「正しい情報」をみにつける技法とは

「週刊東洋経済」3/9号は円安の罠、という特集をやっております。
 是非ご一読を。

 さて、同じ号の佐藤優氏の連載「知の技法出世の作法」のお題は『「正しい情報」をみにつける技法とは』です。
 佐藤氏は池上彰氏同様「新聞を正確に読み解く技法を身につければかなり『正しい情報』を身につけることができる」としています。
 
 これは軍などの情報機関が昔から行っていることです。CIAにしても外国の雑誌や新聞をひたすら読む分析員をかなりの数抱えています。情報機関の情報収集の基本はエスピオナージではなく、このような公開情報を丹念に、長年にわたって読むことが根幹になっています。
 また佐藤氏は以下のように書いています。
 
 『池上氏の説明は、教科書や新聞に書いている通説ばかりで、深みがありません。もっとディープな情報を知りたいのです』ということを言う人がよくいるが、このような発想の人だといつまでも情報力が身に付かない。深く専門的な情報は、教科書に書いてある通説を熟知している人しか得られないのである。耳学問でいい加減な知識しか持っていないと、大きな誤りを犯すことがある。 

とのべ、日本の外交官が宗教改革はイタリアから始まったとかの、珍説をテキストに残している、日本の外交官のレベルを低さを嘆いています。

 同じ媒体を根気よく購読を続けるという作業は我々ジャーナリストや評論家でも必須の行為です。それのようなベースがないと、価値ある取材もできません。加えていえばその分野の専門書を継続して読むことが必要です。これはプロでもアマでも同じです。
 普段から木ではなく、森を見ることを身につけておかないと「木」を見たときに勘違いをしたり、誤った解釈をすることがあります。

 アマチュアのブログでも読む価値があるものは、そのような技術やスキルを持っているであろう、という人達のものです。
 
 
 無論佐藤氏は新聞を無批判に読めといっているわけではありません。「新聞を丁寧に読む解く」とは新聞を盲信することではありません。例えば日経などは一面に飛ばしの記事が多いし、軍事関係でも何度も間違いを犯しています(指摘しても認めないし、担当記者やデスクの名前さえ教えません)。

 日経は後ろから読め、下から読めとよく言われます。一番下は広告でこれは日経が取材している記事ではありません。ついて、あるのが雑報です。これは文字数が少なく、通信社からの情報も多いので日経の記者の恣意的な情報が混じる可能性は低い、ということです。
 また新聞によって傾向や論調も違います。

 それにしても情報という川の流れを掴むという意味では新聞に限らず、同じ媒体を根気よく購読する必要があります。特に専門分野の包括的な知識、相場観を養うのに必要です。
 面白いな、と思った情報が信頼に足りるか、足りないかという勘も養われます。

 ある意味ぼくらの書いている記事というのは海面にでた氷山ようなもので、その下には更大きな氷の塊があるわけです。その最もボトムにあるのが、資料の継続した購読ということになります。
 ですが、得てして読者はその水面下は存在しないと思いがちです。
 

 ネットの発達した現在、アマチュアでもかなりの情報を瞬時に集められます。またプロとの情報格差は格段に縮まっています。これは事実です。また公開情報だけによってかなりのレベルの記事を書くことができます。これまた事実です。実際によく書けており、非常に参考になるシロウトのブログも多数存在します。


 ですが、その一方、根気よく媒体購読をすることなく、ネットによって「全能感」をもった人物が間違いを犯すことも増えています。
 一番多いのは自分の信じたいことがドグマ化し、これを正当化するためにネットで拾ってきた都合のいい情報を継ぎ合わせて持論を補強します。しかも願望や想像までも脳内で事実に変換したりするのでたちが悪い。

 人間は信じたいものを信じるという習性があります。情報を扱う人間はこの習性を自制する必要があるし、情報はまず疑うという姿勢が必要です。
 ですが、ドグマに都合のいい情報を貼り付けた論というのは得てして、「フランケンシュタインの怪物」化、つまりトンデモになりやすい傾向があります。

 まあ下世話な例をあげるとAKB48の誰それはうんこをしない。何故ならばそのようなエビデンスはネット上に存在しない、なんてものです。

 昔パリのリヨン駅のトランブルーというレストランで、ある評論家と食事をしました。映画ニキータで使用されたレストランです。
 彼はドアに☆のマークが4つほど並んでいたのでこのレストランをミシュランの星付きと勘違いしました。確かにトランブルーは内装はゴージャスですが、星付きのレストランではありません。ミシュランの星は3つまでです。レストランの格を示すのは、ナイフとフォークをクロスしたマークで、これは5まであります。
 これはフランスに住んでいたり、何度も行って現地の事情を肌で知っている人間ならば間違えないことです。
 
 これなんぞも、普段から一定の情報せず、初めて体験して起こる典型的なミスです。初めての場合、自分の知識を動員して分析することになりますが、それは得てしてこのようなミスを生みます。

 ところがネットで万能感をもった人間は先のレストランのケースでもレストランのドアに星のマークがあった、だから自分は正しいのだと強弁します。


 たちが悪いことに、この手の人達は自論こそ唯一絶対であり、違う意見を言うものは全て異端であるというような「宗教化」し易いことです。得てしてこの手の人達のブログやツイッターでの発信の目的は、真実や知的好奇心の追及ではなくて、認知欲求や自己愛、自己承認欲求、自尊心の充足だったりします。

 真実の追及よりも自分を偉く見せること、自分の万能感を満たすことが目的になっています。
 よくあるのがプロを貶めることにって、相対的に自分を持ち上げる行為です。別にプロが正しいというつもりはありませし、プロが間違えないともいいません。批判されても仕方ない仕事をしているプロいます。
 ですが、だからといってプロを貶めても自分の能力が向上したり、知識が増えたるすることわけではありません。
 
 
 アベノミクスだってプロの世界でも甲論乙駁があります。プロに対する批判はあって然るべきです。

 例えばTVでプロ野球の試合をみながら、監督の采配にあれこれ文句を言い、「オレならもっと上手くできる」と言う人がいます。ですが、実際にプロの試合の采配をやらせて本当に勝てるんでしょうかね。


 文献購読をベースにした上で、人脈をつくり情報を集め、キーパーソンに取材し、裏もとった記事でもそれを、ウィキペディアなどのネット情報を元に否定されることがあります。また自分の推理や計算によると、それはあり得ないとか言う人もいます。

 例えばある兵器開発プロジェクトの中心にいた人物の証言よりも、ネットで集めた自分の情報、自分の推理や計算や分析が正しいと主張します。

 それが本当ならばその人は最先端の兵器のプロジェクトの当事者よりも優れた能力があり、また同じような兵器開発の現場で相応の活躍ができることになります。

 軍事の場合、ソースを出せないことが多いので、ぼくは信じない人は信じなくなくてもいいと思っています。
 ですがこの手の人達に限って「ご自分が信じるものを信じては如何ですか」というと怒ります。自分の主張こそが正しいと認めろというわけです。処置ありません。

 最近一つ疑問に思うのはネット上での匿名性です。
 ぼくは基本ネット上での匿名を尊重します。それは匿名でこそできる情報発信や議論があるからです。
 
 ですが匿名のブログなどで相手の名誉を著しく傷つけた場合どうでしょうか。

  
  先述のように現在のネット社会ではプロアマの格差が縮んでいます。それは発信力においても顕著です。自分はプロよりも優れているのだと主張されるのは自由です。でも何らかの責任が生じた場合には、自分はアマチュアですから責任は取りません、というのは卑怯なような気がします。
 

 またこれはという動かぬ証拠を突きつけられても、訂正も謝罪もしない人もいるようです。

  プロではなくても書き手としての責任が存在すること、また場合によっては責任をとることを覚悟、リスクが存在することがあまりに軽視されているようにも思います。
 発信力がプロ並みなった、自分はプロ並みのものを書けるというのであれば、責任もプロ並みに負うべきです。

 情報を扱うということはそれ自体リスクを伴う行為なのですが、そのことがあまり認識されていないようです。
 あまりに無邪気にネットで情報を発信する人、権利ばかりを主張し、義務を忘れている人が多いように思えます。
 それがネット上での無法を招いていると思います。 
 


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この記事へのコメント

unimaro
2013年03月09日 17:33
お疲れ様です。
対象はどこですか~?おしえてくださいよー♪
SNK22
2013年03月11日 07:23
本当に、そのとおりだと思います。だからこそこのブログももう何年も読み続けているんでしょうね。そういうところできちんとしたものの見方を養わせていただいたからこそ自分もAmazonレビューを書いたりもできるようになったのだと思っています。
ノン
2013年03月14日 17:23
ユーザー側からすればプロもアマも関係がないものです。
欲しいのは中身であって外側は別にいらないな・・・
責任問題についても責任って言う人に限って責任って取らないと思います。
本人の希望的観測で言ってて
実際には飯のたねが失ってしまうから・・・



ブロガー(志望)
2013年03月17日 08:44
お邪魔します。
 確か韓非子が「正論を言うのは難しい事ではない、難しいのは正論を相手に理解させ受け入れさせる事である」といった事を言っていました。「当事者本人でも、先生や上司でもない人間に、頭ごなしに間違っていると言われて、はいそうですかと言えるのか」これは「正しい知識」以前の問題ではないかと思います。自分は中学生の頃「人工衛星は重力と遠心力が釣り合って」と言ったら理科の先生に「遠心力などという力は無い」と言われた事があります。

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