南アフリカに学ぶこと
昨日から南アフリカの首都、プレトリアに来ています。
軍事・航空ショー、AAD2012の取材です。
昨日朝到着後、荷物を置いて軍事博物館と空軍博物館に行ってきました。
今日(日本時間ではもう昨日ですが)、AADのプレ・プレスツアーに参加しました。
写真は空軍博物館にあった、耐地雷装甲車ブルドッグです。これは軍用トラック、サミル20の駆動系を流用したもので、ほぼ同じもので、ウニモグの駆動系を使用したものはブッフェルと呼ばれています。
これらは70年代に登場し、後の南アの耐地雷装甲車輛の方向性を決定づけた車体です。トラックの駆動系を流用し、V字型の耐地雷式の底部をもった耐地雷装甲車は画期的でした。
駆動系は装甲の外部にレイアウトされ、蝕雷時には吹き飛ばされます。ですが、乗員の命は守られます。吹き飛ばされた駆動系は容易に交換できるように、モジュラー化されています。普通の装甲車ならば駆動系も装甲の中に収めるのですが、敢えて外付けにして壊れることを前提に設計されたわけです。
当時の南ア陸軍は非対称戦、特にあちこちに仕掛けられた地雷に苦労してきました。
ですから、一見怪異にみえるデザインも極めて、実用的でニーズに合っていました。実際この手の耐地雷装甲車が導入されて以来、南ア陸軍の被害は目に見えて減りました。
ぼくは90年代初頭から先進国でもこの先、地域紛争やPKOなどでこの種の耐地雷装甲車が絶対必要になると主張してしましたが、当時はあまり賛同は得られませんでした。が、イラクやアフガンではこの種の耐地雷装甲車を祖とするMRAPが大量に投入されています。
このようなその国の環境に特化した装備は時に必要です。
ですが、翻って我が国の場合、わざわざ他国にない隙間を見つけて、そこに合致するような装備を開発します。
であれば、他国に無いから国産開発する必要がある、という理屈です。
ですが、その必然性が極めて怪しいものが多数あります。昨今問題になっているUH-Xもその一つです。他国にあまり同じような機体がありませんが、それほど陸自のヘリ運用が特異なわけではないでしょう。
また陸自や川重はUH-Xを民間に売り出すといいますが、そのような需要の少ないクラスのヘリを使いたいユーザーはさほどいないでしょう。
もういい加減に、他国にないものを大金を掛けて無理やりつくることはやめるべきです。
ろくな基礎研究費も掛けらないし、調達単価が高くなるので例えば本来7年で100必要な装備が、20年経っても揃わない。しかも時間がかかりすぎて、50とか、60しか揃わず、途中で新世代の装備が導入されて、3世代の装備が同居する。装備の開発、配備に時間の概念をしっかり入れるべきです。
本来5年後に必要な装備が20年後に揃っても意味がありません。まして100必要なものが50しか揃わないのでは尚更です。
実戦の厳しさに晒されながら装備調達・開発を行ってきた国々のケースをもっと真摯に研究すべきです。
で、きれいどころの登場です。
これはショー開催に先立った、南ア兵器メーカー、パラマウント社のプレス向けの新装甲車発表です。随分な派手な演出ですが、今日日こんなバブリーなプレゼンを行うなんて、かなり儲かっているのでしょう。
軍事産業は構造不況産業ですが、儲かっているところは儲かっているようです。
朝日新聞、WEBRONZA+に以下の記事を寄稿しております。
【UH-X官製談合疑惑と日本のヘリメーカーの病巣(1)】 国営企業的体質?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012090700002.html
【UH-X官製談合疑惑と日本のヘリメーカーの病巣(2)】 問われる調達計画
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012091000008.html?iref=webronza
【UH-X官製談合疑惑と日本のヘリメーカーの病巣(3)】 単価は妥当か?
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012091300014.html
清谷信一.【UH-X官製談合疑惑と日本のヘリメーカーの病巣(最終回)】 防衛省は意識変革を
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012091400007.html?iref=webronza
【国産哨戒機P-1の開発は中止すべきだ(1)】 高すぎるコスト
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012090400012.html
【国産哨戒機P-1の開発は中止すべきだ(2)】 安価なP-3C近代化
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012090500007.html
さて防衛調達問題を知るためにいかがでしょうか。
関連記事
川崎重工 UH-X官製談合疑惑 技本の存在意義はありや?
http://kiyotani.at.webry.info/201209/article_9.html
川崎重工 UH-X官製談合疑惑 防衛省、来年度予算でUH-X予算要求を断念
http://kiyotani.at.webry.info/201209/article_8.html
川崎重工 UH-X官製談合疑惑 川崎OH-1は名機か
http://kiyotani.at.webry.info/201209/article_7.html
UH-X 談合疑惑 ニート・ヘリメーカー、川崎重工が日本のヘリ産業を潰す日
http://kiyotani.at.webry.info/201209/article_6.html
川崎重工 UH-X官製談合疑惑と報道機関の姿勢について
http://kiyotani.at.webry.info/201209/article_4.html
陸自のUHX
http://kiyotani.at.webry.info/201202/article_1.html
川崎重工 企画本部 西野光生広報部長、 長谷川聰取締役社長に対する公開質問状その8
http://kiyotani.at.webry.info/201209/article_3.html
川崎重工の品格 UH-X官製談合疑惑
http://kiyotani.at.webry.info/201209/article_2.html
川崎重工 企画本部 西野光生広報部長、長谷川聰取締役社長に対する公開質問状その6 XC-2
http://kiyotani.at.webry.info/201207/article_20.html
川崎重工 企画本部 西野光生広報部長、長谷川聰取締役社長に対する公開質問状その5
http://kiyotani.at.webry.info/201207/article_19.html
川崎重工 企画本部 西野光生広報部長、長谷川聰取締役社長に対する公開質問状その4
http://kiyotani.at.webry.info/201207/article_18.html
川崎重工 企画本部 西野光生広報部長、長谷川聰取締役社長に対する公開質問状その3 MCH-101
http://kiyotani.at.webry.info/201207/article_17.html
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http://kiyotani.at.webry.info/201207/article_15.html
川崎重工 企画本部 西野光生広報部長、長谷川聰取締役社長に対する公開質問状その1
https://bblog.sso.biglobe.ne.jp/ap/tool/newsedit.do
川崎重工広報部の見識
http://kiyotani.at.webry.info/201206/article_2.html
川崎重工、橋梁部門から撤退検討
https://bblog.sso.biglobe.ne.jp/ap/tool/newsedit.do
陸自UH-Xが日本のヘリ産業を潰す
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_21.html
C―2の重量超過問題と空自の隠蔽体質について
http://kiyotani.at.webry.info/201103/article_6.html
【ファンボロー航空ショー3】日本の航空機メーカーは商売をする気があるのか?
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写真は空軍博物館にあった、耐地雷装甲車ブルドッグです。これは軍用トラック、サミル20の駆動系を流用したもので、ほぼ同じもので、ウニモグの駆動系を使用したものはブッフェルと呼ばれています。
これらは70年代に登場し、後の南アの耐地雷装甲車輛の方向性を決定づけた車体です。トラックの駆動系を流用し、V字型の耐地雷式の底部をもった耐地雷装甲車は画期的でした。
駆動系は装甲の外部にレイアウトされ、蝕雷時には吹き飛ばされます。ですが、乗員の命は守られます。吹き飛ばされた駆動系は容易に交換できるように、モジュラー化されています。普通の装甲車ならば駆動系も装甲の中に収めるのですが、敢えて外付けにして壊れることを前提に設計されたわけです。
当時の南ア陸軍は非対称戦、特にあちこちに仕掛けられた地雷に苦労してきました。
ですから、一見怪異にみえるデザインも極めて、実用的でニーズに合っていました。実際この手の耐地雷装甲車が導入されて以来、南ア陸軍の被害は目に見えて減りました。
ぼくは90年代初頭から先進国でもこの先、地域紛争やPKOなどでこの種の耐地雷装甲車が絶対必要になると主張してしましたが、当時はあまり賛同は得られませんでした。が、イラクやアフガンではこの種の耐地雷装甲車を祖とするMRAPが大量に投入されています。
このようなその国の環境に特化した装備は時に必要です。
ですが、翻って我が国の場合、わざわざ他国にない隙間を見つけて、そこに合致するような装備を開発します。
であれば、他国に無いから国産開発する必要がある、という理屈です。
ですが、その必然性が極めて怪しいものが多数あります。昨今問題になっているUH-Xもその一つです。他国にあまり同じような機体がありませんが、それほど陸自のヘリ運用が特異なわけではないでしょう。
また陸自や川重はUH-Xを民間に売り出すといいますが、そのような需要の少ないクラスのヘリを使いたいユーザーはさほどいないでしょう。
もういい加減に、他国にないものを大金を掛けて無理やりつくることはやめるべきです。
ろくな基礎研究費も掛けらないし、調達単価が高くなるので例えば本来7年で100必要な装備が、20年経っても揃わない。しかも時間がかかりすぎて、50とか、60しか揃わず、途中で新世代の装備が導入されて、3世代の装備が同居する。装備の開発、配備に時間の概念をしっかり入れるべきです。
本来5年後に必要な装備が20年後に揃っても意味がありません。まして100必要なものが50しか揃わないのでは尚更です。
実戦の厳しさに晒されながら装備調達・開発を行ってきた国々のケースをもっと真摯に研究すべきです。
で、きれいどころの登場です。
これはショー開催に先立った、南ア兵器メーカー、パラマウント社のプレス向けの新装甲車発表です。随分な派手な演出ですが、今日日こんなバブリーなプレゼンを行うなんて、かなり儲かっているのでしょう。
軍事産業は構造不況産業ですが、儲かっているところは儲かっているようです。
朝日新聞、WEBRONZA+に以下の記事を寄稿しております。
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【国産哨戒機P-1の開発は中止すべきだ(2)】 安価なP-3C近代化
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http://kiyotani.at.webry.info/201103/article_6.html
【ファンボロー航空ショー3】日本の航空機メーカーは商売をする気があるのか?
http://kiyotani.at.webry.info/201007/article_9.html
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