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zoom RSS 財務省資料 「平成22年度日本の財政と防衛力整備」 を読む その1

<<   作成日時 : 2010/08/18 19:22   >>

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 さて、官庁の政策や施策はすべて予算の裏付けが必要です。
 
 それは防衛省・自衛隊といえども変わりません。
 今回は財務省が公開している平成22年度版「日本の財政と防衛力整備」を見ながら、財政の観点から防衛調達をみてみましょう。
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shin-ampobouei2010/dai6/siryou2.pdf

 予算がなければ装備は買えないし、訓練もできません。「正面装備」で際だって高価なものを買えば,その他の装備や燃料費、既存装備の維持費などが削られるわけです。

 つまり、100パーセント、360度よりも大きな円グラフは無いということです。
防衛予算は限られており、限られた予算で何を優先するか、どのような防衛力を整備、維持するかということが問題になります。
 防衛調達を語る際に、この事実を無視したものが多いように感じられます。

 15ページのグラフ 「防衛関係費の主要経費項目の推移」を見てみましょう。
 このグラフでは平成6年度、14年度、22年度の各経費項目の増減を比較しています。

画像




 以下に装備に関係する項目を抜粋してみましょう。単位は億円です。どうやっても数字がずれて表示されてしまいます。見苦しいですが我慢してください。
 
                  16年度     14年度    22年度
 
 総額               47,833     49,431    47,925
 研究開発費            1,445      1,500     1,266 

 整備費等(維持・修理費)    7,354       7,894     8,881  
 うち武器車輛整備費        4,157      4,471     5,518
    内通信維持費         1,181        2,120    2,705
    航空機整備費          2,571     2,793     2,884
    艦船整備費             627      633      839
 
主要装備品等(調達費)     8,820       7,660    6,837

※油購入費は 平成6年度と22年度を比較すると402億円の増加、
         平成14年度と22年度を比較すると313億円の増加。


 防衛費の総額は14年度は一旦上がっていますが、22年度では又下がっています。にも関わらず、研究開発費、装備調達費は一貫して下落傾向にあります。
 対して装備の高度化複雑化を反映して装備の維持・修理費費は増加の傾向にあります。

 また燃料購入の費用も増加の傾向にあります。

 これから言えることは、研究開発を含めた装備調達にかけられる予算は減っているということです。
 それが今後大幅に増えることは極めて難しいということです。むしろこの傾向は今後も継続するでしょう。
 
 つまりは研究開発も装備調達も、いままでのような高コスト体質では予算が組めなくなりつつあります。

 近年では兵器ステムは極めて高度化しており今で必要なかった新しい装備も必要になっています。
 例えばMD(ミサイル防衛)は勿論、UAV、各種人工衛星や地上ステーション、衛星通信システム、ネットワーク・システム、分隊レベルでの各種暗視装置、個人無線機、対テロ用装備、ISTAR関連装備、精密誘導弾、対巡行ミサイル用装備、サイバー戦装備、各種コンピューター、兵站用のICタグなどです。

 予算は減っているのに、これらの新たな装備を調達しなくてはならない、という現実があるわけです。
 例えば従来10の予算であったとしましょう。そこに新装備が3必要になった。となれば既存の装備は7の予算で調達しなければならないわけです。更に維持費などが増加傾向にあるわけですから、7から引いて6や5の予算しか使えないことになります。

 つまり尚更従来型の装備の調達を絞る必要があるわけです。

 調達システムは勿論、人件費も含めた防衛予算を根本的に見直おさないと、まともな装備の取得とバランスのとれた戦力の維持は不可能です。

 装備調達の予算を確保するためには例えば以下の措置が必要です。
 1) 装備調達の単価を下げる
 2) 研究開発費を装備調達費の一部と考えてプログラム全体で厳格にコスト管理を行う。
 3) 製造方法などを工夫して(部品点数の低減、モジュラーシステムの採用)で維持・修理費を低減する。
 4) やたらに新しい装備を調達せず、既存の装備に改良を加えて使用を続ける。
 5) 並列して存在する旧式化装備を早く更新して、重複している訓練・兵站を減らす。
 6) 研究開発も装備調達も、情報収集と分析を強化し、不要な装備を開発、調達しない要に努める。
 7)安価な民生品、輸入品を多用する。

 その他、まだいくつもの方策はあります。
 
 その一つは燃料購入費の圧縮です。
 燃料は今後国際市場の動向によって上下するでしょうが、需要が減ることは考えにくく上昇の傾向は続くと考えるべきです。そこで、車輛はハイブリッド、艦船は統合電気推進など燃費の低い動力を導入すべきです。また基地内車輛などは電気自動車に置き換えるべきです。特にもっとも多くの燃料費を消費している海自の艦艇の燃費向上は焦眉の急です。
 例えば燃料費は1500億円として、これを2割削減できれば300億円が浮き、これを他の用途に転用できます。

 部隊を削減も必要です。特に陸自は世帯が大きく、部隊を削減しないことには近代的な装備体系を獲得することは無理です。
 相対的に装備調達費を増やすためには頭数を減らすしかありません。新しい装備は欲しい、兵力も多くしたい、というのは現在の財政では無理な話です。
  
 極論を言えば少数精鋭のハイテク指向の軍隊を指向するのか、頭数だけは多いが竹槍で武装したような軍隊を指向するのかということです。

 新戦車の調達なども含めて新装備の調達、あるいは研究開発はこのような非常に厳しい予算状況の中おこなわれなければならないわけです。
 ですが、陸のUH−Xやその他の装備の開発や調達プログラムを見ていると、そのような当事者意識に欠けているように思えます。

 
 
 自衛隊の人員削減と人件費に関しては別な機会に改めて述べます。

 
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内 容 ニックネーム/日時
中華人民共和国、ロシア連邦、大韓民国、中華民国、朝鮮民主主義人民共和国と日本周辺の何れの国も、
軍事費を増やし、装備の近代化を進め、戦力の拡大を推し進めています。

それに、北方領土問題、北朝鮮問題、竹島問題、東支那海の海底ガス田・油田問題、台湾問題、中国の軍拡など、
問題は山積みです。

しかも、中には日本への侵略などの野心を持っている国も少なくありません。

そんな中で、自衛隊員の数を減らしたり、従来装備の調達を諦める事は、
日本の安全を脅かす自殺行為です。

今は防衛予算を増やす事以外に現実的な選択は無いと思います。

民主党や旧来の自公政権から続いている売国政策、無駄なばら撒き、国益にならない事をやめさせれば、
防衛費を今の1.5倍程度にまで増やす事も不可能ではないと思います。
民主党と公明党は日本の癌
2010/08/18 20:16
増やすとか軍拡とか言うと噛み付いてくる方々が山ほど出てくると思うので、一律予算削減や根拠無き軍縮を取止めるとでも言うべきでしょうか? 
ぽち
2010/08/19 09:37

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