「護衛艦」は意味不明瞭 名称を変更すべし 【追記】防衛大臣とのQ&A

 ぼくは以前から海上自衛隊の「護衛艦」という名称に反対してきました。

 海自は水上戦闘艦を概ね護衛艦と呼んでいますが、諸外国では排水量や武装などによって巡洋艦、駆逐艦、フリゲイト、コルベットなどと分類しているのが普通です。無論それぞれ国によって定義は違いますが、その水上戦闘艦がどの程度の規模のフネなのか、という認識はしやすくなっています。

 また諸外国では排水量は満載排水量を主に使用していますが、海自の護衛艦は基準排水量を基本としています。また諸外国のフネと容易に比較ができません。これはまた、恐らくは排水量を小さく見せるためではないでしょうか。

 例えばある海軍で駆逐艦5隻、フリゲイト10隻だったとして、これが駆逐艦8隻フリゲイト7隻になれば、大きいフネが増えたのだな、と分かります。つまりフネのサイズを感覚的に把握できます。

 ところがこれらをすべて「護衛艦」と一つの呼称でくくると、実態がわかりにくくなります。
 しかも護衛艦の定義すらありません。空母まで護衛艦なら護衛艦の予算で潜水艦を買うことだってできるでしょう。防衛大綱なんてあってなきがごとしです。海自は政治家も納税者も馬鹿にしているのでしょう。どうせあいつら何も分からないと。
 

 実際問題として海自の護衛艦は排水量でいえば巡洋艦、駆逐艦、フリゲイトなどに分類されます。海自はDD、DDH,DDG,DEなどと分類しているので、一応すべて駆逐艦、ということになります。DEは実際はフリゲイトと言って良いでしょう。
 これを「護衛艦」とひとくくりにしていいのでしょうか。あたご級は排水量が7750トン(米海軍のタイコンデロンガ級巡洋艦とほぼ同じ)、最新鋭のあきずき級は基準排水量が5000トン、あぶくま級は2000トンです。

 あたご級とあぶくま級では約3.9倍も違います。いわんや22DDHの排水量は19500トン、あぶくま級の実に約10倍も排水量が大きいことになります。
 これらをひとくくりで、諸外国にはない「護衛艦」という名称で呼び、基準排水量しか公開しないのは不明朗です。

 軽自動車もセダンも大型トラックも自動車とひとくくりするようなものです。
 
 しかも22DDHは自衛用の武装以外、主砲も、対艦ミサイル、対空ミサイルも魚雷発射管も装備していません。これを「駆逐艦」だいうのは詐欺です。
 例えば小野寺防衛大臣が外国を訪問して、イタリア海軍のカヴールや、スペイン海軍のフアン・カルロス1世などを「随分立派な駆逐艦ですね」と発言したら馬鹿だと思われますよ。
 
 諸外国で対艦ミサイル、対空ミサイルも魚雷発射管も装備していまない「駆逐艦」があるのでしょうか。

 わざわざ納税者からわかりにくくしているとしか思えません。

 「駆逐艦」と称して「ヘリ空母」を調達し、それも政治が追認するとなれば諸外国から文民統制の有効性を疑われても仕方ないでしょう。


 護衛艦という名称をやめるか、あるいは護衛艦の下に駆逐艦、フリゲイト、コルベット、などに分類するべきです。併せて基準排水量に加えて満載排水量を公開すべきです。

 現在の環境下では大型艦よりも、小型のフリゲイトやコルベットを揃えるべきではないでしょうか。そうすることによって数を増やすことができます。
 また海自は慢性的に人員不足ですから、艦のサイズを抑えて、その分人員を増やすということもありでしょう。例えばクルーをふた揃えすれば艦の稼働率は良くなります。

  
 実際問題として最近の護衛艦は武装は対して変わらないのに、排水量は拡大する傾向にあります。これは大綱で隻数がきまっているから、できるだけ大きな艦を揃えようという思惑も働いているのではないでしょうか。海自の将官OBの中にもこの動きを批判する人もいます。
 護衛艦の調達は随分と思考停止、思考硬直に陥っているように思えます。

 納税者への「見える化」を促進し、議論を起こすことも必要だと思います。

 まあ、海自はなし崩し的にこの次は固定翼機を運用できる空母を導入するでしょう。航空護衛艦とか言って。


平成25年7月23日小野寺防衛大臣記者会見におけるぼくと大臣とのQ&Aです。
http://www.mod.go.jp/j/press/kisha/2013/07/23.html

Q:近々進水する22DDHに関して伺いたいのですけれど、22DDHは国内ではDDHと呼ばれておりますので、ヘリコプター「駆逐艦」という認識であったと思うのですけれども、諸外国ではイタリア海軍の「カブール」であるとか、スペイン海軍の「ファン・カルロスⅠ世」などが多目的空母と言われているのですけれども、22DDHが「駆逐艦」であるならば、これら「ファン・カルロス」とか一般の諸外国の多目的空母もこれも「駆逐艦」というふうになると思うのですが、大臣はどのようにお考えですか。

A:それぞれの国でそれぞれの装備品について、どういう呼び方をするかということを決めているのだと思っています。従前から今のDDHについては同じ呼称で、今回3番艦が進水するのだと思いますが、一貫して同じような考え方でいるのだと思います。

Q:普通は、駆逐艦は砲こうとか対艦ミサイルとかそういったものを積んでいると思うのですが、22DDHはセルフ・ディフェンス用の非常に短距離の対空ミサイルしか積んでいないのです。どう考えても普通に見たら空母だと思うのですけれどもこれを「駆逐艦」と言うにはちょっと表現が過ぎるのではないかと思うのですけれども、排水量も約2万トンで、DEの「あぶくま」型の10倍あるのですけれども、これだけ10倍も排水量が違ってこれをまた「駆逐艦」というふうに言うのもいかがなものかと思うのですが、いかがでしょうか。

A:DDHは私ども一貫して「護衛艦」という形になっておりますので、おそらくそれぞれの国で艦船の呼び方がそれぞれあると思いますが、少なくとも防衛省として今までずっと一括して「護衛艦」という呼び方をしているのだと思います。




以下の記事を朝日深部のWEBRONZA+に寄稿しております。

空自のF-35は中国が導入するSu-35に対抗できるか(上)
――ロシアが売却する事情とは?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013070400007.html?iref=webronza
空自のF-35は中国が導入するSu-35に対抗できるか(中)――日本が不利な理由
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013071000011.html?iref=webronza
空自のF-35は中国が導入するSu-35に対抗できるか(下)――F-35導入の是非を再考すべき
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013071100005.html?iref=webronza


東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(1)――墜落を恐れた?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013061900007.html
東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(2)――省内の食い違い
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013062000004.html
東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(3)――難しい新規参入
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013062700005.html?iref=webronza 
東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(4)――「我が国固有の環境」とは何か
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2013070100008.html?iref=webronza

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この記事へのコメント

へろ
2013年07月23日 03:40
自衛隊を軍隊にして
日本にしかない名称である護衛艦を世界的に通用する軍艦にして、
日本政府が巡洋艦・駆逐艦・フリゲイトを区分せずに全部軍艦でまとめれば、
日本にしかない護衛艦という呼称はなくなるが、
区分がない軍艦で全ての艦船を網羅するという点では変わらないのでは?
ぽち
2013年07月23日 12:31
確か以前『世界の艦船』の誌上で、「護衛艦」という呼称は戦後の海上戦闘の実情を表していると、むしろ肯定的評価だったと記憶しておりますが
はあ・・・
2013年07月23日 13:37
 戦艦とか巡洋艦とか意味不明なので戦列艦と言えなどという主張があるとすれば、それと同レベルでしょうね。
 名前と言うのは意外とドクトリンを反映するもので、その意味でも『護衛艦』と言うのは実は意義深いものがあります。
 主観的に馴染みのある言葉じゃないからと言って反対するのはそもそも論理的でないですし、むしろ自衛隊の現実を覆い隠しかねない間違った主張だと思います。自衛隊側の邪まな下心が透けて見えているとしても、それだけを過大評価して判断するのはむしろ本末転倒です。
名無し
2013年07月23日 17:19
※護衛空母除く

憲法(馬鹿サヨ)対策なので仕方がありません。
攻撃機を支援戦闘機と呼ぶのと同じです。
でも、DDHを護衛艦と呼ぶには
自分もイラッと来ます。
ブロガー(志望)
2013年07月23日 22:49
お邪魔します。
 余談ですが米国のズムウォルト級は排水量1万トン超、15センチ砲搭載と先の大戦時の巡洋艦並みですが(魚雷に代わってミサイル?)、あれって「駆逐艦」なのでしょうか。「空母を護り、制海権を獲る」のではなく、「地域紛争等に介入する”対地駆逐艦”」(補助ロケットを使えば北朝鮮全土が射程範囲内とか)とも聞いていますが。それと最近は従来の分類には当てはまり難い(軍艦らしくない?他)軍艦が出てきたとも聞いています。
0-hi
2013年07月24日 00:09
駆逐艦 巡洋艦 フリゲート
現代では区別の定義はありません。
ロシアに至っては「航空機搭載巡洋艦」です。
無知がばれますよ
第9
2013年07月24日 05:28
タイコンデロガが巡洋艦でズムウォルトが駆逐艦の米軍ほど変では無いと思いますよ
銑鉄
2013年07月25日 23:33
ワシントン海軍軍縮条約で、戦艦や巡洋艦の排水量や搭載砲が規定されていた時代ならともかく、現代では艦種の区分は各国独自の基準ですので、大きさの判断基準にはならないかと思います。
 例えば英国海軍では艦隊防空用の長距離対空ミサイルを装備する艦が駆逐艦、個艦防空用の近距離対空ミサイルを装備する艦がフリゲートと規定されており、42型駆逐艦の前期型と23型フリゲートを比較するとフリゲートである後者の方が満載排水量が大きかったりします。ですので、護衛艦と一括して呼ぶ事もそう間違いではないと思います。
 ただ、はるな型やしらね型はともかく、ひゅうが型や22DDHも同じ護衛艦と呼ぶ事はどうかとおもいます。なにか良い呼称が無いものでしょうか。
あい
2013年07月28日 15:04
今更水上戦闘艦を戦艦巡洋艦駆逐艦フリゲートコルベットと呼び分けることに何の意味があるのやら。
「駆逐艦」の意味ご存知ないのかね?
今や語源から遠くかけ離れて、全く実態を表すのに適さなくなった名称を復活させる必要は全くナシ。
水上戦闘艦はすべて一括りに護衛艦と呼ぶ海自のほうがよっぽど合理的で、海自にしては珍しく先見性があったとすら言える。
なるほど
2013年07月29日 10:08
アメリカの原子力空母も護衛艦ですね。
カド
2013年07月29日 12:59
 まさか多国籍な合同演習で空母を駆逐艦とは表記しないでしょうね。現場の自衛官が大臣みたいな説明を他国の指揮官に説明してたら情けないです。
用語の統一化も「我が国の固有の環境」で説明するのは無理があります。いつも興味深い記事をありがとうございます。
ひゃっはー
2013年07月30日 23:11
大臣の回答を読んでると、やっぱり自衛隊って「自閉隊」なんだなと思いますね。学校や会社にそんな人がいたら、そのうち誰も相手にしなくなるのですが…
いや、清谷様の記事を読むと、健全な企業から次第にそのような扱いを受けつつあるようにも思えるのですが。でも、やっぱり「軍隊」を放っておく訳にはいきませんよね。
ノン
2013年07月31日 21:37
攻撃形空母は先守防衛外で保有できないはずです。
ブロガー(志望)
2013年08月01日 22:30
再びお邪魔します。
 「名は体を表す」と言いますが、「護衛艦」という「名」は「体(どういった軍艦か)」を表していません。ですから過去の歴史及び諸外国の海軍を参考にして、「体(どういった軍艦か)」を表す「名」にすべきという事でしょうか。
 「護衛艦」という「名」は「如何に守るか、どう戦うか」の欠落も関係しているのではと思います。

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