オリンコンVS烏賀陽弘道 上場企業のビヘイビアとしてどうよ?

 ヒットチャートで有名な株式会社「オリコン」が、元朝日新聞記者で、現在は音楽ライターの烏賀陽弘道氏に対して、月刊誌サイゾー06年4月号に掲載された同社に対するコメントに対して5000万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしました。
 
 通常このような名誉毀損の訴訟を起こすときは、その書き手なり、コメントの発言を採用した出版社側も提訴するのが普通です。今回の訴訟では訴訟対象を烏賀陽氏に絞っておこなっています。これは尋常ではありません。

 普通の個人は裁判なんて別の惑星のお話と思っています。ですからいきなり訴えられた場合、あわてふためきます。
 まず弁護士を探さなくてはならない(自分に非がなくても、相手は訴訟を起こすことができます)。
 ところが弁護士は「一見」の客を余り歓迎しません。弁護士に対して本当のことを話さなかったり、トラブルを起こす輩もいるからです。ですから誰かの紹介という形がスムーズです。仮に飛び込みで入った弁護士がトンデモだったという話もあります。見ず知らずに頼むのは依頼者にとっても受ける弁護士にとってもリスクが高いわけです。

 また訴訟を起こされると当然弁護士に払う費用、その他諸々の費用がかかります。安くとも数十万円はかかります。
 
 さらに裁判に対して資料を作ったり、弁護士との打ち合わせなどに結構時間を取られます。しかも裁判で勝ってもこれらの費用は回収できないことが多いのです。

 つまり、裁判を起こされると個人は非常に多くの経済的、時間的負担を余儀なくされます。
どいつとは言いませんが、某性悪の出版社の社長など「訴訟を起こします」が口癖でした。つまり、裁判を起こすぞ、ということ自体が恫喝につかえるわけです。もっとも裁判所はそのような現状を認めませんが。

 今回のオリコン側の戦術は、出版社と、抗甚性と継戦能力に欠ける烏賀陽氏を分断、各個撃破を狙ったものでしょう。
 恐らくは烏賀陽氏が大朝日新聞の社員であればこのような訴訟は起こされなかったでしょう。朝日新聞という「核の傘」が無くなったが故に、訴訟をおこされたのでしょう。

 このような形の訴訟が多発すれば、企業の論評したり報道することが事実上不可能になります。
 
 一般論として、書き手にだけに対象を絞って訴訟を起こし天文学的な賠償金を要求する。これによって自社に対するネガティブな意見を封殺する。こういう戦法が普遍化すればそれは言論に弾圧につながります。少なくとも上場企業がこのような大人気ない、「違法でなければ何をやってもいい」、あるいは社会常識に照らし合わせてどうかという訴訟を起こすのは如何かと思います。
 
 このような戦術は無論違法行為ではありません。戦術的には極めて有効でしょう。ですが戦略的に考えた場合、これは高圧的な会社であるというイメージをまき散らすことになり、かえって企業イメージを落とす可能性もあります。


 ここで注目されるのはジャーナリスト宣言を標榜する朝日新聞社の出方です。被告が自社に後足で泥をかけた人物だから黙殺するのか、それともジャーナリズム対する挑戦であると論陣を張るか。これは注目に値します。
 かつて「噂の真相」の岡留編集長が右翼に暴行を受けた際、日本ペンクラブの理事の猪瀬直樹氏はそれまで「噂の真相」何度も自分の「悪口」書いたてきたにも関わらず、暴力による言論への圧力を非難するペンクラブの声明を出しました。
 
 朝日の度量が試されると思います。


 とりあえず烏賀陽氏に対しては、拙著「弱者のための喧嘩術」をご一読することをお勧めします。



「オリコン」が烏賀陽個人を被告に5000万円の損害賠償訴訟
http://ugaya.com/column/061219oricon.html

訴訟の対象になった記事はこちら
http://ugaya.com/column/0604saizo.html

オリコンスタイルに掲載されたオリコン側の主張
http://www.oricon.co.jp/news/confidence/40446/

「オリコン」が烏賀陽個人を被告に5000万円の損害賠償訴訟 (2ちゃんねる)
http://live14.2ch.net/test/read.cgi/liveplus/1166489789



この記事へのコメント

へろ
2006年12月20日 00:26
音楽ウォッチャーの私としては、問題となったオリコンに関する記事はそれなりにあたっていると思いますね。

卸売りにおける売り上げもオリコンの数字に影響するという噂もある。例えば、小売段階で同じ8万枚を売り上げた商品でも、Aが出荷10万枚、Bが出荷20万枚だったら、卸売りという係数によって織り込んではAが9万枚、Bが9万5000枚として発表される(数字はあくまで例えです)。「予約による空売り上げ」なる記事もそういう噂から出ていると思う。実際、30万枚限定CDなのにオリコンの売り上げが30万枚を越した例があったりするしね。

本には今でも第三者機関による全国規模の週間売り上げ調査はないし(テレビの本の週間売上ランキングは一大型店舗だけのものだったりする)、それに比べれば、オリコンはまだマシだとは思うが。

オリコンについては他にも色々あるけど・・・それはまた今度。
truly_false
2006年12月20日 21:47
べつに業界的には知れているハナシだと思ふんですが。これが5000万の損害賠償とはねえ。一罰百戒を狙ってのことなんでしょうが、逆に裏付けてしまってをりますな。
2006年12月28日 00:04
オリコンには是非とも集計のシステムを細大漏らさず法廷で公開して欲しいものです。
midnight surfer
2007年02月10日 12:45
サンプリング調査とは抽出したサンプルから母集団を推計するもので、統計学を理論を使ったものです。ならば、それは統計学理論の中でも証明しか可能ではなく、母集団すべてを調査しないかぎり真実はわからない。
 問題は、このオリコンという会社が、サラ金と同じ手法を使い、その名声をどんどん下げていることです。株主のみなさん、悪い事は言いません。はやく売りぬけてください。

この記事へのトラックバック

  • オリンコンVS烏賀陽弘道  オリコンの訴訟は別な目的か

    Excerpt:  さて、昨日のJ-CASTに、烏賀陽弘道氏が「サイゾー」に掲載されたコメントをめぐってオリコンから訴訟を起こされた件に関しての記事が掲載されています。http://admin.j-cast.com/m.. Weblog: 魁!清谷防衛経済研究所 ブログ分室 racked: 2006-12-21 22:00