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zoom RSS 財務省資料 平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その7

<<   作成日時 : 2010/08/24 00:12   >>

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平成22年度「日本の財政と防衛力整備」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shin-ampobouei2010/dai6/siryou2.pdf

 さて今回は防衛大綱と中期防に関しての記述をみてみましょう。
 まず現大綱を見てみましょう。

「平成17年度以降に係る防衛計画の大綱について」
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2004/1210taikou.html

実際のところ、大綱は抽象的だったり、意味不明だったりします。一例を挙げましょう。

「本格的な侵略事態への備え
 見通し得る将来において、我が国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下していると判断されるため、従来のような、いわゆる冷戦型の対機甲戦、対潜戦、対航空侵攻を重視した整備構想を転換し、本格的な侵略事態に備えた装備・要員について抜本的な見直しを行い、縮減を図る。同時に、防衛力の本来の役割が本格的な侵略事態への対処であり、また、その整備が短期間になし得ないものであることにかんがみ、周辺諸国の動向に配意するとともに、技術革新の成果を取り入れ、最も基盤的な部分を確保する」


 前半と後半では相反することをいっています。
 冷戦型の本格侵攻に備えるタイプの戦力整備から脱却するといいつつ、対本格侵攻に備えるのが防衛力本来の役割だ、述べています。あれも大事、これも大事といっているわけです。
 官僚が作文するとこのようなどちらともとれる両論併記になりがちです。
 大綱は政治主導でつくるべきです(もっともその素養のある政治家がどれだけいるかが問題けど)

「(3)我が国の防衛力」には以下のようにあります。
「我が国はこれまで、我が国に対する軍事的脅威に直接対抗するよりも、自らが力の空白となって我が国周辺地域の不安定要因とならないよう、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力を保有するという「基盤的防衛力構想」を基本的に踏襲した「平成8年度以降に係る防衛計画の大綱」(平成7年11月28日安全保障会議及び閣議決定)に従って防衛力の整備を進めてきたところ」

 「軍事的脅威に直接対抗」しない防衛力=軍事力ってあるんですか。実際戦闘をしないで、抑止力を重視するということなんでしょうが、あれこれ玩具はもっていても実際に戦争したら弱い軍隊では抑止力にはなりません。
 抑止力となるためには「直接対抗」において充分戦える戦力を持つ必要があります。

 「自らが力の空白となってとなって我が国周辺地域の不安定要因とならないよう、独立国としての必要最小限の基盤的な防衛力を保有する」
 というのは、仮想的を持たないということです。
 つまり極端に言えば人民解放軍、ジンバブエ軍やアルゼンチン軍、あるいは放射光線を吐く怪獣でも、火星人でも同様に対処できるように備えるということです。
 
 まともな仮想敵を想定しないから戦略も戦術も空理空論的になります。

 更に自衛隊は平時の国内法で縛られていますから、実際問題として作戦行動はできません。軍事的に合理的なことを行うと「犯罪者」になってしまいます。
 要は軍隊らしく見える玩具を並べておけばいい、ということですから、まともな装備調達などできません。

 さて財務省のこのレポートでは以下のよう主張しています。
 これまでの防衛大綱では「定員数は陸自についてのみ規定」これは問題である。また「定員数は海自、空自についても規定すべきではないか」

 ぼくもそれに賛成します。同時に将官、幹部、下士官、兵とそれぞれの定数について定め、人員削減を士(兵隊)だけで調節するという安直な手法を封じるべきです。

 別表がおおざっぱ過ぎます。

 例えば陸自の主要装備は戦車と主要特科装備しか掲載されていません。歩兵戦闘車やAPC、工兵車輌、汎用ヘリなどできるだけ多くの装備を表に加えるべきです。空海自に関しても同様です。

 それにしても戦車600両としか書かれていません。例えば極端な話全部旧式の74式でもいいわけです。また火砲600門にしてもこれは155ミリ榴弾砲とMLRSが合わせてあり、どちらが何門なのかわかりません。
 また155ミリ榴弾砲にしてもごく少数の99式自走榴弾砲を除けば射程が大きく劣る旧式牽引砲と自走砲ばかりです。これでいいのか、悪いのかも別表ではわかりません。
 現状の大綱では旧式化した火砲を数だけ揃えておけば宜しい、ということになっています。
 数さえあれば抑止力になる、という考え方ですか、ら90式戦車も74式も旧式化にまかせて近代化されてきませんでした。実際はその間抑止力は毀損されているわけですが、それには目をつぶり新しい玩具をつくるわけです。

 例えば火砲はMLRSと通常の火砲を分け、その火砲も自走砲と、牽引砲に分け、個別の定数を明記し、さらに必要な性能(例えば射程など)も記すべきです。
 
 ぼくは特科の火砲を減じても長射程化や自走化、あるいは島嶼防衛に適した軽量火砲の導入を目指すべきだと考えます。

 また報告書はこれまでの大綱は「計画期間中歳出の経費総額限度と取得計画のみ規定」であり、「装備品の取得計画の経費総額限度(契約ベース)も規定すべきではないか」と指摘しています。

 ですが、この報告書では装備取得の調達システムに対して踏み込んだ提言がありません。

 普通の国では装備調達は国産ならば研究開発まで含めて一つのプロジェクトとして考え、調達コストとして計算します。また初めに調達数、調達期間、調達金額が決定してから、これを議会が承認し、予算化されます。

 ところが我が国では調達数、調達期間、調達金額を国会が承認しなくとも調達が始まります。
これでは空港をつくるときにどのような空港にするのか、総予算も、工期も決めずに「今年は滑走路を200メートル造ります」と、場わたり的に決めて予算をつけるようなものです。

 また実質的に国会が個々の装備調達計画をオーソライズしていないにもかかわらず、メクラ判を押しているようなものです。
 
 文民統制の根源は人事と予算です。

 現状は国会が予算を把握しておらず、文民統制が機能しているとは言えません。

 そろそろ防衛費、ことに装備調達のあり方を見直すべきだと思います。もっともご自分に自衛隊の指揮権があるとは知らなかった、と仰る総理のもとでそれが可能かというと、かなり難しいのではないかと思います。


財務省資料「平成22年度日本の財政と防衛力整備」 を読む その1
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_10.html

財務省資料平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その2
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_11.html
  
財務省資料平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その3
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_12.html

財務省資料平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その4
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_14.html

財務省資料平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その5
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_15.html

財務省資料平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その6
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_16.html





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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
私は防衛大綱の別表には反対です。
今自衛隊が装備している兵器の数を表示するならともかく、
「将来これだけの兵器を整備しますよ。」と言う表を定数を開示するのでは、
相手にこちらの手の内を明かしているようなものです。

将来自衛隊が整備する兵力を開示すれば、
仮想敵国は、
「日本は将来これだけの兵器を保有するのか。よし、ならうちはこれだけの兵器を調達しよう。」と、
敵国が簡単に戦略や兵器調達計画を立てる事ができるようになってしまいます。

今の様な別表なら、日本政府にとっても、自衛隊にとっても、
日本国民にとってもデメリットにしかなりません。
佐藤
2010/08/24 02:17
清谷さんの意見に賛成です。
別表はおおざっぱすぎます。

編成定数の項目は、戦車、主要特科装備など曖昧で大雑把な表現ではなく、
具体的な兵器の名前で示すべきでしょう。

戦車、主要特科装備などと書かれても、
何がどれだけあるのか分かりません。
佐藤
2010/08/24 02:19
佐藤が二人。
同じ人ならある意味で
矛盾したコメントかな?
前者は表の存在が不要と書き、後者は詳しく書けとなっている。どっちなのか?
ぐすたふ
2010/08/24 04:57
装備の詳細を提示するということは、相手に手札をみせるようなもんです。これは現場の兵士の命を危険にさらします。中国みたいに謎めいた部分がある方が、抑止力につながるのではないでしょうか。また、日本は文民統制のぶの字もないことがわかりますね。田母神さんを首にした時、マスコミは声高らかに文民統制という語句を使いましたが、あれは言論統制であって本来の文民統制とは、人事と装備の調達を政治家が決めるということでしょう?政治家どもはしっかり仕事しろ。
とめ吉
2010/08/24 11:21
>とめ吉
現状程度の情報公開は問題ないと思います。なんせ詳細な情報が流出してませんから。例えば軽装甲機動車の防御力ですが簡単な説明は公表されていますが具体的な数字はありません。
予想は出来ます。上は戦車砲を跳ね返す(たぶん冗談)、正面12.7mm他は7.62mm防御、もしくは全周7.62mm防御、下は5.56mmに抜かれるとか諸説あります。
日本を仮想敵とする集団が知りたいのは具体的な事だと思います。軽装甲機動車を5.56mmで撃破できると思い込み実際は12.7mm防御なら彼らはあの世で意味のない後悔をすることになるでしょう。
ぐすたふ
2010/08/24 15:32
清谷さん、今度テレビに出演されるのはいつですか?
清谷さんの話はおもしろいのでテレビに出演してほしいです。
名無し
2010/08/24 17:10
民主党の議員は無知蒙昧なので、
日本の安全保証にどのような装備がどれだけ必要かなんて分かるはずがありません。

民主党議員の軍事や防衛に関する知識や見識は、
そこら辺りのおっさんや主婦と同レベルでしょう。

2010/08/24 20:47
ぐすたふさん〉

それしきの情報なら確かに影響ないですね。
とめ吉
2010/08/24 22:07

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