川崎重工 企画本部 西野光生広報部長、長谷川聰取締役社長に対する公開質問状その5

 海自が現用哨戒機、P-3Cの後継として開発している哨戒機、P-1は開発が難航を極めています。機体は勿論搭載機器も同様です。既にご案内のように、NECが開発してきたソノブイのデータ処理システムは数十億円の開発費をかけましたが、開発に失敗、カナダ製のシステムを沖電気がライセンスする方向で話が進んでいます。
 
 ところがNECそれも採用し、それぞれにパッシブ・アクティブのソナーのデータを振り分けよう、という「大人
の話」も進んでいるといいます。それが本当ならばとんでもない話です。しかもカナダ製のシステムも何故に輸入ではなく沖電気によるライセンス生産になるのでしょうか。
 輸入の方が安いのに。

 さて、P-1の機体ですが、やはり強度に問題があるようです。ぼくの取材した範囲では、試作機毎に鬼のような
設計変更があり、ベンダー、下請けは大変だそうです。

 そもそもP-1を開発する必要があったのでしょうか。
 海自はP-3Cが寿命だということを理由に開発を決定しました。ですが、それは事実ではありません。実際に他国では今後もP-3Cを使い続ける国は存在します。
 搭載システムを改良すれば依然、現用機として使用が可能です。

 実際問題、海自もP-1の開発を受け、P-3Cの近代化を開始しました。これによって6,000時間の寿命延長が可
能とのことです。

 P-3Cをライセンス生産した川崎重工は果たして、正しいデータを防衛省側に出したのでしょうか。
 
 P-3Cは近代化すれば寿命は大幅に伸びます。メーカーであるロッキード・マーチンも近代化案を提案していま
す。主翼桁を交換すれば機体寿命はかなり伸びます。また主翼を新造すれば期待寿命は新造機体に近い機体寿命を得ることができます。
 
 ところが海自では主翼桁の交換不可能であり、主翼の交換は新型哨戒機よりも高価だ、P-1開発の方が安いと、結論づけました。

 ところが同じ時期に、米海軍ではP-8までのつなぎとして主翼桁の交換なども行い、15,000時間の寿命延長を行いました。在日米軍の機体に対するその近代化は日本飛行機が行いました。これがP-1の単価よりも高い、という話は聞いたことがありません。機体単価にプラスして初度費、研究開発費を載せれば尚更です。
 なお、同社は2002年に川崎重工の子会社となっています。

 機体メーカー以外だとライセンス料をとられたりするのでコストがあわないほど高額になるという話があります。
それは嘘です。実際に日本飛行機の例からもわかるでしょう。また今月の「エアワールド」に記事が出ていますが、カナダのメーカーがP-3Cの主翼交換ビジネスをやっております。これも海自が主張するような高額なものであればビジネスとして成立しないでしょう。

 例えばC-130の近代化はボーイングやトルコのTAI、イスラエルのIAIなどが行なっております。またF-16のアップグレードビジネスにはBAEシステムズが参入し既に米空軍州兵の機体を近代化し、他国にも同様の提案を行なっております。
 
 しかも我が国のP-3Cは80年台から調達が開始されており、米海軍用よりも機体がかなり若いという事実もあります。
 その上予算の不足で共食い整備で飛ばない機体はあるし、定数より10機多い機体はそのまま維持してローテーションで回しています。つまりこの点からも機体の寿命はあるということです。

 ぼくはP-1の開発は中止すべきだと考えています。P-3Cの近代であと15~20年は乗り切るべきです。その間に代用機の調達を考えれば宜しいでしょう。

 P-1を導入すると、単価の高騰もあり、仮に60機導入するなば一年に4機調達するとしても15年はかかります。 値段が高いので、一気呵成に更新は不可能です(恐らく財務省が許すのは40機程度ではいでしょうか)。
 2~3機程度のレートが現実的でしょう。毎年2機であれば30年かかることになります。当然、終わりの方の機体が完成する頃には、兵器としては旧式化し、初期の機体は用途廃止になる可能性大で、かりに40機の調達がされても全機が揃って運用できる期間は極めて短くなるでしょう(防衛省ではP-1の運用期間は20年と見込んでいます)。

 ということは、今後20年程度P-3CとP-1が共存することになり、訓練や兵站が二重になりコストがかかります。
 当然ながらその間「寿命がない」というP-3Cの延命化のための予算も必要です。
 
 しかも機体、エンジン、システム全て専用であるP-1の維持費はかなり高価になります。ご案内のようにP-3Cですら整備予算が足らずに稼働率が下がっています。 
 P-1が導入されば整備は更に整備費が削減され、稼働率がP-3Cよりも落ち込むことが予想されます。

 このような状態と、P-3Cの近代化ではどちらがより高い戦力を維持できるのでしょうか。


 当ブログに寄せられた情報では、防衛産業では派遣社員の引き入れによる労務費の圧縮と利ザヤの搾取という現実があるそうです。
 派遣社員分も官からは社員と労賃をとり、差額を会社が経費、利益等に計上しているそうです。見積には外注比率等は計上なし。今度この話も関係各位に対して確認してみようと思っております。


  質問
  5-1
  P-1開発に際してP-3Cの近代化関して川崎重工は見積りなどに関わったのか。
  関わったとするならば、何故、新規開発よりも主翼桁、主翼交換が高価になるのか。

  5-2
  何故米海軍機では行えた主翼桁の交換が不可能なのか。  

  5-3
  P-1の頻繁な設計変更によって、下請け企業の負担が増えていると聞いている。
  設計変更にかかったコストはどの程度川崎重工が負担しているのか、下請けイジメという形で下請け企業に
  コストを押し付けてはいないか。

  5-4
  米海軍の近代化改修では機体寿命が15,000時間に対して、海自の6,000時間と短いのは何故か。

  5-5
  防衛省に要求する労賃は賃金の高い正社員も、賃金の安い派遣社員も同じ金額を請求しているのか。
 
  5-6
  「平成23年度ライフサイクルコスト管理年次報告書」にはP-1のライフサイクルコストにおいて初度費が計上されていない。川崎重工は初度費の請求を辞退するのか。

朝日新聞のWEBRONZA+に以下の記事を寄稿しております。
ファンボロー航空ショーで米国がオスプレイを公開した意図とメディアの問題
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012072000011.html
オスプレイの安全性を客観的に分析し、自衛隊の採用も検討すべきだ
http://astand.asahi.com/magazine/wrpolitics/2012072100003.html


 
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C―2の重量超過問題と空自の隠蔽体質について
http://kiyotani.at.webry.info/201103/article_6.html

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http://kiyotani.at.webry.info/201007/article_9.html



 



 

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この記事へのコメント

トライ
2012年07月28日 00:17
装本の契約情報によると海自P-3Cの寿命延長改修は、1機約10億円の投資らしい。川重は改修を100%子会社の日飛に丸投げし利益を吸い上げるだけ。外注化により税金の無駄遣いを圧縮するとともに、リソースをP-1とC-2の玉成に充当するためのはず。ところがまた多用途ヘリに手を出し中途半端な機体を開発することに。川重より富士にやらせばいいものを。なぜ川重・・・
K
2012年07月28日 20:56
カナダの哨戒機ってP-3の派生型が20機程度。対潜装備していない機体もあるようだし、独自開発して採算が合うのだろうか?カナダ政府から高額補助が出ているのか?
トライ
2012年07月29日 01:07
川重はC-2、P-1の開発が完了していない段階、いや失敗したと言えるのに、多用途ヘリ開発を手したが、何故であろうか・・・。同社は50数年前KV-107の導入に成功し、BK-117の開発、CH-47導入で足場を固めたが、OH-1は失敗しそしてMCH-101支援のお粗末さなのに。原子力村と同じようにマル防村があるのかな。
GG
2012年07月29日 14:06
>主翼桁の交換不可能であり、主翼の交換は新型哨戒機よりも高価だ、P-1開発の方が安いと、結論づけました。

清谷先生、この部分について、当時の防衛庁がどこで言及しているのか、教えていただけないでしょうか。
当時の防衛庁が近代化改修や延命について、どのような視点で評価や試算を行ったかが非常に気になります。防衛庁が直接そのような言い方をしていたならば資料の提示を、清谷先生の判断ならばどのような資料・取材からそのような結論を出したのかという過程を教えて頂けないでしょうか。
unimaro
2013年02月15日 21:56
天下り先確保につながらないから。

>ライセンス生産になるのでしょうか。
 輸入の方が安いのに。

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