「いずも」級ヘリ「空母」を駆逐艦と称していいのかね?

 前回のいずも級「空母」の話ですが、護衛艦=駆逐艦で何が悪いという人が多数います。
 名称なんかどうでもいい、装備が手に入ればいいのだというのでしょう。あるいは当局、自衛隊がやっていることは全て正しい、民間人がグダグタいうな、という主張もあるでしょう。

海自最大の護衛艦「いずも」は空母か
http://kiyotani.at.webry.info/201401/article_10.html

 で、悪いのは空母保有に無理解な、政治家や、メディア、国民であると。

 ですが、ヘリ空母といえども空母を駆逐艦と称して予算を組み、国会や納税者に対しても護衛艦=駆逐艦予算を通すことは大きな問題でしょう。

 こういう言葉遊びで、実体を隠すことが常態化すると次第にエスカレーションします。
 それは次第にモラルハザードを産みます。
 例えば悪いですが、マリファナは健康にいいし、タバコよりもいいからと理屈をならべて違法にしている国が悪いのだと、自己正当化して「違法な麻薬」に手を染めると、そのうちクラックやらヘロインに手を出すようになるのと一緒です。

 空母を護衛艦=駆逐艦と称するのは国内で理解を得られても、国際社会では得られません。日本は何をするのかわからない、と不信の目で見られるようになるでしょう。防衛省にはそういう視点が欠けているようです。

 こういう思想が自衛隊の幹部に蔓延するならば、所詮政治家も、メディアも、国民も軍事には素人だ。だから我々が仕切る必要があるのだ、などと考えるようになるのではないでしょうか。
 まあ、昔もそんなことを考える輩がいて、クーデターを起したり、大陸で勝手に戦争したりしてきたわですが、挙句の果てに海外領土や資産は没収、国土は焼け野原になったわけです。


 例えば警官全員にサブマシンガンを持たせることにし、これをニューナンブの後継の「拳銃」だ、サブマシンガンは機関拳銃と呼ばれているから問題ない、と警察が言えば大問題になるのではないでしょうか。

 また陸自が10式を、重量が軽いからとか理屈を付けて「重機動戦闘車」とでも呼称し、これは戦車ではありませんから、戦車の定数内にはカウントしません、別腹ですとかいうことも可能でしょう。

 実際にかつて陸自は73式ジープの更新に際して、新排ガス規制のために「改良」型を導入すると称しました。
 ところが73式はウイリス・ジープのライセンス品、ところが「改良型」はパジェロがベースで別な車です。ですが、これを陸幕、防衛省はジープの改良型であるとして予算を要求し、財務省がオーソライズし(ぼくは取材しましたが、当時の主計官は書類に不備がないから受け入れた、と言っておりました)。
 そして新旧両方共「73式小型トラック」と呼ばれていましたが、新型の方は平成13年度納入車分から「1/2tトラック」と呼称が変わりました。

 ジープを改造したらパジェロになりました、なんということを世間でだれが信じるでしょうか。やれるというのであれば三菱自動車は魔法使いでも雇っていることになります。
 これは偽装です。国会や納税者を騙したことになります。これがまともな民主国家ならば陸幕長や内局の局長クラスの首が飛んでもおかしくない話です。ところが政治も納税者もメディアも防衛に関心が低いので問題になりませんでした。

 この話を永田町のセンセイ方に披露すると大変驚かれます。

 確かに新型の4輪車を新たに調達することにすると、手続きが極めて煩雑になるのでしょう。ですから改良型という「嘘をついてもいいよね」ということになったのでしょう。ですが、それは外部には通用しません。
 これがいいならば、次はと次はもっと込み入った手で、とエスカレートすることでしょう。
 
 陸自のUH-Xのスキャンダルなんぞ、その好例です。

 ところがこれらを関連付けて批判する報道が新聞やテレビなどのマスメディアには殆どありません。納税者の多くはこのような事実を知らずに暮らしているのです。これはメディアの
怠慢です。




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陸上自衛隊の水陸両用車の調達先は『アメリカ製』だけが候補の「出来レース」?〜水陸両用装甲車=AAV7は導入ありきでいいのか①
http://japan-indepth.jp/?p=2220
陸上自衛隊の水陸両用車の調達先は『アメリカ製』だけが候補の「出来レース」?〜水陸両用装甲車=AAV7は導入ありきでいいのか②
http://japan-indepth.jp/?p=2220
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安倍政権の安全保障軽視が露呈!やっつけ仕事の国防計画?〜安倍首相はまともに安全保障を考えていない
http://japan-indepth.jp/?p=1956
これではまるで中国政府の記者会見だ!」〜情報発信強化を謳いながら、安全保障報道で外国メディアを差別する安倍政権
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低性能でも価格は数倍から10倍の国産小火器〜住友重機が防衛省に納入していた機関銃データの改竄も露呈
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夢想的な平和主義者ではなかったネルソン・マンデラ〜武装組織への上手な処遇が生んだ安定政権
http://japan-indepth.jp/?p=1900
「軍事産業は国の財産」と演説した現実的政治家ネルソン・マンデラの死と「最後の未開拓巨大市場」南アフリカの現在
http://japan-indepth.jp/?p=1919


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陸自の水陸両用装甲車、AAV7導入は裏口入学だ
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013122500002.html?iref=webronza


日経が伝えないトルコとの戦車エンジン共同開発の真実(上)――トルコの狙いは何か?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013112500006.html
日経が伝えないトルコとの戦車エンジン共同開発の真実(下)――日本がパートナーを組むべき国はどこか?

アベノミクスで食材偽装が増える?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013111100009.html
機動戦闘車は必要か(上)――島嶼防衛にもゲリラ・コマンドウ対処にも不向き
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013103100010.html?iref=webronza
機動戦闘車は必要か(中)――脆弱な防御力
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013110100004.html?iref=webronza



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この記事へのコメント

ぽー
2014年01月09日 19:19
うーん、朝日に書いてる立場は分かるけど、朝日のしょうもない議論に「のっかってる」から
途端に論理のボロが出てしまいますな。

>日本は何をするのかわからない、と不信の目で見られるようになるでしょう。

こういうのは朝日は好きで良く書きますが、今や海外のニュースも動画で見れる時代。Izumoで検索すりゃ分かりますが、「ヘリコプターキャリアー」って大体の報道機関が報道しています。或いはDDHか。そもそも護衛艦(escort ship)って報道してるところはありません。日本国内でそう呼んでいることを報道してるところも殆ど無いでしょう。海外メディアにとっちゃどうでもいいことですからね。だから、「カイガイガー」なんて存在しないネタを書いても笑われるだけでしょう。

或いは、「海外」ってどこの国?という「お決まり」の問答になるだけ。朝日とその読者にしか通用しない論理をここに書いても無駄ですよ。

何故、そういう名称が国内で一般化しているのか?それを是正する為にはどうすべきか、を前向きに議論するような書きかたの方がよろしいかと思います。
2014年01月09日 19:38
>ぽー
権威主義ですね。朝日とか産経とかのブランドでしか物事を判断できないようですが、ぼくの主張は朝日に遙か書く前から変わっていません。
ルーフィー
2014年01月09日 20:39
おっしゃることの一部賛同しますが、問題指摘の方向性が違うような気がします。

護衛艦は、予算上は警備艦となっています。
海上警備隊のころからの名残で今もそのままです。

いやそれより自衛隊って名称のほうが護衛艦だのなんだのより問題が大きくありませんか?

国内法では軍隊ではないとしながら海外では軍隊として位置付けられてるって理屈、それこそ国外で通るわけありません。国内ですら大半は憲法のからみがあるから軍隊とは呼ばないが、自衛隊を軍隊ではない(実際、法的にも組織的にも軍隊ではありませんが…)と思ってる国民はあまりいません。
騙されてるとも思ってませんし、海外から不信がられ問題に発展してるわけでもありません。

ブログ主さんの論調で言うなら軍隊じゃないとして、戦車やら戦闘機やらミサイルやら装備してるわけですから国民、世界を欺くのもいい加減にしろとなります。
ですが、いつまでたっても自衛隊のままです。

海上自衛隊の艦艇のカテゴリー分けやや名称は、完全に内局マターです。他幕からは、ヘリ空母も護衛艦になってしまうんだからある意味うらやましいという声が少なからずあがりますが、そう決めているのは内局ですから海自に問題はありませんし、それを政治も財務省もOKしてるわけですし。騙されてると感じてる国民もあまりいないでしょう。

かといって私は今の状態が良いとはおもいません。

きちんと名実ともに軍隊にし、護衛艦と言わず駆逐艦や巡洋艦としたり、ヘリ空母としたり、普通科じゃなく歩兵とすべきです。
言葉遊びをいつまでもしてる場合じゃありません。


おひさま
2014年01月09日 21:00
初コメです。

この議論がどう転ぶのか推移をみてました。呼び方はどうでもいい、すべて「戦艦」にしてしまえ、という議論もありですからね。
それに対する清谷さんの反論は、政治の基本を踏まえたものでとても良かったと思います。

> こういう言葉遊びで、実体を隠すことが常態化すると次第にエスカレーションします。
> それは次第にモラルハザードを産みます。

政治は「言葉」によってなされるべきだ。軍事は政治によって規律されるべきだ。
民主国家が当然持つべきモラルについて、サラッと言ってのけたところがさすがだなと。
とん
2014年01月10日 02:34
 敗戦後の再軍備でそれまでの兵術語全般が失われてしまい戦記や仮想戦記などでほそぼそと生きながらえている状態なのであらゆる戦闘艦に支援艦艇を護衛艦でひとくくりにしてしまうのも仕方がないのでは。

 それに空母に名前をかえたとして、中国や仏やインド、ブラジルのから米国の巨大な10万トンのやつまでいろいろあります。一歩実態に近づくでしょうけども、新たな誤解を生みだしかねません。
第9
2014年01月10日 04:50
警察のMP5は特殊銃なので拳銃と同じ扱いをすれば問題でも数量に制限は掛かってる訳ではないので増やすのは大丈夫では?

戦闘機積んでるのに巡洋艦と言い張った国も有りますしハリヤーやF35の運用出来ても強襲揚陸艦に分類する国も有るから国外の人はあまり分類気にしないんじゃないんですか?
ゆう
2014年01月10日 08:27
国内的には護衛艦=駆逐艦ですらないのですが…予算計画上でも甲○型警備艦とか扱われてますし
そう言えばいずも型は艦隊対潜に従事するヘリを搭載するのになぜ護衛艦ではいけないのでしょうかね?
名無し
2014年01月10日 12:34
>「いずも」級ヘリ「空母」を駆逐艦と称していいのかね?

同じことを是非、キエフ級は航空巡洋艦だと寝言を言う
ロシアに言ってあげてください(笑)。
名無し
2014年01月10日 12:38
そういえば巡洋艦級のデカさの分際で
ズムウォルト級を駆逐艦扱いしている国がありましたね(笑)。
羊の皮を被った狼か、しかも実がはみ出てる(笑)。
ぽー
2014年01月10日 14:09
>ぼくの主張は朝日に遙か書く前から変わっていません。

これは失礼しました。お詫びして撤回させてください。

では、
>空母を護衛艦=駆逐艦と称するのは国内で理解を得られても、国際社会では得られません。日本は何をするのかわからない、と不信の目で見られるようになるでしょう

「国際社会が理解してない」という根拠及び、これらの名称を使うことにより、「国際社会が不信に思うようになる」という根拠をそれぞれお示しいただきたい。

国際社会は国内での呼称について、特に文句を言っておりません。というか、あまり興味を持ってないでしょう。Izumoについての評価はごく客観的に helicopter carrierと報道されています。
2014年01月10日 15:54
こういう話は日本語でいたちごっこするだけでは改善しません。主管の部署に海外向けの英訳を併記して発表させればよいのです。主管がどこであれ同じです。日本語の軍事用語も外国語を無理矢理和訳したものがあります。日本語にこだわるよりカタカナ語にしてもよいと思います。パソコン用語や各種技術用語ではお馴染みなので慣れてくれば便利かと思います。careerはキャリアーでいいのです。空母とするからヒステリーを起こすのです。そもそも空母は航空母艦のことですし、母艦という表現は救難母艦などでも使います。ちなみにパソコンや技術系の知識に慣れてくると、だんだん用語を英語のまま理解したほうが楽になると思います。日本語は仲間同士のコミュニケーションとして発達したのに対して、英語は異なる価値観の人とのコミュニケーションを前提としています。この際、陸海空それぞれの用語の定義をおさらいすべきでしょう。

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  • 軍オタ的にはいずも級は強襲揚陸艦らしい

    Excerpt: このブログでとりあげた朝日新聞のいずも級にの記事について以下の様なブログが ブロゴズあることを昨日知りました。 Weblog: 清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所  racked: 2014-01-10 15:50
  • 鉄人28号は「攻撃的兵器」か?

    Excerpt:  昨日はポール・マッカートニーのコンサートに行くはずだったのですが、中止となりました。以前のウイングス時代のコンサートに次いで二回目です。   まあ、縁がないのでしょう。 Weblog: 清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所  racked: 2014-05-19 12:14