叙情的かつ情緒的なNHKスペシャル「ドキュメント"武器輸出"防衛装備移転の現場から」

NHKスペシャル
ドキュメント"武器輸出"防衛装備移転の現場から
http://www.nhk.or.jp/special/
再放送:2014年10月9日(木)午前0時40分~1時29分(8日深夜)

番組のURL
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2014/1005/
初回放送: 2014年10月5日(日) 午後9時00分~9時49分



 昨日の放送でしたが、堀地装備政策課長を軸に据えたことは慧眼でしょう。また、あれこれよく取材しているところもあります。
 ですが、兵器輸出を「兵器輸出ってなんとなく嫌だね」という情緒的に捉えており、全体に堀地課長の後をカメラが追っかけていくだけという叙情的な作りになっており、残念な仕上がりになっておりました。
 「武器輸出って怖いよね、ヤバイよね」的な印象操作、世論操作を狙ったようにも思えました。


 舞台はフランスの軍事見本市「ユーロサトリ」が中心でしたが、日本パビリオンがまるで政府が出しているかのように紹介されておりましたが、実は政府は一円も出しておりません。非常に誤解を受ける作りです。
 他国では政府がパビリオンを出し、出展社(特に中小企業)に出展料やホテル代・航空券代を補助するのは当たり前の話です。無論今回日本企業はそのような補助を受けておりません。

 実は制作側は「ユーロサトリ」以前にぼくに接触したかったのですが、例のNHK政治部の鈴木徹也記者の因縁問題があり、とても協力は得られないだろと諦めていたとのことです。

『記者クラブ』というシステム〜防衛省大臣記者会見後で非記者クラブ会員に圧力をかけるNHK記者の存在①
http://japan-indepth.jp/?p=1135
[清谷信一]『記者クラブ』というシステム〜防衛省大臣記者会見後で非記者クラブ会員に圧力をかけるNHK記者の存在②
http://japan-indepth.jp/?p=1135

 ぼくはそれはそれ、これはこれで、別に協力しないなんてつもりは無かったので、「ユーロサトリ」の現場ではNHKの取材チームあれこれ協力したのですが、残念ながら番組にはあまり反映されていなかったようです。

 番組ではもしかして「自社製品が人殺しに使われるも知れない」という割り切れない思いや、ミサイル部品メーカーの迷いとか、輸出元は三菱重工になるので自分たちは関与できない的な「弱者」的あるいは「被害者」的な面を強調しているように思いました。

 デュアルユース製品の問題について、番組では赤外線レンズメーカーを取材しているのですが、その会社が中国にも輸出しているというころで終わっておりました。

 デュアルユースであればまずその代表選手、ソニーを取材すべきでしょう。

 ソニーのCCD素子はベトナム戦争以来、近年のグルジア戦争やら、イスラエルの軍事行動など世界の戦場で多々使用されてきました。ソニー製品はロシアや、イスラエル、中国、セルビアなど紛争等当事国あるいは、怪しげな国に平気で輸出する国々に輸出されております。

 ぼくは「ユーロサトリ」の会場でNHKのスタッフにその顕著な実例として、セルビアのミサイルを紹介し、彼らはその映像も撮影しておりました。また多くのセンサーポッドを作っている企業は同社の製品を使っていますから、現場で取材もできたはずです。

 ソニーの本社にCCD素子の兵器転用に関して取材でもすれば、さぞや面白い番組になったでしょう。それをやらなかったのは、ソニーはNHKと共同で撮影機材などを開発しているからかなあ、などと勘ぐったりもなります。

 結果として何が言いたいのかよくわからないが、「兵器輸出怖いよね」な、番組になっています。

 我が国の兵器が他国の3~8倍もするほど高価であり、しかも市場でも実戦でも使用されていなし、開発費も試験費用も少ないので実用性が怪しい。更に言えば、装備調達予算は年々減っており、この傾向が続けば国内の軍需産業基盤がなくなるだろうということです。

 輸出が悪いというのであれば、このような現状を是とすることになります。また輸出はダメだけど輸入はOKなのでしょうか。「外国の死の商人」を肥え太らせることは是なのか、と。
 まあ、例えば悪いですが「売春」で売るのは悪くて、買うのは良いのか、と。

 それとデュアルユースに関して、日本企業にしか製造できないような製品を中国にも「汎用品」でございと売りまくるのことが是とされるのか。番組として主張すべきだったと思います。

 番組では「汎用品の輸出はなくとなくヤバくね?」的な話で終わっておりますが、輸出してOKな国とまずい国を峻別すべきというような主張をして良かったのではないでしょうか。

 まあ印象操作や世論誘導が目的ならば話は別ですけども。


軍事・航空宇宙の専門サイト始めました。
「東京防衛航空宇宙時評・Tokyo Defence & Aerospace Review」

http://www.tokyo-dar.com/


東洋経済オンラインに以下の記事を寄稿あました。

御嶽山への自衛隊派遣、口を挟むとサヨク?必要なのは事実に基づく冷静な議論
http://toyokeizai.net/articles/-/49744

戦傷者は「想定外」という、自衛隊の平和ボケ
「国内では銃創や火傷は負わない」との前提
http://toyokeizai.net/articles/-/47994

結論ありき」で高額な兵器を調達する怪
防衛省概算要求に隠された問題<前編>
http://toyokeizai.net/preview/dd9c698dc49dbfafe1fdddad129294461604ead0


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この記事へのコメント

ひゃっはー
2014年10月06日 20:12
清谷様の記事で勉強させて頂いたのですが、防衛省は「敵を知らず、己を知らず」という状況なのでしょうか。つまり、世界の戦場や防衛産業等で何が起こっているのかを知らないから、これからどこの国がどんな装備を必要としてくるのかが分からない。なおかつ、国内のどの会社が何の「汎用品」を作っているのかを把握できていない。
 これでは国内の防衛産業を振興させて、防衛装備移転三原則を遵守することなどできないでしょう。
T
2014年10月06日 22:02
私も番組見てました。
イスラエルのUAVのブースの時に相手方が、日本政府でUAVに興味がある?って確認してましたが普通なんでしょうか?
私が感じたのは制服組と一緒に行動したほうが便利ではないか?ということです。
清谷様はどうお考えですしょうか?
PAN
2014年10月06日 23:20
「武器輸出ダメダメ~」って結論に誘導しまくりの演出でしたね。特殊技術持ってる中小企業のレンズメーカーさんなんかdisるぐらいなら、キヨタニさんが指摘されたソニー以外にも、いくらでもあるのに。大体、電子部品関連とかベアリング関連とかに日本製品が多く使われているのは、周知の話だと思うのですが。

それと密着取材していた堀地装備政策課長ですが、なんかえらく軽い言動の御仁に描かれていましたね。突っ込まれそうな失言もどきもありましたし。そのあたり、意図的に軽い言動を番組で取り上げていたのか、本当のところはどうなのでしょうか?
あれだけ密着したんだから、防衛省の広報も事前チェックぐらいはしていると思うのですが、あれでよかったんでしょうかね?
2014年10月06日 23:25
まえからそのように主張しているのですが、情報にカネは使わん、というのが「我が軍」の伝統ですので中々見直しが進まないようです。
本当に戦史を勉強しているんでしょうか。疑いたくなります。
2014年10月06日 23:27
堀地課長の場合、確信犯ではないかと。
無視されるよりも少しでも話題になって議論が起こればと思ってらっしゃるのではないでしょうか。
ひゃっはー
2014年10月07日 09:30
山本七平は「日本人にとって水と安全はタダ」と言いましたが、それに「情報」を加えてもいいのかもしれませんね。だから、陸幕はウィキペディアや2ちゃんねるでタダの情報を拾ってくることはするが、現地現物を自分の目で見ようとしないし、重要人物に取材することもしないし、資料や本を買って読むこともしないんですね。
カド
2014年10月07日 13:59
 この番組観ておりました。なんかモヤモヤとした印象が残りましたね。
詳しく二週くらいに分けて放送してほしい内容ですね。
次回の更新楽しみにしております。
ブリンデン
2014年10月07日 14:19
清谷様がご指摘のように画像素子のソニーや、タフブックを作っているパナソニック、発展途上国の紛争地帯では必ず見かけるトラックを作っているトヨタや日産に取材して、デュアルユースをどのように考えているかを紹介してもらいたかったですね。

しかし、番組構成は、印象操作の感が強かったと思います。
元キャプテン
2014年10月08日 09:27
ひっゃはーさんへ

この前の論争の件、冷静さを失ったことをお詫び申し上げます。
本題に入りまして、日本人は水、安全、情報はタダだと思っているという主張に同意します。釈迦に説法でございますが、脳に入る情報の90%は目からです。例えば、犬を見たとすると目が犬と認識するのではなく、目から画像をいう情報資料が脳に伝達され、尻尾や鳴き声で犬と脳で判断します。百聞は一見に如かずという諺通りです。
周囲でも噂、伝聞、風評で判断するいい年こいた大人もいます。陸幕という参謀本部が2チャンネルやウィキペディアで情報得ているのて本当ですか?自分は現役の頃、陸幕に勤務したことないので、恥ずかしながら初耳です。3佐以上で大体CGSを出た方が、ガキの使い以下の仕事しているなんて信じられません。現役時代、仕事で陸幕の幕僚の方と電話で揉めたことあります。トンチンカンなことを要求し、こちら=現場の実態を全然知らないから。そういった体質があるのですか・・
ひゃっはー
2014年10月08日 11:25
元キャプテン様へ
あなたのような「自分の意見や主張が正しいとは一言も発言してません」と発言する人、つまり今まで言ってきたことは全部ウソです、とぬかす人の相手などしたくありません。あなたはオオカミ少年と同じです。

しかし、今までのことを謝罪して反省しているようですし、金日成の件はいずれ決着を付けるということでタダで教えて差し上げます。

その件は清谷氏が寄稿したJapan In depth やこのブログ内の記事に書いてあります。
2014年10月08日 15:07
ひゃっはー様
同じ話をしても、ものの言い方で相手に受け入れるられる場合もあるし、拒否される場合もあります。
前者であれば建設的な議論になるでしょうが後者であれば単に喧嘩を売って終わりになります。
ご自身の物言いが、自分がそのように言われたらどのように受け取るかということを考えてコメントされることをお勧めします。
チャイカ
2014年10月09日 06:26
陸幕が、現地現物を拾わず、重要人物に取材せず、ウィキや2ちゃんねる辺りを参照にしていますか?

加藤健二郎氏がボスニア内戦取材時、現地の日本大使館の防衛駐在官とのやり取りの中で、戦場で入手したNATO弾の空薬きょうを見せた所、イラン製とすぐ判別しましたから。
また、いち個人の私ですら、イランのMODLEXやDIO、インドネシアのPINDAD社等といった途上国の防衛産業にアクセスし、武器輸出カタログや価格表すら、入手出来ているのに…。

とは言え、ウィキは別としても、2ちゃんねる等は玉石混交だと思います。
もう10年以上前ですが、海外での実弾射撃体験スレの中には、タイやグアム等と言った定番だけでなく、CIS圏や中国で民間向け銃器だけでなく、RPG 7等の軍用火器すら射撃した投稿が有りました。
また、海外旅行スレだったと思うのですが、日本から遠い南西アジアや中南米等の政情不安定な国々の旅行体験談も有りましたから。
それから、旧Gun詩の読者投稿欄には、かの よしのり氏が北京で、最新の5.8ミリと9ミリの92式手槍を射撃した事例が紹介されていました。
この投稿は、非友好国軍の最新装備に関する貴重な情報であります。
これらを追えば、それなりの情報が得られるのではないでしょうか?

元キャプテン
2014年10月09日 12:42
ひゃっはーさんへ

自分が博学であるということを自慢したり、優越感に浸りたいのですね。それって、あなたが嫌っている兵器オタクや盲目の自衛隊崇拝者と同じ穴のムジナであることに気付きませんか?
記事、報告書、論文はあなたが主張しているとおり根拠があり、正確性を求められます。しかし、ブログは意見・情報交換の場所であり、コミュニケーションツールの一つです。基本は清谷さんと読者、必要に応じて読者同士の意見・情報交換します。清谷さんが何度も主張していますが、このブログは清谷さんの家に近いものであるが、公式の場ではない。しかし、一定の節度と良識を求められます。罵倒、誹謗、中傷等をしないという社会生活での最低範囲内のルールが発生します。ここは、学会ではありません。金日成は少なくとも、清谷さんのブログには触れていません。触れていないことに議論して何か価値や意味があるのでしょうか?TPOから考えて、金日成の議論は、ふさわしいのでしょうか?
自信がおありなら学会や専門誌に論文を投稿したり、著書を出版したら よろしいかと自分は思います。
ひゃっはー
2014年10月09日 14:13
自衛隊にとって情報とは行動方針を決定するための材料ではなく、すでに出ている結論を補強するための道具なのでしょう。
例えば、新設する水陸両用団は米海兵隊の縮小版でいい、という結論があるのでイギリス、スペイン、ブラジル海兵隊などの情報収集はしなくてもいいし、水陸両用車の試験も適当でいい。陸自の使う戦車は三菱に限る、という結論があるので軍事見本市に行かなくてもいい。カメラやレンズは汎用品であって兵器ではない、という結論があるので国内の中小企業が何を作っているのかを知る必要はない。なら、報告書はウィキペディアや2ちゃんねるのコピペで充分で、人脈を広げる必要はないし専門誌も読まなくていいでしょう。何しろ官は誤りを犯さずで、田母神さんは日本は文民統制よりも官僚統制の方がいい、と発言するくらいなのですから。
8月上旬にソ連軍の参戦必至、という情報を握りつぶした帝国陸軍と同じです。
多くの日本人は、米国がイラクやアフガンにどれだけ多くのCIA諜報員を送り込んでいるのかを知らないでしょう。そうした苦労なし、つまりタダでイスラム国への空爆が開始されたと思っているのかもしれません。
きらきら星
2014年10月12日 15:42
自衛隊は戦史に学んでいないのかというコメントがありましたが、少なくとも陸自は学んでいませんw
前川原や目黒で戦史教官やってる人ってだいたい出世街道から外れた人ばかり。そしてたいがい入隊前からのマニアw
防大や幹候校の戦史教育は半ばお昼寝タ~イムだし、
任官してからは業務に忙殺されて自分の仕事に直接関係しない戦史なんか勉強する暇も機会も無い。
時間作って戦史を勉強する人は入隊前からマニアだった人くらい。そんな変人はごく少数。
だ~れも昔の戦訓なんか知らない。知る必要も無い。知ってる奴はオタク、変人、エンガチョ扱い。
でもこれって日本だけの話でもないでしょう。
アメリカなんか戦力の逐次投入がどれだけ悲惨な結果を招くのかベトナムで散々懲りたはずなのに、
よくまあ見切り発車でイラク戦争なんか始めたもんだ。
アメリカでさえこうなんだから、自衛隊がスッカラでも仕方ないじゃないですか。
ひゃっはー
2014年10月14日 11:24
素朴な疑問ですが、国内の防衛省と大手防衛産業との癒着や天下りを維持した状態で、世界に武器を輸出することなどできるのでしょうか? 「この兵器は自衛隊に採用されてます」というのは、セールスポイントになるのでしょうか(笑) 清谷様の言うように、たとえ中小企業でもニーズがあって、本当にいい物を作っている所を防衛省は応援するべきですね。
チャイカ
2014年10月14日 16:58
ひゃっはー様へ。
横レス申し訳ございませんが、確かに日本の癒着や天下りは大問題です。
しかし、80年代の米軍需産業が、原潜に据付の灰皿に、800ドル(当時)と言うふざけた価格を付けたり、その他の国では、武器輸出入がらみのスキャンダルで政権が崩壊した事例もあります。
それらと比べれば、この分野での日本の腐敗だの、汚職の類は、まだまだ序の口と思われているのでは…。

また、装備調達国からすれば、供与国の国内政治事情等は重要です。
しかし、それにもまして、重要なのは、調達すべき
装備の性能と実績、補給です。
因みに現在生産中で、運用実績のある大型飛行艇はベリエフのBe-200と新明和のUS-2位ですが、インドはロシアと繋がりが深いにも係わらず、敢えてUS-2を採用しようとしています。

理由としては、US-2は、優れた性能を持ち、国産以外にも、エンジン他に西側製品を採用し、補給に問題が生じにくい事。
また、海自で、長らくUS-1系統の飛行艇が運用されている事等ではないでしょうか?

ひゃっはー
2014年10月15日 07:53
まあ、いくら官製談合や癒着や天下りをしようが、ニーズがあっていい物は「そうりゅう」のように売れるでしょう。
きらきら星
2014年10月15日 10:41
兵器輸入では供与側の政治事情も兵器の性能・運用実績も、どちらも重要な要素で、その優劣はなかなか付け難いと思います。
月並みですが結局「総合的に判断して」という話になるんじゃないでしょうか。
ひゃっはー
2014年10月15日 22:25
田母神さんは、日本は文民統制よりも官僚統制の方がうまくいく、と発言してましたけど、それって「私は近代史を知りません」と言っているに等しいじゃありませんか。そんな人が自虐史観の克服を叫んでいるわけですか。この人は論文を書いたり選挙に出る前に、まず勉強をした方がいい。

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