしょうね。
最終的には、量産品に関わらず、単発の特注品扱いになっても仕方ない。
そんなのでは単価も安くなるはずもなく、足元見られた高価格になるのは仕方ない。
メーカーというより、ユーザーの見識の問題です。
工学や経営の素人でも分かる話ですが、最終的な生産量が同じでも、途切れ途切れに生産するよりは、最初から最後まで一括生産する方が確実に安くなります。
材料はまとめ買い効果で単価が下がる。
作業に習熟することで、生産性向上が図れる。
場合によってはさらにいいノウハウが発見される可能性がある。
それらを否定する発注だから、どうにもなりません。
ひゃっはー
2020年04月19日 23:09
>まともな会社なら防衛産業に参入しようとは思いません。だって商売じゃないもの。

「ドラゴン桜」にも「教育も商売だ」と断言する主人公と「教育を商売にするな」と反対する教師が対立する場面がありましたが、教育も防衛産業もやっぱり商売ですよね。それを認めようとしない輩が多すぎる。
ブロガー(志望)
2020年04月22日 22:53
お邪魔します。
 かつて戦争は頻繁に行われ、かつ負ければ良くて賠償金や領土、下手すれば国そのものを奪われかねなかったので、軍需産業はある意味確実な需要が見込める産業だったのです。また「短期の利潤が見込めない技術革新が可能な場所」でもありました。例えばコンピューターやインターネットは冷戦下に米中心で作られたものですし、米ソの宇宙競争が無かったらひょっとしたら有人月飛行どころか今でもホリエモンレベルだったかも知れません。しかし経済や外交を含む戦争のコスト及び高機能化他に伴う兵器開発及び調達コストが著しく増大したため、軍需の需要に陰りが生じています。またその事が「より高性能」よりも「そこそこで安く」の傾向を生み、「短期の利潤が見込めない技術革新が可能な場所」でも無くなりつつあるのかも知れません。「日本の農業は閉鎖的だと声高に叫ぶ欧米は、実は自国の農業をがっちり保護している」といった事を聞いた事があります。無論こういった仕組みはそれなりの年月をかけて構築されたものでしょう。軍需関連にもそういった仕組みはあると思いますが、日本では敗戦で全て解体されてしまったため、そこから再構築するのが難しかったという側面もあるのではないかと思われます。政府や軍と特定企業の密接な関係は「自由競争に反する」と批判され、「起こるかどうか分からない軍事・安全保障なんかより今実際に困っている人達を助けろ」という有権者の突き上げを受けて。
 余談ですが「実はがっちり保護されている欧米の農業」が事実であったとしても、昨今のコロナ禍他の経済縮小によって「金の切れ目が縁の切れ目」になるかも知れないと思ったりもします。