円高は悪というメディアの妄信
過剰利得への沈黙2010年10月21日0時0分 http://www.asahi.com/business/topics/column/TKY201010200483.html
未だに多くのメディアの報道の基調は「円高が悪い。円高のせいで不況とデフレが悪化している」というものです。ですがそれはこのコラムのように世迷い言に過ぎません。
今世紀に入ってからリーマンショックの一年ぐらい前まで割合に円安基調が続き、輸出企業は絶好調でした。前世紀末輸出はGDPの約10パーセント、個人消費は約60パーセントだったのに、現在では輸出はGDPの約1割五分、個人消費は55パーセントにまで上がっています。
ですが、その間も多くの日本人は好景気感を感じていませんでした。つまり円安で輸出企業が儲かっても景気は良くならなかったわけです。
その辺りのことは「デフレの正体 経済は『人口の波』で動く」で実際の数字を挙げて説明しています。この本ではマクロ経済屋の人達の通貨供給が増えればデフレは退治できるという主張は妄言であるとしています。日下公人氏の「デフレ不況の正体」も合わせて読むことをお勧めします。
先週も月例の日下氏の勉強会にいっていたのですが、勉強会の前に雑談でも「マクロ経済屋」が如何にミスリードをしているかという話を伺いました。
メディアは円高で困っている企業ばかりを紹介します。特に零細な町工場などが紹介されます。ドルが一円上がるといくら損するという奴です。
ところが反面、一円上がると何十億、何百億と儲かる企業もあるわけです。
石油元売りやらサイゼリヤとかユニクロとか、ブランド品の日本法人とか。ところがメディアはユニクロの柳井社長の所にいって「社長、一円円高になると御社はいくら儲かりますか」と、いうようなインタビューは載せません(取材を拒否されているかもしれませんが)。
零細企業でも輸入で得をしている企業は多数あります。それは報道されない。
結果として不況感を煽ることになって、GDPの55パーセントの個人消費を冷やしています。円高よりもメディアの不況連呼の方がよほど景気を悪化させていると思います。
しかも、その結果広告費が削減されますからメディアの広告収入も大きく減じています。自業自得ですが、それでも不況を煽るアジテーションを止めません。馬鹿なんじゃないでしょうか。
恐らく80年代までの高度成長期が忘れられないのでしょう。ですがあのようなある意味異常な時代は帰ってきません。デフレの現状で極端な円安になれば輸入業サービス業が大打撃を受けます。消費者はものを買ってくれませんから、消費者に値上がり分を引き受けてもらえません。少し前に食品や石油が高騰した時、多くの企業が価格を消費者に転嫁しようとして、結果売り上げを大きく減らしました。
それから零細企業というと町工場ばかり紹介されますが、実際はサービス業の方が圧倒的に多いし、従業員数も多いわけです。結果製造業の振興ばかりが話題になります。商店や理髪店、ラーメン屋を振興しようという話はあまり聞きません。
零細製造業にしても「痛くない注射針」を開発した、岡野工業みたいな景気のいい会社もあります。こういう技術を磨き、大企業の下請けに甘んじない企業や、世界的に大きなシェアをもっており、円高でも利益を上げている企業があるのですが、メディアはあまり紹介しません。
人口(特に労働人口)が減り続けている現在、通貨供給量を増やせばあるいは、公共事業をジャブジャブやれば景気が良くなるいうのは実際の経済活動から100万光年離れたところにいる理論屋の幻想に過ぎません。
科学技術でもそうですが、理論や実験室で可能な手法は、実際の工業の現場でそのまま使用できません。実際の工場では実験室のような理想的な環境で製造はできません。硫酸みたいな単純なものでも、実験室と工場では材料も製法も異なります。
「デフレの正体~」の著者は海外から観光客を大量に呼び込めと主張しています。サービス産業が潤うからです。ぼくも賛成です。例えば売春特区をつくるのも一案でしょう。ドイツやオランダで売春は合法です。
何しろ世界的に我が日本女性の人気は非常に高い。性風俗産業の洗練も有名です。何しろ戦前の無声SF映画「メトロポリス」でもヨシワラ・シティーなる歓楽街が出てくるほどですし、「ゲイシャ」とセックスしたいという外国人男性は多数です(ホント、嫌になるぐらい)。
ところが概ね日本の性風俗は外人お断りです。
そこで特区を作り、そこで外国が出来る「社交さん」(一部のソープランドでは自由恋愛の好きな女の三助さんをこう呼びます)やボーイさんを揃え、お客に遊び方を教えて外国人観光客を呼び込んでは如何でしょうか。ソープランドが目当てで日本で国際会議や見本市を開催しようという運びになるかもしれません。
日本の風俗のシステムを海外にフランチャイズで輸出することもできるでしょう。また自動車や鉄鋼をつくるより遙かにエネルギー消費が少ない産業でもあります。
こういう提案をすると真面目な方々からはお叱りを受けたりしますが、発想の枠を狭めても新しいアイディアは出てきません。
またサービス産業振興のためにはここで何度も取り上げていますが、家主とテナントの権利関係を法的に整備し、違反があれば行政が介入して法を執行するようなシステムが必要です。
現状では店舗や事務所を借りる際の保証金は極めて高いわけです。20ヶ月とか平気でであります。しかもこれが供託金でないので返ってくる保障がないわけです。
高額な保証金は企業の運転資金を圧迫します。利益も減らします。特に創業間もない企業が軌道に載るための運転資金が減じられて、倒産の可能性が高くなります。これはサービス産業の収益の悪さと従業員の賃金の低さの原因となっています。
なぜこのようなシステムになっているかというと、テナントが支払いもしないで居座っても、追い出すためにには多額の費用と時間をかける必要があり、裁判で勝っても追い出すための実力行使に又金がかかるからです。
これは大家にとって大きなリスクです。またまともなテントにとっても不必要かつ、極めて大きな負担になっています。不法行為を行うものに対してのみ利益があるのが現状のシステムです。
そのうえ、経営者は金融機関からの借金では個人保証を強要されます。
これで起業をしろというのは手足を縛って泳げというようなものです。しかも経営者のボーナスは会社が法人税を払ったあと、余剰金からしかとれません。つまり税金を二重取りされることになります。
しかも国民年金は雀の涙です。
このような不条理な現状を放置して、起業家が増えるわけないでしょう。そらみんな大企業や公務員を目指しますわな。
このような現状の改善には法律を書き換えるだけで多額の税金を投入する必要もありません。ですが何故か放置されているわけです。内需を拡大するならばサービス産業の振興とその経営者、従業員の所得を増やす努力をすべきです。
未だに多くのメディアの報道の基調は「円高が悪い。円高のせいで不況とデフレが悪化している」というものです。ですがそれはこのコラムのように世迷い言に過ぎません。
今世紀に入ってからリーマンショックの一年ぐらい前まで割合に円安基調が続き、輸出企業は絶好調でした。前世紀末輸出はGDPの約10パーセント、個人消費は約60パーセントだったのに、現在では輸出はGDPの約1割五分、個人消費は55パーセントにまで上がっています。
ですが、その間も多くの日本人は好景気感を感じていませんでした。つまり円安で輸出企業が儲かっても景気は良くならなかったわけです。
その辺りのことは「デフレの正体 経済は『人口の波』で動く」で実際の数字を挙げて説明しています。この本ではマクロ経済屋の人達の通貨供給が増えればデフレは退治できるという主張は妄言であるとしています。日下公人氏の「デフレ不況の正体」も合わせて読むことをお勧めします。
デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
角川書店(角川グループパブリッシング)
藻谷 浩介
ユーザレビュー:
団塊の世代という人口 ...
個人的には池田信夫氏 ...
社会保障こそ処方箋日 ...

Amazonアソシエイト by

角川書店(角川グループパブリッシング)
藻谷 浩介
ユーザレビュー:




Amazonアソシエイト by

先週も月例の日下氏の勉強会にいっていたのですが、勉強会の前に雑談でも「マクロ経済屋」が如何にミスリードをしているかという話を伺いました。
メディアは円高で困っている企業ばかりを紹介します。特に零細な町工場などが紹介されます。ドルが一円上がるといくら損するという奴です。
ところが反面、一円上がると何十億、何百億と儲かる企業もあるわけです。
石油元売りやらサイゼリヤとかユニクロとか、ブランド品の日本法人とか。ところがメディアはユニクロの柳井社長の所にいって「社長、一円円高になると御社はいくら儲かりますか」と、いうようなインタビューは載せません(取材を拒否されているかもしれませんが)。
零細企業でも輸入で得をしている企業は多数あります。それは報道されない。
結果として不況感を煽ることになって、GDPの55パーセントの個人消費を冷やしています。円高よりもメディアの不況連呼の方がよほど景気を悪化させていると思います。
しかも、その結果広告費が削減されますからメディアの広告収入も大きく減じています。自業自得ですが、それでも不況を煽るアジテーションを止めません。馬鹿なんじゃないでしょうか。
恐らく80年代までの高度成長期が忘れられないのでしょう。ですがあのようなある意味異常な時代は帰ってきません。デフレの現状で極端な円安になれば輸入業サービス業が大打撃を受けます。消費者はものを買ってくれませんから、消費者に値上がり分を引き受けてもらえません。少し前に食品や石油が高騰した時、多くの企業が価格を消費者に転嫁しようとして、結果売り上げを大きく減らしました。
それから零細企業というと町工場ばかり紹介されますが、実際はサービス業の方が圧倒的に多いし、従業員数も多いわけです。結果製造業の振興ばかりが話題になります。商店や理髪店、ラーメン屋を振興しようという話はあまり聞きません。
零細製造業にしても「痛くない注射針」を開発した、岡野工業みたいな景気のいい会社もあります。こういう技術を磨き、大企業の下請けに甘んじない企業や、世界的に大きなシェアをもっており、円高でも利益を上げている企業があるのですが、メディアはあまり紹介しません。
人口(特に労働人口)が減り続けている現在、通貨供給量を増やせばあるいは、公共事業をジャブジャブやれば景気が良くなるいうのは実際の経済活動から100万光年離れたところにいる理論屋の幻想に過ぎません。
科学技術でもそうですが、理論や実験室で可能な手法は、実際の工業の現場でそのまま使用できません。実際の工場では実験室のような理想的な環境で製造はできません。硫酸みたいな単純なものでも、実験室と工場では材料も製法も異なります。
「デフレの正体~」の著者は海外から観光客を大量に呼び込めと主張しています。サービス産業が潤うからです。ぼくも賛成です。例えば売春特区をつくるのも一案でしょう。ドイツやオランダで売春は合法です。
何しろ世界的に我が日本女性の人気は非常に高い。性風俗産業の洗練も有名です。何しろ戦前の無声SF映画「メトロポリス」でもヨシワラ・シティーなる歓楽街が出てくるほどですし、「ゲイシャ」とセックスしたいという外国人男性は多数です(ホント、嫌になるぐらい)。
ところが概ね日本の性風俗は外人お断りです。
そこで特区を作り、そこで外国が出来る「社交さん」(一部のソープランドでは自由恋愛の好きな女の三助さんをこう呼びます)やボーイさんを揃え、お客に遊び方を教えて外国人観光客を呼び込んでは如何でしょうか。ソープランドが目当てで日本で国際会議や見本市を開催しようという運びになるかもしれません。
日本の風俗のシステムを海外にフランチャイズで輸出することもできるでしょう。また自動車や鉄鋼をつくるより遙かにエネルギー消費が少ない産業でもあります。
こういう提案をすると真面目な方々からはお叱りを受けたりしますが、発想の枠を狭めても新しいアイディアは出てきません。
またサービス産業振興のためにはここで何度も取り上げていますが、家主とテナントの権利関係を法的に整備し、違反があれば行政が介入して法を執行するようなシステムが必要です。
現状では店舗や事務所を借りる際の保証金は極めて高いわけです。20ヶ月とか平気でであります。しかもこれが供託金でないので返ってくる保障がないわけです。
高額な保証金は企業の運転資金を圧迫します。利益も減らします。特に創業間もない企業が軌道に載るための運転資金が減じられて、倒産の可能性が高くなります。これはサービス産業の収益の悪さと従業員の賃金の低さの原因となっています。
なぜこのようなシステムになっているかというと、テナントが支払いもしないで居座っても、追い出すためにには多額の費用と時間をかける必要があり、裁判で勝っても追い出すための実力行使に又金がかかるからです。
これは大家にとって大きなリスクです。またまともなテントにとっても不必要かつ、極めて大きな負担になっています。不法行為を行うものに対してのみ利益があるのが現状のシステムです。
そのうえ、経営者は金融機関からの借金では個人保証を強要されます。
これで起業をしろというのは手足を縛って泳げというようなものです。しかも経営者のボーナスは会社が法人税を払ったあと、余剰金からしかとれません。つまり税金を二重取りされることになります。
しかも国民年金は雀の涙です。
このような不条理な現状を放置して、起業家が増えるわけないでしょう。そらみんな大企業や公務員を目指しますわな。
このような現状の改善には法律を書き換えるだけで多額の税金を投入する必要もありません。ですが何故か放置されているわけです。内需を拡大するならばサービス産業の振興とその経営者、従業員の所得を増やす努力をすべきです。
この記事へのコメント
いちいち、真に受けなければいいだけのことですが、現在、社会の中核にいる中高年にはテレビ、新聞の「信者」が多いですからね。
>何しろ戦前の無声SF映画「メトロポリス」でもヨシワラ・シティーなる歓楽街
っていうか、あの時期のドイツ人に「ヨシワラ」を知っている人間がいるのが驚き。一体、誰がそんなこと教えたんだ?と思っちゃいますねぇ。
仰る通りで、円高でも利益を出す企業はあります。ただそれで景気がよくなるかは別ですし、円高で利益が出る企業が日本の大勢になった場合、今までの価値観を一変しないけなくなります。それも加えて報道されるべきだと思います。
確かに円高になれば、外国からの投資は遠くなるでしょうし、株も下がるでしょう。
株が下がれば何に投資すればと、そんな事してる人達は、困っているのかも知れません。
輸出ばかりに頼る経済運営では、遅かれ早かれこうなる運命なんでしょうか。
近隣諸国の連中は、良く見ておくといいでしょうね。
売春特区は、でもどうかと思います。
風紀やら治安やらの問題で、米軍基地ぐらい反対運動が予想されますな。
エロ漫画やエロゲーム、ビデオなんかのアダルトコンテンツ産業の規制を緩くしてやるとか、文字通りのソフト振興で良いでしょう。