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zoom RSS 財務省資料 平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その4

<<   作成日時 : 2010/08/21 00:08   >>

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平成22年度「日本の財政と防衛力整備」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shin-ampobouei2010/dai6/siryou2.pdf

財務省資料 平成22年度「日本の財政と防衛力整備」をテキストに連続して防衛予算を考えてみます。

 さて、前回は34ページ、「冷戦期以降の3自衛隊(陸・海・空計)の実員の変化」を見ました。定員は約3万人減っているにもかかわらず、幹部(将官・将校)、准・曹(下士官)の数は増加し、減っているのは士(兵隊)だけ。
 人員削減において、単に切りやすいところを切ったわけです。

 このため人員構成のバランスが崩れており、平均年齢が上昇して、戦闘集団としてはもんだいありとなっていることを見ました。

 さて、今回は36ページ、「(参考)自衛官採用数の変化(陸・海・空別 平成3年〜20年)」を見てみましょう。

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 ここでは3自衛隊別の人員構成が挙げられています。
 空自、海自が実質増員ですが、士クラスが減少しています。
 陸自のみが、総人員が減っています。幹部・准・曹が増え、士が減っているためにますますバランスが悪くなっています。一線部隊で「兵隊さん」が足りません。

 
 自衛隊の人員は定員があります。ですが実際にはこれが100パーセント充足されず、予算でみとめられた実員が実際の人数、現員となっています。
 現在定員に対する充足率は93パーセントほどになっています。37ページ、「人員の効率化に向けた取り組み」では行革推進法では自衛官の人員を平成18年度より5年間で5パーセント減らすとしていますが、これが現状3パーセントに留まっています。
 
 
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 本来充足率は各階級同じ比率であることが望ましいです。特定の階級だけ著しく欠落していると機能不全に陥ります。例えば陸自で3尉・曹が100パーセントだけど、士が0パーセントであれば、小隊長と各分隊長ばかりで、兵隊のいない小隊、分隊ばかりになります。
 
 さて、38ページの「業務の合理化と人員配備の効率化」では、幹部・准・曹の充足率は1尉と曹長が若干少ない程度でほぼ100パーセント(3尉は100パーセントを超えています)なのですが、士の充足率は4割強程度に過ぎません。ただ、この数は人数が減る年度末実員を元にしているので、より実情に近い年平均実員だと2万人程度になります。もっとその後7千名ほど減員されていますから、現状はかなりこのグラフに近いものになっています。

 これではまともな作戦などできないでしょう。

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 報告書は以下のように指摘しています。「18年度以降の実員純減は自衛官の身分変更(生徒の手当化など)や後方業務(募集、教習、給食等)の民間委託によるものであり、それ自体が第一線の人員を削減するものではない」と断言しています。

 更に、「定員削減が不十分なために、結果として充足率が低下」と述べています。

 また報告書は民間委託したはずの募集、教習、給食等などについて「これに携わる准・曹以上を減員せず、士の員数を削減」としています。



 石破茂氏が防衛庁長官時代、氏は充足率の低下ではなく、定員の削減を主張しましたが自衛隊はこれに反対しました。
 一旦部隊が縮小されればその拡大は容易ではないからでしょう。
 ですが、その結果として「正社員」の人員削減を行わず、切りやすい「契約社員」だけを減らし、あまつさえ「正社員」の数を増やしたので現在のいびつな人員構成となったわけです。

 陸自の普通科では小隊の六二式七.六二ミリ機銃を廃し、これを本来分隊支援火器であ五.五六ミリ機銃のミニミで置き換えています。ぼくは陸自広報室から「これは我が国では交戦距離が短く、五.五六ミリ機銃で充分である」との説明を受けました。世界でこのような決定をした陸軍は自衛隊ぐらいなものです。


 アフガニスタンなどの戦訓から明らかなように、五.五六ミリ機銃と七.六二ミリが撃ち合えば前者が不利です。ですから英軍では分隊にも七.六二ミリ機銃を配備したりしてます。
 七.六二ミリ機銃は最低射手と装弾手の二名が必要ですが、ミニミならば一名ですみます。これが本音ではないでしょうか。

 また普通科に96式装甲車ではなく、軽装甲機動車を大量に配備しているもの同じ理由でしょう。96式装甲車ならば車長と操縦手の二名が余分に必要です。
 
 ところが軽装甲機動車は操縦手も下車戦闘しますから、導入に当たって人員を増やす必要がありません。
 96式装甲車は一二.七ミリ機銃あるいは四〇ミリ自動擲弾銃が装備されており、これによって下車歩兵の火力支援が出来ますが、固有武装も、乗員もいない軽装甲機動車ではそれも出来ません。下車歩兵は機銃が七.六二ミリから五.五六ミリにダウングレードされており、タダでさえ火力が落ちているのに尚更火力が落ちています。

 また96式装甲車は下車歩兵部隊に随伴し、必要とあらば下車歩兵を収容し、移動ができますが、軽装甲機動車の場合は乗り捨てた場所まで徒歩で戻らないと搭乗できません。このため戦場での機動力と運用の柔軟性が大きく劣ります。

 士の削減に合わせて編成と装備をいじくっているとしか思えません。

 先月フジテレビの番組で機甲化出身の冨澤暉元陸幕長とご一緒しました。
 そのとき楽屋でお話したのですが、軽装甲機動車の開発は冨澤氏が命じたそうです。冨澤氏は言い訳する訳じゃないけど、と前置きしたうえで、本当はウエポン・キャリアーを開発するはずだったが、ペイロードの足りないタクシーみたいなのが出来た、と仰ってました。
 ペイロードが足らないので、トレーラーを引かせようとしたらしいのですが、上手くいかなかったようです。


 報告書は「員数実態に合わせた定員の見直し(縮小)を行」うべきであるとしています。
 ぼくも同感です。

 
財務省資料 「平成22年度日本の財政と防衛力整備」 を読む その1
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_10.html

財務省資料 平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その2
http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_11.html
  
財務省資料 平成22年度「日本の財政と防衛力整備」 を読む その3

http://kiyotani.at.webry.info/201008/article_12.html



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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
確かに、アフガンやイラクでも既存の5・56ミリクラスでは威力不足なため、7・62ミリクラスが重宝されているんでしたね。イラクで「実戦」を経験したはずの陸自ですが、どこまで教訓を活かせているのでしょうか。キヨタニ先生の文を拝見していると何だか不安になります。それはそうと、防衛省にて自衛隊機の民間転用が決定しつつあるようですね。某ニュース系サイトにて、その記事に対するユーザーのコメントに「殺人兵器を民間に売り付けるなんて」という女性のコメントを見つけた瞬間、一体、この人は何を考えているのか理解するのに時間が掛かりました。ま、XP-1は分からないとしても、XC-2やUS-2のどこをどう見たら、「殺人兵器」という言葉が出てくるのでしょうね。アレですかね。とにかく「自衛隊がもっているもの=全部、人殺しの道具」というヤツですかね?
かつかつ
2010/08/21 00:33
興味深く拝見しました。特に、
>>それから防衛省の政策評価や事業評価はあまり当てになりません。泥棒が縄をなうようなものですから。
と言われる方が、財務省の評価内容を全面的に引用し肯定する。という資料の活用の仕方に。
568
2010/08/21 00:51
装輪装甲車の走行能力は低いのですよ。障害物や地形によりあっさり行動不能になります。過大評価し過ぎではないでしょうか?諸外国の対地雷装甲車は背が高く発見されやすいです。96式なんかは低く見つかりにくいので砲火が集中しないでしょう。尉官や曹が100%なら曹が兵の仕事を分担するだけでは?頭固いんじゃないですか?軽装甲機動車を全て乗り捨てるとは限らないのでは?前面は12.7mmに耐えられるのですから遮蔽に使う方法もあります。自らに有利な状況を設定しわざわざアホくさい行動をとらせシンジラレナイ〜?!まったく馬鹿らしい。
ぐすたふ
2010/08/21 05:02
 キヨタニ氏の本では、5,56ミリまでしか
対応できないのでは?
名無しK
2010/09/01 17:42

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