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zoom RSS 財務省資料 平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その6

<<   作成日時 : 2010/08/23 00:44   >>

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 平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shin-ampobouei2010/dai6/siryou2.pdf


 さて装備調達の続きです。
28ページの「調達コストの抑制を通じた効率的な防衛力整備」を見てみましょう。
ここでは輸入調達、ライセンス国産、国内調達(国産開発)の三者を比較しています。

 
画像


 ですが、問題なのはライセンス生産といってもその実態は色々です。
 100パーセント日本国内で生産したものと、実際は部品を全部輸入して国内で組み立てただけのアッセンブリー生産まで「ライセンス生産」とひとくくりにしてはいけません。
  単なる組み立てであるアッセンブリー生産まで「ライセンス生産」というのは羊頭狗肉の類であります。
  このブログの以下の記事を参照してください。

国産装備とはなにか  ライセンス生産とアッセンブリーの間の深い谷
http://kiyotani.at.webry.info/201007/article_6.html

 戦闘機にしてもF86FやF104あたりまでは国産化率が非常に高かったのですが、年々国産化率が減っています。
 これには主に3つの理由があります。製造国が内容を明かさないブラックボックスを丸ごと輸入するように要求していることが一つ、二つめが装備が高度化したために調達数が減り、多くのパーツを国産化すると極めて生産コストが高くなること。
 三つ目は製品に於けるソフトウェアの比率が高まり、これを丸ごと輸入することが増えている(これもブラックボックス)の一つに含めることもできます。

 近年の攻撃ヘリAH-64Dや掃海ヘリMCH-101などはライセンス生産といいつつ、その実態はアッセンブリーに過ぎません。我が国に技術移転のメリットは殆どありません。にもかかわらず、2倍あるいはそれ以上の費用をかけて「ライセンス生産」する必要が本当にあるのでしょうか。
 ライセンス生産の場合、どの程度を国産化するのかという視点がないと現実的な議論にはなりません。

 例えばライセンス生産とはソフトウェアも含めて内製率を何パーセントまでと定義するのも一案でしょう。



 次の29ページ「日米の装備品単価比較」では日米の装備の単価を比較しています。

 まず空自の輸送機、C-130Hの輸入価格は40.4億円、対して米空軍の調達価格は35.5億円に過ぎません。空自の調達価格は米空軍の1.14倍に過ぎません。

 よく我が国では「輸入兵器は色々吹っかけられて1.5倍〜2倍になるから、国産品を買った方が安い」というまことしやかな「通説」が流通していますが、それは必ずしも正しくありません。
 特にソ連崩壊後は世界の兵器市場が統合されて、性能と共に価格競争が激しくなっており、そんな殿様商売をしていては市場から駆逐されてしまいます。無論イージスシステムやF-22など比較競争に晒されていないものも一部は存在しますが、例外的です。

 ライセンス生産をみていると陸自の多目的ヘリUH-60JAが一機50.4億円に対して、ほぼ匹敵する米軍のUH-60Lが6.5億円、約7.75倍です。
 機銃では自衛隊のライセンス生産品を採用しているミニミが200万円に対して、米軍がM249として採用したミニミは30.8万円、約6.5倍です。
 
 M249はFNの米国法人が米国内の工場で生産してます。ライセンス生産に近い調達形態で、輸入よりコストがかかるはずですが、日本製とこれだけの価格差があります。

 ちなみカナダ軍のライフルC7はM16のライセンス品です(現在はメーカーデルコ社が米コルト社の傘下になっています)。にも関わらず調達単価は約7万円、この評のM16A2は5.2万円ですからさほど高くはなっていません。

 ライセンス生産でもライセンス料金の交渉や、効率的な生産を行えばコストは下がります。更に武器禁輸を緩和して、オフセットとして一部のコンポーネントの生産を我が国が受け持てば更にコストが下がります。

 ライセンス品だから高くて当たり前だ、と居直っていてはコストダウンは出来ません。



財務省資料「平成22年度日本の財政と防衛力整備」 を読む その1
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_10.html

財務省資料平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その2
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_11.html
  
財務省資料平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その3
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_12.html

財務省資料平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その4
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_14.html

財務省資料平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その5
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_15.html


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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
なるほど!清谷氏の視点ではそう解釈されるのですね。ライセンス生産だと高い!『ぼくちゃん』も言ってましたね、国産の方が完成品を輸入するより安くなるのは当たり前と!あぁだから日本は国産にこだわるのでしょうね。開発経験も入りますしね。経験はお金では簡単には買えませんからね!国産ばんざ〜い!

あれ? だとすると過去記事との整合性が・・・。
ぐすたふ
2010/08/23 08:37
ぐすたふさん
ブログの中のプレゼンテーションを見ていないのですか?輸入とライセンス生産と国産品では、国産品の調達価格は一番高くなっています。清谷氏がよくこのブログで言っているのは、自衛隊の装備のガラパゴス化をすべきではないと言っているのであって、装備をすべて国産化しろなどとは一言も言っていません。
調達品のメリハリをつけて、国産化しなければならないものと、輸入ですむものなら、四の五の言わずに、標準品を輸入して安く済ませろ、と言っているだけですよ。
ワタリガラス
2010/08/23 15:59
ただまあ国産にした方が良い物の実例をあんまり(全く?)出してくれませんしねここのブログ主は。
ぐすたふさんいいすぎ
2010/08/23 16:14
政府や防衛省、政治家が国産兵器の研究・開発を怠り、
アメリカなど外国から買えば良いと言う安易な考えで防衛政策をやってきているからですよ。

需要が少ない兵器ならともかく、戦闘ヘリコプターや戦闘機などの需要の大きい兵器まで外国から買っているようではお話になりません。

国産兵器開発の努力を怠る日本政府には憤慨してしまいます。
通りすがり
2010/08/23 17:32
>ぐすたふさんいいすぎさん
調達のダラダラさ加減で性能的には良くても高価なものになってしまってますからねえ。
軽装甲機動車なんかはイラク派遣時に海外の軍から評価が高かったそうですよ。
パトロールに使える小型装甲車としての評価でしょうか?
自衛隊が考える本来の運用には?ですが。

>通りすがりさん
今は開発費の高騰などより全て自国開発兵器でまかなうことは不可能になっています。アメリカでさえ開発リソースの振り分けを行っていますよ。
一度世界の兵器開発状況を見渡すことをお奨めします。
774
2010/08/23 21:40
>774さん
>調達のダラダラさ加減
調達を短期間で終了させたほうが良いということでしょうか?
調達終了した工場のラインはとじられてしまいますよね。
追加調達することになったら、破棄されているかもしれないジグもかき集めてラインを再開するのでしょうか?
恐らく短期大量調達は他に需要がある(民生orPMC・海外)兵器には有効なんでしょうけれども…

>自衛隊が考える本来の運用
ってなんですか?
「普通科運用」とか「軽装甲機動車」(この名前であるかは知りませんが(汗))の教範等をお持ちなのでしょうか?
できれば「本来の運用」を死ぬほど知りたいので教えてください。
お願いします。
ゆう
2010/08/25 01:09

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