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zoom RSS 新型自走榴弾砲は必要か?

<<   作成日時 : 2018/06/01 18:06   >>

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装輪155mmりゅう弾砲
http://www.mod.go.jp/atla/research/kaihatsusoubi/sourin155mmryudanhou.html

先日情報が公開されました。既にぼくが報じたように、車体は三菱重工の重回収車からMANの8x8に変更になっております。これは実用性の面では評価すべき点でしょう。また主砲は99式のものを流用したので、さほどコストは掛かっていないでしょう。

問題はこれが本当に現状必要なのか。カエサルのようなこの種の簡易型の自走砲は世界に多数ありますが、
果たしてそれらと比較しての運用力はどうなのか?

>現有の牽引式りゅう弾砲(FH-70)の減勢に対応するため


そもそもこれ、嘘でしょう。ロクに射撃もしていないので、砲身はピカピカで新品同様です。何しろ米国ヤキマで最大射程で撃ち始めたのは最近だし、一回に二門程度です。へたってきたのはスバル製の補助動力装置ぐらいですよ。
で、その補助動力装置はイタリアのメーカーがより優れたディーゼルのものを開発しており、これに換装すれば宜しい。こういうあからさまな嘘を堂々と掲載するのは納税者を謀る行為です。

確かに牽引式のFH70の展開能力は悪く、また射程も短い。要員の数も9名と多い。
それは事実です。ですが大規模部隊が上陸してることは想定しておらず、主たる脅威はゲリラコマンドウ、島嶼防衛です。ゲリコマであればFH-70で問題ないわけです。射程も長射程の砲弾を採用するばかなり頑張れます。ゲリコマには必要無いけど精密誘導弾は必要でしょう。果たして精密誘導弾は導入するのか?

ゲリコマ重要といいつつ、最近まで機甲戦闘を前提にした99式を漫然と調達しきたのも如何なものか、でしょう。

また、この車体だとC-130での空輸は無理でしょう。であれば、島嶼防衛でもどうなの?という話になります。
島嶼防衛ならばM777のような軽量な砲、あるいはそれを元にしたポーティシステムみたいなものが有用でしょう。

ぶっちゃけた話、FH70の砲を流用して、6輪ないし軽量の8輪のトラックに搭載し、C-130で輸送できるものを開発たほうがまだ良かったんじゃないでしょうかね。99式の調達も中止して。現大綱では火砲が300門となっておりますが、その約半分が99式です。これを用途廃止とはいかない。で60輌程度がMLRSです(これの近代化、あるいは代用は必要だと思います)。
であれば新型自走榴弾砲は90〜100輌も必要無いことになります。

率直に申し上げてFH−70のクルー9名を5名に減らすことができれば、4×100=400名の隊員は削減できますが、ベネフィットはこれだけでしょう。

さて長射程を活かすためにはUAVや観測ヘリなどの観測手段が必要です。またC4IRを活かすネットワークシステムが必要です。
ところがFFOSは距離が短く、FFRSはFFOS同様に信頼性が低いことが大震災で露呈し、これをぼくが報じたこともあって調達が中止となっています。そして偵察ヘリのOH-1は3年以上飛行停止で、全機が飛べるようになるのは早くても10年は先です。
OH-1で更新するはずだった、OH-6の更新プランも無く、OH-6は減衰していっている。いったいどうすんでしょうね?

しかもC4IRですが、国産の砲兵ネットワークシステムはお高いので遅々としてすすまず、基幹となる無線機のコータムはつながずネットワーク化はお寒い限りです。さらに敵を観測し、火力をコーディネートする前方統合誘導チームは水陸両用機動団で導入がやっと始まったばかり。いったいどこの最貧国の貧乏軍隊だ、という有様です。

つまり新型自走榴弾砲が導入されても目が見えず、耳が聞こえないボクサーみたいなものです。


実際問題として日本製鋼所に仕事をふるためだけの装備となるでしょう。

それでも新型自走榴弾砲を導入するのであればFH-70はまだ使えるのだから、これをリファブリッシュして販売する、あるいはモスボールも検討すべでしょう。
それが納税者に対する最低限の責任を果たすということです。

またゲリコマを主眼とするのあれば特科に運用が移った120ミリ迫撃砲の自走化のほうが優先順位は高いでしょう。

■本日の市ヶ谷の噂■
新規参入企業に対する牛歩的な支払遅らせによる嫌がらせについて、会計検査院が調査をする意向との噂。

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コメント(12件)

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> 実際問題として日本製鋼所に仕事をふるためだけの装備となるでしょう。

なるほど、防衛費を二倍にしても国内の防衛企業への税金投入額(&防衛企業から自民党への政治献金額、防衛官僚や自衛隊幹部の天下り)が増えるだけ、というわけですか…orz
被本塁打大王
2018/06/01 19:59
M777は燃料を半分にすればUH60でも運べるんだから、南西諸島への展開に適してます。台湾軍も180門購入することを決定したそうですから、自衛隊も導入すべきでしょう。
ひゃっはー
2018/06/01 20:03
>>>装輪155mmりゅう弾砲

しかしまぁ、見事なまでに清谷さんのお話通り、三菱のアレでなく「海外メーカー製」のトラックが採用されましたね。ワケのわからん屁理屈を捏ねていた国産ウリナラマンセーな方々は今頃、どんな気持ちなんでしょうか(^_^)。まさか、まだ「MANの車体によく似た国産トラックに違いまい!」などと思っているとしたら、何とも救いようがないですが。だけども、このサイズだと国産の、あんな輸送機なら空輸は可能でしょうけれど、1機につき1台しか運べないだろうし効率が悪すぎますよね。てか、陸自は本気で空自頼みでアレコレ空輸で持ち込もうと考えているのでしょうか?


>>>120ミリ迫撃砲の自走化

また、日立あたりに専用の装軌式の車体を作らせる、なんてアホなことだけは避けてもらいたいですが。せっかくだから三菱のあんな装輪式の車体を復活させ(ry



>>>会計検査院

とうとう、検察だけでなく検査院にも目を付けられる日が来ましたか。いずれにせよ、自業自得ですよね。
KU
2018/06/01 20:58
KUさん
>軍クラ盆暗's「MANの車体によく似た国産トラックに違いまい!」
試作車がMANのトラックだと明言されても、「量産車は三菱製!!」って言い張る未来なら見える。
杏樹
2018/06/01 21:48
 大概の国では、「目的の為(戦場)に、手段(兵器)を検討する」するところが、この国では「手段(兵器)の為に、目的(戦場)を妄想する」という謎の行動を取りますね。

 空自・海自が健在ならば、尖閣諸島等に敵対勢力が上陸するのは困難というか無謀。 もし、上陸できたとしたら、空自・海自戦力が壊滅しているとしか言いようがない。 空自・海自戦力が壊滅していれば、陸自の水陸両用機動団は尖閣諸島等にたどり着くこともできない。

 ヲレんちの近所の駐屯地はすべて町中なんですが、はたして有事の際に、陸自は兵隊=サンを所定の場所に運ぶことが出来るのかは謎ですな。

 ヲレが敵なら、盆と正月とゴールデンウィークのいずれかにコトを起こしますな。 主要陸路・空路・鉄道網は軍事作戦を起こすまでもなくパンク寸前。

 たかが無人島を手に入れるため、たった一人の可愛い息子達を死なせるようなバカな軍事作戦を立てたら、中国共産党はバーバ・マーマ達に絞め殺されますんで、正直言って中国が自軍兵士の大量死の可能性のある実戦に耐えられるかは疑問ですな。
 中国が今まで人海戦術を行えたのは兄弟がやたら多くて口減らしも兼ねてのことでしょうしね。


はて?
2018/06/01 22:00
>>>「量産車は三菱製!!」って言い張る未来

杏樹さん

文谷さんも、そんな人がいるとか書いておられましたね。

>事実を否認しようとしている「防衛技術ウォッチャー」(自称)

http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-1922.html

>>MAN製車体に似て無くもないけど、似てるのは雰囲気だけ

>>日立のやつが間に合わなかったんで同規模のMANで試作したのがT型で日立のがU型説。

普通は、よほどのことでも起きない限り、試作品と量産型で大幅な仕様変更なんてないですよね...。
KU
2018/06/02 15:34
既に、どなたか書かれたかと思いますが↓

>陸自の新型装甲車が白紙に コマツ開発、防弾性能満たさず

http://www.kochinews.co.jp/sp/article/188242

これでメーカーにだけ責任を押し付けてオシマイ、なんて事になればなったで、清谷さんの追及が待っていますよね(^_^)。でもこうなったら、いよいよ三菱のアレかドイツのアレかフィンランドのアレが日の目を見ることになりますか。

KU
2018/06/02 18:20
会計検査院も大した組織ではないような。
先日の新聞に、会計検査院が高速増殖炉もんじゅに対して、これまでの事業期間すべてにわたって過去の契約を調べ、やはり多額の無駄な契約があったことを指摘したという記事が出ていました。
何を今さら、もっと早く調べていれば無駄は減らせたのに、という話です。
会計検査院を検査する組織も必要ではないかと思います。
調査官補
2018/06/02 22:28
> 会計検査院も大した組織ではないような。

調査官補さん、おっしゃるとおりです。

森友問題でも、こんなニュースが飛び出しましたし。

財務省、会計検査院の検査報告提出前に原案を入手か
http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3380760.html

> 会計検査院を検査する組織も必要ではないかと思います。

その検査機関が内閣府辺りに置かれては「第二の内閣人事局」「新たな忖度機関」と化してしまいます。

時の内閣が人事や予算を使って介入しないよう、第三者機関として独立性や権限を強化した方が良いと思います。これは会計検査院に限らず、公取委や国税庁等にも当てはまることですが。
被本塁打大王
2018/06/03 11:41
>KUさん
見た目がカッコ悪いだのとのび太みたいな言い草で文句垂れてる連中の無様さが見苦しいですわ
https://togetter.com/li/1181398
杏樹
2018/06/04 17:05
FH-70とかそんなに使ってなかったんですか?富士山周辺にドライブに行くと大概牽引されているFH-70を沢山見かけるし、演習場で花火を上げるがごとく景気よく?ポンポン砲弾の発射音が聞こえますが。まあ砲身の寿命が十分あるなら台車を変えて移動式にする方が理にかなっていますね。中国などは輸出用?で地対空ミサイルでも載せられそうな装輪式の大型トラックに強引に155mm砲を乗っけているのがあって後ろに地面を押さえる大きな板があり撃ったらひっくり返りそう?と心配になりそうなのもありますから案外需要はあるのかも知れませんね。
やれやれ
2018/06/04 18:27
戦史上、ペリリュー島、硫黄島の戦い、沖縄戦、と重防御陣地に隠匿された砲迫が最も効果的な兵器でした。全土を要塞化して、重火器を隠匿してる北朝鮮をアメリカが攻撃しないのを見ても、この戦術はまだ有効ではないか。欧州・ロシアの大平原や中東の砂漠ならともかく、日本の地形で大砲の機動力を上げるのが正しいかどうか疑問です。砲迫は機動力より数を重視すべきで、牽引砲で十分。工兵機材と偽装装備の充実、日本全国に簡単に隠匿出来るスポットを予め整備するのも手でしょう。
マリンロイヤル
2018/06/11 09:02

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