清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所 

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zoom RSS プロになれない駄目な軍オタの共通点。

<<   作成日時 : 2018/02/09 11:23   >>

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ぼくはかつて09年のコンバットマガジン連載の技本が開発した内面装甲を批判しました。

>技本も増加装甲の研究を行っている、だが、#月号の本連載でも紹介した通り、筆者は特にその方向性に疑問を感じる。技本の研究している内張装甲、「内面取付型付加装甲」は厚さが10センチ程もあり、このような分厚い内張装甲は先に述べたように現実的ではない。無論、これがそのまま製品として採用されるわけでもないだろうし、様々な条件を研究する必要あるのだろうが、それにしても現実的ではない。
しかも技本でこれは戦車用ではなく、96式などの装甲車輛や艦艇用と説明している。だが、73式や96式で、この増加装甲を10平方メートル程度使用するとすれば、車内容積は1立方メートルも小さくなる。座席や装備類の取り付けのために再設計が必要だし、車内に搭載できる装備も減少せざるを得ない。
技本は同時に外装式の「外面取付型付加装甲」の研究しているが、「内面取付型付加装甲」で充分でない場合は「外面取付型付加装甲」と組み合わせて対処すると説明している。つまり「内面取付型付加装甲」が主であり、外付け装甲は内張装甲の補完としているらしい。これは自衛隊の装甲車輛の全幅は道路法によって、2.5メートル以下とされているからではないだろうか。不思議なことに在日米軍の車輛はこの規制の適応外になっている。自衛隊の車輛もこのサイズをオーバーしても国交省の検査を受けて年に一度書類だすだけで特例扱いを受けることが可能なのだが。

また技本はこの「内面取付型付加装甲」をスポール・ライナーと称している。先に述べたようにスポール・ライナーと装甲は用途が異なる。実際に増加装甲やスポール・ライナーを製造、あるいは使用している外国の装甲や装甲車輛のメーカーはそのように認識している。本号で筆者はトルコの見本市IFEFのレポートを掲載しているが、その会場でいくつかのメーカーの人間に「内面取付型付加装甲」の写真を見せた。ダイニーマの製造元であるDSMダイニーマのテクニカル・アプリケーション・マネージャーのウイリアム・ルーバース氏は「これはスポール・ライナーではない」と明言した。他の関係者も同様の意見だった。また筆者が10年ほど前、かつて軽装甲機動車の開発にかかわった陸幕広報室の二佐から「軽装甲機動車の開発時にスポール・ライナーを付加しようという案があったが、コストが高くなるからやめた」という話を聞いた。彼はスポール・ライナーの装着は弾丸などの貫通を防ぐ目的ではないと明言していた。陸自と技本と認識が異なるらしい。
別に国際機関が用語の定義をしているわけでもないので、何をどう定義しようとそれは自由だが、国際的な常識とあまりに異なる定義をしていると、外国との無用なパーセプション・ギャップを招くだけである。技本は海外の研究者や、メーカーともっと積極的に交流を持った方がいいのではないだろうか。


これに対して軍オタのJSF君やdragoner君は、権威ある研究機関である技本を信じないとは何事か、弾道学研究会編「火器弾薬技術ハンドブック(改訂版)」を信じないとは何事かと、権威を否定するぼくの記事を必死になって否定しました。


スポールライナーの件で清谷さんが防衛省技術研究本部に喧嘩を売ったでござるの巻
http://obiekt.seesaa.net/article/122555932.html

内張り装甲とは結構、分厚いもの
http://obiekt.seesaa.net/article/122555932.html
2009年02月12日
「見た事が無い」のに「別物である」と断言
http://obiekt.seesaa.net/article/114079537.html
内張り装甲の定義
http://obiekt.seesaa.net/article/111947936.html

今さらだけど、「内張り装甲」の定義Add Star
http://d.hatena.ne.jp/dragoner/20090220/1235132396


でもね、技本の研究者もSF君やdragoner君も、実物のスポールライナーをみたこともないんだよね。
防衛省後任の広報誌MAMORのライター、水野寛之君も同じです。

防衛省御用達、MAMOR誌ライター、水野某氏の批判に対する反論その4
http://kiyotani.at.webry.info/201403/article_13.html

彼らの主張は当局、権威は正しいということだけをよりどころにしております。

ところがその権威である技本の担当者も実物を見たことが無く、ネットの写真をみて開発したというお粗末さです。


>技本の担当がネットで見て参考にした写真というのはぼくもご本人に確認しましたが、これは恐らく装甲の解説を書かれているライターの一戸氏のサイトで紹介されている旧ソ連の戦車のものでしょう。
かつてのソ連ではグラスファイバーをスポールライナーに使用していました。当然ながら、これは厚くなります。ですが既に時代遅れであり、アラミド系繊維を使用すればもっと薄く、ポリウレタン系の繊維を使用すれば更に薄くなります。

>水野氏も書いているように技本の担当者は古いロシア製の戦車写真を元に、サンプルなども入手せずに「内面取付型付加装甲」を開発したのでしょう。
これは写真から想像して食べたこともない料理をつくるようなものです。
1700億円も予算がある研究機関のやることじゃないでしょう。


もちろんぼくは長年に渡って海外で取材をしてきましたが、今だから書けますが、更にこのスポールライナー関連記事を書くに当たっては、デュポンとならんでスポールライナーを含め耐弾繊維のトップメーカーである、ダイニーマの日本法人で、防衛省への売り込みを担当してた人物からレクチャーを受けて書いていました。


JSF君やdragoner君、水野寛之君らは、世界のトップメーカーの主張を否定していたわけです。当時ぼくは、こいつら馬鹿だなあと思いつつ、記事を書いていました。

編「火器弾薬技術ハンドブック(改訂版)」にしても当時ですらスポールライナーを開発したこともなく、採用したことも何人たちが、文献頼りに古い情報で書いた物です。

その後に書いたコンバットマガジン連載の記事からの引用を示します。

>筆者は昨年末技本で新戦車に関するイタンビューを行ったがそのとき、同席した技本の國重博史弾頭技術研究部長は他国でどのように定義しようと、技本では「内面取付型付加装甲」は耐弾性をもったスポールライナーであると定義すると答えた。だが同時に同氏は開発に当たっては実物を見たことが無く、写真を参考に開発を行ったとしている。
>技本は恐らくロシア古いガラス繊維を使用した厚いものを参考にしてスポールライナーとは厚いものであると勘違いして「内面取付型付加装甲」を開発したのではないだろうか。
米軍のM3IFVは写真のように外側に増加装甲を装着し、内側には約1インチ程度のスポールライナーを装着しているのだが、技本は何を参考にしたのだろうか。




常識がある人間ならばどちらの情報を信用するでしょうか。


特にJSF君は笑わせてくれます。

>>既存装甲車などの装甲強化が目的との事ことが、車体外部に装着するのではなく、内部用とのこと。ただでさえ狭いに、このような分厚い装甲を装着するのか不明である。少なくとも、筆者はこのような形状の装甲材を見たことがない。

上記のぼくの記事を引用し、

>つい最近、内部に取り付ける装甲について「見た事が無い」と告白した人なのですから、「内部装甲って何ですか」と問われて説明出来る筈がないですし、「内部装甲の定義を言ってください」と問われて答える事も出来ないでしょう。つまり清谷氏の言う「別物である」という断言は、何の根拠も無い思い込みであると言えます。思い込みではない、ハッタリじゃないと仰られるなら、内部装甲とは何か、定義の説明をお願いします。


そんな胡乱な物は存在しないよ、という主張をと、曲解しています。そんな胡乱な物は存在しないよ、という主張を

例えば蒸気機関の戦闘機なんかみたことないといったら、彼はみたこともないものを否定するのか憤るのでしょう。


まあ、なんですなあ。彼らはヤフーニュースとか、御用雑誌で小銭を稼ぐことがせいの山であり、プロの物書きにはなれません。
権威を盲信するというのは、ジャーナリストや評論家が一番やってはいけないことです。それがよしとされるのは
宗教の世界です。あとは共産党とかカルトな集団です。

しかも彼らは絶対に間違いを認めません。これまたカルトの人たちに共通する特徴です。
ですから、いつまでも同じような過ちを繰り返します。

率直に申し上げて#JSF君や#dragoner君、#水野寛之君らが原稿料を頂いて記事を書くというの、は詐欺に近いと思います。間違っても彼らにはジェーンズやエビエーション・ウィークなどの媒体から記事を書いてくれというお話は来ないでしょう。



最後にサービスで先にご案内した2011年に書いたコンバットマガジン連載を掲載しておきます。


その前に恒例の市ヶ谷。

■本日の市ヶ谷の噂■
数年前空自のKC767は空中給油装置に不具合があり、空自戦闘機が米国での演習のために渡洋時には、米空軍の空中給油機のお世話になったとの噂。



技本のリサーチ能力を問う 装甲とスポールライナー 

前々回、多額の税金を投じて開発した防衛省の無人機が、東日本大震災という「有事」にまったく役に立たなかったことを紹介した。特に新無人偵察機システム(FFRS)は問題だ。防衛省の政策評価ではFFRSの開発に対する事後の事業評価には「着上陸侵攻や離島侵攻、ゲリラや特殊部隊による攻撃やNBC攻撃、災害派遣などの多様な事態に有効に対処できる無人偵察機」している。そして研究開発の達成状況として、システムの構成、偵察能力に関する性能、探知・識別能力に関する性能、評定能力に関する性能、遠隔制御に関する性能、すべてにおいて要求された性能を満足することを確認したとしている。ところが、FFRSは筆者の知る限り一度も飛ばなかった。開発及びその事後評価大いに問題がある。
防衛省の装備開発とその実用化には大きな問題点がある。その原因のひとつは技術開発に際しての、情報の収集と分析にリソースを割いていないことだ。一例を挙げれば海外視察費用が異常に少ないことだ。08年度の例では年間の見本市やコンファレンスなどの視察予算は僅か93万円、出張者は6名に過ぎない。この僅かな予算で6名が出張しているということは、ホスト国からの招待が多いからだろう。
同年のユーロサトリには陸上担当の開発官の川合正俊陸将(当時)と一佐の二名(通訳を同行)が訪れたが、同陸将はその後一ヶ月ほどで退職、防衛とはまったく関係ない企業に再就職している。ただでさえ少ない視察予算が高官の「卒業旅行」に利用されているのだ。これではまともな情報収集が出来るはずがない。
今回は以前も取り上げた技本の開発した付加装甲の例を詳細に検証する。08年、技本は研究発表会で付加装甲は装甲車輛など本装甲の外側に装着する「外面取付型付加装甲」と、車内に装着する「内面取付型付加装甲」という、二種類の付加装甲を発表した。この内の「内面取付型付加装甲」は厚みが約10センチほどあり、装甲とスポールライナーを兼ねていた。だが、技本はこれを単にスポールライナーと称している。
スポールライナーは敵弾の侵徹を防ぐものではなく、着弾による装甲の剥離物や敵弾の破片の拡散、また形成炸薬弾のメタルジェットの拡散など極小化して生存性を高めるものである。装甲車輛などの防御システム、あるいは広義の意味での装甲システムの一部であるが、敵弾の侵徹を防ぐ装甲そのものではない。
これは世界の装甲関係者の常識である。技本の主張は言わばA+B=Bと主張するようなもので、常識以前だ。その理屈ならばヘリコプターや固定翼機などの防弾を目的に装着された機体内部に装着される装甲はすべて「スポールライナー」であることになる。因みにNATO規格では防弾や耐地雷など装甲に関する規格はSTANAG 4569であり、スポールライナーの規格は STANAG 2920として別途定められている。評論家の竹村健一氏はかつて「日本の常識は世界の非常識」と看破したがまさにそれである。このようなユニークな定義は内外の関係者の誤解を招きかねない。

スポールライナーは一般に繊維を重ねたもの、あるいはこれを樹脂で固めたボード(FRP)である。アラミド系繊維は熱や火には強いが、薬品や水分によって劣化しやすい、対してポリエチレン系の繊維は薬品や水分に対して耐性が強いが、熱や火には比較的弱い。FRP化はこれらの欠点を補完するものであり、性能も向上する。このため現在ではFRP化されたものが多用されている。
初期のスポールライナーはガラス繊維のFRPを使用しておりかなり厚かった。だが現在はケブラーなどのアラミド系繊維やダイニーマーのようなポリエチレン系の繊維が使用されて薄くなっている。同じ性能を得るのであればガラス繊維よりも、アラミド繊維、更にはポリエチレン系繊維を使用した素材の方がより薄く、軽くできる。ただ価格は概ねガラス繊維を1とするとアラミド系が二倍、ポリエチレン系はその二倍となる。
 ポリエチレン系耐弾繊維の大手、ダイニーマDSM社では同社のダイニーマーのスポールライナーの場合、厚さ1.5センチのスポールライナーを推奨している。オランダ陸軍が行ったチタン合金の装甲を25ミリ機関砲で射撃した実験「Ballistic Protection Against Armour Piercing Projectiles Using Titanium Base Armour」では厚さ2センチのスポールライナーが使用されている。
 
当然ながらその装甲車輛の想定される脅威の度合い、重量や車内容積から来る制限、調達価格の制限などから、より薄いスポールライナーを採用している車輛は多い。例えばベルギー軍が採用したディンゴ2の野戦救急車型のそれは約5ミリに過ぎない。英軍の耐地雷装甲車、マスティフ2は厚さ1.5センチのNPエアロスペース社のダイニーマ・ベースのスポールライナーを、内壁左右および床面に貼り付けている。その他にも重量がかさむ改良を行ったために同車の乗員は2名+下車歩兵8名から乗員2名+下車歩兵6名に減っている。
形成炸薬弾頭のメタルジェットの拡散角度を極小化するためには、スポールライナーを装甲から距離を置くとより高い効果が得られる。このため近年では本装甲から浮かす形でスポールライナーを装着するケースも増えている。最近この種のスポールライナーがよく見本市では展示されている。この場合スポールライナー自体の厚みも減らせ、重量の軽減にもつながるようだ。ただこの場合車内容積が大きく減じられるというデメリットもある。

ややっこしいのはスポールライナーに使用されている繊維は防弾機能があることだ。だが敵弾の侵徹を目的とするのであればそれは装甲であり、着弾による剥離物や副次被害を防ぐのであればスポールライナーとして明確に区別されている。故に自社の装甲パッケージをスポーライナーを込みでNATO規格のレベル2とかレベル3と表示しているメーカーもある。

雑誌「MAMOR」2009年5月号の「ギホンリポートChallenge to the Futuer 軽量装着型付加装甲」で技本の陸上装備研究所の高杉政彦弾道技術研究部長と柳井知宏耐弾・耐爆構造研究室長(いずれも当時)へのインタビューを元にした記事である。このなかで、
「付加装甲の研究に当たってはM3IFV(歩兵戦闘車)やM113A1(装甲兵員輸送車)などに用いられる外面取り付け型付加装甲、あるいはロシアのT−72戦車の砲塔内部に取り付けられるスポールライナーなどを参考に、『積層型』、『空間型』、『密封型』と3種類の 海外の既存品を参考にしたといっても他国の付加装甲は軍事機密であるため詳細はわからない。したがって材質や板厚、形状などは一から研究しなければならなかった」と、ある。筆者が技本広報に問い合わせたところ、増加装甲は「内面取付型付加装甲」主として、不足であれば「外面取付型付加装甲」を併用する。「内面取付型付加装甲」はスポールライナーであるということだった。増加装甲の概念を誤っているとしか思えない。

現在の装甲車輛のモジュラー式増加装甲は外装式が主流である。これは被弾時の修理や近代化による交換が容易だからだ。また外装式ならば反応装甲やスラット装甲など多用な装甲と組み合わせて使用することも可能だ。対して車内に取り付ければ、着弾に際しては装甲車本体の装甲がまず傷つくので、修理に手間がかかるし、また車内容積を減じることになるからだ。例えばこの分厚い「内面取付型付加装甲」を96式装輪装甲車に採用するならば、定員数を2〜3名減じる必要があるだろう。同じ程度の重量増加でも外装式であれば内部容積が確保できるので、エンジンの出力を強化すればペイロードの維持は可能だろうが、内装式だとそれは不可能だ。そもそも装甲車輛内部に装甲だけ、あるいはスポールライナーだけを装備する場合に何と呼称するのだろうか。

筆者は昨年末技本で新戦車に関するイタンビューを行ったがそのとき、同席した技本の國重博史弾頭技術研究部長は他国でどのように定義しようと、技本では「内面取付型付加装甲」は耐弾性をもったスポールライナーであると定義すると答えた。だが同時に同氏は開発に当たっては実物を見たことが無く、写真を参考に開発を行ったとしている。
技本は恐らくロシア古いガラス繊維を使用した厚いものを参考にしてスポールライナーとは厚いものであると勘違いして「内面取付型付加装甲」を開発したのではないだろうか。
米軍のM3IFVは写真のように外側に増加装甲を装着し、内側には約1インチ程度のスポールライナーを装着しているのだが、技本は何を参考にしたのだろうか。

技本は情報が入手できないというが、世界各地で開催されている軍事見本市では多くの増加装甲やスポールライナーが展示されており、詳細なカタログやパンフレットの類、サンプルの入手は可能である。実際筆者ですらサンプルをいくつか入手している。技本あるいは防衛省が情報やサンプルを入手できないとは思えない。
一回見本市を視察しても高々数十万円の費用しかかからない。その費用をケチって開発を行うのはどういうわけか。コマツや三菱重工、日本製鋼所などの関係者は主要な見本市を視察している。彼らに情報収集を頼むこともできたはずだ。更にいえば国内でもある程度の情報収集は可能だ。ポリエチレン系のスポールライナー素材および、スポールライナーのトップメーカーであるダイニーマDSM社は東洋紡との合弁の日本法人、日本ダイニーマ社があり、ダイニーマ繊維を日本で生産している。また帝人はアラミド繊維、トワロンを生産しており世界第二位のシェアを誇っている。更にはオランダのTenCate社やイスラエルのプラサンササ社など、有力装甲メーカーの代理店も国内に存在する。これらの企業から情報を取ることも可能だったろう。また在日米軍の装甲車輛を視察することも可能だろう。何故これらの代理店から情報収集を行わなかったのだろうか。
容易に入手できる情報を入手する努力をせず、写真を元に想像を働かせて開発してまともな研究ができるだろうか。例えればラーメンもピザも食べたことが無い人間が写真を頼りに実物をつくるようなものではないのか。

我が国でこの分野で権威とされている「火器弾薬技術ハンドブック(改訂版)」(財団法人防衛技術協会刊)はスポールライナーを内張装甲の一つして以下のように定義している。

「内張装甲とは、装甲裏面に内張したアラミド繊維(ケブラーなど)とプラスチックの複合材などである。装甲裏面からの剥離物を受け止める耐弾性向上効果(スポールライナー)のほかに図1.5.2・12に示すように破片の飛散角度を小さくするといった残存性向上効果(スプラッシュライナー)が存在する」

この定義によればスポールライナーは敵弾の貫通を防ぐものではない。また本書の装甲の分類のチャート図にも「内張装甲」は「一体化装甲」、「付加装甲」などの装甲とは分けられている。だが、本書の説明にも誤りがある。既に記したように、本書がスプラッシュライナーの機能としている「破片の飛散角度を小さくするといった残存性向上効果」も含めてスポールラーナー機能なのである。多くのメーカーのパンフレットでは説明にはそのように記されている。少なくとも筆者の知る限り装甲メーカー及び、素材メーカー、装甲車メーカーのカタログに「スプラッシュライナー」なる記述はない。そしてインタビューした業界関係者は一人として「スプラッシュライナー」という単語を知らなかった。
「内張装甲」という呼称も誤解を招くという問題がある。スポールライナーを装甲と混同し易いからだ。確かに海外でもスポールライナーのことを「スポール・アーマー」と称する場合があるが、この言葉を使う人間も明確にこれは装甲ではないと、明言している。本装甲の内側に装着される装甲が「内張装甲」=スポールライナーならば、敵弾の侵徹を防ぐ目的で装甲車輛内部に装備される付加装甲をどのように呼称するのだろうか。「内張装甲」という訳は誤解を招くので使用しない方がいいと筆者は思う。

また本書には複合装甲(composite armour)に関係するまともな記述がない。これもスポールライナーの定義が混乱する原因となっている。
日本語で複合装甲と言う場合、二つの意味がある。ひとつはセラミックセラミックやチタン合金、防弾繊維を固めたFRPなど、異なる素材を組み合わせた装甲の総称である。便宜上これを「複合装甲A」としよう。本書では積層装甲の項で、「セラミックと金属の複合装甲」を紹介している。「積層装甲とは金属装甲板、セラミック、ガラスなどの異種材料を積層した構造であるが、一種類の材料による単一装甲に対して、複合装甲あるいは特殊装甲とも称される」紹介しており、その種類としてセラミック付加装甲とセラミック・金属に複合装甲を例にあげている。
ふたつめは単に防弾繊維をFRPで固めたものを指す。これを「複合装甲B」としよう。これは防弾繊維と樹脂の複合だからこのように呼称されている。英軍のランドローバー・スナッチはこの複合装甲だけで概ねボディが構成されいる。現在海外で複合装甲という場合、「複合装甲B」装甲の方を指すことが多い。航空用語でもコンポジット素材といえば通常は炭素繊維をFRP化したものを指すのと同じだ。だが本書にはこの意味での複合装甲という項目は無い。また本書の装甲の分類のチャート図「図1.5.2・1装甲の分類」にも記述されていない。この図では装甲を一体化装甲(本装甲)と、付加装甲、内張装甲の三種に分けている。一体化装甲と付加装甲に関しては、圧延均質防弾鋼、表面硬化防弾鋼、軽合金装甲、空間装甲、積層装甲(これを更に反応装甲と複合装甲に分けている)、アクティブ装甲の各装甲があるとしている。にもかかわらず「複合装甲B」の記述がないのだ。本書の図1.5.2・1と内張装甲の項を見ると、「複合装甲B」は内張装甲にしか使用されないと理解できてしまう。だがそれは事実ではない。

現在外国の専門誌などでComposite armourという場合、「複合装甲B」の意味で使用される場合が圧倒的に多い。これは付加装甲として車体外部に装着される場合もあるし、車体に使用されるケースも増えている。英軍が採用したフォースプロテクション社の4輪装甲車、オクレットはこのFRP装甲の「複合装甲B」と金属装甲を併せた「複合装甲A」の複合装甲を採用している。
また「複合装甲B」は航空機用の付加装甲としても多用されている。本来このような装甲を「内張装甲」と呼称すべきだろう。技本の定義が正しいならばこれら敵弾の貫通を防ぐ目的で機内に張られる装甲は「スポーライナー」ということになる。国内で唯一とされている権威ある専門書が複合装甲に関してこのような記述しかないのは大きな問題だ。

また本書では積極防御システムも装甲の一種としている。「アクティブ型防御、敵からの被発見および被弾の回避を目的としたソフト キル システム(soft kill system)と敵の弾薬の機能破壊を目的としたハード キル システム(hard Kill System)に分類され後者はアクティブ装甲とも称される」
と、ある。確かにそのような見方はできなくはない。だがこれを装甲と定義するかどうかは議論が分かれるはずだ。ドイツのIBD社が開発した積極防御システムは爆発するセルとセンサーを並べたシステムで構成されており、一種の反応装甲であると言えよう。だがイスラエルのラファール社やIMIが開発したトロフィーやアイアンフィストといった積極防御システムはセンサーで、敵弾を探知しこれをグレネードで迎撃するシステムだ。これが「装甲」であるならば、海軍で海軍の艦艇で使用されているファランクスやゴールキーパーといった、レーダーなどのセンサーと機関砲を組み合わせたCIWS(Close in Weapon System、近接防御火器システム)なども「装甲」と呼べることになる。CIWSを持った艦艇は装甲化された艦艇ということになる。このようなまだ途上にある技術を断定的に装甲に含めてしまうのは非常に危うい。

話を整理すると、我が国で唯一の「権威ある」専門書の定義によると、我が国で軍事技術開発の権威である技術研究本部の「スポールライナー」の定義は誤りであるということになる。そしてその「権威」ある専門書の記述もこれまた誤りがあり、また説明が欠けている。そもそも未だ各国が開発中の新型装備であればまだしも、既に普通に装備されているものをわざわざ他国とは異なる定義を適用する必要はない。それどころか有害である。
我が国では軍事技術の研究者の層が薄いし、大学などの研究機関で軍事技術を研究しているところもない。その上研究者、特に防衛省の研究者が海外の先端技術に触れたり、他国の研究者と交流する機会も少ない。
このような体制で列国に互する研究開発が行われているかということは非常に疑問がある。防衛省は研究に取りかかる前のリサーチの予算を増やすべきだ。それは技本だけに限らず、陸海空自衛隊の幕僚監部、そして研究機関も対象にすべきだ。

参考
Composhield社HP
http://www.composhield.com/Spall-Liner.370.aspx

TenCate社HP
http://www.tencate.com/5572/TenCate/Advanced-Armour/EMEA/en/home/Solutions/Armour-for-military-vehicles/Spall-liners








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コメント(16件)

内 容 ニックネーム/日時
事実かどうかは二の次で、とにかく清谷さんの評判さえ貶められれば良いのでしょうね、こうした人は。それでも彼らの書いた記事を読んだ人の中には、それを本気に受け取る人もいるのだろうから、なお質が悪い。



>国産ミサイルはいらない

http://japan-indepth.jp/?p=38372

何しろ国産開発が手段でなく、目的と化している組織ですしね...。国産開発といえば装備庁も、よく装輪155mmりゅう弾砲のシャーシにMANの車体を採用したなと。いくら三菱のアレがアレとはいえ。
KU
2018/02/09 12:35
> 権威を盲信するというのは、ジャーナリストや評論家が一番やってはいけないことです。それがよしとされるのは宗教の世界です。あとは共産党とかカルトな集団です。

共産党は消費税増税反対や脱原発、対米自立等、評価すべき主張も多いのですが、護憲教信者なのがねえ…

https://www.gosen-dojo.com/index.php?key=jobxogyca-14#_14

https://www.gosen-dojo.com/index.php?key=jo4dq1fvg-1998#_1998

都合よく解釈改憲を繰り返す安倍総理に対し「憲法を守れ!」と叫んでもガン無視されるだけ。もはや日本国憲法は権力者の暴走を食い止める機能を失っています。小林よしのり氏や山尾志桜里議員らの唱える、恣意的な解釈改憲や違憲行為を抑止する「立憲主義的改憲論」の方が、独裁者の誕生を阻止し、かつ国民の広範な持を集めやすい主張だと思うのですがねえ。
被本塁打大王
2018/02/09 19:01
かつては憲法9条に反対していた共産党。

1990年代後半までは改憲政党だった共産党。

http://ironna.jp/article/1863

3.11を見て原子力の平和利用を断念したのは良いとして、日本国憲法をあたかも聖書の如く一文も変えない、って姿勢も改めようぜ!
被本塁打大王
2018/02/09 20:55
要はJSF氏は「見たことがない」という文章を正しく解釈することができない、ということですよね。

しかし、私と清谷様は笑いのツボが大分違うようですね。以前JSF氏が、ミリタリーバランスとは大まかに見るもの、と発言して私が笑った時は、清谷様は笑うレベルを通り越していましたけど、今回の件では私はあまりのことで衝撃を受けて、二の句が継げないんですけど、清谷様は「JSF君は笑わせてくれます」ですものね。
ひゃっはー
2018/02/10 00:36
長すぎて読めない
aaa
2018/02/10 00:49
KC767は米国製で空中給油についてのノウハウは完全ブラックボックスですが
ノノノノ
2018/02/10 08:57
なぜ「0080 ポケットの中の戦争」に出てくるフルアーマーガンダム(アレックス)は増加装甲を機体の外側に付けているのか。

それに気が付いたら、技本の人達が大金をかけて下らないことをやってることが、私なんぞでも解りますよ。
ひゃっはー
2018/02/10 10:42
いざとなったら、米軍がなんとかしてくれると思っている限りは、どうもならないいじゃないでしょうか?

 自分の財布から金を出して、自分が最前線で戦うと前提したら、戦地で分解整備したら部品を落っことして使えなくなる可能性が大である銃を持ちたくないし。
 予備の弾がないのは不安だし。負傷したときには、救急車がほしいし。

 戦争は、最終的には最後の一人が生き残った方の勝ちだし、低価格兵器の大量使用で、相手の高価格兵器を破壊するのが最善手かと思います。
 他所より、すっげ〜兵器(高価格)が同種類兵器をバッタバッタと薙ぎ倒すというのは、ラノベか漫画の世界でなら可能かもしれません。

 100発100中の大砲1門と、100発1中の大砲100門が同時に打ち合えば、最初の交戦で0対99になり、後は打たれ放題と思うのですが、そうとは思わない人が軍人になれるというのも困ったことです。
 兵器と軍人にチートを求めるべきでは無いですよね。
 
はて?
2018/02/10 12:56
お邪魔します。
 数学は古代ギリシャ数学を始まりとします。古代エジプトやメソポタミアにも高度な数学はありましたし、それ無しではあれだけの巨大建築土木は不可能です。しかしそれらは「知識の寄せ集め」の域を出ず、古代ギリシャで公理主義として体系化されて今に至るわけです。
 軍オタの場合も知識が「寄せ集め」に留まり、体系化に向かっていない事が限界ではないかと思われます。尤も数学や啓典宗教と違い、公理や教義から全て演繹されるわけではなく、「具体→抽象」「抽象→具体」の帰納・演繹を繰り返すものですから、体系化という点では一筋縄ではいかない代物ですが。
 後軍事知識コレクターの一人の自分は思うのですが、スポールライナーは「主に装甲の表面に衝撃を与えて裏面を剥離させる粘着榴弾への対策」のように思われます(専用でも特化でも無いでしょうが)。今対戦車兵器の中で粘着榴弾の占める割合はどれだけなのかと思ったりもします。後グラフェンという物質は突き破る力に力に対してはダイヤモンドと同等以上と聞いた事がありますので、大きい物が作れるようになればそれを内貼りにできればとも。
ブロガー(志望)
2018/02/10 20:14
スポールライナーの話ですか、少し前にあいつはそんな事も知らない、いやそっちこそ無知だって戦ってましたね。
八王子の白豚
2018/02/10 22:18
予算の無駄遣い、ライフサイクル計画無き調達の件、会計検査院に告発すべきとおもいます。
また、自民党の議員の人のサイトの
「ご意見うけたまわり」フォームから意見すれば最低限、秘書の人はちゃんと読んでくれると思います。
hk2009
2018/02/11 11:44
 自民党の人は読んでも何もできませんよ。だって、自衛隊は無敵。至高かつ無謬の組織ですから。事実なんて聞きたがりませんし、信じないでしょう。石破さんならあるいは・・・。じゃないですか?
国難突破選挙?
2018/02/11 17:34
> 他所より、すっげ〜兵器(高価格)が同種類兵器をバッタバッタと薙ぎ倒すというのは、ラノベか漫画の世界でなら可能かもしれません。

はて?さん、湾岸戦争やイラク戦争で、米軍のハイテク兵器が、数は多いが旧式のイラク軍兵器を瞬殺したのを見て勘違いした自衛隊関係者や軍オタが多いのでしょう。「米軍様に従っていれば大丈夫!」「米軍と同じ兵器を保有すれば我々も中朝相手に無双できる!」ってね!

でも、実際の米軍は決して無敵ではないし、自衛隊が米軍を真似ようとしても実戦経験や予算面で絶対無理だし。
被本塁打大王
2018/02/11 18:44
仮に内部装甲を「きし麺」として、スポールライナーを「そうめん」としましょうか。
海外の軍関係者の間では幅5mmの「きし麺」は名古屋名産で熱いダシで食べるものであり、幅1mmの「そうめん」はそうめん流しで使用されて薬味を添えて食べるものだと明確に区別されている。ところが、技本のエライ人は海外ではどう定義されようが、幅10cmの内面取付型付加装甲は「そうめん」として定義すると言ったものだから、清谷氏がこんな幅の広い「そうめん」なんか見たことない、海外の軍関係者も内面取付型付加装甲は「そうめん」ではないと言ってるよ、とイチャモンを付けたらJSF氏が、見たことないならお前は「きし麺」がどういうものか知らねえんだろう、お前には「きし麺」と「そうめん」の区別はできない、と下らんことを言ってきた、といったところですか。JSF氏は内面取付型付加装甲と「そうめん」は同じ「小麦粉」でできているのだから、内面取付型付加装甲は「そうめん」だ、みたいなことを言ってるが、素材のみに注目して本来の用途を無視した視野の狭い主張だと言わざるを得ない。

え、余計に分からなくなった?
ひゃっはー
2018/02/12 10:29
実際の軍隊や兵器を直接取材できるのがプロ、二次情報に頼るのがアマ(平日は別の仕事)でしょう。一番困るのは、プロとアマの区別がつかない軍オタが多いことですね。
横浜の黒豚
2018/02/12 13:12
>被本塁打大王さま

>湾岸戦争やイラク戦争で、米軍のハイテク兵器が、数は多いが旧式のイラク軍兵器を瞬殺したのを見て勘違いした自衛隊関係者や軍オタが多いのでしょう。「米軍様に従っていれば大丈夫!」「米軍と同じ兵器を保有すれば我々も中朝相手に無双できる!」ってね!

 それは、花咲じいさんの隣んちの欲ぶかじいさんの理屈ですよね。

 中朝は、イラク戦争みたいな目にはあいたくないから、対策を練って来るとは思わないいでしょうか?
 
 
 
はて?
2018/02/12 19:43

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プロになれない駄目な軍オタの共通点。 清谷信一公式ブログ  清谷防衛経済研究所 /BIGLOBEウェブリブログ
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